nytimes.comより

平昌五輪に挑む日本女子アイスホッケー、望むのはスマイルではなく勝利

Japan’s Women’s Hockey Team Wants to Be Known for Wins, Not Smiles - FEB. 6, 2018

足立 友里恵さんはその写真を見て笑った、まるで高校の卒業文集に載った自分の恥ずかしい姿を見たかのように。



氷の上でうつ伏せに寝転がり頬に手を当てスケート靴を上に蹴り上げるようなポーズで写る彼女のその写真はロシアのソチで開催された2014年冬季オリンピックの練習中に撮影された。



その日、日本の女子ナショナルホッケーチームの足立さんとそのチームメイトたちはオリンピックの試合が迫る中で練習の代わりに自由に過ごすことを許され、緊張をほぐせる僅かな時間を楽しみ氷の上で浮かれ騒いだ。

当時メディアや関係者の多くが "ただ日本が女子アイスホッケーで16年ぶりにオリンピックの出場資格を持つことができたというだけで" 喜び浮かれた。

スマイル・ジャパン」と呼ばれるこのチームはその突出した明るさから急速に人気を集めた。しかしせっかく注目を集めながら、日本の女子アイスホッケーチームはすべての試合で敗北し、ソチでの結果は失望で終わった。



「私たちはスマイル・ジャパンと呼ばれていたにもかかわらず勝利の笑顔を皆さんに見せることができませんでした。私たちは本当に辛く苦しい思いでいっぱいでした。その苦々しい経験がこの4年間私たちを突き動かしました、次のオリンピック大会で良い結果を出してこの機会を心から楽しみたいと、本当の笑顔を見せたいと。」

そして韓国の平昌で開催される2018年冬季オリンピックに参戦することが決まった日本の女子チームは、今度は "ただオリンピックに出られる" ことに注目されるのではなく彼女たちが実際にメダル争いができることを証明し注目されようと意気込んでいる。

また同時に、彼女たちは『愛すべきアンダードッグ(勝ち目がなさそうなチーム)』という印象も払しょくしたいという。日本は現在、世界で9位にランクされており今週土曜日にオリンピック女子ホッケー大会でスウェーデンと対決する。

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「スマイル・ジャパン」の意味も彼女たち同様に進化してきた、2013年2月にスロバキアのタトラ山脈でカナダ人コーチが最初に発案したその時から。

元アイスホッケー選手でトリノとバンクーバーで2度金メダルに輝いたカーラ・マクラウドは、スロバキアの都市ポプラトで開かれた2014年冬季オリンピック予選トーナメントで日本のコーチの一人として日本女子チームと共にいた。

ノルウェーとの対戦が目前と迫る中、マクラウド・コーチは朝食を終えた日本チームが緊張しているのを、部屋全体が緊張感で包まれていることに気づいた。彼女は外で雪が降り、厚く積もっているを見てチームにアウターウェアを着るよう命じた。そして外に出た彼女達に緊張をほぐさせようと雪合戦をさせた、初戦の当日に。



「ノルウェーの選手たちは窓際に立って何事かとこちらを見ていましたね。」とカーラ・マクラウドは語る。「私は日本女子選手たちを外に連れ出してこう言いました、"これが私たちの戦い方、笑顔でやった方がいいプレーができるの" と。 それからは全ての試合の直前に、私はガッツポーズをしながら "スマイル" と声を掛けました、選手たちは皆笑顔を返してくれました。」

その瞬間から「スマイル・ジャパン」は日本人女性のホッケーのスローガン/掛け声とった。チームのロゴも、日本の国旗に見られる太陽に似た赤い円にホッケーの棒が笑顔を浮かべるデザインに変わった。



日本代表チームのほとんどがニックネームを持っている、野球の日本代表チームは『サムライジャパン』、女子サッカーの日本代表チームは美しさを象徴する花にちなんで命名された『ナデシコ・ジャパン』などだ。

しかし女子ホッケーの日本代表チームの選手の幾人かは『スマイルジャパン』が間違ったメッセージを送ってしまうのではと、観客がそこに込められた『笑顔でやった方がいいプレーができる』という意味を理解せずにただ "オリンピックでの彼女たちのイメージ" と関連付けることを心配した。



Japan's celebratory bow after scoring their first Olympic goal (rehosted by imgurHostBot)

日本が2014年オリンピックのトーナメントで最初のゴールを決めた後、チームは円形に集まり互いにお辞儀をした。


http://www.thesudburystar.com/2014/02/11/japans-olympic-womens-hockey-team-is-absolutely-adorable その姿が可愛らしいと話題になり、カナダの新聞は『日本のオリンピック女子ホッケーチームはなんと可愛いのだろう』という見出しの記事を、彼女たちがどれくらいかわいいと思ったかネット投票まで呼びかける記事を出した。


https://deadspin.com/japans-womens-hockey-team-is-the-lovable-underdog-of-1519969657 選手たちは『愛すべきアンダードッグ(勝ち目がなさそうなチーム)』や『Kawaii(日本語でカワイイという意味)』と呼ばれ、世界クラスのアスリートではなくハローキティのような扱いを受けた。

「私たちはただオリンピックに出れただけで喜んでいたわけではありません。私たちはオリンピックに出るために猛烈に努力してきました、私たちがオリンピックに出ることを支えてくれた全ての人とその瞬間を共有するつもりです。」と2014年のオリンピック後にチームを離れたマクラウド氏は語った。

「 "スマイルジャパン” という呼称は私たちにとってとても大きな意味を持っています。小柄で可愛らしい女性たちが運良くオリンピックに出られたから私たちは笑顔だったというわけではないのです。」

マクラウド氏は過去4回の冬季オリンピック大会で優勝したカナダでさえ、練習中に氷上の彼女たちの写真を撮ると述べた。



2014年ソチオリンピックでディフェンダーとして活躍し、その後カナダ女子ホッケーリーグでプレーした竹内愛奈氏は日本人選手に対する見方を変えることをモチベーションに努力してきたと語る。

「私はカナダのカルガリーで、女子アイスホッケー世界最高峰のリーグ『アイスホッケー北米クラブチーム(CWHL)』で3年間プレーしてきました。だから私は日本の選手であってもできるんだということを見せなくてはならないと思っています。ソチの後、私たち一人ひとりがたくさんのことを学んできました。今回の平昌オリンピックではただ笑顔なだけのチームではないことを証明したいです。

日本女子チームは『愛すべきアンダードッグ(勝ち目がなさそうなチーム)』という不名誉な称号を覆し、オリンピックで初勝利しメダリストという新たな称号を目指すために意気込んだが、同時にチーム内にプレッシャーが段々と強まっていったように感じたという。

韓国と中国はこの競技の強化に大きく投資しアジアでの競争力を高めているが、日本ではソチオリンピックの後スマイル・ジャパンへの関心は急落した。日本のスポーツ紙がチームを扱っても、それらの報道はしばしば選手、特にゴールキーパーの藤本那菜の写真だけで構成されていた。



藤本那菜は2015年の国際アイスホッケー連盟世界選手権で日本人選手として史上初のベストゴールテンダー(ゴールキーパー)賞を受賞しその後北米プロリーグの「ニューヨークリベターズ」で活躍しオールスターゲームにも選出した。

「日本ではアイスホッケーは本当にマイナーなスポーツです。」と藤本は語った。 「私たちがしなければならないことは、まず何よりもしなければならないことは良い結果を出さなければならないということです。そうすればメディアの扱いも大きくなり私たちを、この競技をメジャーにしてくれるはずです。冬季オリンピック大会はその目標のためには最適な場所です、メダルを獲得できればこれ以上ないアピールになります。」

今回の日本代表にとって有利に働くと思われる要素が1つある、それは経験だ。 2014年のチームではオリンピック経験者が1人だけだったが今年のチームのほぼ3分の2の選手がソチからの引継ぎとなる。



今回が初めてのオリンピックとなる選手の一人、小野粧子(36)はこれまでに3度のオリンピック予選大会で代表チームと対戦し、毎回あと一歩で予選を突破できなかった。彼女は日本がオリンピックで競える段階にないと実感し2010年に引退を決めてしまった。

だが彼女の元チームメイトが2014年のオリンピックで出場資格を与えられたことで彼女のホッケーに対する情熱が再燃した。彼女は2015年に日本代表チームに再加入する。

「私はチームメートのスマイル(笑顔)を見たんです」と小野は言った。「私はまたあの場で笑いあいたいと思いました、あの瞬間に私は再びチームに戻ることを決意したんです。」

海外の反応

facebook.comのコメント欄より: ソース


April Petry 女性だからという理由でアスリートを"幼児化"するのは間違ってる。彼女達は男子同様に過酷なトレーニングをして絶え間ぬ努力を経て世界の舞台に立っている。彼女達の能力や成功を過小評価することに繋がりかねない。

Jenny Habel 世界中の人々が、対戦相手が日本代表を過小評価しているかもしれないけどさ、相手は日本人だぜ? 規律と準備に関しては日本人アスリートの右に出る連中なんていないだろ。

David Chan 応援するよ。でも頑張っても銅メダルだな、さすがにアメリカとカナダには勝てんだろ。

Stacey Morelyn アイスホッケー選手が着るあの完全装備の競技アーマーを見て、カワイイと言う方がおかしい。

Jennifer Weston まぁ真面目にやっている選手達は"カワイイ"なんて呼ばれたくないだろうね。

David Igra 1988年のジャマイカのボブスレーチームとある意味で似ている、彼女らは自分たち自身でそこに立っているのが相応しいのだと証明しなければならないだろう。

Tess Oflaherty 名声は与えられるものではなく自分達の力で獲得するもの、ただそれだけのことだろ。

Tracey Schelmetic "カワイイ"だの"愛すべきアンダードッグ"だのといった望んでもいない称号を自分達の力で覆さなきゃならないってのも可哀想な話だとは思う。

Laurent Denis アイスホッケーは過酷なスポーツだ。歯が折れるのも当たり前だし怪我も多い、それなのにカワイイはない。

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