アメリカ最大の一般大衆紙「USAトゥデイ」傘下のニュージャージー州のローカル新聞『Asbury Park Press』より

愛犬を救うことができる唯一の医者を求めニュージャージー州から日本へ

Dog travels from New Jersey to Japan to see the only surgeon who can save her - July 16, 2018

- 以下動画の翻訳 -



レミーは最近8歳になったばかりのキャバリア・キングチャールズ・スパニエル (イギリス産の小型犬の一種、スパニエル種) です。

愛情深く思いやりのある子です、信じられないくらい愛らしい子です、とても楽しい子です、本当に、本当に素晴らしい犬です。





私たちはこの子の定期健診に行きました。ちょうどそのころ1週間ほど咳が続いていました、私はそれがアレルギーかなにかから来ているものだとばかり思っていました。ですがそこで僧帽弁閉鎖不全症、左心室から全身に送り出されるはずの血液の一部が左心房に逆流してしまうという心臓病、そして慢性心不全であるとの診断が下されました。

病気は進行性のもので、薬は病気の進行を遅らせる程度にしか役に立たず、最終的に心臓まひで命を落とすだろうとのことでした。



その動物病院の心臓専門医は手の施しようがないと言ったのです。ですがその後そのお医者さんは私のもとにレミーを返しながらこう言いました、

先に言っておきます、彼女を助けることができる人間はこの世に1人しかいません、そしてその人は日本にいます。


私たちはその人物、上地正実さんが日本の横浜という都市にいるということを知りました。地球をほぼ半周した先まで病気の愛犬を連れていくことには恐怖を感じました、そして大きな決断を伴いました。ですが最終的に手術を終えて1か月経った頃にはレミーは昔の姿に戻っていました。見るからに生き生きとしていて咳も全くしない、他の犬たちと元気に遊びまわっていたのです。

私は泣き崩れました、上地正実さんが手術室から出てきた時彼は私たちに見せてくれました、実際にレミーの心臓の状態と生命状態をスクリーンで見せてくれたのです。そしてレミーは手術を乗り切ったと、経過は全て順調、何も心配する必要はないと言ってくれました。

私は本当に心の底から彼に感謝しました、犬の心臓を直す、ただそれだけに彼はその人生の全てをささげてきたのです、犬を愛する人たちが悲惨な最後を目にしないために。





私たちは、ただ彼女を愛していました。彼女は私たち家族にとって本当に特別な存在だったのです。私たちは極めて幸運だったと思います、それには多大な犠牲が伴いましたがそれを払うことが可能だった、彼女に必要な手当てができた、そして半年も生きられないと言われていた彼女ともっと長く時を過ごすことができる、その希望と共にこれから生きていけるのですから。

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- 以下記事の翻訳 -



キャシー・クニ(Cathy Cuni)は彼女がこの世で一番愛する犬レミーを獣医が診察している間不安を感じていた、「レミーに問題があるわけがない」、彼女はそう自分自身に言い聞かせていた。それは昨年9月のレミーの定期健診の日のことだった。

ニュージャージー州のキャシーの家でその8歳になるキャバリア・キングチャールズ・スパニエルはいつも穏やかだった。甲高い鳴き声でほえたてる事もしなければ飛び回ったりもしない、その愛らしい小さな犬は客人が訪れればすり寄り親しげに頭をこすりつけ、飼い主が帰宅すれば出迎え頭を撫でてもらおうとその大きな茶色の目でじっと見つめてくる。そんな愛らしくとても良い子だった。

その時もいつも通りだった、時々起こる咳を除いて。



獣医はレミーの胸の辺りからしばらく聴診器を動かさなかった。そしてキャシーは獣医からレミーに心雑音、正常な心臓では発生しない異常粗雑な心音があると告げられる。軽度の咳に思えたものは、僧帽弁が厚くなり心臓が大きく膨張する疾患であることが明らかになった、レミーは末期の僧帽弁閉鎖不全症(MVD)を発症していたのだ

MVDはうっ血性心不全の一つであり、ニューヨーク州の獣医大学Cornell University College of Veterinary Medicineによればそれは特に小型種によく見られる疾患であり8歳以降に発症しやすいという。そしてその治療法は存在しなかった。

薬は症状を緩和するかもしれないが、レミーは6ヶ月から1年以内に死亡する可能性が高いとキャシーは告げられた。キャシーがあまりの出来事に茫然としていると獣医はもう1つの情報を提供する。

「お医者さんはレミーを私のもとに返しながらこう言いました、"先に言っておきます、彼女を助けることができる人間はこの世に1人しかいません、そしてその人は日本にいます" と。」

キャシーはそう回想する。
それは彼女たちにとって試練の時だった。
あなたは愛するペットのためにどこまで犠牲にできるだろう?
ペットのために1か月もしごとを休むことができるだろうか?
ペットのために大金の借入れを申し込むことができるだろうか?
絶望を前にして小さな希望に全てを託し心身ともに追い込む覚悟があるだろうか?

だがキャシーはレミーを救うためにはどんな犠牲もいとわない覚悟を決めた、彼女にとってレミーは特別な存在だったからだ。





キャシーはレミー以外に3匹の犬を飼っている、そのどれもが譲り受けた犬たちだ。青黒い毛色のイングリッシュ・コッカー・スパニエルのNeroとSilvioは共にドッグショーのために繁殖されたが毛並み難があり路頭に迷っていた。キャシーは通いの獣医師を通してそれらを譲り受ける。そして彼らは今年9歳になる。

Rubiは金色の毛色のコッカー・スパニエルであり興奮するとおしっこをしてしまうことから前の飼い主に捨てられ、犬の里親になってくれる人とそんな犬とをつなぐ団体『Abandoned Angels』に保護されていたところをキャシーが引き取った。彼女は今年8歳になる。

先に飼っていた2匹のアメリカン・コッカー・スパニエルのShadowとLexiは共に2010年に16日違いで亡くなった。そしてその2010年にキャシーはブリーダーからレミーを子犬として購入ししていた。

キャシーは他にも3匹のウサギをリビングルームで飼っている。

夫と私の間には子供がいません

彼女はそう語った。

ですからこの子たちは私の子供なんです。
キャシーはMVDとその日本の外科医のことを調べ始めた。そしてFacebookでMighty Hearts Project というのページを見つける、それはMVDの手術を選択した家族がお互いに繋がりあい助け合うコミュニティだった。

そこでキャシーの不安は和らぐ、日本の横浜にある『JASMINEどうぶつ循環器病センター』 の上地正実院長はこのMVDという病気を専門にしているだけでなく文字通りその人生をかけてこの病気の治療のために尽力してきたのだと知ったのだ。上地正実医師とそのチームはこれまでに900以上の犬に対し僧帽弁修復手術を行いその成功率は94%にも達するという。



この手術はMVDを完全に治すわけではないが病気の進行を遅らせその生活の質を大幅に向上させることができる。レミーが適格基準を満たしていればこの手術で命を繋ぎ止めることが可能になる、MVDが再びレミーの心臓に問題を起こす前に老衰でその命を終わらすことができる可能性が高い。彼女は8歳だがキャバリア・キングチャールズ・スパニエルの寿命は9〜14年と言われている。

上地正実医師は過去に愛犬を助けようとする飼い主の要請でフランスで手術を行ったことがあるがその際は彼のチームも連れて行ったため46,000ドルもの費用を必要とした、日本での手術自体は17,000ドルとそれに比べれば低いが手軽に払える金額ではない、さらに手術以外にもお金が必要だった。

そしてコストに加えてキャシーには別の懸念もあった。

「手術の成功率は100%ではありません、見知らぬ土地でレミーを失ってしまったら精神的に耐えられそうもないと最初は思いました。ですがもしこのままでいればレミー苦しみながら最後を迎えます、日本でなら少なくとも麻酔下で逝くことになるでしょう。」



問題はそれだけではなかった。手術を決めても日本にレミーを持ち込むには検疫を受けねばならずその準備期間に約6か月を要した。さらに手術前の検査で約3,000ドルが必要だった。

さらに獣医からはレミーが検疫期間の半年を生き延びることができるかは確実ではなく、また日本への長距離フライトが彼女にどのような影響を与えるかも不明であると言われる。そしてさらに悪いことにレミーは診断直後にMVDの顕著な症状を呈し始めた。

「レミーの咳は深くなり、見るからに元気が失われていきました。まるでブルドックのように立つ姿を頻繁に見るようになりました、胸を圧迫させたくなかったのでしょう。レミーの心臓はさらに大きく膨張し気管を圧迫していました。この子の残された時間が日に日に少なくなっていくのを感じました。」



検疫は5月17日に終了した。キャシーはその翌日の5月28日に夫とレミー共に日本へ向かう。手術は6月5日に予定されていた。

そしてついに上地正実医師と対面した時彼女は泣きそうになったという。

「彼はとても謙虚な方でした」



日本の横浜にある『JASMINEどうぶつ循環器病センター』の設備、そして犬とその家族に対するケアに彼女は感銘を受ける。手術室はガラス張りでその様子を見ることができ、レミーの心臓の様子すらもスクリーンを通して見るこができた。11人もの人間が手術室に入り、その手術は7時間もの時間を要した。術後も同様の人数のチームが回復のために付き添っていた。

ニューヨークで電気工として働く夫のジョンは術後仕事のために帰国したがキャシー達は日本で合計30日滞在した。レミーの手術費、渡航費および関連費用は最終的に25,000ドルになりキャシー夫妻はそれを支払うためにお金を借りなければならなかったという。





だがそれは価値あるものだったとキャシーは語る。手術の結果レミーの心臓の大きさは減少し、回復期間中に発症したすべての軽度の合併症は治まった。

家の周りをパタパタと歩き回り、やつれた様子もない、レミーはかつての姿を取り戻していた。日本でのお土産として購入した子犬用の着物をキャシーが着せようとすればいつものように行儀よくそれを受け入れるだろう。レミーにとっては恥辱かもしれないが、その家を訪れた客人はいつも以上に愛らしい彼女に甘い声を出すだろう、その否定しがたい可愛さを前に。そしてドレスアップから解放されたレミーはプールサイドの中庭に置かれたクッションの上で休むのだ、彼女のお気に入りの場所、いつもの定位置で。

「手術前はレミーはそこで座ることすらできませんでした、胸を圧倒してしまうからです。」

レミーの病気を治すために費やした時間、ストレス、不安のすべてが報われたと彼女は語った。

「本当に良かった、でも夫は "もう絶対にこれ以上うちで飼う子は増やさないぞ" と言っていましたね。」

彼女は最後にそんなユーモアを残していった。彼らの家は満員だが、それは彼らの家族が完全な形にあることの証だった。

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以下 『JASMINEどうぶつ循環器病センター』の上地正実院長を扱う海外メディアの記事の一部

オーストラリア最古の名門大学『シドニー大学』より

オーストラリアで初めて行われた画期的な犬の手術


Breakthrough dog surgery performed for first time in Australia - 15 November 2017



2017年11月にシドニー大学付属動物病院で行われた上地正実医師によるMVD手術を紹介する記事。 重度の心不全と診断された10歳のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルを救うため上地氏と5人のチームが同行、シドニー大学付属動物病院の心臓専門医Niek Beijerink氏と共に6時間の手術を行い成功。

「私たちはドクター上地とそのチームが私たちの病院でこの貴重な手術をして頂いたことに対しとても興奮し、感謝しています。この手術に参加できたことは比類のない機会です、それは私たち自身の手でオーストラリアの犬たちに手術をする方法を、この国でも数多く存在するMVDで苦しむ彼らの命を長引かせる方法を学ぶプロセスを始めることができることを意味します。」

とNiek Beijerink氏は語っている。

上地氏は今後もシドニー大学と連携し2018年にも再び訪れることを約束した。

手術費用は渡航費など含め合計で50,000豪ドル(約412万円)、そのためシドニー大学は同大学の医師らが上地氏の外科手術を学ぶ機会を増やすためにクラウドファンディングを始めた。


ペンシルベニア州最大の都市フィラデルフィアのローカルニュースサイト『philly.com』より

ペンシルベニア州バックス郡の犬、米国では不可能な5万ドルの心臓手術を受けるためにフランスへ飛ぶ


Bucks dog travels to France for $50K heart surgery not available in the U.S. - JANUARY 16, 2018



2011年、ペンシルベニア州に住むJeanne Navratil氏は自身が飼う3歳のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの様子がおかしい事に気づく。動きが鈍くなり寝る時間が長くなったと獣医に相談した結果MVDの初期症状だと診断され薬による治療を行うも2015年から一気に悪化、2017年にはうっ血性心不全を患う。

米国の動物病院での手術が不可能であることを聞かされたNavratil氏はその世界の権威である上地正実の存在を知るが日本に持ち込むには6か月の検疫が必要だったため上地氏が定期的に手術をするために訪れているフランス・ベルサイユの病院に行くことを決意、50,000ドルもの費用をまかなうためにローンを組んだという。


ニューヨーク・ピッツバーグの日刊紙『Press-Republican』より

米国初の小型犬の心臓切開手術が同じ病気に苦しむ他の犬たちの未来を開く


Dog's open-heart surgery opens doors for others - Dec 30, 2014



ニューヨーク州の名門私立大学『コーネル大学』で行われた小型犬のMVD手術としては米国初となる手術を紹介する記事。日本原産の愛玩犬の1品種である狆(ちん)の手術をするために2014年末に上地氏がチームと共に渡米、飼い主のDylan Raskin氏は手術費用32,000ドルを捻出するために寄付を募りローンを組んだ。手術の様子の画面越しに見学するために約50人の獣医心臓専門医が全米から集まったという。上地氏はその後も数か月おきにコーネル大学で手術をする予定と記事は書いている。

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