JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2017年1月15日打ち上げた 超小型衛星を載せた世界最小クラスのミニロケットが失敗したことを発表した。

このロケット「SS-520」は超小型衛星を安い費用で打ち上げようと、家電製品などに使われるものと同じ民生品を多用し 既存の固体燃料ロケットを改良した小型ロケット。 打ち上げ費用を大型ロケットの10分の1以下になる約5億円に抑えることで、近年拡大する小型衛星打ち上げ需要に応じたものだ。

SS-520」の全長は9.54メートル・直径が0.52メートル・重さは約2.6トン、 アポロ計画で使用されたサターンVが全長110メートル・直径が10メートルであることを考えれば このロケットがいかに小さいものか分かるだろう。 将来的には重さ140キログラムの荷物を運ぶことを想定されている。

1月11日朝に鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所からロケットの打ち上げ予定していたが天候不良のため延期、 15日に変更された。

「SS-520」は発射直後、第1段点火は問題なくロケットは順調に飛行したかに思えたがその約20秒後、 ロケットの姿勢など機体の状態を地上に伝える電波が途絶えたため、 第2段点火を中止しロケットは高度約190キロまで上昇してから第1段落下予定ポイントに落下した。

失敗した原因まだ不明でJAXAは17日に調査チームを立ち上げることとなった。 なお「SS-520」は日本の主力ロケットであるH2-Aロケットやイプシロンなどとは構造が異なるため、それらの打ち上げ計画自体には影響がないということだ。

今回実験されたような超小型衛星を載せるミニロケットを開発する動きは世界中の国や企業に広がっていて、 アメリカのVector Space Systems社などがその代表例だが未だに実用化はされていない。 しかし100kg以下の小型衛星の需要が引き続き増加すると予想されるため、 今後も実験的な打ち上げが増えていくことだろう。

海外の反応

Japan just tried to launch the world’s smallest orbital rocket by Ars Technica


milkywayer うん、次はうまくいくことを願っているよ。こういう試みは大切だよな。 スペースX社みたいなベンチャーが増えることで、より多くのオプションができることが今後の宇宙開発において大事だ。

Statistical まぁ一応宇宙までは届いたしね、残念ながらそこに留まれなかったわけだけど。

JanneM ロケット自体はほぼ計画どおりのコースで飛んでいて問題なかったみたいだね。どうやらセンサーか何かに問題があったみたいだ。

flaanders 宇宙開発には膨大な金がかかるからな。 惑星探査機を打ち上げようと思ったらロケットや施設や人のために 数億ドルのコストを覚悟しなきゃならん。 でももし3キログラムの貨物を5百万ドルで打ち上げられるとしたら もっと多くの機関や企業が利用するようになるだろうな。

RobTheRenderer コストを抑えようと思ったらロケットを飛んでいる飛行機から発射させた方がいいんじゃないか? そうすりゃ燃料だって少なく済むし、積載量も増えるんじゃないかと思うんだけど。

Lagrange 航空機に積んだ気象観測ロケットを衛星軌道上に発射する技術は既に存在しているから出来ない理由はないだろうね。 そして日本にとってのメリットはもっと大型のイプシロンと同様に、 政治的悪影響を抜きに弾道ミサイルのテストと技術基盤確立に役立つことだ。

特にイプシロンは典型的な軌道発射システムよりもLGM-118A ピースキーパー(アメリカ空軍がかつて運用していた大陸間弾道ミサイル) に近いデザインをしているし、 3段構成の固体燃料ロケットはアトラスVやファルコン9のような一般的な民間ランチャーよりもはるかに近代的なICBMに似ている。 さらにわずか8人の地上管制員と2台のノートパソコンだけで運用可能であるいう事実はより軍事的な有用性を高めている。

日本は弾道ミサイルプログラムを持っていないけどこの種の技術は表裏一体で、その開発と輸出は非常に厳しく管理されている。 もし航空機にロケットを載せることになったらスカイボルト(1950年代後半に米国で開発中止された空中発射弾道ミサイル)の復活になるだろうね。

Dan Homerick その手のアイデアは時折言われるけどあまり効果的ではないよ。 宇宙空間ぎりぎりまで飛行するとして亜音速だったとしても300 m/sくらいの速度かな、 でもそこから軌道速度の30,000m/sまで加速しなきゃいけないしその工程は非常に複雑なるからね。

Lagrange 航空機から打ち上げる主な利点は、どこからでも打ち上げられるという柔軟性と、 遅れを引き起こす原因となる悪天候の上から発射できるのでスケジュール通りに計画が進むことだと思ってる。 それに高高度なら大気抵抗も少なくなるから効果があるだろう。 質量の軽い小型ロケットのほうが重い大型ロケットより空気抵抗の影響を受けやすいから顕著な違いをもたらすはずだ。

Statistical Exactly. ファルコン9のような大型のロケットでは大気損失は2%ほどで小さいが、小型ロケットでは10%以上とかなり大きくなる。 高度によって2%ほど追加で節約出来るとして、理論的にはおそらくデルタVを12%少なくすることができる。(デルタV:航空力学において、速度の単位を持つスカラー) 少々乱暴だが積載量を40%ほど増加させる余裕ができるはずだ。

航空機で上空まで運ぶのにも費用はかかるが 40%はそれを負担するのに十分な理由になるだろう。

SymmetricChaos ドローン・無人機技術の改良が進めば操縦士を危険にさらすことなく、大気がほぼなくなる高高度まで運ぶことが出来るようになるかもね。 でもここまでやったら費用対効果が悪くなっちゃうか?

Lagrange そこまで高い高度まで飛べる航空機は高高度偵察機のSR-71やU-2などがあるが 積載量は普通の商業航空機や輸送機に比べるとかなり少なくなってしまう。 だがそんな高度に行かずとも普通の近代的なジェットで到達することができる地点で既に大気の約85%を超えている。 それ以上の高さを求めるのは割に合わないだろう。

Kasoroth 高高度気球で吊り上げてみるとかどうだろう。 航空機と違って前方へ進む力は働かないけど高い高度と薄い大気によるメリットは残るし。

Lagrange 気球を使うアイデアは誰しもがたどり着くもので、 宇宙飛行に興味を持っている人ならきっとすでに実行された古いアイデアであることを知っているだろう。

rockoon (rocketとballoonの2つの単語から作られたもの)というコンセプトは ジェームズ・ヴァン・アレンというアメリカ合衆国の物理学者が率いる研究者達によって 気象観測ロケットを高度21,000mから発射するために1949年に考え出されたものだ。 1952年には初めて成功している。 ただそれ以降採用されなくなり、そうなったのにはいくつか理由がある。

大型のロケットを運ぶには気球は巨大なものが必要になり、さらにコストも大きくなる。 操作や取り扱いが普通にロケットを飛ばすのと比較して困難である。

発射高度に達するまでには時間がかかり、その間に成層圏の強烈な寒さでロケットとその積載物が凍結する傾向がある。 これはロケットの点火システムや誘導装置、他の計器の誤動作を引き起こす原因となり、重要な部品にヒーターや断熱材を追加する必要がある。 それは積載物である観測装置も同様で場合によっては損傷を与えることもある。

さらにこのシステムは天候に非常に脆弱だ。 すこしでも風があれば風船を操縦することが不可能になり、 地上で突風が吹けば風船を膨らませること自体が困難に、時には非常に危険な状態になってしまう。

そして決定的なのはタイミングだ。 近代の宇宙開発において、衛星を軌道上に載せるためには特定の場所から正確な時刻に発射させないと 目標となる衛星が留まるポイントに運ぶ事が出来なくなる。惑星探索など地球外へ探査衛星を飛ばす場合も同様だ。 気球では正確な発射地点に運ぶこともできないし、どのくらい時間がかかるかも不確定で不確実性が高まってしまう。

YOUTUBE: FARSIDE rocket-balloon launch from Eniwetok Atoll

Sothis 航空機から飛ばそうと言っている君達、何を馬鹿なことをと思うかもしれないが、空中空母とかどうだ?

UserIDAlreadyInUse このロケットはいつか鉄人28号を宇宙に打ち上げる日のための第一歩だな。

normally butters いつのまにか専用ロケットができるほど超小型衛星市場は大きくなっていたんだねぇ。