ワンパンマンはどれくらい強いのか?

What's in an OP? - How Strong is One Punch Man? by Mother's Basement
Mother's Basementは日本のアニメのオープニングを解説する個人のYoutubeチャンネルです。海外でアニメをストリーミング放送しているCrunchyrollなどがビデオのスポンサーになったりしています。


日本のアニメ『ワンパンマン』は最高である。それを証明するためにしようと思えばこのアニメや原作となった漫画やスーパーヒーローについていくらでも語ることができる。2015年に放送されたアニメの中で最も笑える作品であると同時に他のどの作品よりも光り輝いていた、そのアクション、アニメーション、オープニングにおいて。

そしてそのオープニングテーマ『THE HERO !! 〜怒れる拳に火をつけろ〜』は見る度に主人公サイタマがいかに最強であり最高であるかを 人々に再認識させる。そしてもちろん見る度に人々を興奮させ、一話一話を楽しみにさせる。

私はこのYoutubeチャンネルで様々なアニメのオープニングを検証、解説してきた。以前扱った『ハイキュー!!』のオープニングでは見る人の心を盛り上げるためにどれほど徹底して考えて作られているかをその構造を解析しながら説明した事があるが、そのビデオをご覧になった方ならこの『ワンパンマン』のオープニングもその『ハイキュー!!』と同じようなルールに従って作られていることがわかるだろう。

しかしまた『ハイキュー!!』と同じような検証をしてもあまり意味はない。なので今回はアニメのオープニングの検証に関してだけはS級である私がこのオープニングから分かる範囲で「サイタマはどれくらい強いのか」を科学の知識などを用い学者ぶった分析をしつつ、オープニング映像全体を解説したいと思う。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 アニメ『ワンパンマン』のオープニングは音楽と共に真っ暗な空間の中に絶大な力を持った拳が見ている我々に向かって突き出された映像から始まる。この拳だけにフォーカスしたショットは計り知れない強さを見る者にイメージさせる。またそれはその後に続く拳の速さを想像させるエフェクトによってさらに強調される。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 まず拳は大気との摩擦によって過熱し燃え始める。これはつまりこの時点でマッハ4、音の4倍の速度が出ている事を示唆している。そして拳は光が弾ける様に拡散するエフェクトと共に色を失い白くなる。

このエフェクトは対象物が高速で互いに近づく際にそれらから出る光波を圧縮する青方偏移と呼ばれる現象によって引き起こされるものと考えられる。

これはドップラー効果と同じような原理であり、例えば救急車のサイレンは近づいてくるほど高く聞こえ離れていくほど低く聞こえるが、それは音の発生源が観測者に近づくほど音波の振動が圧縮され周波数が高くなり逆に離れるほど振動が伸ばされて低くなる、という波の発生源と観測者との相対的な速度の違いによって波の周波数が異なって観測される現象である。



青方偏移とは光のドップラー効果であり、光は波長が長ければ赤く見え、短ければ青く見える。そのため発生源が観測者に猛スピードで近づいてくると波長が短くなり青く見えるというものだ。

つまり理論的には拳は"白"でなくより青に近い"緑"に見えるべきなのだがアニメ『ワンパンマン』のオープニングの製作者たちは芸術的な価値観から"白"に変更したと思われる。緑色ではクールに見えないからだ。

このような現象が起こるためにはこの拳が光の速度に近づく必要があり、その様なパンチをあのソニックのように人体の最も脆弱な部分で受け止めるなどということは想像するだに恐ろしい。



サイタマが光の速度に近い、あるいはそれを超える速度で動く事ができると示唆する描写は漫画の中でいくつも描かれており、それはつまり彼の繰り出すパンチはDCコミックスのフラッシュが自らも加速し繰り出すInfinite Mass Punch(ゲームの中では地球を一周してから殴る)並の威力があるということだ。ただこちらは静止した状態からそれが行えるのでさらに恐ろしい。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 場面は拳だけが映ったシーンから拳を構えるサイタマのシーンに切り替わる。そしてサイタマがパンチを繰り出すと共に真っ暗な空間が切り裂かれ光り輝くタイトルが現れ背景が地球に変わる。こちらは彼の表情が真剣である事から「マジパンチ」だと思われる。

ちなみにこの地球は我々の住む地球とは大陸の形が違っておりパンゲア大陸のような巨大な超大陸が存在しているがその形は主人公の名前の元になった埼玉県と同じである。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 次のシーンでは切り替わるごとに次々と巨大になっていく4体のモンスターが背景に現れそれと相対しそれに向かって歩いていくサイタマが描かれる。虎、鬼、龍、そして欧米の人間はフェニックスと勘違いしがちであるが神話に登場する鳥、鳳凰だ。これはもちろんヒーロー協会がその危険度に応じて認定する災害レベル、虎、鬼、龍、神を表している。ちなみにアニメでの描写同様に漫画では存在した災害レベル狼は削除されている。

それぞれのモンスターは切り替わるごとに小さくなっていくサイタマを真っ向からにらみつけており虎の前では大きかったサイタマは鳳凰の前ではかなり小さくなっている。萎縮してしまうような恐ろしい目線ではあるが災害レベル龍を一発で蒸発させ、(誰もその姿を見たことがないので災害レベルは不明だが)おそらく神レベルのボロスですら勝負にならなかった事実を知った後ではそれらのモンスターがサイタマから後ずさりしている様にさえ見えてくる。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 これらのモンスターはその相対的な巨大さ、高さを強さの象徴として示しているが、その直前のタイトルシーンで一瞬だけ映る地球の背後にサイタマの頭が出現し地球を見下ろす場面はサイタマがそれらのモンスターよりも圧倒的に強くその歩みを止める事ができる者などいないという事を表していると思われる。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 続いてサイタマがこれもまた画面が切り替わるごとに過酷になっていく環境を歩いて行く様と自分よりも強い者がいなくなってしまったサイタマの孤独さを強調するようなイメージのシーンが描かれる。また正体不明なモンスターがいくつも現れるがその全てがこのオープニングだけのために登場したものではなく、いくつかは漫画から引っ張り出されたと思われる。雪山に現れるモンスターはコミックス版の番外編に登場した雪だるまのような怪人をモチーフにしたのだろう。

雪山に現れるモンスターの後には口を大きく開いたペンギンのモンスターが現れるが、その次のカットでは氷河と山に巨大な亀裂が生じておりサイタマのパンチで跡形もなく全滅させたことを示唆している。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 次のシーンでは一人孤独に道路を歩くサイタマに雷が落ちるが当然の如く電撃は彼のハゲた頭に無効化され何事もなかったように歩き続けるシーンだ。だがいったいどれほど頑丈であればこのようなことが可能になるのだろうか?



電気に対する抵抗力がどれほど必要なのかは調べても分からなかったのでこの疑問は無視し、熱の話をしよう。雷に含まれるプラズマの熱量は30,000ケルビンにも達する、それは太陽の表面の5倍以上の熱さである。太陽の表面にはもっと熱い場所があるがいずれにせよ凄まじい温度だ。だがその様な恐ろしい威力であってもサイタマには傷1つ与えられない。

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次に炎の中から巨大な怪鳥が飛び出してくるがこれは漫画でキングの家に突っ込んできた鳥を参考にしているのだろう。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 続いてサイタマが水の上を高速で走るシーンと宇宙空間を地球に向かい降下するシーンが描かれる。後者はボロスに月に飛ばされた後に戻ってくる所なのかもしれない。水の上を走る事に関してだがそれを実行するためには秒速30m、ウサインボルトの3倍の速度で走らなければならないが、(ヒーロー認定試験での)1500mを一瞬で走り抜け、光の速度でパンチするサイタマの実力を考慮すれば驚く事ではない。

またサイタマは月からジャンプし数秒で地上まで戻ったが人間の作った人間が搭乗しないロケットでさえ8時間かかることを考えればそれがいかに速いかが分かるだろう。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 次のシーンでは雷が発せられた火山とそこから出現した巨大な岩のモンスターが登場する。その描写もそうだがサイタマがクレジットに隠れてしまうほどの体格差はこのモンスターが非常にパワフルである事を想像させる。が当然サイタマの歩みを止める事はできず、オープニングの後半で一撃で粉砕されている。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 続いてロボットと一つ目のミミズのようなモンスターが現れる。それぞれ恐ろしい姿をしておりサイタマを圧迫するかのようににらみつける。がやはり画面が切り替わるとモンスターの贓物が降り注ぐ中を拳を上げたサイタマがカジュアルに歩く様子が描かれ、もはや笑えてくる。

恐ろしいモンスターの登場と次の瞬間にはクライマックスも無しにかたがつく一連の描写は見ていて非常に面白く、またこの作品のトーンを上手く表せている。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 次に黒い背景の中サイタマがパンチを繰り出す様子がスローモーションで描かれる。全身の筋肉が盛り上がった様は非常に力強く、続く砂漠の中で一人堂々と立つシーンと共にサイタマの全能性をより視聴者に印象付かせる。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 アニメ『ワンパンマン』のオープニングのクライマックスは群がる獣のようなモンスターとサイタマの闘いを美しく滑らかなアニメーションで描いたシーンだ。もちろん他のシーンが美しくないと言っているわけではない。

採石場を遠くから映したシーンで何度かカメラでフラッシュをたいたような光が見えるがそれはサイタマのハゲた頭が太陽光を反射させていたということがよく見ると分かる。面白い。

殺風景な採石場を舞台にしているのは戦隊物のシリーズで毎回登場するあの採石場をモチーフにしているのかもしれない。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 続いてサイタマは敵を徹底的に破壊するスペシャ...じゃなく普通の連続したパンチを放ち、それを喰らった敵は赤い霧となりその背後にあった山が消滅する。600フィートはあると思われる山、これだけの質量を消滅させるには15キロトン以上の爆発物が必要であり、サイタマのパンチは核爆弾の威力を軽く凌駕すると推定される。もっとも空から降ってくる隕石を砕くことができるのだから当然と言えるだろう。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 そしてそれに続くシーンではさらにいくつもの敵を粉砕する様子がモンタージュのように描かれる。その中には作中に登場した怪人と思われるものがいくつか登場する。

サイタマが腕を大きく振りかぶり巨大な敵に飛び掛る。この巨人はアニメの第1話で登場した上腕二頭キングを飲んだマルゴリに似ているがこちらは身体に棘があるので違うかもしれない。パンチが当たると共にマルゴリもどきの肉体は骨を残して蒸発、地面のコンクリートもろとも吹き飛ばされる。

続いて深海王がパンチを喰らい天を覆う黒い雲を吹き飛ばし成層圏の彼方へぶっ飛ばされる。次に現れるのは星のような頭の裸の男だがこちらはよく分からない。この特徴のない怪人は一瞬で倒され、先ほど言及した巨大な岩のモンスターがここで粉砕される。

その後にサイタマ目掛けて落ちてくる巨大な顔のモンスターもアニメや漫画には登場しないが、そのポジショニングとモンスターをジャンプし砕く様はZ市に落ちてきた隕石を破壊したシーンを髣髴させる。


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 オープニングが終わりに差し掛かるとジェノス、音速のソニック、無面ライダーがポーズを決めたシーンが映されるがキャラクター紹介以上の意味はないと思われる。ちなみに英語名License-less Riderの日本語名は無免ライダーであり、これは仮面ライダーをもじった面白いやつである。

ヒーロー協会のマークを背景にそれを代表するタツマキのカットが映され、そして現在分かっているS級ヒーローが勢ぞろいしたカットが映される。ちなみにキングが一番目立つ位置に配置されいるがそれは何故か? Because KING is the best!

(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 最後にもう一度サイタマが拳を構え、大きく振りかぶったそれを前に突き出すと共にサイタマ目掛けて放たれたビームが真っ二つになる。ここはボロスの崩星咆哮砲に対しサイタマが「マジパンチ」を放ったシーンに酷似しており、このアニメのクライマックスがボロスとの闘いで終わる事を予感させる。(このビデオはアニメ最終回が放送される前に投稿されました)


(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部 そして激しい戦いが終わった後にはこのシーン以上に相応しい締め方はないだろう、JAM Projectのメンバーの雄たけびと共に、サイタマがスーパーの特売品が詰まった買い物袋片手に家路につくシーンだ。 最高にカッコいいオープニングを愉快に終わらせる、まさにこの作品らしい終わり方だ。

このオープニングにはサイタマの強さがどれほどかを示す場面がいくつか見られた。そのどれもが驚異的ではある、だがそれでも彼の本当の力のごく一部を垣間見ただけなのだ。そのうちネットでスーパーマンVSサイタマでどちらが勝つかという議論が起こることだろう。どちらに投票すべきか? 私の答えは決まっている。

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(C)ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部