米MSN掲載のワシントンポスト紙の記事より

日本は世界で最も人口の高齢化が進んだ国であるにもかかわらず、高齢者介護施設での新型コロナウイルス危機の回避に成功している

Japan has the world’s oldest population. Yet it dodged a coronavirus crisis at elder-care facilities. - 2020/08/30



91歳のツカモト・ヒロコさんは1日7回手を洗い食事前には毎回手を消毒をしているという。

日本の予断を許さない新型コロナウイルスとの戦いを伝えるニュースを見る彼女の眼は真剣だ。

「この事態が一日でも早く終息してくれることを願ってなりません」

1か月前に東京の郊外にある老人ホームに入居したばかりのツカモトさんはこう言った。



日本は世界で最も人口の高齢化が進んでいる国だ。日本人全体の平均年齢は47歳、平均寿命は81歳を超えている。

人口の28%以上が65歳以上で2位のイタリアの23%を大きく上回っている。尚アメリカの場合は16%が65歳以上だ。

各国が未曽有の危機に襲われており日本も当然それを免れないと思われていた、新型コロナウイルスは特に高齢者が重症化しやすく高齢者が集団で暮らす老人ホームへの被害はひときわ大きかったのでなおさらだ。

しかし日本の新型コロナウイルスによる死亡者数は1,225人で収まっている。これに対して米国での死亡者は18万人近くに上っている。

さらに日本では死亡者のうち高齢者介護施設での死亡者の割合は14%とアメリカの40%と比較して明らかに低い、しかも老人ホームに住む高齢者の割合はアメリカの方が日本よりも低いにもかかわらずだ。

介護施設で生活する人間の割合は日本が1.7%であるのに対してアメリカは1%未満となっている。



日本のCovid-19の死亡率は欧米諸国と比べてごく僅かなまま(100万人当たりの死亡者数) figure via msn.com
欧米の介護施設の被害はまさに大惨事だった。

新型コロナウイルスの死者数のうち介護施設での死者数の割合が全体の半分を占める国が出るなど、それまで欧米諸国の多くで見て見ぬふりがされてきた高齢者ケアの問題がパンデミックにより一気に露呈した。

今後再び起こり得る世界的健康危機に備える上で、欧米と比べて比較的被害の少ない日本の経験は業界全体に重要な教訓を提供する可能性がある。



Covid-19による死亡者に占める老人ホーム入居者の割合 figure via msn.com (日本は5月中旬までの数字、他は6月中旬までの数字)

パンデミックに備える

日本と欧米の対照的な結果は、日本が欧米諸国よりも中国の動向に迅速に対応し、高齢者向け住宅のスタッフと訪問者の管理を迅速に強化したことが一因であると 国立社会保障・人口問題研究所の林玲子副所長は述べる。

また日本と欧米の文化の違いも重要な役割を果たしているようだ。

専門家らは社会における高齢者ケアの優先順位の高さ、介護施設ですでに実施されている感染防止策と衛生水準の向上のためのより強力な対策を指摘している。

「日本の高齢者介護施設は今回のウイルスだけでなく、ノロウイルスやインフルエンザ、その他の病原菌からの高齢者の保護に細心の注意を払っている」

国立国際医療研究センター病院(NCGHM)の感染症専門医である早川佳代子総合感染症科医長はこのように述べ、それらに対する予防策はすでに日常的に講じられてきたと指摘する。



例えば中国武漢での新型ウイルス流行の初期段階から警戒し動向に注目してきた東京南部の川崎市にある特別養護老人ホームのクロスハートは2月に入った段階で規制を強化する決断を下した。

同施設はスタッフと訪問者に対し1階の徹底した衛生管理の行われた管理施設に入る前に手の消毒、体温測定、最近の病歴についてのフォームに記入することを義務化。

入居者が住んでいる2階へのアクセスも極めて厳しく管理され、死期が迫っている入居者への面会を除き(その場合でも1~2人のみ)家族ですら立ち入りを禁じられたという。

「私たちは高齢者の方々が集団で生活する施設で日々働いているため、ノロウイルスやインフルエンザのリスクを常に認識しており、かなり早い段階から新型コロナウイルスが与え得る影響について意識していました」

3月中旬にワシントンポストが同施設を訪れた際に介護チーフを務めるカスヤ・チヒロさんはこのように語った。

「高齢者ケアの最も基本的な原則は仕事の各ステップで手を洗うことです。誰かの世話をしたら手を洗う、別の仕事をしては手を洗う。今はさらに徹底して行っています」

スタッフはマスクを着用しない

また驚くべきことにスタッフは基本的にフェイスマスクを着用しないという。

同施設のマネージャーを務めるモリマサユキさんによるとこれは認知症に苦しんでいる高齢患者とのコミュニケーションが難しくなるためだという。

そして彼らはそれをウイルスの院内への侵入を徹底的に防ぐことで実現している。

冒頭で紹介した91歳のツカモト・ヒロコさんが入居するライフ&シニアハウス市川も同じ対応を取っている老人ホームの一つだ。

同施設のマネージャーを務めるフルサワ・タカオさんは 私生活を犠牲にしてまでウイルスを持ち込まないための努力をしてくれたスタッフには感謝の念が堪えないと語る。

「彼らはほとんどの時間を施設と自宅で過ごしています、家と仕事先を行き来するだけの日々です」

「彼らは自分たちの責任を非常に真剣に受け止めています。頭が下がるばかりです」



日本の伝統では高齢者の世話をするのは長男の妻の仕事であり、養護老人ホームに親族を置くことは社会的不名誉だった。

2000年に介護保険が導入されてからは状況は変わったが、高齢者をなおざりにしてはいけないという社会の期待は依然として残っており、介護施設に対してもきちんとした管理が行われるべきとの意識が日本では高い。

これに対し米国では新型コロナウイルスがパンデミックになる前から約4/10の介護施設が感染対策違反を犯しており、毎年約38万人の入居者が感染症で死亡ている。

スポンサードリンク

当然ながら日本の特別養護老人ホームも人員の問題がなかったわけではない。

厚生労働省によると100を超える高齢者施設でクラスターが確認され4月には感染者の急増で医療システムが圧倒される寸前にまで追い込まれた。

札幌市の老人ホームでは入居者71人がウイルスに感染し12人が死亡、感染者は入院ができずホームでの療養を強いられ、支援を約束していた市当局は医師を1人派遣するだけで精いっぱいだった。

さらにホームのスタッフの多くが感染した患者と濃厚接触していたことから自宅検疫を強いられた結果、施設に残されたわずかな人員で感染した患者と感染していない患者の両方に対処せざるを得ないという危機的状況を経験している。



また日本の介護施設が実施した厳しい管理は感染を防いだ一方で弊害も生んでいると川崎市のクロスハートを含め複数の老人ホームを経営する社会福祉法人伸こう福祉会の足立聖子理事長は述べる。

「人との接触に関する厳しい措置は入居者の孤立を引き起こしており一部の人々は認知症を悪化させている」

施設側はビデオ通話を介して入居者と親族をつなぐ手助けをしているというが根本的な解決策にはなっていないのが実情だ。

91歳のツカモト・ヒロコさんは娘と一緒に入居したばかりの部屋を飾ることを楽しみにしていたと語った。

「あの子はそういうのが本当に得意でした。今私はとても孤独だと感じています」

施設側は食堂でも社会的距離を保つために席と席との間隔を広げているため食事も楽しいものではないという。

「依然は食事中に騒がしすぎると思った時もありました。しかし今はそれが本当に恋しいです」

スポンサードリンク

海外の反応

twitter.com, reddit.comのコメント欄より: ソース , ソース , ソース , ソース


ryanthelion4444 日本にはアンドリュー・クオモ(ニューヨーク州知事)がおらんからじゃろ。

Trippn21 I bet they didn't use Cuomo's policies.
(きっと彼らはクオモの政策を使わなかったのだろう)

SenorHernando_Despto Because they didn’t have an @NYGovCuomo (日本にはニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモがいなかったからだろう)

BaSama They don’t have Gov Cuomo. It’s that simple. (日本にはアンドリュー・クオモがいなかった。とても単純なことさ)

Liberty Prime アンドリュー・クオモ式コロナ対策に従わなかったからじゃないかな?

George L. Duncan 彼らがcorvid-19危機を回避できたのは対策を決める側の人間にクオモがいなかったからだろ。

Liberty_Call 新型コロナに感染した人間を老人ホームに送り付けたりしなかったからでは?

maonue 日本はそういう選択肢を取らざるを得ない事態にまで追い込まれなかったから...

こっちは文字通り病院が患者で溢れてたし...

TheRunBack そりゃ病院は満杯、医療システムは完全に崩壊してたけどさ、それでも感染者を老人ホームに送り付けるのは愚かな選択だったと思うぞ?

I405 米国とカナダでは高齢者介護の仕事は低賃金だ、そのため彼らは複数の施設で仕事することが奨励されている。

この慣習が彼らをスーパースプレッダーにしている。

shallah カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLA アンダーソン・スクール・オブ・マネージメントの調査によると:
https://www.anderson.ucla.edu/faculty-and-research/anderson-review/nursing-networks-covid

アメリカの高齢者介護施設はケアテイカーをパートタイムで雇う傾向が強い。

多くの特別養護老人ホームではフルタイムのスタッフを直接雇うのではなく、必要なときに必要なだけの時間だけ働く労働者を派遣する人材派遣サービスに依存している。

研究者らは彼らに1つの施設に留まるインセンティブがあれば、老人ホームでの集団感染の発生率は44%減少した可能性があると指摘している。

米政府機関メディケア・メディケイドサービスセンターによるとニュージャージー州、コネチカット州、マサチューセッツ州の老人ホーム居住者の30%以上が6月下旬までウイルスに感染、それらの州の老人ホーム居住者のほぼ10%が死亡したという。

tzipp 1 アメリカの介護業界は労働者が病気であっても職場に現れることを要求される世界だからな。ニューヨークが大惨事になったのも不思議ではない。

per08 オーストラリアがコロナの第二波に襲われた理由の一つがまさにそれだ。ここでもほとんどの高齢者介護スタッフは臨時またはパートタイムで雇用され複数の施設で働いている。

そのため一人が感染すると複数の施設に広がる、十分な人員を確保できなくなるという問題が起きた。老人介護システムがどれだけ脆弱であったかを露呈したわけだ。

greenl5ght スウェーデンも同じ問題を抱えている。過去10年の間に行われた高齢者介護の民営化とコスト削減は大量の "施設間を移動するパートタイム労働者" を生んだ。

彼らの労働条件も過酷だ。病気のときも休めず、適切な個人防護具も提供されない。スウェーデンの新型コロナウイルスによる死者数が最悪な数字になった理由の1つだよ。

murphykills アメリカの介護施設なんて名ばかりの介護施設だらけでその実態はスラム街みたいなもんだ。高齢者を敬う日本の文化はそういった存在を許さないんだろう。

Julian Lalor それは彼らが高齢者をちゃんと敬い、半分見捨てられたような介護施設に捨てて忘れたりしないからだろう。

Caprica1598 米国と違って日本の介護業界は営利主義に支配されていないからだろう。

Christina アメリカの介護施設の大半は本当にろくでもない環境だからな。

wip30ut 日本が新型コロナに対応できた理由の一つにクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染があると思う。

彼らはあそこでロックダウン下であってもどれだけウイルスが急速に感染拡大するかを、どのような安全対策が機能ししないのかを学べた。

その経験は老人ホームを含めであらゆる場所で活かされたはずだ。

EUや米国はそういったガイドマップを持っていなかった。その上アジア諸国に助言を求めようともしなかった。

スポンサードリンク