アメリカ版Yahooの『Yahoo Sports』より

MLBは大谷翔平を "決して見逃せないムーブメント" にしなければならない

MLB has to make Shohei Ohtani can't-miss action - May 31, 2018 - by Yahoo Sportsのスポーツ記者 - Dan Wetzel

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5月30日の水曜日の夜(日本時間31日)、デトロイトではタイガースとエンゼルスの試合が行われていた。天気予報の通りに雨が降ったことで試合開始は遅れ、一時激しい雨になったため比較的短い中断が2回ほどあった。

デトロイト・タイガースは今シーズン、プレーオフ進出ができそうな有力な候補とはなっていなかった。この日彼らはロサンゼルス・エンゼルスを6-1で破ったが成績は25勝30敗と低迷しており、それもあってチケットの販売も低調になっていた。

しかしこの日、球場にはベーブ・ルースが降り立った。少々言い過ぎかもしれないが、少なくとも大谷翔平は彼にならんとしている選手であり、21世紀のルースと呼んでも差支えがないほどに投手としても打者としても活躍している。ここまで高いレベルで二刀流として活躍した選手はメジャーリーグでは1914年にデビューしたルース以来だ。

ルーキーである大谷は今シーズン打者としては打率.291/ホームラン6本を記録し、投手としては4勝1敗、この日5回3安打1失点5奪三振で降板し防御率3.18という数字を残している。なお彼がマウンドから降りるとエンゼルスはすぐさま崩壊した。

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この日タイガースの本拠地、収容能力41,070人のコメリカ・パークにはそんな彼を直接その目で見ようとする人々が集まり19,494枚のチケットが売れた。チケット転売を行うStubHubではチケットが多少高騰したにもかかわらず、実際に球場を訪れたのは12,000ほど、そして不運なガチョウ1羽だけだった。

大谷に人気がないというわけではない、実際タイガースのチケット販売数はすでに今シーズンかなり落ち込んでおり、しかも天候の影響があったことを考えれば悪くない数字と言えるのかもしれない。だが彼だけのためにもっと多くの観客が訪れることは非現実的なものではないはずだ。

デトロイト最大の日刊紙『デトロイト・フリー・プレス』
「今晩のタイガースの試合は大谷翔平のおかげで人気に」


野球ファンや関係者は観客動員数が芳しくない日には決まって何らかの言い訳をしているが、事実その数字は減少し続けている。それはメジャーリーグにかかった呪いでありMLB機構が抱える課題だ。その問題を解決するためにも彼らはスポーツ界で最大の関心事となる "誰か" を必要としていた。その様な存在になれる才能を持つ者は、それこそ100年に1人の逸材だろう。だがそこにベーブ・ルースにならんとしている23歳の男が日本からやってきた。

もちろん大谷翔平はそこまでの存在には "まだ" なれてはいない。そしてもちろん彼がベーブ・ルースのキャリアに並ぶことは決してないだろう、しかしだからこそ今それに挑戦しようとしている彼は人々の心を打つ、人々に印象を与える理由となる。

つまりはMLBは大谷を、訪れればどの都市でも人々が騒ぎ立ち、 "決して見逃せないムーブメント" だと認識される存在にする方法を見つけ出す必要があるということだ。マウンド上に立つ大谷は大衆を興奮させ、人々をスタジアムに引き寄せ、これからどんな試合を見せてくれるのかという想像力を沸かせる存在にならなければならない。
そんな真のスター選手を作り上げることに近年メジャーリーグは苦戦したきた。もちろんマイク・トラウトというスター選手はいる。だが彼はそれほど大きな存在ではなかった。デトロイト430万人の市民は彼に対して肩をすくめた。

同じくYahoo Sportsに掲載されている 4月16日の記事 から引用すると、その記事が掲載された時点で今シーズンMLBでは221の試合が行われその平均観客動員数は27,532人となっているが、その数字は昨年の通年の数字よりも1試合あたり約2,700人減少しているという。

昨シーズンの同時期と比べボストン・レッドソックスの平均観客動員数は約2,500人減少しており、さらにシカゴ・カブスとセントルイス・カーディナルズとクリーブランド・インディアンズは5,000人、テキサスレンジャーズは7000人、ピッツバーグ・パイレーツは7,500人減少した。

そしてトロント・ブルージェイズ、デトロイト・タイガース、カンザスシティ・ロイヤルズに至ってはそれぞれ8,000人、マイアミ・マーリンズは10,000人、最も深刻なのはボルティモ・アオリオールズでホームでの6試合で1試合あたり約16,000人も減少している。

明らかに天候が関係しているものもあるがその数字は驚異的だ。2017年の総観客動員数は2002年以来初めて7300万人を割り込んだが、2018年はシーズンを通して650万人以上減少すると見られている。

確かに一部の都市では観客動員数が増えている。だが全体を通して見てみれば、チームの勝敗記録に基づいてその数字は急増あるいは急減、局所化しているのが今のメジャーリーグだ。
その一方でNBAのリーグ優勝決定戦『NBAファイナル』が今週の木曜日にも始まるが、かのリーグはスーパースターを思いのままに量産しているかのようだ。ゴールデンステイト・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズとの間で争われるこのシリーズにはLeBronやSteph、Klay、Draymondなどフルネームでなくとも、イニシャルだけでもすぐさま認識できるスター選手が勢ぞろいしている。

もちろんそれは野球ではない別のスポーツであるからして比較対象にするのは適切ではないかもしれない。しかもそれぞれ長い間NBAで活躍してきたベテランであり、こちらが期待する大谷はルーキーであるだけでなく英語も話せない。

だがそれでもだ。

野球はかつてアメリカの娯楽の代名詞であったし、大谷のピッチングを見ていればなぜそうだったかを理解できる。

彼は水曜日の試合でかつての職人芸を現代世界に再現し人々を魅了した。彼のフォーシーム・ファストボール、速球は今シーズンの先発投手では最高記録となる時速101.1マイルを記録した。さらに彼は時速70.6マイルの良く曲がるカーブで緩急を付け、打者の膝を折るスライダーとスプリットで空振りを連発する。スプリットは特にエグい。次に何が来るのか誰も予測がつかない。



ショーヘイはこの日もショーを上演した。そのパフォーマンスは特別なものだったが、何より彼の基準からすればそれは特別ではないという事実が恐ろしい。タイガース打線も食い下がろうとしたが明らかに大谷の方が優れていた。彼は83球を投げ55のストライクを決め、対峙した21の打者から5つの三振を奪った。

彼が打者としても優れているという事実がそこにさらなる魅力を加える。彼は僅か37試合の出場、103打席で20打点と449フィートの特大ホームランを含む6本塁打を記録、長打率.553はエンゼルスではマイク・トラウトに次ぐ優秀さだ。

もちろん彼のマーケティング戦略を考えた場合そこには制限がある、英語力の欠如はその一つ、日本のメディア向けにインタビューや記者会見で専用の時間がとられていることこともその一つだ。

だがそれは魅力の一部と考えることができるかもしれない。彼はメジャーリーグの野球選手になること、チームの一員になること以上のものを目指していない。より高いレベルで野球をすることが全てなのだ。彼は日本にいた時も、日本ハムファイターズにいた時も250万ドルの年俸を受け取っていたにもかかわらずチームの寮に住んでいた。その謙虚さ、野球への献身ぶりは彼のセールスポイントではなかろうか?
さらに彼は歴史的な不条理、現代の常識に反した記録を再現している。今シーズンの初めには大谷は先発投手として勝利しその翌日指定打者としてホームランを打ち1921年以来MLBで起きなかった偉業を達成した、そう、ルース以来の記録だ。さらに1919年のジム・ショー以来の最初の出場10試合で2勝を挙げ3本塁打を放つ記録も残している。



残念ながら大谷は今のところ同じ日に打者と投手の両方で出場するということはしていない。もしそれができるようになればさらなる興奮を人々にもたらすだろうし、この夜の試合でそうしていたら球場はより活気づいていただろう。

だがエンゼルスがそれをする場合、DHの途中からの使用・再使用は認められないという野球の規則があるため、大谷が途中からリリーフ投手になった場合チームはDHを失うという決定的な不利な立場に自らを置くことになり、その状態で残りのゲームを進めなければならなくなる。

そう、確かに野球は何かを変更するのことを嫌う。だがそれは変える価値のあるルールかもしれない。DHという制度自体が興奮を作り出すように設計された不自然な創造物であるのだから、新たな興奮を作り出すためにそれを変えることに何の問題があるというのだろうか?



かつてベーブ・ルースはここデトロイトの球場で定期的にプレーをしていた。そしてほぼ100年前、 20試合で投げ13勝7敗を挙げ、11本塁打を放ち現在メジャー唯一となる「同一年度での10勝かつ10本塁打」を記録した年の6月2日(1918年)、ベーブ・ルースはかつてこの地に存在したネビン・フィールドで先発出場、ホームランを放ったものの投手として4点を奪われ4-3で敗北した。

観客数は記録に残っていないがそれほど多くはなかっただろう、ネビン・フィールドの収容能力は当時わずか23,000人だったのだから。

だがその球場は今日、新しいルースを見るために出てきた群衆を扱うには十分すぎるサイズだった。それはMLBにとって満足できるものではなかったに違いない。

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