米シアトル・タイムズ、米タイム、米ニューズウィーク、豪SBSより

日本の緊急事態宣言解除に対する海外メディアの反応まとめ



米国の週刊誌『ニューズウィーク』

日本が犠牲者850人、ロックダウンなしで新型コロナ緊急事態を終える

Japan Ends Coronavirus Emergency With 850 Deaths and No Lockdown - 2020/05/25



日本の安倍晋三首相が新型コロナウイルスのパンデミックに対する緊急事態宣言の終了を発表した。

安倍首相は会見で全国で緊急事態宣言を解除することを決定したと述べ、わずか1か月半で感染状況をほぼ制御したと成果を強調、ただしウイルスとの戦いは今後も続くとして国民に社会的距離政策の順守を継続するよう要請した。

月曜の時点で日本の新型コロナウイルス感染者の数は16,628人でそのうち13,612人はすでに回復、851人が死亡したと報告されている。

最も被害の大きかった人口1,400万人の首都・東京では5,100人を超える感染者が出たが月曜に都が発表した新規感染者の数は僅か8人だけだった。



日本はヨーロッパ諸国や米国が採用している厳格なロックダウンを実施していない。

日本政府は被害の大きい国からの渡航者の入国を禁止、市民に対し社会的距離のガイドラインの遵守を求めたがレストランや小売店は営業時間を短くするよう求められただけで現在も営業を続けている。

日本政府は緊急事態宣言は解除するが第二波を防ぐために、新型コロナウイルスが未だ存在していることを念頭に置いた新しいライフスタイルに適応するように人々に求め、日本の公衆衛生当局は公衆の場でのマスク着用と、可能であれば在宅勤務を続けるよう国民に警告している。

It's unclear why Japan has a relatively low infection rate and a comparatively small number of deaths due to COVID-19.
(なぜ日本では感染率が比較的低く、COVID-19による死者数が比較的少ないのかは不明だ)



各国が厳格な封鎖を実施する中、安倍首相はウイルス対策にほとんど行動を起こさなかったことから数々の批判に直面した。

しかしサイエンスコミュニケーションを専門とする早稲田大学の田中幹人・准教授は「死者数を見ただけでも日本は成功したと言えるだろう」と語る。

「しかし専門家でさえもその理由はわかっていない」

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日本で緊急事態が解除、しかし日本政府は新型コロナウイルスの第二波を警戒

State of emergency lifted in Japan, but officials cautious of coronavirus second wave - 2020/05/25



- 一部略 -

新型コロナウイルスのパンデミックは各国に甚大な被害を及ぼしているが日本の被害は他の国に比べて少ない、だがそれを明確に説明する理由は今のところ存在しない。

衛生状態および国民の健康レベルが極めて高い、室内での土足厳禁文化、マスク着用率の高さ、握手やキスではなくお辞儀による挨拶:

考えられる理由として色々と指摘されているが専門家らは "銀の銃弾(困難を一発で解決できる方法)" はないという点で同意している。 silver bullet(銀の銃弾): 特効薬/問題を解決するための確実な方法/困難を一発で解決できる方法。狼男や悪魔などを銀の弾丸で殺せるという言い伝えから



日本はウイルス検査の実施数の少なさで非難されており、リアルタイムの世界統計データ・サイト『Worldometer』 によると実施数はこれまでに約27万回で先進7か国の中で最も検査率が少ない。

しかし日本政府は感染者数が少ない状態が維持されていることからクラスターを封じ込める積極的な接触追跡で十分としており大規模なウイルス検査は彼らの戦略にはないと主張している。

ただし第二波が来た際にはこれまでの戦略で対応できない可能性があるとして検査体制の強化は行われている。

また患者の急増に救急医療が対応しきれなかったことを受け医療機関の強化も行われている。
米シアトルの日刊紙「シアトル・タイムズ」(ワシントンポスト紙の転載記事)

日本が緊急事態宣言を解除、「新しいライフスタイル」に備えて気を引き締める

Tokyo lifts state of emergency, braces for ‘new lifestyle’ with the virus - 2020/05/25



25日月曜、日本政府は東京圏の非常事態宣言を解除し全国で「ソフトロックダウン」を終わらせた。

新規感染者の発生がほぼ抑えられ入院患者も減少したことを受け日本では現在、「新しいライフスタイル」と呼ばれるものへの準備を始めている。これは感染の新たな急増を引き起こすことなく日常生活を再開するという日本独自の試みだ。

それは政府の命令や罰則による強制ではなく、要請/コンセンサス/社会的圧力に基づいてウイルスを封じ込める日本独自のアプローチだ。

安倍晋三首相が数々の失敗を犯したにもかかわらずこれまでのところこのアプローチはある程度の成功を収めている。

理由はまだはっきりとしていないが、公式発表によると日本の新型コロナウイルス感染者の数は16,000、死者数は800人に留まっている。

日本のウイルス検査実施数は各国と比べ圧倒的に低いため多くの症例が見落とされているのは確かだ。とは言えその感染者/死者の数は欧米と比べるとほんのわずかである。

この1週間の新規感染者の数は約200人にすぎず、入院中の患者数は2,000人を下回っている。



日本の初期の新型コロナウイルス対応は各方面から批判され安倍首相の支持率は急落した。

日本は中東地域を除いたアジアで一人当たりの死者数が最も多い国の1つであり、企業への支援は対象が不十分で官僚主義的であると見なされている。

日本政府はクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」で発生した集団感染への対応を誤ったと広く見なされており、検査体制を整えることが遅かったことから2月と3月の間に数千人が検査を受けることなくヨーロッパとアメリカから帰国、大規模な集団感染を許している。

人々に誤った認識を持たせるような声明も問題視された。3月末の週末には花見のために人々が殺到、これは感染者急増の一要因と考えられている。



しかし一方で前例のない成功もあった。

感染者集団が検出されることなく広がったように見えるヨーロッパやアメリカに対し、日本は遠隔地の農村地域でさえ早期に感染者を発見することができた、これは日本の保健医療サービスの質が理由だろう。

新型コロナウイルスが換気の悪い密閉空間/人々が密集する密集空間/人々が互いに手を伸ばしたら届く距離にある密接空間で最も感染しやすいという認識が早期から持たれ、政府はこれを「3密」と呼んでその様な場所を回避することの重要性を周知した 。

人々を家に閉じ込めるのではなく危険な状況を理解させ避けさせるこのアプローチは日本政府が新たに掲げた「新しいライフスタイル」の基礎となっている。

人気コメディアンの志村けんと女優の岡江久美子の死も人々にウイルスの危険性を認識させるきっかけとなったはずだ。



ただし課題はまだ残されている、それは緊急事態宣言の終わりを前に人々がどう反応するかだ。

「日本は欧米で起きた大規模感染を防ぐことができたように思えるが油断するのは危険だ」

英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授はこう警鐘を鳴らす。

「日本の医療および検査システムは、次の大きな波に取り組むには不十分だ」
米国のニュース雑誌『タイム』

日本はロックダウンや大規模ウイルス検査なしで新型コロナウイルスに打ち勝った模様。しかし、どうやって?

Japan May Have Beaten Coronavirus Without Lockdowns or Mass Testing. But How? - 2020/05/25



新型コロナウイルスの新規感染者が減少したことを受け日本は緊急事態宣言の解除へと向かっている、新型コロナ対応における "教科書" をほとんど無視しているにもかかわらずだ。

住民の移動に制限はなく、レストランから美容院まであらゆるビジネスは営業し続けた。

人々の動きを追跡し感染者に接触した可能性を知らせるハイテクアプリを使ったわけでもない。

各国が「検査、検査、とにかく検査」と大規模検査の実施を急ぐ中、日本は人口のわずか0.2%にしかウイルス検査を実施していない。これは先進国の中で最も低い割合だ。



にもかかわらず日本は感染の抑え込みに成功した。死亡者数は1,000人をはるかに下回っておりその数は先進7か国の中で突出して少ない。

世界で最も人口密度が高い都市の一つである東京では新規感染者数が1桁にまで減少している。

むろん第2波の可能性は残されているが、日本は緊急事態宣言を発してからわずか数週間で解除に至ったのは歴然とした事実だ。



ウイルス封じ込めに成功した国々で使用されている "教科書" を無視したにもかかわらずどうして日本は新型コロナウイルスに打ち勝つことができたのか、その分析が今各方面で行われている。

未だにはっきりとした理由はわかっていないが1つだけ専門家の間で同意されていることがある。

それは "銀の銃弾(困難を一発で解決できる方法)" はなく、日本と他国の違いを生んだ要因は1つではないということだ。 silver bullet(銀の銃弾): 特効薬/問題を解決するための確実な方法/困難を一発で解決できる方法。狼男や悪魔などを銀の弾丸で殺せるという言い伝えから

コンタクトトレーシング(接触者追跡)

日本の勝因についてはマスク着用の文化や肥満率の低さ、学校を閉鎖するという比較的早期の決定などが頻繁に指摘されるが、ブルームバーグ通信が意見を求めた専門家も無数の要因がこの結果に貢献したと述べており、他の国で再現できるような単一の政策パッケージは今のところ存在しないとの見解を示している。

しかし今後数年単位で続くとみられているパンデミックの最中にある今、日本の取ってきた対応の数々は多くの国にとって教訓となり得るだろう。

その中でも重要だったものの1つが感染の増加に対する草の根的な初期対応だ。

日本政府は対応が遅いと批判されているが、専門家らは1月に最初の感染者が発見された直後から実施された日本のコンタクトトレーシングの役割を称賛している。

この迅速な対応は日本社会に最初から組み込まれた利点の1つである保健所によって可能となった。日本の保健所では2018年時点で保健師5万人のうち半数以上が感染追跡を経験している。

これらの保健師は普段はインフルエンザや結核などのより一般的な伝染病を追跡している。

米国や英国などの国々は経済を再開しようとする中、最近になってコンタクトトレーサーの採用と訓練を始めたが、日本では最初の感染者が発見されて時点でこのウイルスの動きを追跡していた。

これらの各自治体に配置された保健師はクラスターの早期発見、制御不能になる前に封じ込めることに焦点を当て活動していた。



Burning Car(燃える車)

日本で新型コロナウイルスが大きく注目されることになったきっかけがクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」で発生した集団感染だ。

日本政府の対応に世界中から批判が相次いだが、専門家らはこのクルーズ船の経験が危機の早い段階で日本の専門家にウイルスの広がり方に関する貴重なデータを提供し、市民に危機意識を浸透させたと指摘する。

この段階では各国はまだ新型コロナウイルスを他人事のように思ってたが、自国の庭先で感染が急速に拡大する様子を目の当たりにした日本人にとってそれは "家の目の前に停まっていた車が燃えている" のを目撃したようなものだったというわけだ。

専門家らはまた人々に感染の危険性がある場所を避けることを促す際に「3密」というわかりやすいキャッチコピーを使ったことも評価している。



さらに政治的リーダーシップの欠如が批判されてきたが、それはむしろ医師や医療専門家の意見が前に出ることを可能にした。

日本は他の国とは異なり専門家主導のアプローチを取ることができた、そしてそれは公衆衛生の緊急事態の制御には最も有効と見なされていると早稲田大学の田中幹人・准教授は指摘する。

「社会的距離政策は感染拡大の阻止には機能するかもしれないが、通常の社会生活の継続には実際には役立たない」

北海道大学の鈴木一人教授はこう語った。

「"3密" は非常に効果的でありながらより実用的なアプローチであり、社会的距離政策と同様の効果がある」

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