米国のテクノロジー関連のニュース及び情報サイト『Ars Technica』より

新型コロナウイルスの検疫に失敗したダイヤモンド・プリンセス、アメリカ人乗客は入国禁止に

Americans on coronavirus cruise ship barred from US after failed quarantine - 2/20/2020

「彼らは我々をペトリ皿に入れて感染させた」


今週水曜、新型コロナウイルスの集団感染で日本の横浜に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で14日間の検疫期間が終了し乗客らの下船が始まった。だがこの船の3,711人の乗客と乗組員の悪夢はまだ終わりを迎えていないようだ。

今月5日から開始された経過観察期間が終わりを迎える中、日本の当局は新たに79人の感染が確認されたと発表、この時点でダイヤモンド・プリンセス号の感染者の数は合計621人になった。

特定の場所で確認された新型コロナウイルスの感染例としては中国以外では最大でしかも群を抜いて多く、日本の保健当局の感染対策に対する国際的な批判が高まっている。



ダイヤモンド・プリンセス号の検疫は乗客を下船させず、乗客同士が接触しないように隔離することで感染拡大を抑えることを目的としていた。しかしこの2週間の間に感染者が次々と確認されたことから明らかなようにその努力は新型コロナウイルスの感染を許しただけだった。

「検疫プロセスは失敗した」

アメリカ国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は月曜日に行われた会見でこう述べた。

 「船上で検疫を行うこと自体は不合理ではない、しかし大量の感染者が出たことからその過程で何らかの間違いが起きたと思われる。船内での感染拡大を防ぐ効果は極めて限定的だったのは明らかだ」
では失敗した原因とは何か?

ダイヤモンド・プリンセス号の乗客でテネシー州の一般開業医であるアーノルド・ホップランド医師はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューでその原因ついていくつかのヒントを示した。

ホップランド医師は乗客が客室のバルコニーで洗濯物を乾かし、そこに身を乗り出してマスクを着用せずに隣の客室の乗客と会話をしていたことを指摘した。

また乗客は14日間の検疫中のほとんどで客室に隔離されていたが定期的にデッキに出ることを許可されていた。彼らはマスクを着用し他の乗客から距離を保つように指示されていたがホップランド医師は全員が素直にそれに従ったとは思えないと語った。

さらにホップランド医師によると乗客は食事や物資などを受け取るために1日に最大で10回乗組員と接触していたという。

AP通信が指摘したように乗組員は乗客のように隔離されていなかった。彼らは検疫が始まる前と同じように2人部屋で寝泊まりし、食堂で他の乗組員と一緒に食事をしていた。その状態で乗客にサービスを提供し掃除のために客室に入っていたのだ。
ホップランド医師と彼の妻は米国が用意したチャーター機に乗ることを考えていたが、直前になって彼の妻がウイルスに感染したことを示す検査結果が戻ってきたという。

彼女は日本の病院に移されホップランド医師は船上で追加の検疫期間を過ごすことになった。

一方でチャーター機には300人以上のアメリカ人乗客を載せて米国に帰還したが、そのうち14人はその途中でウイルス検査で陽性反応がでたことが判明した。

「私は自分の検査結果が陰性だったことに驚いた、なぜならこの船ではウイルスが山火事のように広がっているのを知っていたからだ」

ホップランド医師はウォール・ストリート・ジャーナルに対してこう語った。

「私から言わせれば、彼らは我々をペトリ皿に入れて感染させた」 ペトリ皿:微生物の培養実験で用いられるガラス製の平皿。シャーレ。



新型コロナウイルスのアウトブレイクを制御することがどれだけ難しいのかを示した今回の事件はまだ終わりを迎えていない。乗客の先行きも不透明なままだ。

火曜に医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』New England Journal of Medicineで発表された論文によると、新型コロナウイルスの感染者は発熱も感染症の兆候も見られない段階でウイルスを周囲に拡散させる可能性があるという。

この論文とほぼ同時に米国疾病対策予防センターは声明を発表、日本政府の措置に一定の評価を与えたものの「船内感染を防ぐには不十分だったかもしれない」との判断を示し、ダイアモンド・プリンセス号の乗客と乗組員に対して下船から少なくとも14日間米国への入国を制限する措置を講じると発表した。

 「CDC(米国疾病対策予防センター)はクルーズ船内での感染者増加ペース、その中でも特に症状のない感染者の存在に注目しており、これらが継続的なリスクを表しているものと考えている」

スポンサードリンク

海外の反応

arstechnica.comのコメント欄より: ソース


Happy Medium WTF、一体どうしたらこれが適切な検疫のやり方だと思えるってんだ? 乗組員は隔離されていなかった!? そんなのスーパー・スプレッダーになってくださいって言ってるようなものじゃないか...

こんなバカな対応をする衛生行政機関がこの世に存在するなんて信じられない。 WTF=what the fuck=「なんてことだ!」「はぁ?」「なんじゃこりゃ」「ふざけてやがる」といった意味合い

Biceps クルーズ船で働いていた人間から言わせてもらうとクルーズ船を検疫施設として使うということ自体が馬鹿げている。

乗組員の一人でも病気になるとすぐに全員が病気になった。それも一度や二度とかじゃなく毎回だ。

なんせ乗組員は基本的に二段ベッドが二つ置かれた4人部屋で寝泊まりしている。私物が他の乗組員のものと隣り合わせにあるから朝なんかは特に身体と身体がぶつかり合う。

しかも我々はバスルームを共有し、ダイニングエリアを共有し、ベッドルームを共有していた、常に誰かと近い距離で過ごさなければならなかった。

もうこの時点で検疫なんてあってないようなものだ。

この愚かとしか言いようがない計画を思いついた人間は救いようのない馬鹿であり、少なくとも解雇されるべきだ。

Statistical なんか想像以上にひどいな。船上で検疫をするって話を聞いたときから嫌な予感がしていたが、まぁ頭のいい人たちがそれで大丈夫だと言っているんなら問題ないんだろうと思ってた。どうやらそれは間違いだったようだ。

結果論だけど、日本はすべての乗客と乗組員を検疫施設に入れる、施設が足りなければテント村を作るといった対応を取るべきだった。管理も乗組員ではなく訓練を受けた医療関係者にさせるべきだった。

この失敗が次に同様の事態が起きた時の教訓になることを願ってならない、なぜならそれはいつか必ず起きるからだ。

shelbystripes この船での検疫のお粗末さには恐怖すら覚える。感染スピードが速いということはそれだけミスを犯す余地がないということだ。もう世界的なパンデミックを防ぐことは無理なんじゃなかろうか。

SixDegrees そりゃ失敗するさ、クルーズ船は病院でもなければ検疫施設でもないんだから。

Biceps 日本は社会レベルでは災害にうまく対応できる(たとえば米国でよく見られる略奪やパニックなどは起きず人々はお互いを助け合おうとする)、だが政治レベルでの災害への対処はお粗末の一言だ。それは福島原発事故で明らかにされた。

彼らはまず最初に問題を隠し、それがうまくいかない場合はそれを否定し、さらにそれがうまくいかない場合は一人の人間に責任を押し付け自殺してもらう。

そうやって問題に対処するのではなく "問題に対処できないままの体制" を維持しようとする。

TheShark どうにも今回の日本の対応は場当たり的な対応の繰り返しのように思えてならない。

"14日間の検疫の終わりの先" にあるものを考えるより先に "14日間、船内の全員を検疫する必要がある" という決定が下された感があるというか...

だって今考えると、全員を2週間船に乗せたままにすれば対応しなければならない感染者の数が10倍になるなんてことは明らかなんだから。

Rainywolf 乗客同士の接触に関して日本の対応が甘かったのは、マスクをするのは当たり前という日本的な感覚がそのまま外国人にも通用すると勘違いしてしまった結果な気がしなくもない。

SinclairZX81 今振り返ってみると、よくもまぁこれだけ間違った対応が取れるなとしか言いようがない。

tuatara Seniorius Lurkius ダイヤモンド・プリンセス号の感染対策は失敗だったと多くの人間が考えていたがその失敗した理由はこれまで不明だった。

だがついにそれを説明してくれる人が現れた。船内に入った岩田健太郎(日本の神戸大学感染症内科教授)という感染症対策の専門家が今回の検疫の問題を告発する動画を公開したのでぜひ見てみてほしい。

彼によると船内にはレッドゾーン(ウイルスが全くない安全なゾーン)とグリーンゾーン(ウイルスがいるかもしれない危ないゾーン)の区分けが全くなされていなかったそうだ。

Tennyson Wise ただ日本の観点から見ると、今回の検疫は乗客と乗組員が病気を国内に持ち込まないようにするために実施したわけで、その意味では効果的だったとは思う。

bbf その意味では成功だろうな。だが船内で感染が拡大することを防ぐことには完全に失敗している。

SaneMethod ダイヤモンド・プリンセス号に対する日本の検疫が全く効果的ではなかった、という主張は的外れだ。

検疫とはそもそも伝染病が国内にひろがるのを防ぐための処置だ。COVID-19(新型コロナウイルス)の感染を船内に封じ込めるためのものであり、クルーズ船の乗客が感染しないようにすることを目的としていない。

感染者がCOVID-19を地元住民に広めないようにすることが最優先事項だった。

Tennyson Wise 新たな感染者が確認されるたびに現在進行形で感染が爆発的に広がっているように語られるがこれはどうなのだろう?

新たに確認された感染例が検疫が始まってから感染したものであるかどうかを示す証拠はない。クルーズ船には何千という人間が乗っていて1日で全員を検査することはできない。彼らは毎日数百人ずつ検査を行いその都度感染が発覚しているという話だろう?

もちろん検疫が始まってから二次感染は起きていないなんて言うつもりはないが、検疫が完全な失敗だったかのように語るのはおかしくないか?

1voltpp 検疫が始まる前の段階でかなりの人間が感染していたのは間違いない。で、このクルーズ船が原因で感染した日本国内の人間がどれだけいる?

つまり彼らは成功したということだ。

numerobis 船内のずさんな感染対策を知った後じゃ全然安心できないんですけど...

スポンサードリンク