AOL傘下の米国ミシガン州を拠点とする自動車情報サイト『Autoblog』より

日本に自動車を運転するために訪れたら日本の電車に恋に落ちた

I went to Japan to drive cars, and fell in love with trains | Autoblog in Japan - Jun 21st 2018

たとえそれが年がら年中世界を飛び回るような熟練の旅行者であっても、13時間も飛行機に乗れば降りるころには誰もが頭に霧がかかったようにボーッとしているものである。

東京に降り立ち税関を出ると、私はそんなぼんやりとした意識の中でどうやってこの旅初日のホテルに向かうべきかと少し考えて、公共交通を使わずにUberを利用することに決めた。複雑でまるで難しい迷路のような(だと当初思っていた)東京の地下鉄網から正しい経路を見つけ出すため四苦八苦するよりもだいぶマシに思えたからだ。

そこで私は空港から1時間ほどかかるホテルまでのUberの運賃を調べたのだが、開いた口が塞がらないほど驚いた。約27,000円、約250ドル。ホテルまで向かうのにそのホテルの宿泊代よりも高い金を払うことはさすがに躊躇せざるを得ない...

仕方がなく電車の料金を調べてみたら僅か1320円だった。1人で15ドル以下、しかも直通、途中で乗り換える必要無し、はい乗った、その話乗った!

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当然その場にいた二人の同僚もそれに納得する。いくつかのエスカレーターを経て私たちはチケット販売機の前に到着する。購入はその全て(ほぼすべて)において簡単だった。販売機の上にはアルファベット順の駅のリストとそこに行くのにかかる運賃が書かれていた。操作するタッチスクリーン自体には "英語" のボタンがあり、そこからはATMと同じくらい簡単にチケットを購入できた。

ATMの話が出たのでついでに言っておくと、駅に行く前に一度ATMに向かおう、特にセブンイレブンは日本の至る所に存在するのでベストだ。なぜなら日本の電車の旅の数少ない欠点の一つにチケット販売機が現金しか扱ってくれないことが挙げられるからだ。

そして77分間電車に揺られ、5分ほど曇り空の東京の夕暮れの中を歩いた末に目的のホテル(モクシー東京という風変わりなホテル、スバルの本社から電車ですぐの距離にある)に辿り着く。ベッドを見た瞬間に私の意識は10時間ほど飛んだ。




私はこれまでにスイス、ロンドン、デンバー、ニューヨーク、シカゴ、さらにはロサンゼルスでも電車に乗ってきた、空港から都心部まで移動するのに、都市の中を移動するのに。だが東京の電車は特別過ぎた、それは今挙げた世界有数の都市に赤恥をかかせるような存在だ。それらは東京の電車の足元にも及ばない。アメリカではニューヨークのそれが何とか匹敵できるかもといった感じだが、ニューヨークと違い気分を台無しにする小便の匂いもネズミもそこにはなかった。

鉄道においてスイスは有名だがそれでも東京には及ばない、その鉄道網の規模、電車の来る頻度は圧倒的だ。

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まぁ実際にはそれらの優劣はそれほど大きな意味を持たないと言えるかもしれない、なぜならその国々で列車の使いやすさや快適性や信頼性の程度は様々だが、ほとんどの都市では車に乗るよりも電車に乗る方が好ましく思えることが多いからだ。それは3,800万人もの人々が住むこの大都市東京でも変わらないだろうと私は思っていた。そしてそのすぐ翌日、スバルWRX S4に乗った私はそれが正しいことを知った。





自動運転車の取材のために東京に着いた翌朝、スバル本社を訪れた私とAutoblogの同僚2人はスバルが用意した広報用のWRXに乗り、地下のガレージから恵比寿の通りへと繰り出した。運転席が右に、走行車線が左にあり、アメリカの車事情とは異なった環境に戸惑いながら狭い道を走っていく。




見渡す限りに高層ビルが立ち並び何本もの高速道路が一般道の上を走っている、そんな中にあるためかGoogleマップは自分がどこいるのかを把握するのに時間がかかっていた。さらに日本語が読めない人間にとって標識はほとんど役に立たなかった。

そして日本では高速道路に乗るたびに料金を支払わなければならないという事実と相まって、道の間違いは時間だけでなく、かなりの金額を我々から奪っていった。気づけば90分間のドライブで通行料金に36ドルも費やしていた。


もちろん日本の鉄道の旅の極めつけは、米国ではbullet train(弾丸列車)で知られる新幹線だ。

これは東京オリンピックが行われた1964年に運行を開始し東京と大阪を結んだ。以来54年間この高速列車は未だに事故を起こしていない。新幹線は最高で毎時200マイルの速度で運行されているがテスト走行では毎時275マイルにまで達したという。さらに現在開発中のリニアモーターカーは毎時375マイルに達するとのことだ。

当然我々もこれに乗り東京の品川駅から京都まで、250マイル以上の距離を途中2駅の停車を挟んで2時間10分ほどで移動した。

その旅のなんと素晴らしいことか、こと旅行において新幹線以上に楽しい移動手段はないのではなかろうか? イーロン・マスクのハイパーループがこの新幹線の半分でも楽しければそれだけで価値があると断言できよう(まぁ真空のチューブの中を走らせるので素晴らしい景色は望みようがないのだが)。




当然のことながら新幹線の運賃は通常の列車よりもはるかに高価だ、東京ー京都間の運賃は14,000円、約130ドルとなっている(ただこちらはクレジットカードを使用することもできる)。デトロイトからシカゴへのフライトとほぼ同じ距離&運賃だが速さは飛行機の半分ほどに過ぎない、ただし飛行機と違って煩わしいこと、セキュリティチェックのために早めに空港に到着しなければならないといったことから解放されるのは非常にありがたい。
さらに新幹線の方が快適で楽しい。飛行機よりもずっと乗り心地は滑らかで静かだ。足元のスペースも十分あり、座席をリクライニングにする際も後ろの人に気を使う必要があまりない。

移動中に立って、歩いて、脚を伸ばすことができるのも嬉しい。ただ窓の外の景色を眺めるだけでも楽しい、東京ー京都ルートでは海を望むことができ、その反対側からは富士山の壮大な景色を眺めることができるのだ。




しかし我々アメリカ人旅行者3人組がその新幹線の旅でおそらく最も興奮したのは、通路の向こう側から販売員が飲料や軽食を載せたカートを押しながら近づいてきた時かもしれない。高速で疾走する弾丸列車の旅はただそれだけでも楽しいが、安いビールとアイスクリームはそれをよりエキサイティングなものにした。




ああ、それと基本的なことだが電車には乗り込む時だけでなく降りて駅から出るときにもチケットが必要なことは覚えておこう。ただ同僚のジョン君がやったようにチケットをなくしてもパニックになってはいけない。

電車を運営する方々はきちんとどの席のチケットが購入されたかを記録しており、精算所のスタッフに説明すれば(おそらく)get-out-of-jail-free card(※)を発行してくれる。
(※モノポリーの刑務所釈放カード、免罪符や厄介な事態からうまく脱出するための魔法の切り札的な意味)




これを読んでいる方は自動車ジャーナリストなのに電車に興奮しすぎだろ、とお思いだろう。確かにそうかもしれない、もちろん私は車を愛している。それが車と呼ばれるものであればほとんどどんな車にだって私は喜んで乗り込み、そこがサーキット場であれば何週も周り田舎の国道であればクルージングし続ける。

しかしもし、私が東京で経験したのと同じくらい簡単に電車でどこでも行くことができるのであれば私は車を売る、振り返ることは決してないだろう。一度インフラが整備されれば、電車はほとんどあらゆる面で優れた交通手段と言える。

それはどの交通手段よりもクリーンで、ストレスが少なく、効率的で、環境においても優れている。そして、車のように乗る者の心を捉え興味をかき立てるのだ。



日本の電車は移動を小旅行に変えてくれる、小旅行を壮大な旅に変えてくれる。

高速鉄道は目まぐるしく移り変わる景色であなたを楽しませるエンターテイメントであり、地下鉄は浮上した先に見知らぬ世界が表れる旅の扉なのだ。

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