usatoday.com, buzzfeed.com, jezebel.comより

大坂なおみが全米オープンで試合のたびに黒人犠牲者の名前が書かれたマスクを着けて登場したことに対する海外メディアの報道







米国のオンラインメディア『BuzzFeed』より

女性アスリートの中で広告・契約収入で世界一位の大坂なおみはブラック・ライヴズ・マターをサポートするために彼女のプラットフォームを使用している

Naomi Osaka, The Highest Paid Woman Athlete In The World, Is Using Her Platform To Support Black Lives Matter - 2020/09/09


大坂なおみは米国で育ったが生まれた故郷である日本を代表しプレーする素晴らしいテニスチャンピオンである。

日本とハイチのハーフであるスター選手はわずか22歳で世界で最も広告・契約収入が高い女性アスリートとなった。

しかし大坂なおみはただのテニスの天才ではない。

彼女はまたBlack Lives Matter運動をサポートするために自分のプラットフォームを使う選手でもある。

先月、彼女は警察による黒人男性ジェイコブ・ブレイク氏銃撃事件に抗議するためにウエスタン・アンド・サザン・オープン準決勝への出場の辞退すると発表した。



" こんにちは、皆さんの多くが知っているように私は明日の準決勝の試合をする予定でした。

しかしながら、私はアスリートである前に黒人女性です。そして黒人女性として、私がテニスをしているのを見るよりも、早急に対処する必要がある重要な事柄があるように感じます。

私がプレーしないことで何か劇的なことが起こるとは思いませんが、プレイヤーの大多数が白人のスポーツの中で会話を始めることができれば、それは正しい方向への一歩になると思っています。

相次ぐ警察の手による黒人の虐殺に正直私は吐き気がするほど頭にきています。

私は数日おきに現れる新しいハッシュタグを見るのに疲れました、何度も何度もこのような同じ会話をするのに非常にウンザリしています。こんなことはもうたくさんです。"



大坂なおみがソーシャルメディアで試合棄権の意思を表明した直後に女子テニス協会は米国の人種差別と社会的不公平に対し結束して反対するスタンスを取るためにトーナメントを一時停止させたと発表。

翌日トーナメントが再開し大坂なおみが優勝した。



そして今、大坂なおみは全米オープンでも抗議の声を上げている。

大坂なおみはトーナメントの初日、警官による家宅急襲で少なくとも8回撃たれ死亡した黒人女性ブリオナ・テイラー氏殺害事件に抗議するため彼女の名前が書かれたマスクを着用して入場。





「私はテニスが世界中で見られていることを認識しています、そしてその中にはブリオナ・テイラーさんを襲った事件を知らない人がいるかもしれません」

「(私がこのマスクをすることで)人々はそれがどういったものなのかを知るためにググってくれるかもしれません。私はこの問題に対する意識を広めるためにこれをしています。彼女のストーリーを知る人が増えるほどその問題に関心を持つ人が増えると思っています」

ワシントンポストによると大坂なおみはこう語ったという。



大坂なおみはまたこのマスクを着用してイライジャ・マクレイン氏の死に抗議した。

彼は昨年8月24日に警察に拘束された際に地面に押さえ付けられ首を腕で絞められた末に死亡した。彼はその間命乞いをしていたという。





さらに次の試合では大坂なおみはジョギング中に白人男性2人に強盗だと思われ射殺されたアフマド・アーベリー氏の名前が入ったマスクを着用してこの事件に抗議。





さらに次の試合ではフロリダ州サンフォードで2012年に起きたトレイヴォン・マーティン氏殺害事件に抗議するため彼の名前が入ったマスクを着用しコートに入場した。

トレイヴォン・マーティン氏は17歳の少年で近所のセブンイレブンからの帰宅途中にボランティア自警団によって「疑わしく見える」という理由で撃たれた。





「トレイヴォン・マーティンの死をはっきり覚えています」

大坂なおみはインスタグラムの投稿でこう語った。

「当時まだ私は子供でその事件を聞いて怖がっていたのを覚えています。実際私はそれ以来何年もパーカーを着ませんでした、"疑わしく見える" 確率を減らしたかったからです」

「それが最初の差別に基づく黒人殺人事件でないことは知っていますが、私にとってそれはこの問題に目を向けるきっかけとなった事件でした」

「事件を伝えるテレビを見てどうしてそんなに逮捕に時間がかかっているのか、なぜ正義が果たされないのかと疑問に思ったのを覚えています」

「同じことが繰り返し起こっているのを見るのは悲しいことです。こんなことは変わらなければなりません」





大坂なおみ、アメリカの人種的不正義に対して抗議の声を上げてくれてありがとう!

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ギズモードを抱える米国のオンラインメディア企業ゴーカー・メディア傘下の芸能ニュースメディア『jezebel』より

大坂なおみはスポンサーを失うことを恐れていない

Naomi Osaka Isn't Scared of Losing Sponsors - 2020/09/11


2018年に全米オープンの決勝戦でセリーナ・ウィリアムズを破り世界的名声を獲得した22歳のテニス選手、大坂なおみが全米オープン中に再び各紙の見出しを飾った。ただし今回はテニスだけが理由ではない。

先週の全米オープンの初日、大坂なおみは警察によって殺害された黒人女性ブリオナ・テイラー氏の名前が書かれた布のフェイスマスクを着用して大きな話題を呼んだ。

翌日、大坂なおみはウォーミングアップやプレスイベントに参加する際にそれぞれ異なった名前の書かれたフェイスマスクを着用。それらは全て警察官や民間人の手で殺された黒人の名前だ。

TIME誌とのインタビューの中で大坂なおみは警察官による黒人男性ジョージ・フロイド氏の殺害を受けミネソタ州ミネアポリスで起きた抗議運動と暴動を見て受けた影響について具体的に語っている。



「私は実際にボーイフレンドと一緒にミネアポリスに向かいました、そして私たちはそこで起きたすべてを見ました。それは人生を変える瞬間でした」

「選手は発言するたびにスポンサーを失う恐怖を覚えると思います。私の場合、スポンサーのほとんどが日本の企業なので特にその思いが強かったです」

「彼らはおそらく私が何について話しているのかわからなかったでしょうし不快に思ったかもしれません」

「しかし何が正しいのか、何が重要なのかについて話さなければならないような時が来たのだと私は感じたのです」


米国の一般大衆紙『USAトゥデイ』より

社説:テニス界のシンボルとなりつつある大坂なおみ、そしてそれはテニスだけのおかげではない

Opinion: Naomi Osaka nearing icon status, and it's not just because of her tennis - 2020/09/11


日本人とハイチ人の両親から生まれ南フロリダで育ったた大坂なおみが単なる女子テニスプレーヤー以上の存在になろうとしている。

白人が大多数を占め、複数の文化的背景を持ったスーパースターを生み出すことがまずないこのスポーツで、彼女はまさにテニス界のシンボルとなりつつあるのだ。



全てが変わったのは米ミネアポリスで白人警官によって黒人男性ジョージ・フロイド氏が殺されてから2日後の5月27日だ。

その時から大坂なおみのソーシャルメディアの投稿はすべて人種的正義(racial justice)を中心に展開されることになる。

ジョージ・フロイド氏の死から数日後、彼女は抗議運動に参加するために密かにミネアポリスに飛んだ。

6月16日にはアフリカ諸国に対する欧米の植民地主義を批判しアルジェリア独立運動で指導的役割を果たした思想家・精神科医・革命家であるフランツ・オマー・ファノンの著書『地に呪われたる者』の写真を投稿。


大坂なおみ公式Twitterアカウント
Happy Juneteenth 「ジューンティーンス」はアメリカ合衆国で奴隷身分であった人々の解放を祝う祭日
7月には米国の男性誌『エスクァイア』の中で彼女が人生のほとんどを過ごしてきた米国だけでなく、彼女が代表を務める日本の人種差別について語った。

その中で彼女は「過去数か月の間に私は自分の人生で本当に重要なことは何かを再評価しました。それは私にとって必要だったリセットなのだと思ます」と書いている。



「日本は非常に同質的な単一民族国家なので、そこで人種差別に取り組むことは私にとって難しいものでした」

「人種差別的なコメントをオンラインからもテレビからも受けました」

「しかしそれは少数派です。実際には混血の人々、特に混血のアスリートは日本の未来です」

「私たち(私自身や八村塁ら)は大多数の人々、ファン、スポンサー、メディアに受け入れられてきました」

「少数の人々の無知が、大衆の進歩性を妨げることを許すようなことがあってはなりません」

「日本のファン、特に若い世代のファンからの愛はいつも心温まるものでした。私は日本を代表できることをとても誇りに思っていますしこれからもそうです」

https://www.esquire.com/sports/a33022329/naomi-osaka-op-ed-george-floyd-protests/
しかし人種差別と警察による暴力の問題に全力を傾けることで彼女は決して小さくないリスクを背負うことになった。

彼女の昨年の広告契約料は3400万ドル、これは過去10年間 年間契約料でトップに立ってきたセリーナ・ウィリアムズやマリア・シャラポワよりも大幅に多い額だ。

そして彼女がそれほどまでの広告塔になれた理由の大部分は日本市場の存在にある。世界的なスポーツスターがあまりいない日本がスポーツ選手としての彼女に寄せている期待は大きい。

それは言い換えれば、スポンサーという点に関して言えば、「日本の観客からどう思われるか」は「アメリカの観客からどう思われるか」よりもはるかに心配する必要があるということでもある。



しかし一方でアメリカのテニス界では、特に女子テニス界では伝説を残した選手ほど人々の生活の中に長く留まる傾向にある。

1970年代から1980年代前半の女子テニス界を牽引したフロリダ州出身のクリス・エバート、アメリカ人は彼女の姿を1973年以来プレーヤーとしてもコメンテーターとしてもテレビで見続けている。

1960年代から1980年代初頭までの四半世紀にわたって女子テニス界に君臨したカリフォルニア州出身のビリー・ジーン・キング、彼女が最後にウィンブルドンで優勝してから45年も経過しているが彼女は今も性別間の不平等の問題で強い発言力を持っている。

クリントン大統領が弾劾されたのと同じ年に初のグランドスラムを勝ち取ったセリーナ・ウィリアムズは未だに優勝争いで最前線を走っている。

怪我などの問題が起きない限り、大坂なおみもまた何年何十年にもわたってスポーツにおいて最も重要な人物の一人となる気がしてならない。



過去数か月の間、我々は大坂なおみが目の前で成長する姿を見てきた。

全米オープンでトロフィーを恐る恐る、そしてほとんど謝罪しながら受け取った2年前と違い、彼女は自分にとってのアイデンティティ、そして彼女が今気にかけている問題について堂々と語るようになった。

そして警察の人種差別と不必要な暴力によって殺されたブラックアメリカンの名前が書かれた7つのマスクを着用して入場した今年の全米オープンで彼女は人生で最高のテニスを披露している。

その彼女が今再び全米オープンの決勝戦の場に立とうとしている。

それはおそらく彼女にとってこれまでで最も重要な一戦となるだろう。

過去数ヵ月にわたって彼女が繰り広げてきた人種差別との戦い、黒人アスリートたちが紡いできた変化を求める声。

これらすべての要素の収束により、大坂なおみはほとんどのテニス選手が達成できないレベルのスーパースターダムの地位に駆け上ろうとしている。

そして彼女はその準備ができているようだ。

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