英国BBCの過去番組を紹介するアカウント『BBC Archive』より

「どうしてすべてが "White" なのか?」

“How come is everything white?” Muhammad Ali appeared on Parkinson in 1971. - Jun 8, 2020


英国BBCの過去番組を紹介するアカウント『BBC Archive』
「どうしてすべてが "White" なのか?」

モハメド・アリが1971年にインタビュー番組『Parkinson』に出演した際の映像より。



動画の解説文 (BBCのHPより):

モハメド・アリ:「どうしてすべてが白いのか?」

2016年に亡くなったボクシング界の伝説モハメド・アリは1971年にBBCのインタビュー番組『Parkinson』の中で母親に "白人のレプリゼンテーション(描写/表現)" についての疑問をぶつけた日々の事を語った。

好奇心旺盛な子供だった彼はある時、文学やメディア、さらには家庭用品に至るまで "white" だらけであることに気づき、なぜ黒人が同じようにレプリゼント(※)されていないのか疑問に思ったという。

この動画はそのインタビューの抜粋である。

レプリゼント:
レプリゼント(represent)は「象徴する・代表する」を意味する言葉であり、ポリコレ的には「自分の存在が代わりに体現される」を意味する。

「レプリゼントされている」とはつまり「自分たちが社会の一部であるというメッセージを受け取れる」という意味。

以下モハメド・アリのインタビュー動画の翻訳 (一部 mirror.co.ukより補足)





モハメド・アリ:

鏡を見るとき、私はいつもそこに映る自分の姿を誇りに思ってきた、しかし世の中には「もう黒人なのは嫌だ」と思う黒人がたくさんいた。

小さな黒人の子供たちにはロールモデルがいなかった。あこがれを抱き、その人のようになりたいと振る舞いや言動を真似ようとする人物がいなかった。

黒人のヒーローは一人もいなかった、自分を重ね合わせることができる人間はいなかった。この社会のどこに自分たち黒人が収まることができるのかもわからなかった。

イエス・キリストの絵ですら常に "White" だった。



私はいつも母に尋ねた。

「母さん、どうしてすべてが "White" なの?」

私は言った。

「どうしてイエスはブロンドの髪と青い目をした "White(白人)" なの?」

「どうして最後の晩餐の出席者は全て "White(白人)" なの?」

「教皇も "White(白人)"、(イエスの母の)マリアも "White(白人)"、天使すらも "White(白人)"」

私は言った。

「母さん、私たちが死ぬとき、私たちは天国に行くの?」

母は言った。

「当然よ、私たちは天国に行きます」

私は言った。

「じゃあ何で白人の天使しかいないの? 黒人の天使はどうしちゃったの?」

「ああ、わかった。白人も天国にいるってことは、黒人の天使たちは台所にいて、(彼ら白人のために) ミルクと蜂蜜を準備していたんだ」

ミルクと蜂蜜:
神がアブラハムの子孫に与えると約束した土地カナンは「ミルクと蜂蜜の流れる地」と描写されており、イザヤ書には人々が蜂蜜と凝乳(ヨーグルト)を常食とする時代が来ると書かれている。

milk and honey(ミルクと蜂蜜)は単なる食べ物としての意味の他に、肥沃な土地・豊かな大地・豊かで楽しい生活という意味もある。


母は言った。

「聞いて、そんなことを言うのはおよしなさい」
私はいつも知りたがっていた。そしてなぜ天国に行くために死ななければならないのかといつも思っていた。

なぜ今、カッコいい車やお金や素敵な家を手に入れることができないのか?

なぜミルクと蜂蜜を手に入れるために死ぬまで待たなければならないのか?



とにかく、私はいつも知りたがっていた。いつも疑問に思っていた。

なぜアフリカのジャングルの王者であるターザンは白人なのか。

この白人はアフリカ中を「ahhhh」と叫びながら飛び回りながらライオンの顎を砕き、アフリカ人全員ぶっ飛ばし、動物たちと会話する。

だがアフリカ人は何世紀にもわたってそこにいるのに動物と話すことはできない。なぜ白人であるターザンだけが動物と話すことができるのか。



私はいつもなぜだろうと思っていた。

なぜミス・アメリカはいつも "White(白人)" なのか。なぜアメリカのすべての美しい褐色の女性、美しい姿形をした女性はいつも白人なのか。

ミス・ワールドはいつも白人で、ミス・ユニバースは常に白人だった。

周りを見てもホワイトハウスシガー(葉巻の銘柄)、ホワイトスワンソープ(石鹸の銘柄)、キングホワイトソープ(石鹸の銘柄)、ホワイトクラウド・ティッシュペーパー、ホワイトレイン・ヘアリンス、ホワイトトルネード・フロアワックスとすべてが "White" だった。

エンジェルフードケーキはホワイトケーキだし、デビルズフードケーキはチョコレートケーキだ。

エンジェルフードケーキ (Angel food cake):
19世紀にアメリカで考案されたアメリカで定番のケーキ。バターを使わずに卵白、小麦粉、砂糖で作られた軽い食感が特徴のスポンジケーキの一種。

デビルズフードケーキ (Devil's food cake):
エンジェルフードケーキとは反対に真黒なチョコレートケーキ。同じくアメリカで考案されたケーキで通常のチョコレートケーキよりもチョコレートの使用量が多くより黒い。しっとりとしていて濃厚な味わいがが特徴のケーキ。




「母さん、どうして全部 "White" なの?」

私は子供の頃によくこう口にしていた。いつも不思議に思っていた。

大統領が住んでいるのはホワイトハウスで、『メリーさんのひつじ』は雪のように白い羊を歌う童謡だ。白雪姫(Snow White)もそう、サンタクロースもそう、すべてが "White" だった。

メリーさんのひつじ(Mary Had a Little Lamb):
19世紀のアメリカ合衆国に起源を持つ英語の童謡。

Mary had a little lamb
Little lamb, little lamb,
Mary had a little lamb
Its fleece was white as snow.

(メリーさんのひつじ、小さな子羊、小さな子羊、メリーさんのひつじ、その羊毛は雪のように白かった)
A Corny Concerto (2).png OswaldLR - BD, パブリック・ドメイン, リンク

そして逆に悪いものはすべて "Black" だった。

『みにくいアヒルの子』のアヒルの子は黒いアヒルで、黒い猫は不吉の前兆とされてきた。

もし私があなたを脅したらそれは "blackmail (脅迫)" と呼ばれる。

「母さん、どうして人々はそれを "ホワイトメール" と呼ばないの? 黒人だけがそうするわけじゃないでしょ?」

私はそう言った。私はいつも不思議に思っていた。そして、何かがおかしいと理解したのがその時だった。



イタリアのローマでオリンピックの金メダルを獲得したとき、私は共産主義国であるロシアとポーランドを下してオリンピックチャンピオンになった。

私はいわゆる "アメリカの脅威"、"アメリカの敵" と呼ばれる相手を打ち負かして世界のトップに立った。

合衆国国家が流れる中、星条旗がゆっくりと昇っていく。表彰式に立つ私の心は誇りに満ちていた。

私は金メダルを手にした、全世界の頂点に立った、オリンピックチャンピオンになった、今ならダウンタウンで食事をすることもできるはずだと思った。

そしてその日、私は金メダルを持ってダウンタウンに行きレストランに入った。

「コーヒーとホットドッグを」

私がそういうとウェイトレスは「We don’t serve Negroes (私たちは黒人にサービスを提供しません/私たちは黒人を提供しません)」と言った。

私は激高してこう言った。

「I don’t eat ‘em either! (私だって黒人を食べたりしない)」

「いいからコーヒーとホットドッグを持ってくるんだ!」

「私はオリンピックの金メダリストだ。3日前に優勝した、ローマで、この国のために出場し戦った。金メダルを獲得した。私はここで食事をすると言っているんだ!」

そして彼女はマネージャーの下に行き、相談をしたかと思うと私を店から追い出した。



そこは私が子供のころから教会に通い、彼らが教えるキリスト教に仕えてきた場所だった。私の父はそこからアメリカのために戦地に赴いた。

だがつい数日前に金メダルを獲得したばかりだというのに、私は自分の故郷にあるレストランに入ることさえ許されなかった。

「何かがおかしい」

私は思わず口にした。

その日から私はキリスト教を捨てイスラム教徒となった。

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海外の反応

twitter.com, reddit.comのコメント欄より: ソース , ソース , ソース , ソース


Anti War 楽しくも悲しい素晴らしいインタビュー。

Vinnie Tripodi Funny, not funny

Maxluke This is fucking brilliant !
(こいつは素晴らしい)

Jon cuccui 彼の問題意識は時代のはるか先を行っている。

Jason Robinson 今もなお彼が称えられる理由の1つ。

Fenrir This is why this man is the Greatest.
(これぞこの男が最も偉大な人物である理由だ)

Jim Wallace 彼が最も偉大な人物である理由がこれ。

Dreamer Muhammad Ali the greatest
(モハメドアリは史上最も偉大な人物)

Sam カリスマっぷりがパネェ。

Bruce_le_Smith その語り口は軽快で、その言葉は鋭く心に刺さる。彼は説教においても蝶のように舞い、蜂のように刺すのであった。

T Dragon 357 金メダルを無価値と断じ川に投げ捨てた彼を誇りに思う。

George Legend even outside the ring
(リングの外でも伝説)

Dawud Mahdi 白人至上主義のルーツは宗教にある。

User 1 宗教は白人至上主義と関係ない、白人至上主義者とは違いを受け入れることができない人々のことであり自分たちと違う人間を恐れる人々だ。

maia4t 奴隷貿易と植民地主義を生み出したのは白人至上主義だ。そしてキリスト教は白人至上主義を正当化するために使用された。彼らは自分たちの行いを文字通り主の仕事と信じて行っていた。

Bo Escritt 49年前、モハメドアリは「どうしてすべてが白いのか」と尋ねた。

私たち黒人の多くがその成長の過程で同じ疑問を抱き、今でも抱き続けている。黒人は未だにレプリゼントの問題に悩まされ続けている。私たちの存在は未だに職場や社会、メディアにおいて十分に反映されていない。

Kathy Martin 黒人は長年にわたって自分たちはこの社会の一員じゃない、自分たちは白人より劣っていると感じさせられてきた。それはあからさまな人種差別だけでなく目に見えにくい人種差別によって植え付けられてきた。

stephen kelly 目に見える人種差別だけでなく人々が当たり前と思っているものに潜む人種差別、潜在意識下にある人種差別について彼は語っているわけだがとても目の付けどころがよい。

人種差別禁止法が施行されてから45年になるが、今の世界を見ていると残念ながらまだまだ長い道のりが残っていると言わざるを得ない。

Zeal Master 我々はキリスト教に疑問を持たないよう言われて育てられてきた。私たちの両親もその両親から言われ続けてきたからだ。

しかし今の世代は変化を起こそうとしている。それはとても喜ばしいことだと思う。

Keighlan C. Coe イエスが白人なのはそれがヨーロッパ人のために描かれたたからだ。

白人以外の人種を見たことがなかったヨーロッパ人にとって、自分たちの神が自分たちのように見えないということは奇妙に思えたはずだ。ホワイトハウスにしても少々こじつけが過ぎると思う。

Ozwald Cornelius 彼の言う "なぜ?" は "rhetorical questions(特に答えを求めていない質問/答えようのない質問)" だ。

彼はアメリカに黒人として生まれ、黒人として育った人間から見たアメリカ社会を語っているんだ。

Sandra Mamedu 観客は笑っているけど今見ると笑うことに躊躇してしまう。

ice daddy starphase 彼らは笑っているが私からすると全く笑えない。

chocky naresh 無邪気に笑う観客にちょっとイラっとしたわ。

TRtherocknroller We don’t serve Negroes (私たちは黒人にサービスを提供しません/私たちは黒人を提供しません)」

「I don’t eat ‘em either! (私だって彼らを食べたりしない)」
と返せるアリは天才だと思う 😂

Unekwuojo ACA Blackday(凶日)、Blackbook(注意人物/前科者名簿帳)、Blackmoney(不正所得/アングラマネー)なんかもそうだな。

Huzaifa Chattha インタビュアーのパーキンソン氏が恥ずかしそうにしているのがまたいいじゃないの。

それはきっとモハメドアリの言葉が真実であることを自覚しているからだろう。

@DianaJNYCProg RIP. A legend.

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