Twitterの共同創業者エヴァン・ウィリアムズが立ち上げたソーシャルジャーナリズム・プラットフォーム『Medium』より

ヘイトに満ちた攻撃を受けた事件から1年、LGBT文化を讃えるため「インチョン・プライド」が再集結

One Year After Hateful Attacks, Incheon Pride Regroups for Celebration of Love - 2019/08/30





LGBTの人々に自己の性的指向や性自認に誇りを持ってほしいという願いのもとで行われたパレードは、いつのまにか参加者と過激な「キリスト教徒」との間の激しい衝突に変わってしまっていた。ステージは妨害され、参加者らは殴られ、多くの人が心に大きな傷を負った。

それは2018年9月8日に起きた事件であり、韓国の首都ソウルに隣接する都市インチョンで行われた最初のプライド・フェスティバルであった。

プライド・フェスティバル:
LGBT文化を讃えるイベント。ゲイ・パレード、プライド・マーチ、プライド・パーレード等とも呼ばれる

インチョン・プライド=インチョン・ゲイ・パレード




私はその数週間前に行われた『ソウル・プライド』の取材を行っていた。私はそれについての記事を書き、バイラルビデオを作った(バイラル:口コミで話題になる)。

そして私は "韓国社会は韓国のLGBTQコミュニティにとってより良い方向に向かっている" との一文でそれらを締めくくった。

そして、インチョンの事件が起こった。

私はその日、自分が目撃したあれはいったい何だったのかと動揺したまま岐路に付いた。ソウルに向かう地下鉄の車両は心に傷を負わされた人々で溢れていた。涙を流す彼らを見て私は涙を堪えた。
それから1年後の2019年8月31日、つまり明日、インチョン市で2度目のインチョン・プライドが開催されようとしている。

昨年の事件を受け主催者は参加者の安全を確保するために最善を尽くすと述べている。

さらに韓国の複数の大使館がインチョンを含む全国のプライド・フェスティバルに出席することを約束、7か国を代表する外交官も出席する予定になっている。

警察は機動隊を含む3,000人(他の報道では5,000人)を配置し、300の金属製バリケードを設置してイベントのメイン会場であるBupyeong Plazaを囲み、500人と予想されるイベント参加者を推計2,500人以上の同性愛嫌悪の「韓国のキリスト教徒」から分離する。



これらの福音派の抗議グループはすでに近隣の公園で反集会を開催する許可を申請しており、さらに別の同性愛嫌悪グループも会場周辺で同様の集会を開催するために許可を申請済みだ。

すでにプロパガンダ動画が作成され、リーフレットが配布され、旗がインチョン中にかけられている。一部では10,000人規模で統一教会信者を動員するよう求める声が上がっている。

まさに衝突待ったなしの状況だがこの事態はどのようにして生まれたのだろうか? これを理解するには2018年9月8日に起きてしまった悲惨な出来事を振り返る必要がある。
2018年のLGBTQ・プライド・フェスティバルの主催者は開催前から問題に直面することになる。インチョン市は十分な警備員と駐車スペースが確保されていないと主張、イベントの開催許可を土壇場で拒否してきたのだ。

フェスティバルの組織委員会と韓国の緑の党『緑色党』は即座に、これは性的マイノリティを差別する意図的な試みであるとして非難した。

韓国では同性愛は違法ではないが非常に保守的なこの国ではいまだに同性愛は忌避されている。

近年はいわゆるゲイ・パレードが韓国の各地で開催されているが保守派や福音主義の「キリスト教徒」からの厳しい抵抗に直面しているにが実情だ。



イベント主催者は駐車場と警備に関する基準が法で規定されていないことを理由に市に申し立てを行い、法で定められた平和的な集会の自由の範囲内でイベントを進めると約束しイベントは予定通りに開催されることになった。

だがフェスティバルの前夜、これに反対する抗議者たちはこの段階ですでにフェスティバル会場周辺を占領するなど妨害を開始、イベント当日はブースの半数が使用できなくなりさらに警察がイベント参加者の会場入りを制限するなど次々に問題が発生した。

抗議者たちがプラカードやポスターを破るなど衝突が起き始めたことから警察は会場を囲うように人間のバリケードを形成し両者を分断、しかし抗議者の数があまりにも多かったため警察もイベント参加者も身動きできない状況になり、私自身も数時間滞在する予定だったものが食事どころか水にすらアクセスできずトイレにも行けない状況で7時間以上閉じ込められることになった。



警察のバリケードの外ではイベントに反対する抗議者らが「ゲイ・パレード反対」「同性愛は罪」などと書かれたプラカードなどを掲げていたがその中でも目立っていたのが「反差別法案に反対」というものだった。

韓国には現在、性的指向、人種、宗教、国籍、政治的見解などに基づく差別を禁止する法律が存在しない。

そのような差別を当然の権利と考える韓国のキリスト教徒らがこの日、警察の数を圧倒的に上回る数で会場に押し寄せたことから警察は予定されていたパレードのための安全な通路を確保することができなくなり、インチョン初となるはずだったパレードは事実上中止に追い込まれた。

抗議者らはさらに攻撃的になり警察と小競り合いを始めた。

その光景は暴動に近いものだった。
韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド
(上のツイート):
プライド・ストリート・パレードが遅れている。抗議者が多すぎる、警察はパレードのための安全な空間を作ろうと奔走しているが... イベント参加者数百人に対してそれに抗議する人間が数千人もいる状況だ。

(下のツイート):
OK、インチョン・プライド・パレードは暴力的な様相を呈してきた。危険なキリスト教徒の抗議者は引き下がらず、警察は介入を始めた




混乱の中で抗議者のいる場所に追いやられたイベント参加者がレインボーの旗を持っていたために殴られ、蹴られ、地面に倒されるのを私は見た。他にも多くのイベント参加者が言葉と物理的な暴力で虐げられていた。

暴力的な対立は数時間続き、やがて道路上での大規模な座り込みに変わった。最終的に追加で動員された警察によって彼らは強制的に排除された。

フェスティバルの参加者が地下鉄の駅に戻るための通路が確保されたのは午後9時になってようやくだった。



韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド
(上のツイート):
胸が張り裂けるようだ。私の周りのすべての人間は涙を流し、互いを抱き締めあっている。なんとも感情を揺さぶられる一日だった。ある者は「私が何をしたというのか」と叫んでいた。

(下のツイート):
主催者は涙を流し、目に見えて震え、愛と誇りの日となるはずだったこの日に経験した暴力と同性愛嫌悪に動揺していた。


後に主催者はこの日の暴力を非難、加害者に適切な措置を講じるよう求めるも警察は証拠不十分を理由に誰も起訴しない決定を下した。



一連の出来事はこの国のマイノリティの人権が認められるまでにはまだまだ長い道のりが残っていることを示すものだった。

一年経った今も状況は変わっていない、今回も衝突が起こるかもしれない。しかし明日のインチョン・プライドは去年以上に国際社会の目が光る中で行われる。

例え参加者を圧倒的に上回る数で抗議しようとも、どれだけ大きな声で叫ぼうとも、イベント参加者らは屈しないだろう。

韓国のLGBTQコミュニティが今何よりも求めているのは彼らを取り巻く現状の可視化だ、そしてこの国のキリスト教徒は自らそれを浮き彫りにさせるだろう。

ラファエル・ラシッド:
2011年から韓国を拠点に活動するイギリス人フリーランス記者。 ロンドン大学に所属する名門大学『東洋アフリカ研究学院』で韓国/日本について学び、韓国の高麗大学校で大学院修士課程を修了、北海道教育大学に留学経験あり。

アメリカ合衆国のビジネスや技術ニュースの専門ウェブサイト『ビジネスインサイダー』などに寄稿している。 BBCワールドサービス韓国版のキャンペーンマネージャーなども務めてきた。

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海外の反応

twitter.comのコメント欄より: ソース , ソース


イギリスの公共放送BBCの韓国特派員 - Laura Bicker
英国、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリア、ドイツなどの大使館のスタッフが、昨年の抗議者によって妨害された『インチョン・プライド』を支援するために参加。また多数の警察が配備されている。



韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド
(上のツイート):
キリスト教徒の抗議者たちは現在メイン会場に段々と終結し始めている。彼らは同性愛を "韓国に究極の破壊をもたらす病気" と見なしている。彼らはまたLGBTQを差別する権利があると考えている。

(下のツイート):
現在、韓国には差別禁止法が存在しない。その理由は一つ、"クリスチャン系" ロビーはこの法案の通過=この国に死をもたらしAIDSを広めると彼らが考える同性愛を承認すること、になると信じているからだ。



韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド
(上のツイート):
『インチョン・プライド』のメイン会場のBupyeongプラザ/駅周辺には同性愛嫌悪の抗議者が所々に集まってきている。また『インチョン・プライド』に反対するための集会の許可がおりたここBupyeong公園でも。2,000人が参加する予定のこの会場の席もゆっくりと埋まり始めた。気温27°Cの中、多くの人が「NO TO HOMOSEXUALITY」と書かれた紙製の団扇を持っている

(下のツイート):
OK、この祈りの歌は本当に薄気味悪い。

『インチョン・プライド』のすぐそばで行われているこのアンチ・ゲイ集会では同性愛嫌悪者らが文字通り "涙目" で神への歌を歌っている、感情全開で。

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イギリスの公共放送BBCの韓国特派員 - Laura Bicker
行進の準備が完了した『インチョン・プライド』の参加者たち。昨年は十分な安全が確保できなかったために実行されなかった。今年は約500人のパレード参加者とそれに抗議する何千人ものアンチ・ゲイ勢力を切り離すために推定2〜3000人の警察が路上に配備された。



韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド
考えてみてほしい、500人のゲイパレード参加者が自分らしくあることを表現するのに3000人もの警察が必要だという事実。これが韓国の現実だ。



イギリスの公共放送BBCの韓国特派員 - Laura Bicker
釜山でもプライド・フェスティバルが計画されていたが、彼らの愛は犯罪であると信じる多数の抗議者に対処するために必要な警察の協力を十分に得ることができず安全が確保できないと主催者が判断したため、キャンセルする必要があった。しかしここインチョン・プライドは今大いに盛り上がっている。



韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド
(上のツイート):
『インチョン・プライド』が行われている場所からコーヒーを買いに行くために通り抜けなければならないのがコチラ。地面に跪いて祈りをささげる男性に注目してほしい。

(下のツイート):
なんというか、申し訳ないが、なんだコレ?

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韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド
(上のツイート):
同性愛嫌悪へのおぞましいヘイトスピーチと差別を促進するイベントに、子供を引きずり込むことほど胸糞悪いことはない。だがこれらは共に韓国では完全に合法なのだ。

(下のツイート):
そして最悪なのは、これらの "キリスト教徒" らは、同性愛嫌悪について祈っている子供たちの光景が "感動的" であると考えていることだ。


등대로 😱😱😱omg(Oh My God). 子供たちになんて事を...

韓国で活動するイギリス人フリーランス記者 - ラファエル・ラシッド 幼い頃からヘイトし、差別するように教えられている。

등대로 この屈折しまくったキリスト教は恥を知るべき. 😥

Neo イエスは「汝の隣人を愛せよ」とおっしゃられた、「汝のストレートな隣人を愛せよ」ではない 😑😑😑


イギリスの公共放送BBCの韓国特派員 - Laura Bicker
なぜ『インチョン・プライド』は重要なのか? LGBTQコミュニティは韓国の差別と闘っている。この国では同性愛は違法ではないが差別を禁止する法律がない。また先進国の中で唯一、兵士間の合意に基づく同性での行為が犯罪なのが韓国だ。



イギリスの公共放送BBCの韓国特派員 - Laura Bicker
(上のツイート):
数百の人々が『インチョン・プライド』のメイン会場の外で踏み出した一歩はとても意味がある一歩だ。それはこのコミュニティが韓国社会にこう訴えかけることを意味するからだ。

「私たちはここにいる、私たちの存在は認識されるに値し、私たちが私たちらしくある姿を見られることを誇りに思う、例え憎しみの目を向けられたとしても」

そしてそれがここインチョンで許されるのは1年でこの日しかない。

(下のツイート):
ただ誰かを愛したというだけで、仕事や家族、人生を失うかもしれないと毎日感じながら生きる日々がどんなものなのか、私には想像することすらできない。

今日、この『インチョン・プライド』に参加した多くの人々からそんな不安の声を聞いた。これらの一歩が韓国を変えるための一歩に、これから続く数多くの一歩の "最初の一歩" になることを願ってならない。

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