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OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)のレビュー

Octopath Traveler Review - 2018/07/12

オクトパストラベラーのエンディング・クレジットが流れ終わった後、私は15分ほどの休憩を取り再びコントローラをつかんだ、この世界をもっと楽しむためにだ。

それは私が最初に選んだテリオンの物語を終えた時点での話であり、すでに53時間もプレーしていたにもかかわらず私はそうしていた。プレーすればするほどに、私はこの作品をより愛した。




もちろん最初からこの作品には魅力を感じていた、だがそれはこの作品が私が育った時代、16ビットRPGの時代に対するそこそこに良い出来のオマージュ作品になるとの予感があったからでありそれ以上の期待はしていなかった。

だがその予想に反しオクトパストラベラーは目を見張るような美しいチルトシフト風のアートスタイルと、敵と遭遇するたびに戦略を立てるのが楽しく感じられる深みのあるバトルシステムで私を虜にした。(チルトシフト:人や街などの実際の風景をミニチュアジオラマ風に見せる撮影方法)

美しい映像表現



一見したところオクトパストラベラーはスーパーファミコン時代のファイナルファンタジーの質感を現代に蘇らせただけのスプライト(低いCPU負荷で滑らかに動かすグラフィック技術)ベースのゲームのように思える。だが実際はキャラクターたちは2Dで描かれるものの彼らは16ビットのテクスチャで描かれた3D世界を移動して探検する。そしてそこに非常にリアルな水や、雪や、砂のエフェクトが追加され世界を美しく彩るのだ。それはノスタルジーとモダンの融合であり見ているだけで多幸感に包まれる。

だがこの作品はそれだけにとどまらない、微細な、ちょっとした動きが世界のすべてを生き生きと感じされる。ドットで描かれた木々が風でサラサラと音を立てる様が、移ろいゆく空の下で16ビットの草が揺れる様が、通り過ぎる雲が地面に落とす影が景色の一部を覆う様が一々心を打つ。

特に砂漠や砂浜、雪で覆われた山岳地帯は壮麗だ。照明効果はこの世界により幻想的な雰囲気を与え、すでにゴージャスな世界に重層的な美しさをもたらしている。

ストーリー



オクトパストラベラーで語られる8つの物語はそれぞれが独創的なプロットのないいわゆる王道ものであり、だがいくつかのドラマチックなサプライズもありよく練られたシナリオになっている。また本作のボイスは英語と日本語両方が選べるがその声優らの演技も申し分ない。

もしこのオクトパストラベラーに欠けているものがあるとすればそれは物語間のリンクだ、この8つの物語が最終的に一つの物語に収束するといった熱い展開がそこにはなかった。8人の旅人が力を合わせて立ち向かわなければならない絶対的な悪も、世界に終わりをもたらすような災害も、ファイナルファンタジーに出てきたアルテマウェポンのような存在もないのだ。

それぞれの物語は魅力あふれるものになっているが自己完結型のストーリーであり8人のキャラクターは表面的にしか交差しない、それが少し残念だ。



戦闘システム



戦闘システムはオクトパストラベラーで私が最も好きな部分の1つだ、なぜならそれは16ビット時代から我々が慣れ親しみ、愛したあの伝統的なターンベースの戦闘、ATBをまさに改革したからだ。

このゲームで敵の弱点を発見しそれを突くことは、戦闘をうまくこなすために各キャラクターの強みや能力、アイテムの活用方法を学ぶことは信じられないほど楽しい。スクエアエニックスは見事に属性間の有利不利、いわゆるRPGの "三すくみ" を進化させ試行錯誤とタイミング、スキルを必要とするシステムに拡張した。
バトルには素晴らしい深みがあり、戦略を立てることは喜びとなる。最もステータスの低いキャラクターの攻撃でさえ、それがゲームの後半であっても意味を成す。JRPGにおいて魔導士の杖を積極的に使ったことなどMPが尽きた時以外でいったいいつあったっただろう?

オクトパストラベラーではそんな役立たずだった "杖" に使う理由を与えている。この作品のバトルでは敵の弱点属性で攻撃することで優位に立つことができる仕組みになっている。よってその杖による攻撃自体が多少トータルダメージを底上げする効果しかもたらさないとしてもそれ以外に相手を一時的に行動不能にし防御力を下げる効果をもたらす、そこには完全に価値があるのだ。

その結果敵とエンカウントするたびに私は一時停止することを強いられた、最良のアプローチを考えるためにだ。 新しいアプローチを発見すること、呪文や武器の効率的な使い方を学ぶことは楽しく、さまざまな能力とクラスに特化したスキルの数々は試行錯誤の幅を与え、それぞれの戦いで新しい攻撃方法を見つけ出すたびに満足感と達成感が私を襲った。

そしてようやく「これが正解か」と思えるようなものが見つかった辺りでオクトパストラベラーはさらなる "幅" をプレイヤーに提供する、ジョブシステムだ。



ジョブシステム



それぞれのバトルジョブをつかさどる守護神がまつられた祠、その最初の1つ目を発見した時私は思わず喜びの声を上げそうになった(OK、正直に言えば上げていた)。

それまでダガーで戦っていたキャラクターが突然剣を持ち一度にすべての敵を同時に攻撃できるように、物理的な攻撃しかできなかったキャラクターが突然呪文を唱えそれまで使えなかった弱点属性で哀れな敵の防御を打ち砕くことができるようになるのだ。

それぞれのキャラクターにはベースとなるジョブが設定されており職業ごとに得意なことが決まっている、だがどんなキャラクターもそれとは別に一つジョブを装備できるようになる。属性攻撃が1つしかなかった "盗賊" のテリオンはこれにより "学者" のジョブを身に着けることでさらに2つの属性を扱えるようになるし、 "薬師" を身に着けることで回復や蘇生のアビリティを扱えるようになる。それは先ほど説明した戦術の幅を大きく増加させる。

しかもすでに53時間もプレーしたにもかかわらずまだ開放できていないジョブが残っている。それらはとんでもなく強力なボスが守る祠に眠っており、私はなんどか挑戦したがことごとく敗走した。だがそれでもまた挑戦するだろう、まだまだ残されている楽しみを味わう過程で。



結論

オクトパストラベラーは我々がJRPGに対し抱いた究極の夢の実現だ。そこにはスーパーファミコン時代のバトルシステムと美学への愛と敬意が詰まっており、古き良き時代のRPGを多くのエキサイティングで斬新な工夫によって現代向けへと昇華させたといえるだろう。

それは古いものの焼き直しなどでは決してなく、真に新鮮なアイデアによって驚くほど魅力的な伝統と最先端の共存を成し得た稀有なオマージュ作品だ。

8人のキャラクターのストーリーの間にもう少しつながりを持たせることができていればとも思うが、53時間を経てもなおこの作品はメインストーリー以外の場所を探索しようと、エクストラなボスに挑戦しようと、残された上級ジョブを習得しようと、やり残したことをやり尽くそうという意欲を持たせてくれている。



評価:9.3 / 10



AMAZING

オクトパストラベラーの美しいスタイルと伝統的なターンベースバトルの革新は、このゲームを単に過去の偉大な作品に対する懐古主義的な作品にするのではなくJRPGというジャンルを未来へと前進させるゲームになっている。

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海外の反応

reddit.comのコメント欄より: ソース


Jazzy Jefferson タイムマシンで明日に行きたい、ただこのゲームを発売日にプレーするためだけに。

Doug Kelly レビューをした人のこの作品に対する熱い気持ちが伝わってくるのがなんかいいな。

Austin Dial その声からどれほど愛しているかがわかる。

Vlad Dascaliuc ね、なんか子供が他の子供に「これ面白いから絶対やってみてよ」って言ってるような感じだ。

Luke Burdon IGNのレビューに人間味が感じられるだと...?!

Lasse Flick 淡々としたレビューばかり公開してきたIGNについに人間性を持ったレビュアーが現れたな。

redknight801 客観性もいいが、聴く側からしたらそのレビューしたゲームに夢中になった人のレビューというのは心地いいものだ。

GameDev Loadout Podcast with Tony Chan なんか買う気にさせられる。

juan o このグラフィックスでファイナルファンタジー・タクティクスの新作を...

Justin Carter それや! どうしようもないスピンオフじゃなくオリジナルに近い世界観とキャラクターで作ってほしいわ。

PastoKage 野村哲也くんはノートをとるように、ここから君が学べることはたくさんあるはずだ。

Afifi Hidayat 9.3ね、はい買うの決定。初日に買うの決定。

bigtaz504 オクトパストラベラーのためだけにスイッチ買うわ。あ、あとスマブラのためにも 😏

SHADOSTRYKR ルックスはクールだけど我を失って狂喜乱舞する人たちの気持ちがわからん。

ninjaruss そりゃノスタルジーさ。このゲームは特にスーファミで育った人たちにビシビシ来る作品だからね。

kriswhite91 ノスタルジーだけじゃない、今日のゲーム業界において稀有な存在だからだ。シューティングやバトルロイヤルといったゲームがあまりにも多すぎる。

Pigpug Pigpug この手のタイプのゲームは近年ほとんど見られない。もちろんノスタルジーの面も大きい、昔懐かしのフォーマットを現代風にしたというだけで私の中で眠っていたJRPGファンな自分が目覚めるのだ。

Desi Gamer ゲーム・オブ・ザ・イヤーの候補に入っても全然おかしくない。

StaticShock42 少なくとも RPG・オブ・ザ・イヤーには入るな。

Desi Gamer 1位に選ばれなかったとしても話題にはなってほしいね。

TylerSovereign まぁ言ってしまえばサガ・フロンティア2018である。だがそれは決して悪いことではない。

Sir Draco 映像は確かに素晴らしい、思わず目を引かれる。

wowperson26 待ちきれねぇ...
明日のために有給取っちゃったぜ。

Shell-of-Light 他のゲームレビューサイトの評価を見てもそのほぼ全てがこの作品を肯定的に見ている、でもキャラクター同士が意味のある繋がりを持たないことには非常にがっかりだ。私はてっきり8人のキャラクターがどこかで集結、結束してなにかしらの巨大な危機を乗り越える的なものがあるとばかり思っていたし。

Jason Mathis "世界に終わりをもたらすような厄災" や "ここでついに一堂に会するか" 的な展開がないことはむしろ新鮮でいいと思う。大抵のRPGがそういったプロットを軸にしているけど、あえてそれをしないからこそ際立つというか。このオクトパストラベラーのアンソロジー(異なる作者による詩文などの作品を集めたもの)的な要素はそれはそれで評価すべきだと思う。

8人のキャラクターの物語は決して世界を救うような叙事詩ではないけれど、それぞれが自己完結型であるからこそよりその世界が信じられるのではなかろうか。

nemanja6290 yeeees 俺たちの愛したスクエアが帰ってきたぜ!!!!!!

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