日本のアニメや映画を語る海外のFateファンのYoutubeチャンネル『Japanophile』より

『Fate/stay night [Heaven's Feel] 第一章 presage flower』のレビュー

Fate/Review [Heaven's Feel: Presage Flower] - 2017/11/22


スタジオディーンによるアレなアニメ化から始まり2つの『Unlimited Blade Works』のアニメ化を経て、ついに『Heaven's feel』がアニメになった。

しかし『Heaven's feel』のアニメ化、ましてや映画化はこのルートが最初の2つのルートに大きく依存していることを考えるとかなり野心的な試みと言わざるを得ない。

そもそも原作からして『Heaven's feel』は『Fate/stay night』と『Unlimited Blade Works』を経験していない人からすると理解し難い内容になっている。それはもちろんこのアニメ/映画版でも変わらない。



この劇場版3部作の1作目となる『Fate/stay night [Heaven's Feel] 第一章 presage flower』はfate作品の部外者にとってははほぼ入り込めない内容となっている。

完全 "に原作のビジュアルノベルを読んでいる" 、あるいは少なくとも "『Unlimited Blade Works』を見た" ことを前提に作られているのだ。

つまりこの劇場版は作品単体で見た場合、出来の良い作品とはとても呼べない。以上。レビューは終わり。この映画はクソ



と、そう口にするだろう、原作を読まずにアニメから入ったような "にわかファン" ならば。

『Heaven's feel』はFateという物語の単なる語り直しではない、結びとなる完結編だ。

そして本作では『Unlimited Blade Works』ですでにアニメ化されたイベント部分はものの数秒で片付けられる、観客もそれを望んでいるとわかっているのだ、このルートの肝となる部分を描くことこそがなにより重要であると作り手も観客も理解している。

オリジナルの『Fate/stay night』、ビジュアルノベルを楽しんだ人間は言うまでもなく、そこから生まれた数多くの派生作品にある種辟易としていた人にとってこの『Fate/stay night [Heaven's Feel] 第一章 presage flower』はまさに気分を一新してくれるさわやかな風のそよぎとなるだろう。




近年Fateという物語は他のフランチャイズによって支えられてきた、もちろんそれ自体は悪いことではない。しかしだからこそ今回の劇場版は特別な意味を持っている。それはFateファンが長い間待ち望んでいたものなのだ。そしてその出来は、 it's actually pretty fucking good(実際かなりクソ良い出来になっている)




『Fate/stay night』の核心に迫るルートである本作だが最後にアニメ化された『Unlimited Blade Works』よりも『fate/zero』とより結びつきが強い、それは『 fate/zero』が『Heaven's feel』で明らかになる核心部分を前提として作られているからだ。

それ故にアニメのFateにしか触れたことのない雑種どもの中で、『Unlimited Blade Works』よりも『fate/zero』の方が好きだ感じている者は本作に続編らしさをより感じられるだろう。

そして明らかに『fate/zero』を楽しんだ人間向けのファンサービスと思われるシーンも出てくる。
またこのルートはオリジナルのビジュアルノベルの3つのルートの中で最も出来が良いルートだとみなされている、中盤で多少中だるみするがそこさえ乗り越えれば、そう見なされる理由がはっきりと理解できる。

このルートは最初の2つのルートで築き上げられた衛宮士郎のキャラクターを一気に覆す内容になっており、今回の劇場版三部作においても1作目の時点ですでにその変化を感じ取ることができるだろう。



ただしビジュアルノベルから映画への移行が完璧に成されているわけではない。オリジナルの時点ですでに "ペース" の問題を抱えており、だらだらとした展開があるのだが本作ではそこをバッサリと切り捨てている。さらに映画というプラットフォームが抱える尺の問題から本作の"ペース" ははっきり言って奇妙な出来になっている。

映画の中のキャラクターが時折、ほとんど脈絡もなく別の場所から別の場所へジャンプするといった具合だ。




もちろん映画全体が酷いペースで進行するわけではない。単作ではなく三部作、しかも導入となる1作目であるためキャラクターの心の変化を描くだけの余裕が本作にはある。特に衛宮士郎と間桐桜の関係を時間を割いて丁寧に描いた点は評価したい、それは後の展開での士郎の、桜の行動により説得力を与えてくれるものだ。




しかしやはり突然場面が飛んだり、これは語っておくべきでは?と思えるビジュアルノベルでは語られていた部分が欠けていたりする。それは単純に説明するための時間が足りないからだ。

ビジュアルノベルというプラットフォームに制限時間というものはない、しかし映画というプラットフォームはそんな贅沢な品を持ちえない。すでにFateの物語にのめり込んでいる人間からすると大した問題ではないがそれ以外の人間からするとほとんど理解できないはずだ。

そういった意味では本作は "plot holes(話の展開の欠陥)" を誤って抱えたのではなく、意図して抱えていると言ってもいいだろう。

まぁ難点はこのくらいにして美点について語ろう。

まずは何より本作最大の美点、最も魅せた男、この映画の見せ場をかっさらった男、そう、真アサシンだ。この映画全体を通してダントツに見る者を楽しませたのは彼であり彼が出てくるシーンだ。

特にランサーとの闘いのシーンはこの映画最大の見せ場と言っていい。というか彼の出てくる全てのシーン、その1秒1秒が全て素晴らしい。





そしてだ、アニメ化された "このシーン" をついに我々は目にすることができた。感激ものである。




もちろん "このシーン" もである。正直劇場で観た時はかなり驚いた。




ちなみに私がこの『Fate/stay night [Heaven's Feel] 第一章 presage flower』を見た劇場は、この意識の高い人が行きそうなミニシアターである。席は全て売り切れ。小さい劇場なのに満員、さらに目の前の客の頭が視界の邪魔になったため終始変な体勢のまま観る羽目になった。

(ただもちろん映画を公開してくれたことは劇場に感謝している)



アニメーションの出来について語ろう。まぁ言うまでもないことだが素晴らしいの一言だ。唯一フレーム数が少し足りないかな?と思ったシーンが一つだけあったがそこだけであり、ブレーレイ版が出るころには修正されていても驚きはしない。

コンピューターグラフィックスで生成された車などのオブジェクトもキャラクターたちと違和感なくこの世界に同化していた、一昔前では考えられないくらいの見事さだ。




『Fate/stay night』という作品に惚れ込んだ私のような人間にとって本作はこれ以上ないほどの満足感を与える一本となった。

もし私がFateという物語を全く知らない人間であったら混乱するか、あるいは激しく嫌ったかもしれない。

しかしそもそもこの劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』は他のリソースに依存せず単独で意味を成す単作、いわゆるスタンドアローン型の映画ではない、これはこれまでに紡がれたすべての物語を結ぶグランドフィナーレでありグランドコンクルージョン(grand conclusion)なのだ。



そしてもしこの先に公開される残りの2作が少なくとも同レベルの映画であったなら、我々は一生の宝物となる三部作を手にすることになるだろう。

もしあなたが『Fate/stay night』という作品に一度でも夢中になったことがあるのなら、そして近くの劇場で本作が公開されていたとしたら、迷わず観に行くべきだ。

もしあなたが『Fate/stay night』という作品を最近になって見始めるも「プリズマイリヤの方が良くね?」とか抜かす雑種なら、この映画を見てもその意見はおそらく変わらないだろう。

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海外の反応

Youtubeのコメント欄より: ソース , ソース


- 以下ネタバレあり -

Paweł Dziedzic なんだこの思わずこの映画に大きな期待を寄せてしまうレビューは? もし満足できなかったら責めまくってやるぞコノヤロー。

これといったネタばれもなし、要点はしっかりまとめ期待感を煽りながらちゃんと10分以内に収めている。良いレビューだ。

moonmeh 桜との関係をちゃんと、その始まりからどう進展していったかを丁寧に描いたのは本当に評価できる。桜という存在がいかにシロウにとって日常の象徴であるかを文章だったりセリフだったりで見にしてきたけど今回はそれらとは全く違う。

happybday47385 映画の最初の1時間で最も気に入ったのがそこだわ。Fateという物語に全く別の切り口を与えた気がする。

moonmeh 桜がなぜ日常を、シロウとの関係を守ろうとしているのかをこれまで以上に感じることができた。すでに他のアニメ化で語られた部分をバッサリ切ってそこに注力したのは英断。

Angra Mainyu 正直あまり期待せずにこの映画を観たけど嬉しい誤算だった。個人的には指摘されているようなペーシングの問題は気にならなかったかな?

R[E] vereene 私はペーシングに違和感を感じたよ。ただそれでも楽しめたけど。
クー・フーリンVS呪腕は最高だった。それと彼の死に際の言葉はなんかちょっと笑えた、もちろんカーニバルファンタズムのせい。

Constant Chryses fateシリーズに関する何の予備知識もなくFate Zeroを見ることができたのは幸いだったと思う。zeroの第二シーズンに入っても雁屋おじさんが桜を何とかしてくれるはずと素直に応援しながら見てた。

その後にUnlimited Budget Worksを見たけどこっちはかなり期待外れだった(戦闘シーンは良かった)。そして今回の映画版だ、Zeroのような深みを感じられる脚本にUBWレベルの高いクオリティの戦闘シーン、かなり満足だ。個人的にはラストのライダーとセイバー・オルタの登場が一番あがったわ。

Como Sea Cs そりゃまた我々とはずいぶん異なるアプローチで見たな...
ちょっと新鮮だわ。結末の決まった悲劇として見ていただけに。

SiriusBusiness 同じくFate Zeroから見始めた "にわかファン" でございますが私もUBWにはがっかりしたな、今回の映画の方が望んでいた続編に近いものだった。

TheCopyto 私も劇場で観たけどなんも理解できんかった、Zeroのキャラが出てるのはわかったくらいですわ...

Ruri Gokou 映画を見たけど良い出来だった。尺が限られているだけに2作目、3作目で描かなけらばならない部分がちゃんと収まることを願ってならない。

1作目は2時間の映画になったが9日目だけでもその時間に収められる気がしないし... いっそ上映時間を2時間半にしてほしいくらいだ。

真アサシンは確かに最高だった、キャスターと葛城のシーンもうまく描けていたと思う。不満があるとしたら音楽かな? 雰囲気を演出するっていう目的は果たしていたと思う、特に重苦しい雰囲気はそうだ、でも全体的に印象に残らない感じだったかな。

IzanagiPicaro 懐かしい、"あのシーン" を初めて見た時は「これは本当に桜ルートなの?」と思ったものだ ( ͡° ͜ʖ ͡°)

AndrewWilsonnn 皆よどうか答えてくれ、私だけではないよな? あの雪のシーンの美しさに目を奪われ、しんしんと降る雪の一粒一粒の動きに注目せずにはいられなかったのは。
このシーンは本当に見ていてうっとりとさせられた。

https://streamable.com/uj95x

Xarryen 予告編でチラッとそのシーンが映った段階から夢中ですよ!

GYUZ なんと素晴らしい映画であったか。大幅に内容をカットしなければならないことはわかっていたが見終わればどうだ、よくやったの一言に尽きる。最初から最後まで緊張感があり、不気味な雰囲気があった。

それとキャラクターが見せる反応の違いがとても良かった、他のルートであったシーンとこのルートとで違う反応をする、対比が面白い。凛のやつには笑わされたw

桜とシロウの間で繰り広げられたちょっとした瞬間の数々は特に良かった。桜が衛宮家に段々となれていく姿をちょっとしたモンタージュ風に描くところなんて最高でしたよ。

RedRocket4000 映画もそうだが劇場にきていた観客の反応がとても楽しめた。私はもう56になる、そしてこの手のジャンルの作品に集う連中が皆男どもだった日を覚えている。だからこそ今、ここに集う人間の中に女性がたくさんいることが嬉しい。

JD Fateの派生作品が好きじゃない人間が自分だけじゃないと知れてちょっと嬉しい。

Como Sea Cs いやプリズマイリヤは結構いい感じだって、マジで。

Hilderbrandish プリズマもFGOもExtraもどうでもいい。Fate/Stay NightとFate/Zero、そしてエルメロイII世の事件簿こそ至高!

JealotGaming もうなんというか、とにかく映像が美しかった。そしてランサーよ、RIP。

boboboz Lancer ga shinda!

Funderfullness さすがはアイルランドの幸運Eランクの御子である。



PiFlavoredPie LANCER GA SHINDAAAA

Dragonbooom ランサーは死んでこそ真のランサー足りえるのだ。

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