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急速に加速する『映画業界のロサンゼルス離れ』に対する海外の反応



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英語圏最大の電子掲示板Redditの『r/movies (映画板)』
『ロサンゼルスから去るハリウッド』
reddit.com/r/movies


米国のエンタメメディア『Vulture』 -
『ロサンゼルスから去るハリウッド』

~ハリウッドで撮影するよりも他の場所で撮影した方がコスト面で有利である状況が続いていたが、ここに来て『映画業界のロサンゼルス離れ』が急速に加速。今や“ハリウッド”という産業と“ハリウッド”という地名は完全に切り離されつつある~



- 記事の要約 -

過去10年間は​​ハリウッドにとって厳しい時代だった。ロサンゼルスは火災、ストライキ、新型コロナウイルス、映画館や従来型テレビの衰退、ストリーミングの台頭などハリウッドの看板ビジネスを覆すような大惨事の連続に見舞われてきた。

その結果、かつて世界のエンターテインメントの華やかな首都であったロサンゼルスは今やラストベルトのようになりつつある。 Rust Belt:米国中西部から北東部にまたがる、かつて重工業が盛んだったがグローバル化や海外への生産移転が進んだ結果、衰退した地域を指す言葉



今や企画の売り込みや契約交渉はWeb会議サービスのZoomで行われ、脚本を映画やテレビ番組に仕上げる物理的なプロセスである制作はロサンゼルス以外で行われている。

「ロサンゼルスの撮影現場は今やゴーストタウンと化している」とNetflixのテレビドラマシリーズ『POWER/パワー』の製作者であるコートニー・A・ケンプは語る。

実際2024年の興行収入上位10本の実写映画の中でロサンゼルスで撮影された作品は1本もない。今年の作品賞ノミネート作品にも1本もない。

『映画のロサンゼルス離れ』の動きは数年前から少しずつ始まっていたがここに来て一気に加速した。今やアメリカの映画やテレビ番組のうちロサンゼルスで撮影されているのは約5分の1だけだ。

2024年は2020年を除けば記録上最悪の年でストライキで業界が6か月近く停止した2023年でさえここまで酷くはなかった。そして2025年はさらに悪いスタートを切っており昨年比で23%減少している。

今ではロサンゼルスを舞台にした映画でさえ他の場所で撮影される始末だ。

「ハリウッドを支えてきた核は死につつある」

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』や『ウエストワールド』、『フォールアウト』などのドラマを手掛けた脚本家兼監督のジョナサン・ノーランはこう語る。

「産業としてのハリウッドは、もはや場所としてのハリウッドから切り離されつつある」

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ロサンゼルスに映画の都ハリウッドが誕生したのはそこが映画製作に最適な場所だったからだ。

東海岸で映画の特許を多数もつ発明王トーマス・エジソンがそれを縦にあらゆる映画会社に対して特許裁判を起こしていたという理由もあるが、ロサンゼルスは年間を通して晴天の割合が高いためほぼ一年中屋外撮影が可能で、さらに当時は土地も安く労働力も安かったことから数多くの映画製作者や俳優、そして撮影スタッフがこの地に集まった。

やがてそこは映画を目指す若者が学ぶ場となり、非公式な徒弟制度が生れ、熟練した映画労働力が着実に増える循環が生まれた。長い間、映画を製作する側にとって他の場所で撮影する理由はほとんど存在しなかった。

しかし1990年代にカナダのブリティッシュコロンビア州政府が世界で初めて『映画制作の税控除(外国の映画製作会社を誘致するための財政的インセンティブ)』を導入する。

それは大成功し多くの自治体が注目することになった。2000年代初頭にはルイジアナ州とニューメキシコ州が独自の税額控除を導入、さらにジョージア州やニューヨーク州を含む多くの米国州もこれに追随した。

政治家たちが映画の税控除を推し進めたのはそれが手っ取り早い雇用創出策だったからだ。例えば新たな工場を開設するには何年もの計画と巨額の投資が必要となるが映画の税控除ならその効果はすぐに現れる、フットワークが軽いスタジオなら優遇措置の提供を約束したその日の夜に現地に姿を現す可能性すらある。

問題はそうしたスタジオは荷物をまとめて立ち去るのも早いという所だ。彼らは極めて流動的であり、常に最大のオファーを出す自治体の所を優先する。
ストリーミング時代に入るとその動きはさらに加速、世界各地で優遇措置が拡充され多くの地域でロサンゼルスに匹敵するサウンドステージやクルーの拠点が建設されるようになる。

サウンドステージ:映画制作やテレビ制作の制作に使用される大きなドアと高い天井を備えた大型の防音構造物

特にカナダ、イギリス、オーストラリアは為替レート的に有利でもあることから既に積極的な税額控除をさらに強化した。これらの優遇措置は驚くほど手厚くプロジェクトによっては予算の30~40%が還付されることもあるという。

一方で長年にわたって人材とインフラを独占してきたハリウッドを抱えるカリフォルニア州はほとんど手をこまねいていた。一応2009年に独自の優遇措置を導入し、その後も強化してきたがその実情は全く意味のないほどケチなものだった。

さらにカリフォルニア州は労働組合の保護を世界で最も推し進めていたせいでそれが人件費の上昇につながり、プロデューサーを労働組合の弱い地域へと追いやる要因となっていた。

2022年にストリーミングバブルが崩壊すると税額控除はさらに重要になり、カリフォルニア州のわずかな税額控除&労働組合のせいで撮影費が他の場所よりも高くなるロサンゼルスはさらに避けられるようになる。特に巨額を投じるブロックバスター映画ほどその影響は大きくなる。

危機が無視できないほど深刻になった事で昨年、カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムは州の税額控除の年間上限を3億3000万ドルから7億5000万ドルに引き上げることを提案した。

しかし仮にこれが通ったとしても流れを止められるかは不透明だ。カリフォルニア州が税額控除を拡大すれば当然他の自治体も拡大する可能性がある、その場合ロサンゼルスが不利な状況は覆らない。



先月トランプ大統領が外国で製作された映画に100%の関税を課す方針を表明したのもこれが理由だ。

「アメリカの映画産業は急速に衰退しつつある。他国はアメリカの映画製作者やスタジオをアメリカから引き抜こうとあらゆる優遇措置を提供している。ハリウッドをはじめ、アメリカ国内の多くの地域が壊滅的な打撃を受けている」

5月4日にSNSの投稿でこう述べたトランプ大統領は国家安全保障上の脅威を理由に「外国で製作された全ての映画」に100%の関税を課すと発表した。

しかし映画に関税を課す方法は具体的に示されていない。映画はデジタルであり米国に入ってくる物理的な商品ではないため課税することができないという問題がある。

既存の映画税控除に連邦政府による税額控除を上乗せする案も出ているが、共和党が多数を占める議会が民主党の基盤であるカリフォルニア州に利益をもたらすような法案を可決するのかは疑問だ。さらに仮に可決されたとしてもそれでロサンゼルスの窮地を食い止められる保証はない。

「生活費の高騰により既に始まっていた業界関係者の流出は、撮影が困難になり、山火事も頻発するようになったこの街に住む価値があるのか​​と多くの人が疑問を抱くようになるにつれ、さらに加速するだろう」

テレビディレクターで全米監督協会会長のレスリー・リンカ・グラッター氏はこう述べた。
twitter.com

Connect-Narwhal69 There has been an increase of movies being made in New Mexico as of late.
(実際最近はニューメキシコ州で映画が製作されることが増えているって話だよな)

ahomelessguy25 Atlanta gets a lot of filming now too.
(アトランタでも最近は映画撮影が盛んだよ)

mikesfsu Atlanta is dead now. All the marvel/disney shit went to the UK.
(アトランタの映画招致ブームはもう終わったぞ。マーベルやディズニーの作品は今は全部イギリスで撮影されている)

Kozmo2068 It has seriously died in Atlanta, after Marvel pulled a huge chunk of its productions out during covid. We kept a handful of shows, however the volume of productions has decreased exponentially as studios find it cheaper to film overseas.
(新型コロナのパンデミックのせいでマーベルは製作中/予定の作品の多くを製作中止にしたからな、おかげでアトランタの映画ブームは一気に衰退した。そして製作中止を免れた作品も海外で撮影する方が安いと判断されたせいでアトランタでの製作数は激減した)

PeKKer0_0 Vancouver has been the spot for a lot of major tv shows for quite some time.
(バンクーバーも長年、多くの有名テレビ番組のロケ地となってきたよね)

Hellstrom666 As a Vancouverite who worked in the Film Industry for ten years up until a year ago, it is DEAD here. So so many of my friends have lost their entire savings and are now middle-aged trying to find new careers.
(そっちも死んでるぞ、私はバンクーバー出身で1年前まで10年間映画業界で働いていたが完全に死んでる。友人の多くは貯金をすべて失い中年なのに新しい仕事を探している)

PlaneLocksmith6714 That’s terrible. I’m sorry.
(それはお辛い... お気の毒様)

CapnCanfield Netflix is about to open a huge studio lot here in NJ
(Netflixはニュージャージー州に巨大なスタジオをオープンする予定だね)

Burgherman1 Pittsburgh currently has 3 productions filming here... That i know of.
(私が知る限りピッツバーグでも今3つの映画が撮影中だったはず)

amidon1130 It's good now, but then it'll turn as it always does.
(それも今は良くてもすぐにまた状況が変わるんだろうけどな)

LAuser Music too
(映画だけでなく音楽業界も離れてるぞ)

ManitobaWindsurf I work in music and just wrapped up rehearsals with a band recently at one of these empty studio lots. There are about a dozen or so stages and we were the only people there working on anything.
(私は音楽関係の仕事をしていて、つい最近ロサンゼルスのスタジオを借りてリハーサルを終えたばかりなんだが10ある部屋で作業をしているのは私たちだけで他は空だったわ)

Darkroomist The tech changed too. For decades LA had the highest concentration of movie making stuff, it was big, heavy, and needed frequent repairs. Then in the space of maybe a decade the cameras went mostly digital and the lights LED. The value of LA’s production infrastructure dropped.
(技術の進化も理由の一つだろうな。何十年もの間ロサンゼルスは映画製作機材が最も集中する場所だった。それらは高価で大きく重いうえに頻繁に修理が必要だった。だがカメラはデジタルになり照明はLEDになり、ロサンゼルスの映画インフラの価値は低下した)

PepinoPicante To say nothing of prop houses and things like that. CG has already done a number on those kinds of shops.
(小道具やセットなんかも昔は専門業者が必要だったけど今はCGでどうとでもなるしな)

MonsterDaddy324 This. And it’s only going to get more disparate with advances to digital environments and AI. And at that point, who needs soundstages and studio lots? Eventually, movies will be made with small teams of 8-10-20 people.
(まさにその通り。さらにデジタル環境とAIの進歩によって状況はますます変化していくはずだ。そうなればサウンドステージやスタジオすら必要なくなる。いずれ映画は8人、10人、あるいは20人といった小規模なチームで作られるようになるかもしれない)

ManagerSuper1193 That’s not even taking into account Ai’s future effects on the industry.
(記事では指摘されていないけどAIが業界に将来与える影響は絶対に大きいよな)

shadowlarx It’s less that Hollywood has left Los Angeles and more that Hollywood is no longer confined strictly to Los Angeles.
(実際はハリウッドがロサンゼルスを去ったというよりも、ハリウッドがもはやロサンゼルスだけに限定されなくなったという方が適切では?)

kwbigley Lack of incentives, along with the state being unaccommodating to various productions. And even if Newsome passes an expansion, which is doubtful since the state is broke and just underwent massive fires, the other states will respond post haste and raise their percentages further.
(ロサンゼルスが抱える問題は他の州や国に比べてインセンティブが足りないだけじゃない、融通が利かない、映画製作に関する様々な規制も問題だ。それにたとえニューサム知事が税制優遇措置の拡大を可決させたとしても(州は財政難で大規模な火災も経験したばかりなので実現の可能性は低いだろうが)他の州はすぐにこれに対応し控除額をさらに引き上げるだけだろうよ)

Holiday_Parsnip_9841 California's going to need something like a 50% incentive to be competitive.
(カリフォルニア州が競争力を持つには控除が50%くらいは必要になりそう)

kimana1651 They have a lot more to do than just that. There is so many regulation and union red tape they have to go through it still would not be worth it.
(それだけじゃ全然足りないよ、規制や労働組合の不必要で煩雑な手続きとかがあまりにも多過ぎる、控除が増えてもとても割に合うとは思えない)

ivan510 If theres some film tax credit you'll still need to pay more for for wage and everything else and will need to deal with cities being extremely strick with filming and having high permit fees.
(控除が増えたとしても賃金やその他の費用は他より大幅に高いことには変わりないし、規制のせいで撮影のための許可を取るのも難しいうえに許可料も高額じゃねぇ)

Impressive-Potato It's too expensive to film in LA. Do you know why labour costs so much in the US? It's not just the wages, employers pay into health insurance for Americans and it is expensive.
(ロサンゼルスで撮影するのはコストが高すぎる。アメリカの人件費がなぜこんなに高いのか知ってるか? 単に賃金が高いだけじゃない、アメリカは公的な健康保険が無いため民間保険に加入する必要があり高額なその費用を雇用主が支払わなければならないからだ)

Kobe_stan_ I think it all boils down to the cost of living.
(結局のところ、高すぎる生活費の問題だと思う)

It’s become incredibly expensive to live and work in LA because the city has stayed very static over the last few decades. There’s a fraction of the building/development in LA as there is in other major cities like NYC. As a result, less housing supply relative to the population of people that want to live in LA, equals increasing real estate costs. Increasing real estate costs, means increasing rents, increasing prices that stores need to charge for everything to cover that rent, increasing labor costs so people can even afford to live anywhere near work.
(ロサンゼルスはここ数十年、土地開発がほとんど行われていない、そのせいで生活費や人件費が高騰している。ニューヨークのような他の大都市と比べてもロサンゼルスの建設や開発はごくわずかだ。人口の増加に比べて住宅供給量が少なくいせいで不動産価格が上昇し、それが賃貸の上昇に繋がり価格の上昇に繋がり人件費の上昇に繋がっている)

All of these increased costs means that it’s obviously going to be cheaper to producer content elsewhere where land and labor is cheaper, and then when you couple that with the race to the bottom for higher and higher tax incentives and technology making it easier for people to produce content, and it’s no wonder that this work is leaving LA for other States and countries.
(そりゃ土地も人件費もより安価な他の場所に逃げ出すさ。しかも税制優遇措置の引き上げ競争は激化し、テクノロジーの進化によりどこでも映画を作れるようになった。制作現場がロサンゼルスから他の州や国へと移っているのも不思議ではないね)

The way out of this problem is to lower the cost of living in LA. Only way to do that is by building like crazy. Unfortunately NIMBY’ism is strong in LA due to the unintended consequences of CEQA, zoning regulations and an oddly decentralized local government which is split between the mayor, county supervisors and city council which makes it hard to enact change due to lack of consensus.
(とにかくロサンゼルスの生活費を下げなきゃいけないんだけどそのためには建設を急ぐしかない。しかし建設時に環境への影響を回避することを求めたカリフォルニア州のCEQA法や土地利用を制限するゾーニング規制、さらには異様に分権化された地方自治体のせいでのせいで基本的に「必要性は理解するが、うちはやらないんで他がやってくれ」って感じで遅々として進まないのよねぇ)

LazloHollifeld The actors and writers strikes really put some nails in the industry coffin
(2023年にハリウッドの俳優と脚本家が行ったストライキだけど、今思うとあれがとどめになった気がする)

VirtualPoolBoy New Detroit.
(新たなデトロイトの誕生である)

ToonMasterRace The Detroitification of LA. Everything is leaving except the drugs and homeless. Detroit also once was a bastion of the world and it rotted away in just a decade. Now it’s Hollywood’s turn
(ロサンゼルスのデトロイト化だ。ヤク中とホームレス以外はすべて去っていく。デトロイトもかつては世界の自動車の拠点だったがたった10年で朽ち果ててしまった。今度はハリウッドの番だ)