「非常に奇妙」核実験から70年、ビキニ環礁は今サンゴと魚が繁栄していた

'Quite odd': coral and fish thrive on Bikini Atoll 70 years after nuclear tests

米国はかつてはパラダイスと呼ばれたビキニ環礁の島を核実験場に選び、広島型原子爆弾約1,100個分の爆発力を持った水爆実験を含む23の核爆弾を落とした。それから70年、島の生命はかつての繁栄を取り戻し始めていた。

Photo: Supplied/ Stephen Palumbi. radionz.co.nzより引用 実験に先立ち167人の住民が他の島に移住させられ、繰り返された核実験によりこの太平洋上の島は不毛の地になったと宣言されていた。だが現在、ビキニ環礁の核実験により形成されたクレーター内で海洋生物が明らかに繁栄している光景にスタンフォード大学の科学者チームは驚愕した。

同大学の海洋科学教授であるSteve Palumbi氏は、海洋生物に対する放射線中毒の影響は深く研究されてこなかったが今回のチームの最初の研究はそれが「非常に弾力的、あるいは回復力が高い」ことを示唆していると語った。

チェルノブイリ原発事故後、チェルノブイリとその周辺の地域では科学者が調査した動物には変形変異が見られたが、スタンフォードチームの最初の研究によるとビキニ環礁の海洋生物はかなり改善された可能性があるという。

Photo: Supplied/ Stephen Palumbi. radionz.co.nzより引用 Palumbi氏のチームは原爆の作ったクレーターの内部や周辺で多様な生態系を、「車」ほどの大きさに成長したサンゴやマグロ、サメ、フエダイを含む数百の魚類、放射性ココナッツをガツガツと食べるヤシガニなどを発見した。

Palumbi氏は肉眼での確認だが、ビキニ環礁のカニや魚、サンゴは完璧に正常で健康的に見えていたという。いくつかのサンゴはその大きさから何十年もの間存在していたと思われ、それはつまり最後の核爆弾が落とされてから10年後にはサンゴが成長し始めた可能性があるという証拠だと指摘した。

「ラグーン(礁湖)は生きているサンゴの周りを渦巻く魚の群れで溢れています。奇妙なことですが、彼らはこの場所の負の歴史によって保護されていると言えるでしょう。人の手が入らないことによってこの場所の魚の数は他のいくつかの場所よりも優れています。サメの数もより豊富でサンゴは大きく成長しています。それは極めて優れた、そして奇妙な環境です。」

Palumbi氏の研究チームはサンゴとココナツガニ(車のホイールキャップ並の大きさ)に研究努力を集中した。彼らは長寿命であるため長年に亘ってその体内システムに蓄積した放射線被ばくが動物のDNAにどのような影響を及ぼしたかを研究することを可能にするからだ。(ヤシの木はセシウム137を地下水などから吸収しており、そのヤシが作るココナッツのみを食べるヤシガニがどうやって蓄積されるセシウム137に対応しているのかをゲノム解読などによって調査するとの事 ソース )

魚の場合その寿命が比較的短いため数十年前に最悪の影響を受けた魚は死に絶えた可能性があり、今日ビキニ環礁に住んでいる魚は環礁の内外を頻繁に行き来するので放射線被ばくのレベルが低くなっていることが考えられるとPalumbi氏は語った。

「23もの原子爆弾を投下したビキニ環礁での核実験は我々人類が海に与えた悪影響の中で最も破壊的なものです。ですが今この場所には生命があり、海は再び生命に溢れる環境を作ろうと努力している。我々がこれまでに行った最も暴力的なことからも立ち直ろうとしている事実は、人類に大きな希望を抱かせてくれます。」
植物や動物、海洋生物が回復の兆しを見せているが、それにもかかわらず人間は環礁で生活することができない。島の施設を維持するための少数の人が存在するが彼らは食事や水を定期的に島外から届けてもらう事によってしか存続できないのが実状だ。

2012年の国連報告書によれば放射線の影響は長期にわたって続くとされている。Calin Georgescu特別報告者は国連人権理事会の報告書で「不可逆的な環境汚染」が多くの人々の生活を奪い、「期限の不明瞭な強制退去」を経験させ続けていると述べた。

放射線汚染は継続しているために水を飲むことはできず、魚介類は食べられず、汚染された土壌によって食用の植物を育てる事もできない。現在、実験に先立ちビキニ環礁から立ち退く事を余儀なくされた167人の住民の半数以上が死亡しており、多くが未だに故郷に戻ることを切望している。

アメリカ合衆国 ワシントンD.C.の私立大学ジョージタウン大学の放射線医学教授であるティモシー・ジョルゲンセン(Timothy J. Jorgensen)の論文によると、1960年代にビキニ環礁の元住民に放射線被ばくに関連する癌が現れ始めたという。爆発の風下にいた人々は火傷と血球数減少を被った。ビキニ環礁から遠く離れた島にいる人々も、がん、特に甲状腺がんや白血病のリスクが上昇し、数十年にわたって米国と補償請求について争う事になった。

「マーシャル諸島の人々は何十年も続く放射能を避けるために島から島への絶え間ない移住を繰り返すという悲しい体験をしてきました。核実験から何年もの間、彼らは放射性降下物によって汚染された土地でかなりの量の放射能を肌から、呼吸から、飲食物から取り込むこととなってしまったのです。」

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海外の反応

theguardian.com, reddit.comのコメント欄より: ソース , ソース

SparkyTheDog この話を福島の人々がどう受け止めるかね。

odstjackson 核爆発による汚染は原子炉のメルトダウンほど環境を汚染しない。福島では今も尚大量の放射線汚染水が海洋に流出し、調査ロボットが停止してしまうほど高すぎる放射線によって内部に手が付けられない状態だ。さらに日本政府とTepcoによって情報は一般大衆から隠されている。

tantris2017 植物や動物の方が人間よりも核放射線によく対処できるってのは悲しいことだ。これと同様の話がチェルノブイリと福島でも起こった。 我々は真に地球上に存在する最悪の種なのだと感じてしまうな。我々がいなくなればすべての植物と動物は安堵する事だろう。トランプが行った唯一の肯定的な事は、パリ協定を破り人類絶滅の日をはるかに近づけたことだ。

vezokpiraka 放射線は動物にとって有害ではないという話を聞いたことがあるな。特に動物は我々人類より寿命が短いから、がんが問題になり始める前に老いて死んでしまうとか。

Baconwich つまり原爆を23個も落として半世紀以上立ち入りを禁じた方が、人類がその場で活動するよりも自然にとって有益であると?

turtleh 人が積極的に関わらなければ自然は自らの力で問題を解決する。

Busy_aloo 「生命は必ず道を見つける」by ジュラシック・パーク

jonnie2thumbs そうだ。ただその生命に人類を含めると問題が発生するという...

Red789 なんでアメリカはこんなに美しい場所で核実験をしようなんて思ったんだ?

Robzview2 アメリカ本国から離れている&影響を受けるのが「原住民」だけだから。アメリカを永続的に辱める数ある失態の1つだな。

HeiHuZi この核実験によっていったいどれだけの人が関連死したのか今でも気になる。

keenly_disinterested ビキニ環礁で爆発した爆弾の大部分は"落とされた"わけではないんだけどな。

ety3rd アレは核実験ではない。 本当はアイツを始末しようとしていたんだ。

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Operation Crossroads Baker By United States Department of Defense (either the U.S. Army or the U.S. Navy) - Library of Congress, パブリック・ドメイン, Link