150年の歴史を持つ米国のオピニオン誌『The Atlantic』を発行するアトランティックメディア社傘下のニュースサイト『Quartzy』より

人生で一度は桜の季節の日本に行くことをお勧めします

LETTER OF RECOMMENDATION: VISIT JAPAN DURING CHERRY BLOSSOM SEASON ONCE IN YOUR LIFE - By Rosie SpinksMarch 13, 2018

旅行に来くと、私は観光客なら誰もが向かうであろう主要な観光スポットを避ける傾向にある。それがどんな旅だろうとどこの国だろうと、私が自然と赴いてしまうのは静かで落ち着きのある脇道だったりする、そこでのんびりブラブラするのが好きなのだ。

大勢の人間が集まる場所、フェスティバルだったりテーマパークだったり、観光客を引き寄せるその国でしか見られないような様々な不思議は、思い出よりも不安な気持ちを私に与える。旅行記者として、私の一番の旅行アドバイスは "あからさまに観光地" ではない場所を訪れることだ。



だが2年前、私はそれらのすべてを窓から投げ捨てた。旅行記者としては近年盛り上がっているこのイベントに参加しないわけにはいかなかった。私は日本への一人旅を計画した、それもあえて花見の季節の真っ只中に到着する予定のものを。

インターネットで旅の予約をしているとどうしても目に入ってくる、これでもかと言わんばかりに盛り上げようとしてくる旅行サイトのスライドショーに強い嫌悪感を覚えたのだが、終わってみれば、その不安だらけだった旅は愛さずにはいられない旅となっていた。

春の季節が来るたびに私はその旅の思い出にふけってしまう。実際、それは今までしてきた旅の中でも最も好きな旅の一つとなっていた、それこそ今この記事を読んでいるあなたにも今すぐ日本行のフライトを予約してほしいと思うほどに。

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もちろん日本に限らず、春には世界中で桜の木が咲き誇る。アメリカのワシントンD.C.やカナダのバンクーバー、スウェーデンのストックホルム、フランスのパリのシャン・ド・マルス公園などの都市などが有名だ。

フランスのパリのシャン・ド・マルス公園 / photo via globonaut.eu

スペイン, エストレマドゥーラ州のヘルテバレー / photo via architecturaldigest.com

カナダのバンクーバー / photo via architecturaldigest.com

スペイン マドリードのキンタ・デ・ロス・モリーノス公園 / photo via globonaut.eu

だが日本では桜の季節をただのイベントではなくFull-blown(本格的な/満開の)な季節&文化イベントにすることで知られている。

人々はそれが自家製だろうが買ってきたものだろうが非常に手の込んだ行楽弁当を楽しみながら、伝統的な作法に則った茶を楽しみながら、詩の詠んだり、酒を飲み、桜の花をテーマにしたスナック(桜のフレーバーのスターバックスラテやアイスクリーム、キットカット、さらにはペプシやドーナツまで)を楽しみながら花をめでるのだ。



桜を中心としたこの祭りは日本ではとても重要な意味を持っている、それは春を歓迎する行事であり、刹那に散りゆく桜に自然の美しさと儚さを実感し思いを馳せる特別な日なのだ。桜を鑑賞すること、また日本文化において象徴的な意義を持つようになったのは8世紀にまで遡るという。

これらの樹木が咲く正確な時期は不確定であるため、桜のイベントは良くも悪くも大自然の御心にゆだねられている面がある。

業界全体が花のタイミングを予測することに全力で取り組んでいおり、日本の気象庁は桜の開花に向けて逐一情報を分析し伝えている。ちなみに今はこの時期に日本への旅行を考えている人は検索すれば英語版の開花予想をいくらでも知ることができるようになっているのでご安心を。

とにかく桜はいつ開花するか、いつピークを迎えるかは正確にはわからず、その時期は毎年異なっている。それはくたびれ始めた冬物のコートから軽いジャケットに衣替えしだした時だったりするし、公園の草の上に横たわれるほど暖かい日だったりもする。いつ桜のシーズンが始まるか分からない、しかしだからこそ、それが訪れた時の喜びはひとしおである。

私自身の日本の桜の思い出は今でもまだ鮮明に残っている。私は1月に驚くほど安い飛行機を予約できた。しかもうまい具合に東京の花見の季節がピークを迎える7日間の真っ只中に到着する予定となっていた。

夜に東京に到着した後、自分でもどうして辿り着けたのか不思議だがなんとか公共交通機関を乗り継ぎAirbnbで予約したゲストハウスに時差ボケではっきりしない頭で辿り着いた。そして翌朝目覚めると、私はミッションを開始した。



ピクニック用の食べ物などを調達しにコンビニへ向かう。(全面開示しよう:私の日本での食事の50%がコンビニエンスストアで購入したものだ。私はそれを強くお勧めする。アメリカのグルメ情報サイトである『EATER』が 『いかに日本のコンビニが素晴らしいかという噂を何度も耳にしただろうがそれは真実である』 という記事の中で述べているように、アメリカのコンビニとは比べ物にならないほど品質が良く品物の種類が豊富で手ごろで便利でさらに季節感まである。) そして私は東京の有名な花見のスポットの一つである新宿御苑で一日を過ごした。

私は驚き感動した、満開の桜の木々が天を覆い、ピンク色の花びらが舞う光景は壮麗としか言いようがなく、そして公園を訪れていた他の人たちが楽しんでいたピクニック弁当は上品でおしゃれ、タッパーに詰められた弁当ですら洗練されていた。

その大勢の人間がこの時期にしか咲かない花を見るために集まり楽しむ光景に、私はロンドンの私の家はもちろんのこと、地球から100万マイルは離れた場所に来たかのように感じていた。



これまでに日本に行ったことがある人なら誰でも、この国が持つ細部へこだわりと儀式への忠実さに度肝を抜かれたはずだ。その丁寧さや礼儀正しさを見ていると、まるでこの国以外の人間は常に誰かの気を悪くさせようとしているのではとさえ感じさせられる、それはドーナツを買う時であってもだ。

それが桜の開花を祝うこのイベント全体に適応されているのだ。

桜が繊細で一期一会的であるように、この日本的な文化との出会いの瞬間もまた二度と繰り返されることのない、一生に一度の出会いである。ロンドンに帰った今も私はあの時の喜びと心地よさを思い出せる。そして今日も、私は桜を見るたびに立ち止まりその美しさと儚さを祝福するのだ。

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“桜” by cozymax is licensed under CC BY 2.0