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『グリーンブック』60年代の南部を舞台としたジャズピアニストと乱暴者によるハッピーにさせられるロードムービー
‘Green Book’: A jazzman and a bruiser take feel-good road trip in ’60s South - 02/24/2019作品の冒頭から、容姿も性格も全く異なる男二人がピカピカの青緑色のキャデラックに乗り込みそこから8週間の旅を始めようとする場面を見た瞬間からあなたはこの映画がどこへ向かうのかを察するだろう。
その先にはライト・コメディ(時事風刺などを取り入れたコメディ)な場面が待っていて、些細なことでの言い争う場面が待っているだろうと思うはずだ。仲良くなったかと思えば不仲になり、それを乗り越えてさらに仲良くなる展開が待っているだろうと思うはずだ。
激しく衝突する場面もあるはずだ、おそらく1回か2回は。
そしてこの映画の設定や背景を考えると、"我々はかつてどこにいて、そして今どこにいるのか" といった主張が何らかの形で出てくるのだろうなと予感するはずだ。
実際この映画『グリーンブック』は予想通りの展開が待っているし、感傷的な場面も時折陳腐だなぁと思えてしまう。 だがそれでもこの作品は2018年に公開された作品の中で最高のコンフォートフード映画(※)の1つであり、『ドライビング Miss デイジー』の主役二人の役割を入れ替え舞台を1960年代に変えたような素敵で愛すべきロードムービーになっている。
これはヴィクター・H・グリーンによって書かれた自動車で旅行する黒人のためのガイドブックであり、"黒人を客として扱う" ガソリンスタンドやレストランやホテルなどを州ごとにまとめたものだ。
そしてなぜそのガイドブックが出てくるかというともちろん黒人の公民権が認められるより前の時代、ジム・クロウ法(※)の真っただ中にありそれが実際に使われていた1962年を舞台としているからだ。
ニューヨークのブロンクスにあるナイトクラブで用心棒をしているトニー・“リップ”・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)は人種差別が色濃く存在するディープ・サウスを通るツアーへと向かう有名な黒人のピアニスト、ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手として雇われる。
ドンは教養があり、世知に長け、高度な教育を受けた多言語を話す天才的なミュージシャンだ。一方でリップは粗野で無教養、ブロンクスで育ったことで培われた偏った世界観を持ち半分犯罪者のような乱暴者のイタリア系アメリカ人だ。
一時的に失職してしまい纏まった金を必要としていたリップは好条件(週125ドル+経費)に釣られてその仕事を受けることになる。
そんなこんなで片や運転席で絶え間なくタバコを吸しながら絶え間なく大声で話すリップと、美しくコーディネートされた服を纏い膝に毛布を掛けて上品に後部座席に座るドンという対照的な二人の旅が始まるのであった。
ヴィゴ・モーテンセンはリップを演じるにあたり45ポンド(約20キロ)も体重を増やしたという。そしてその肉体もそうだがブロンクス訛りや何でも大げさに喋る口調、その巧みな立ち居振る舞いでこのきかんぼうの愚か者だがその実 度量のあるキャラクターに見事に実在感を与えている。
マハーシャラ・アリが演じるドンはそんな道化師役のリップの引き立て役だが彼もまたその存在を信じられる見事な演技っぷりを見せてくれる、リップに社交界での振る舞い方をレクチャーする場面でも、妻に手紙を書くリップを手伝う場面でも、ピアノの前で彼のまばゆいばかりの才能を披露する場面でもだ。
しかしそれと同時にディープサウスでドンに向けられる人種差別、その根深さに彼は目を開かされる。
ドンが安っぽいモーテルにしか滞在できないのを、南部の老紳士に大歓迎で自宅に招かれ大勢の人間の前で演奏をしたかと思えばトイレを使うなら屋敷の外の屋外トイレを使えと指示されるのを、カントリークラブ (テニス・ゴルフ・水泳などを備えたスポーツと社交のためのクラブ)の支配人にリップやバンドメンバーはいいがドンはダイニングルームに入ることは許されないと告げるのを目にするのだ。
だがこの映画ではそんな重いシーンの合間合間に喜劇的な瞬間が挟まれる。そのほとんどがドンの生真面目さをリップが解いていくといったものになっていて、例えば彼らがケンタッキー州のケンタッキーフライドチキンを訪れた際にリップはドンがこれまでフライドチキンを食べたことがない事に驚く、そしてこれは直してやらねばと決心するといった感じだ。
映画『グリーンブック』の監督はピーター・ファレリーが担当、脚本はファレリーとブライアン・クリー、そしてトニー・“リップ”・バレロンガ本人の息子ニック・バレロンガが担当している。
(なおこの手の実話ものでは "モデルとなった人物の写真" をエンディングロールに載せるのがほとんど義務となっているが、それぞれ数ヶ月間隔で亡くなるまでの約40年間その二人の友情が続いたことをここで知ることができる。ナイスだ)
リップの妻であるドロレス・バレロンガ役を演じたリンダ・カーデリーニも、その出番はリップとの電話のシーンや彼からの手紙を読むシーンなどに限られるものの素晴らしい演技を披露している。だがそれも仕方がない、この映画『グリーンブック』はやはり2人の男性の友情の物語なのだ。
彼らの冒険の大部分は大まかにしか描かれないし、そこに鋭い切り口のメッセージがあるかと言えばほとんどない。しかしこの映画最大の魅力であるヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの2人が起こす化学反応、そして元となった実話が既にその段階でかなりいい話であるおかげで、この映画は私が今年見た作品の中で最高の時間を過ごせた作品の一つとなっている。
ロッテン・トマトでの評価
Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)は、映画評論家による映画レビューを一か所にまとめたウェブサイト。映画ごとに肯定的なレビューが多いか否定的なレビューが多いかを集計して点数にするほか、映画に関する情報・報道全般を扱っており、英語圏の映画レビュー集サイトとして最もよく知られたものである。
ロッテン・トマト(腐ったトマト)という名称は、拙い演技に怒った観客が腐ったトマトや野菜類を舞台へ投げつけるという、映画や小説によくあるクリシェから名付けられた。 wikipedia
トマトメーター: 80%(批評家の好意的意見の割合)
Fresh: 238 (10点中6点以上ならば "fresh")
Rotten: 61
平均評価: 7.3/10
レビュー数: 299
批評家のほぼ一致した意見:
映画『グリーンブック』はbumpy(デコボコした/いろいろと問題のある)になりがちなテーマを扱いつつも、ピーター・ファレリー監督の巧みなタッチとピッタリかみ合った二人の主演俳優のおかげで、驚くほどスムーズな乗り心地を観客にもたらしてくれる。
一般ユーザーのスコア:
93%が好意的に評価 (5つ星評価で3.5個以上の星を付けたユーザーの割合)
一般ユーザーの平均評価:
4.4 / 5
海外の反応
rottentomatoes.comのコメント欄より: ソースDave C 素晴らしい映画だった、不朽の名作と言ってもいいかもしれない。二回目はさらに良かったわ。
Zora L 演者は文句なしに最高、ただ映画自体は当り障りがない印象。
Aris T. Aris T 『ドライビング Miss デイジー』の現代版って感じかな、いい映画だよ、主演二人のパフォーマンスがけん引している作品だ。
Sebastian R 脚本はファンタスティックだし主役の気持ちにここまで寄り添える作品はそうはない。ただ作品賞が相応しいかは疑問だ。誤解してほしくないがこの作品は素晴らしい、ただ『ボヘミアンラプソディー』や『アリー/ スター誕生』ほど心は動かされなかった。
Tohdom Anton C
異なる背景を持つ二人が主役の観ていて気持ちのいい映画。
キング牧師があの有名なスピーチをする直前の人種差別バリバリのころのアメリカ南部を舞台にした作品だが、不快にさせられるイベントはないし見ていて鬱になることもない、自分の人種を恥じるようなこともなかった、今回のオスカーでノミネートされた作品の中にまさにそういうことを狙ったのがあったがそれとは違ってね。
unknown
ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリ、そしてリンダ・カーデリーニの演技がまぁ素晴らしい。ピーター・ファレリーらの脚本も良かったし映画のペーシングが絶妙なんで映画の最中にスマホを見るなんてことは絶対にないと断言できる。
あと人種差別や同性愛差別といった問題をテーマにしていながら2時間もののTEDTalksみたいな映画にしていないのも好印象。
グリーンブックは今年の最高の映画の1つだと思うしそうでなければならない。
Brigitte B. Brigitte B この映画が好き。単純にとても楽しい映画だった。一部のコメントでも指摘されているように、確かに深みはないかもしれない、特にこの手のテーマを扱っているだけにね。でもやっぱり何か好きなんだわ。ああ、それともちろん主演のデュオは最高でしたよ。
Shan M. Shan M 心温まる心地良いもの、喜ばしいものがそこにあった。革命的なものはなかったが最初から最後まで楽しい作品だった。
Nancy L 思わず声を上げて笑ってしまうようなユーモアがあり、知っておかなければならない歴史があり、真の友情があり、心温まる物語があった。PG-13指定だけどすべての年代の人間が楽しめる、子供に見せてもいいと思える作品だ。
Grickthompson Rick T 今回のアカデミー賞作品賞にノミネートされた作品はすべて見たけど一番のお気に入り。映画館からいい気分で出ることができた。
Berny W. Berny W
あらゆるレベルで素晴らしい映画!
特にヴィゴ・モーテンセンがいい味出してた。その南部をツアーする過程でドンがどのように扱われているかをリップは目にするわけだが彼の成長っぷりがなんとも嬉しく微笑ましく楽しい。
旦那も私も思いっきり笑ったしこの映画をとても好きになった。映画館の観客も映画が終わると拍手を送っていたね。私はこの映画を強くお勧めします!
Connor T February
9.7 / 10。
ストーリー展開自体はありきたりで何度も目にしたようなもの、もしそうでなかったら10点満点だった。
ドン役のマハーシャラ・アリが全てを持って行った感がある、もし彼が主役だったら主演男優賞は彼のものだっただろう。
主演二人が信じられないほどのはまり役っぷりを披露しそのやり取りがこの映画の質をグッと上げている。音楽もいいし会話はクレバー、映画の全体的な雰囲気は心温まるもので感動的。間違いなくアカデミー賞作品賞にノミネートされるに値する。もしそれ以上の結果になっても驚きはしないね。
Dennis S 当時の人種差別主義の過酷な現実を、決して説教臭くすることなく見せるという素晴らしい仕事をしている。しかもちゃんと笑える。おすすめ。
Eric G 展開自体は割と予測できる、だがそれでもいい映画。
Selena M 主役の二人はそれぞれ学ぶべきことがあり、それを互いから学び合った。この二人が成長していく様はただただ美しかった。
Giorgio G February 実際にこのドン・シャーリーという人物が存在し、人種差別主義者の心を変えようと本当に黒人を嫌う南部の州でコンサートツアーを行ったというのだから大したものだ。そしてその信じられないような物語をユーモア満載の冒険物語に仕立て上げた監督の力量に乾杯だ。
sam w. sam w
個人的にこの映画の人種差別の描き方が気に入っている。南部の州でかなり激しい人種差別があったことは知られているが、じゃあ当時のニューヨークはどうだったかというと、もちろん差別と呼ばれるものが黒人に公民権を与えないシステム上の差別だけであったわけではない。
この映画ではニューヨークでの差別の日常を描いているわけだが、そこにいる白人のすべてが黒人に害を及ぼすほど人種差別的ではない一方で黒人と話すのを避けたり彼らをどこかで見下していたりと、やはりそれなりの数の白人が何となく黒人を嫌っている感を出している。
キング牧師があの有名な「私には夢がある」から始まる演説をする直前の、公民権運動がピークに達する直前の雰囲気/差別はきっとこんな感じだったんだろうなと興味深く感じたよ。
Lieven M センシティブな問題をテーマにしながらうまく処理している。ユーモアの使い方が絶妙、とても自然で流れを止めたりしないのがいい。笑うべきところは素直に笑え、泣くべきところもまた素直に泣ける。
マハーシャラ・アリって銃夢でベクター役かよ。
返信削除演技の幅が広いんだねぇ。
白人自虐史観でないなら観てみたい
返信削除ヴィゴ久しぶりに見た
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