reddit.comのスレッドより

ドイツにおける日本のアニメの興隆と没落、いかにしてエルフルト大虐殺はアニメの成長を止めさせたか

The Fall of Anime in Germany - how the Erfurt Massacre stopped the anime in its tracks - 2018/1/3

ドイツにおけるアニメ最盛期

まずはドイツにおけるアニメを取り巻く環境が悪くなる前の話をしよう。昔ドイツではアニメの放送がとても盛んで子供向けの番組枠を支配していた。ドイツのテレビ番組のネットワーク『RTL II』は毎週正午から午後にかけてアニメを放送していてドイツの子供の視聴率は最高で約37.5%と物凄い数字だった。

テレビでアニメが盛んに放送されていただけでなくマンガも数多く販売されていたしオーディオドラマ、マンガ雑誌、アニメをテーマにしたバンド、アニメ関連の音楽を制作することだけを目的とした会社もあった。そしてRTL IIはそれらの中でも最も成功したところであり、他の多くのチャンネルでもアニメが放送されていた。

国営テレビは『アルプスの少女ハイジ』、『小さなバイキングビッケ』、『小さなアヒルの大きな愛の物語 あひるのクワック(1989年に日本、西ドイツ、フランス、オランダにより共同制作された子供向けアニメーション)』なんかを週末に放送していたし、他のチャンネルも大人向けのアニメや時にはHentaiアニメまで真夜中の深夜枠で放送していた。

アニメはとても影響力のあるメディアで多くの若者がデジモンのオープニングを歌い、キャプテン翼を知っていて、子供の頃にハイジを見て育った。2002年にはRTL IIが昼間には子供向けのアニメ、夜間にはもっと成熟したアニメを放送するアニメチャンネルを計画していた。

ところがここで状況が大きく変わる。

エルフルト大虐殺

2002年4月26日、ドイツ全土を揺るがす大量殺りく事件が起こった、そしてこれはビデオゲームのようなメディアにとって逆境の始まりだった。

エアフルト事件(独: Amoklauf von Erfurt)は、ドイツ・テューリンゲン州の州都エアフルトで2002年4月26日に発生した大量殺人事件である。死者17人、負傷者6人を出し、ドイツでは第二次世界大戦以降最大の民間人殺戮となった。

犯人の少年は裕福で問題のない家庭に育ったが、コンピュータゲームに耽溺し通っていた高校では問題行動のために退学になっていた。このことから教師を恨み、2002年4月26日の午前11時ごろに短散弾銃とリボルバーで武装し目出し帽をつけてかつての母校へ向かった。そこで教室を移動しながら教師13人、生徒2人、駆けつけた警官1人を射殺した。その後、鉢合わせした教師の前で目出し帽を脱いで素顔を見せている。少年を知っていた教師は「自分を撃て」と言ったが、少年は「先生、今日はもう充分です」と答えた。教師は少年を空き部屋に閉じ込めて鍵をかけ、直後に少年は自殺した。

死体解剖では薬物もアルコールも検出されなかったが、彼の部屋からはアメリカ合衆国の大量殺人事件に関する資料が見つかった。
エアフルト事件-wikipedia
(なお事件当時犯人は忍者の恰好をしていたとのこと)


この事件は数多くの議論を巻き起こし影響を残した。いくつかの法律が変更、例えば銃撃犯が現れた際にはSEK(ドイツの特殊部隊)を待たずに警察がその対処をできるようにしたり、銃器を所持できる最低年齢を上げ所持するためには厳格な心理学鑑定を必要とするように、それと青少年保護法も修正された。

子供を持つ親や政治家たちはこのような事件を引き起こす原因を、もとい悪者にしやすい敵を探しはじめ、子供たちが消費する暴力的なメディアを標的とした。特に暴力的なビデオゲーム。犯人は『ヒットマン』や『リターン トゥ キャッスル ウルフェンシュタイン』のようなゲームを所有していて、彼らにとっては銃を乱射し大量殺戮を犯した原因とするに十分だったようだ。彼らはそういったゲームをKillerspiele(キラーゲーム)と呼び、検閲はこれまで以上に進んだ。

アンゲラ・メルケルが首相に就任することになった2005年の大連立政権はキラーゲームを禁止するという連立公約を掲げていた。
これのどこがアニメと関係あるのと思うだろうけど、実際まったく関係なくて犯人はアニメに夢中だったとかそんな話はない。だが子を持つ親や放送局はアニメを問題視し始めた、RTL IIの子供向けのアニメ放送枠は実際ドイツの子供向けメディアにおいて最も支配的な媒体であったため、彼らに言わせると暴力的な日本のアニメは十分危惧すべき対象として映っていた。

RTL IIはアニメ専用チャンネルの計画を凍結し、より積極的で最悪な自主検閲に注力し始めた。例えば『ナルト』は鼻血を含む血の一滴すら規制されストーリーは崩壊した(作中でうちは一族は一人を残し虐殺されたわけだが"全員が誘拐された"というストーリーに変わった)。

降下、沈没

その後もドイツのアニメ産業にとって逆境は続く。世間の子供向けメディアにおける暴力に対する目は年々厳しくなっていった、特に2006年にドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州のエムスデッテンで起きた学校での銃乱射事件(※学校の元生徒の18歳が銃と発煙装置を用い22人に重軽傷を負わせ自殺した事件)が起きたこともあり、テレビネットワークは視聴者からの反発を恐れ新しいアニメを宣伝することにも放送することにも消極的になっていく。

年々厳しくなっていった表現に対する検閲は人々からアニメに対する関心を奪っていった。深夜にアニメを放送していたチャンネルでさえ放映を中止した。2008年にはドイツのアニメ市場全体がほぼ壊滅状態のように思えた。Tokyopop(漫画の出版権を獲得して他言語に翻訳、供給している会社)のような会社さえ、あまりにも販売数が悪化したため今後はもうアニメをリリースしないと発表した、当時予定されていたリリース計画も全て白紙になった。

2009年にRTL IIはアニメ専用チャンネルの計画を撤回し、定期的にアニメを放送していた枠も"アニメ番組"からただの「子供番組」に改名した。アニメはどんどん誰も見ないような時間帯に追いやられ2013年に完全に放送されなくなるまで放送数も激減していった。

今日のドイツにおけるアニメ市場

アニメ逆境の時代を経てもドイツにおける日本のマンガ市場は順調に成長していった。そしてここ最近は様々なストリーミングサービスが普及、アニメのDVDやブルーレイを販売する新興のアニメ関連企業も増え始めた、ただそれでもドイツのアニメ市場はピークには及ばない。

ドイツ国内の日本製アニメのファンシーンは正規の視聴方法ではなく海賊行為によって持続されていた。違法視聴がはびこる中でドイツのアニメ会社はAnime Copyright Allianz(アニメ著作権連合)を創設、だが彼らはそれら著作権違反行為に対し中途半端で奇妙な取り組みしか行わなかった。つまりどういうことかと言うと、アニメファンによる字幕動画を支持し、アニメがライセンスされたときのみ彼らのファンサブを取り下げるように求めるといったものだった。

今でもドイツはアニメの海賊行為を取り締まることに積極的ではない。ドイツのアニメ会社は著作権侵害を喜ばしく思ってはいないが、海賊行為がアニメシーンをドイツで生き残らせている理由の一部であることを知っており、アニメファンの数自体が減りかねない取り締まりに消極的なのだ。

日本のアニメが以前と同じようにメインストリームのテレビに戻ってくることを願っているがまだしばらくは時間がかかりそうだ。

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海外の反応

reddit.comのコメント欄より: ソース , ソース


Bobertus "作中でうちは一族は一人を残し虐殺されたわけだが"全員が誘拐された"というストーリーに変わった"

笑えるw

Nietschzesuperhuman あれだけの人数を移動させるロジスティクスを想像してみろよ...
イタチは優秀な忍だがそれでも...

BikerMouseFromMars どうやって後の話と整合性をつけるつもりだったのだろう?

scolfin むしろ見たくなってきたわ。

GalnarGaming サスケがイタチに「お前は家族を隠した!!!」とか言っても恰好つかねぇです。

MorphingShadows マジでそう言ったん?

Chariotwheel(スレ主) ちょっと違うけどこんな感じ。

「"アイツは俺を見逃すことで自分自身を正当化した... だから俺だけ誘拐されなかった...!"」
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=1586608451603329&id=1530146850582823&_rdr

ReceiveYou ドイツは先進国の中でも経済力が高く、メディア制作会社も巨大だしメディアの吹き替えも他国に比べ盛んに行われている。だが悲しいことにアニメ市場は、この国の規模を考えればもっと大きくても不思議じゃないのに実際はかなり小さい。

例えば、映画『君の名は。』は他のどの国よりも公開が遅く、しかも映画館で上映する期間もわずかで全国で2日間しかない。アニメの物理メディアの価格も、おそらく日本国外で最も高いと思われる。『ハイキュー』のシーズン1BOXは確か200ドル以上したはず。

90年代から2000年代の初めくらいまでは、ドイツでは吹き替えの質が良かったこともあって日本のアニメはとても人気があって視聴率もとても良かった。でもその後は吹き替えの質も明らかに落ち、変な自主規制も始まり、2007年以降 それまで8社くらいあったアニメ出版社のほとんどが破産するか活動を停止した。

Lxys 今日学んだこと:ドイツでは19歳の男が忍者の衣装を着て学校で銃乱射事件を起こした結果、暴力的なゲームやアニメが禁止された。

Chariotwheel(スレ主) 実際は政府は禁止する動きを見せただけで企業側が自主的に規制を強化したといった感じ。例えば人気FPSゲーム『Wolfenstein(ウルフェンシュタイン)』シリーズのパブリッシャーであるBethesdaに対し誰かが自主規制をするよう求めていないにもかかわらず彼らはそうした。RTL IIも政府機関から何か言われたわけでもないのに自主規制を強化し放送数を減らしていった、世論の反発を恐れてそれを行った、業界内でそういった空気が出来上がってしまったんだ。

unknown 萎縮効果のメディア版って感じか。


萎縮効果(いしゅくこうか、英: chilling effect、チリング・エフェクトとも)とは、刑罰や規制を定める法令の文言が不明確であったり過度に広範であるため、その法令の適用を恐れて、本来自由に行いうる表現や行為が差し控えられること。 萎縮効果 - Wikipedia

Shahttps 1993年から2012年までの間にRTL IIが放送したアニメのリストがこちら。(その年に放送された作品数ではなく新たに放送開始した作品リスト。例えば2006年から放送開始されたNarutoは2009年まで放送されました。)

1993:9作
1994:10作
1995:13作
1996:4作
1997:2作
1998:3作
1999:2作
2000:4作
2001:11作
2002:7作
2003:6作
2004:5作
2005:2作
2006:4作
2007:1作
2008:2作
2009:2作
2010:0作
2011:0作
2012:2作
https://www.anime2you.de/rtlii-special/liste-aller-serien/

なんか明らかに2006年以降、アニメの追加をやめた感じだな。

Chariotwheel(スレ主) 2012年に全てを止めるまでゆっくりとフェードアウトして行った感じだよ。

C-Sh テレビ局側の検閲? 自主規制? そういったものだけがアニメ衰退の理由とは思えなかったけど、ドラゴンボールGTの全64話中13話を"暴力的過ぎるから"という理由で放送しなかったという記事を読んでちょっと信じ始めてきた。

InYourHands ドイツ版Narutoと言えばこの伝説のオープニング。
https://www.youtube.com/watch?v=d8xoTBZrzko

Chariotwheel(スレ主) それね、もう犯罪的だよね。でも昔はもっと気合入れてオープニングを作っていたんだよ。 この セイラームーン とか デジモン とか ワンピース とか結構いいだろ?

BBallHunter 私が子供の頃は放課後に名探偵コナンやワンピースを見ていた、あの時代は良い時代だった、今のクソみたいな番組と違って。

sinebiryan 私の国トルコのポケモン事件に似ているね。ある日、子供が自分はリザードンであると思い込んでビルの7階から飛び降りた事件が起きた。これは2000年の出来事で当時はポケモンは物凄い人気だった。結果人々はポケモンを問題視、アニメは放送されなくなってしまった。

exo_the_emperor 2003年の銃撃事件とRTL IIがアニメ番組を減らした事に因果関係があるとは思えないんだけど。あの事件が起きた後も学校帰りにアニメを見ていた記憶があるし。

Chariotwheel(スレ主) 急に衰退したんじゃなくてゆっくりと死んでいったんだよ。まずアニメ放送枠の拡大が中止になり、自主規制が段々と強化され、新規シリーズ放送数とアニメの現地化努力が減り始め、それらを通して視聴者が離れ始め放送局のアニメに対する関心も無くなっていった。

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