研究者たちがゲノム配列を「カット&ペースト」する遺伝子改変技術により生きた動物のHIVを完全に除去することに世界で始めて成功。

Scientists completely eliminate HIV in living animals for the first time ever using 'cut and paste' gene-editing by dailymail.co.uk - 3 May 2017

記事の要約

・米国の研究者たちは3グループのマウスにHIVを感染させ、それを取り除こうとした。

・グループの1つはHIV-1(HIVには2種類ありHIV-2の感染は地域性があり特定の地域外での感染は低い)に感染させ、1つはEcoHIV(マウスのHIV-1に相当するもの)に感染させた。

・3番目はヒトの免疫細胞であるT細胞が移植された「ヒト化モデル」。T細胞はHIVが隠れ検出されにくくなる場所でもある。

・遺伝子改変技術を使用してチームはHIVウイルスを除去し、さらに感染が拡大するのを防いだ。

・研究者らは今後、人間の臨床試験に向けて霊長類での試験することを望んでいる。


研究者らはCRISPR-Cas9と呼ばれる遺伝子改変技術を用いる事でHIVに感染した生きた動物の治癒に成功したという新しい研究結果を発表した。

現在行なわれている「抗レトロウイルス療法」ではHIVウイルスが潜伏中の細胞には効果がなく、その潜伏したウイルスの発見は困難だったが、今週発表された新しい研究で米国の研究者たちはマウスに移植されたヒト細胞からHIV DNAを完全に除去し、さらなる感染を防ぐことに成功したという。

研究者が動物モデルで完全な除去に成功したのは初めてであり、これは人間の臨床試験への道を切り開いたと言える。

どの様な実験が行われたのか

ペンシルベニア州にあるルイス・カッツ・スクール・オブ・メディスン・アット・テンプル大学(以下LKSOM)とピッツバーグ大学が発表した研究結果にはマウスにヒト免疫細胞を移植してHIVウイルスに感染させた「ヒト化」モデルが含まれていることが特徴としてあげられる。

LKSOMのWenhui Hu博士が率いるこの新しい研究は、ほとんどの細胞の組織のゲノムからHIV-1を除去することに成功した同じチームの以前の研究を基にしており、それから1年後にすべての組織からウイルスをすることに成功した。

「我々の新しい研究はより包括的である」とHu博士は述べた。

「我々は以前の研究からのデータを確認し、遺伝子改変方策の効率を改善した。またこの方策は、マウス細胞における急性感染を代表するものと、ヒト細胞における慢性または潜在性感染症を代表するもの、2つの追加されたマウスを使ったモデルにおいて有効であることも示している。」

研究者らはマウスにHIVを感染させ、それを取り除くために3つのグループを用意した。1つ目のグループはマウスにHIV-1を感染させたもの、2つ目のグループはマウスに重度の症例を引き起こすEcoHIV(マウスのHIV-1に相当するもの)を感染させたもの、そして3つ目のグループはHIV-1に感染したヒト免疫細胞を移植した「ヒト化モデル」である。

1つ目のグループでは人の免疫細胞に感染してこれを破壊するHIV-1を遺伝的に不活性化し、ウイルス遺伝子のRNA発現を95%まで低下させる事に成功、これは以前の調査結果の成果の確認と言える。

2つ目のグループは1つ目のグループとは違いウィルスは激しく広がり増殖しがちだ。
「急性感染の間、HIVは積極的に複製を繰り返す。このEcoHIVに感染したマウスを用いることで、ウイルス複製を阻止し、全身感染を予防するCRISPR-Cas9遺伝子改変技術(DNA二本鎖を切断し遺伝子配列の任意の箇所を削除、置換、挿入する改変技術)の能力を調べることができた。」とKhalili博士は説明する。

研究者らが用いたこの方策はマウスからEcoHIVの96%を除去し、CRISPR-Cas9遺伝子改変技術でHIV-1除去を行う最初の証拠立てとなった。


dailymail.co.ukより引用
遺伝子改変
CRISPR-Cas9と呼ばれる遺伝子改変技術は言うなればパソコンで用いる「カット&ペースト」の生物学バージョンである。

どの様にして作用するのか

左の図:
Cell = 細胞、Nucleus = 細胞核、Chromosome = 染色体
酵素複合体がトランスフェクトされた細胞

左から2つ目の図:
Guide molecule = ガイド分子(ガイドRNA)
特別に設計されたガイドRNA(単鎖キメラRNA)は標的となるDNA鎖を見出す。

左から3つ目の図:
DNA-cutting genzyme = DNA切断酵素、Defective DNA strand = 欠陥のあるDNA鎖
酵素が二本鎖のDNAを切断

左から4つ目の図:
Healthy DNA strand = 健康なDNA鎖
欠陥のあるDNA鎖は健康なコピーと入れ替えられる。


そしていよいよ3つ目のグループ、HIVが潜伏する傾向があるT細胞を含むヒト免疫細胞を移植されたヒト化マウスだ。

「まだ症状が現れていない潜伏したHIVウイルスがこのマウスに移植されたヒトT細胞のゲノムに隠れており、ウイルスはそうすることで検出から逃れている。」とHu博士は説明した。

CRISPR-Cas9遺伝子改変技術を用いた1回の治療で、研究者らはマウス組織および器官に埋め込まれた潜伏感染ヒト細胞からウイルス断片を完全に除去することに成功したことを確認した。

この新しい研究はHIV感染の完全な治療法を追求する上で重要な一歩を踏み出したことを意味する。

「我々の次なる目標はより人間に近い霊長類でこの研究を繰り返すことだ。それによって HIV-1が潜伏感染したT細胞や他の潜伏しやすい細胞、例えば脳細胞などで遺伝子改変技術によるウイルス除去をさらに実証する。そして我々の最終目標はヒト患者による臨床試験だ。」 とKhalili博士は述べた。

スポンサードリンク

海外の反応

dailymail.co.ukのコメント欄より: ソース

Missy, 遺伝子改変治療ってなんかすげー未来的だな。

michaelknight こりゃ製薬会社は驚異に感じるだろうね。

MrPrytania どうだろう? この治療法にはかなりのお金が必要になりそうだし、それは完治困難な病気を患っている人に大きな負担を強いる事になるだろうから。

Jordan9077 実際にどれほどの費用がかかるかによるだろうな。

Voice of America 製薬会社にとっちゃ不当な価格の維持管理薬を売る続けられなくなるし大打撃になるだろう。きっとこの治療法を止めるためにあらゆる手段を講じてくるに違いない。

NYC chick むしろ逆に積極的に関与していくと思う。HIVの治療法を見つける最初の人または会社は、歴史書に載り、ノーベル賞を受賞するだろう。彼らは他の企業にライセンス供与することで巨万の富を得る事が出来、株価は天井知らずに上昇するはずだ。

Kelly88 あまり期待しすぎないほうがいい。これが承認されるまでに あともう15年から20年は必要だろうしな。新しい治療法ってのはそういうもんだ。

jpcqw1 さすがに遺伝子改変ともなると安全のためにじっくり時間をかけて欲しいって思っちゃう。

Sofia とはいえリスクを受け入れ志願する人は山ほどいそうだ。

Somm 数え切れないほどの人々がHIV / AIDによって健康を失い、仕事や社会生活、家族関係で困難を抱えている。もしこの研究が成就したなら多くの人に希望をもたらす光となるだろう。

siberianwolf 素晴らしいブレークスルーだ。そしてこれはHIVに限らず癌や他の病気を除去することも意味するはずだ。私はすべての幹細胞、クローニング、DNA研究を支持する。これらは今回の研究のような素晴らしいブレークスルーを作り出しているからね。

MrPrytania でも多くの宗教に熱心な人々がこの手の研究に反対してるんだよなぁ。彼らが受け入れてくれればもっと研究のスピードは早まると思うんだが

lindy500 この治療法が膵臓癌にも応用されるといいんだが。最も致死的な癌の一つであるにもかかわらず、充てられる研究資金が最低なのよね。

planetConnie, いや、膵臓癌を研究するために膨大な資金が割り当てられているよ、膵管腺癌に関してはね。 ただスティーブ・ジョブスが患ったことで有名な膵臓の神経内分泌腫瘍みたいな特定の癌タイプだと資金が少なくなる。

膵臓腫瘍の問題は検出が困難であることと、検出されるまでに既に転移していることだ。さらに膵臓腫瘍の組成は膵臓への薬物送達を困難かつ非効率的にする。本当にひどい病気だよ。

Somm 素晴らしいニュースだ。HIV / AIDSは個人だけの問題ではなく先進国を含めた世界に影響を与える病気だからね。

Trey Styles, Wow、なんか素晴らしいニュースじゃないの。この調子で頑張って欲しいね。

Scott1sh_American きっと今後20年でこの遺伝子改変技術はあらゆる病気の治療に活用されていくんだろうな。今のうちにお金貯めとかなきゃ...

SteveVD あらゆる病気は病気と認識されなくなる時代が来るかもしれない、金を持っている人に限っては。金持ちだけが寿命を伸ばし長生きするなんてことになっても不思議じゃないな。

Andkon これで何の不安も感じずに はっちゃけられるようになるな!

a great commenter, 別にヘルペスさんがいなくなるわけじゃないんですよ...

スポンサードリンク