英紙ガーディアンのYoutubeチャンネルより

黒人描写を間違えている日本のアニメとそれを修正しようとするアニメファン

Anime gets blackness wrong, here's how fans are fixing it - 2020/10/01

動画の解説文:

英紙ガーディアンでビデオプロデューサーを務めるジョッシュ・タウンゼント-ストラウスはアニメが大好きだ、しかし彼はそのアニメの中で人種差別的なステレオタイプに則って描かれた黒人のキャラクターをよく見かけると語る。

ドラゴンボールZやカウボーイ・ビバップ、ワンパンマンなどの人気が高く愛されているアニメでさえ黒人キャラクターの表現/ "representation(レプリゼンテーション)" に失敗しているという。

そしてそれは黒人がアニメファンになることを難しくさせている要因の一つなのだそうだ。

ジョッシュはアニメにおける人種差別をどのように見ているか、そしてクリエイターがそれを変えるために何をしているのかについて黒人のアニメファン、作家、批評家に話を聞いた。

※レプリゼント:
レプリゼント(represent)は「象徴する・代表する」を意味する言葉であり、ポリコレ的には「自分の存在が代わりに体現される」を意味する。

「レプリゼントされている」とはつまり「自分たちが社会の一部であるというメッセージを受け取れる」という意味。





これはドラゴンボールZだ。私をアニメの世界に導くきっかけとなった作品でもある。




そしてこれは私のいとこのデュジョン。当時私はドラゴンボールZを彼の家で見ていた。




ジョッシュ・タウンゼント-ストラウス (英紙ガーディアンでビデオプロデューサー): 「凄い! 君ががドラゴンボールZグッズを持っているなんて知りもしなかったよ」

ジョッシュ氏のいとこのデュジョン氏: 「確か5~6枚はドラゴンボールZのTシャツを持っているよ」

ジョッシュ (英紙ガーディアンでビデオプロデューサー): 「そんなに!」

Josh氏のいとこのデュジョン氏: 「なぜかは分からない、けどこの作品には心を掴んで離さない何かがあった。私にとってそれはマンガとアニメの世界に私を導く玄関口のような作品だった」




しかし一方でこれもまたドラゴンボールZだ。

ジョッシュ氏のいとこのデュジョン氏: 「ミスター・ポポを初めて見た時、私は "どうして彼はあんな見た目なんだろう" という思いでいっぱいになったのを覚えている」

「そして実際それは私が初めてゴリウォーグの存在を知るきっかけだったと思う」

ゴリウォーグ:
19世紀末にイギリスで考案された黒人を模したキャラクター。 差別的とみなされる黒い肌と赤い唇、淵の白い目、縮毛が特徴の人形で特にアメリカでは反黒人勢力による風刺画に度々描かれてきた。1980年代以降は人種差別のシンボルとして扱われるように。

ゴリウォーグ - wikipedia





そしてこのゴリウォーグはアニメにおける黒人描写でしばしば使われている。

だがそれでもアニメには大きな黒人ファン層がある。



ソウルジャ・ボーイ・テレム(米国のラッパー):
「誕生日おめでとうNARUTO」

カニエ・ウェスト(米国のラッパー):
「千と千尋の神隠しがAKIRAより上とかないわー...ないわーーー...」

「失礼、今ちょうどYoutubeでアニメ映画TOP10と題された動画を見ていたので」






Kambole Campbell (イギリスの映画/テレビ批評家): 「日本には人種差別は存在しないと考える人は多い。だがもちろん、それは真実ではない」




Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「黒人がアニメファンになるということは、あるシーンで応援し、次のシーンで(黒人差別を)見て見ぬふりをする、ことを強いられる事を意味する」

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先にひとつはっきりさせておきたいことがある。それは私はアニメをキャンセルするためにここにいるのではないということだ。

ではなぜここにいるかというと、それは黒人のアニメファンとして、人種差別はもうたくさんだと言うためだ。

キャンセル・カルチャー:
不用意な発言や行動を問題視しソーシャルメディアに晒すなどして糾弾すること。映画を見ない/音楽を聴かないよう呼びかけたり作品をバッシングすることでキャリアを傷つけ影響力を奪おうとする行為。





Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「私の好きなアニメ番組の1つは『デュラララ!!』だ。だが問題がある、それがあの黒人のロシア人だ。 頼むから、redraw him (彼を描き直して)」




Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「ワンパンマンにさえクロビカリというキャラクターが出てくる。あれは極めて人種差別的だ」

「とりあえず彼が出てくるエピソードを無視することでやり過ごした。そして残念ながら、そういった自主的な対応をすることを黒人は何度も何度も強いられている」




Neysha (米国のアニメ/マンガポッドキャスター): 「『約束のネバーランド』のシスター・クローネもそう。製作者らはミンストレル・ショーをベースに彼女を作っている」

「巨大な唇、飛び出た目、あのような描写はただただ不快で心が傷つけられる。なぜならそれらは明らかに黒人差別だから」

「それは私にとって作品全体を台無しにするものだ」

外国人「ダウンタウンの浜田は無自覚な差別を止めた方がいい」(海外の反応) [Image via キッズページ 横浜開港資料館] ミンストレル・ショー:
1830年代にアメリカで生まれたバラエティー・ショー。通例顔を黒く塗った白人が演じた。1840年代に全盛期を迎えるが、南北戦争を境に衰え、20世紀に入る頃には消滅する。黒人をからかう差別的な内容が多かった。
https://eow.alc.co.jp/search?q=minstrel+show&ref=wl





ではなぜアニメは、特に昔のアニメは、これほどまでに酷く黒人描写を間違えているのか?

それを理解するためには、これらを文脈の中で考える必要がある。




Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「日本人はアメリカのメディア、アメリカのテレビのレンズを通して私たち黒人を見ている」

「日本にはディズニーとワーナーブラザーズのアニメーション以外に黒人を描いたアニメーションはなかった」

「そして40年代、50年代のそれらは非常に人種差別的だった」
これらの日本のアニメにおける黒人描写はひどく不快なものから、黒人象の一部を切り取って黒人の描写ができていると思い込んでいる "どうしようもなく還元主義的" なものまでさまざまだ。


Kambole Campbell (イギリスの映画/テレビ批評家): 「『カウボーイビバップ』のコフィ、彼女はブラックスプロイテーションのキャラクターだ」

「彼女は基本的にブラックスプロイテーション映画のフォクシー・ブラウンと変わらない、ただ火星にいるというだけで」

ブラックスプロイテーション:
1970年代前半にアメリカで生まれた映画のジャンル。黒人観客を集めるためだけに製作された映画。





アニメは主に日本国内の視聴者向けに製作されているため、異なる人種のレプリゼントの尊重は期待できないと主張する人もいる。

日本は人種的に多様な国ではないからだ。

だがそのような言い訳は通用しない。




ジョッシュ氏のいとこのデュジョン氏: 「これは知らなかったで済まされる問題ではない。この地球上に住む人間で黒人を見たことがない人間などいないのだから」




Kambole Campbell (イギリスの映画/テレビ批評家): 「海外の代理店と提携し世界に向けて配信しているのだから知らぬ存ぜぬは通じない。人種差別的な黒人描写の無視は偶然ではなく意識的に行われている」




Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「アニメにおける人種差別について議論するときこのように言う人たちがいる」

「"これは日本の作品だ、我々がいる場所の作品じゃない、同じように考えるべきではない" と」

「彼らは気付いていない、本当は同じように考えるべきだということを。なぜならアニメは世界規模で公開されているからだ」
黒人差別の問題があるのはアニメそのものだけではない。


Neysha (米国のアニメ/マンガポッドキャスター): 「アニメファンの大部分、全員がそうだとは言わないが、彼らの多くは彼らのように見えない他の人々(黒人)がファンダムに入るのを嫌う」

ファンダム:趣味・アニメ・漫画・小説・スポーツなどの分野の熱心なファンたち、また熱心なファンによる世界、彼らによって形成された文化





Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「私がネット上でアニメファンであることを公言したのは本当にごく最近になってからだ。それをしてこなかったのは面倒に巻き込まれるからだ」

「黒人であるというだけで面倒な議論になる、最もよく見るのはコスプレをしている黒人をターゲットにしたものだ」

「黒人だからそのキャラクターのコスプレすることはできないと言われる」



「どうしてこんなクソみたいなものがフィードに表示されなきゃならないんだ。あんたのことをフォローしたことなどない!!こんなのよりセクシーなアジア系/日本人のコスプレが見たいんだよ。こんなクソみたいなのじゃなくな...似ても似つかねぇじゃねぇか...」

「あんた自分が黒人だってわかってる?」




「黒人はあらゆるものを下品にする💀💀」

「醜い事この上ない」

「メイビスはNXXXO(Nワード)じゃねぇ」




アニメ・コミュニティがいかに人種差別的であるかに私は未だに困惑させられる

AIDS Reborn 「Anime is supposed to be perfect world to escape to, adding black people to that world kind of defeats the point (アニメは現実逃避に最適な世界であるはずなのに、その世界に黒人が入ってきたら台無しじゃないか)」





Neysha (米国のアニメ/マンガポッドキャスター): 「差別的な中傷を受けたし偽ファンと呼ばれたこともある」

「アニメが好きだと言ってもミーガンジースタリオン(日本のアニメ好きを公言しているアメリカのラッパー)が好きだからそう言っているんだろと言われた、アニメを知らないくせにと言われたこともある」

「本当にたくさん言われた」
では黒人のアニメファンがこれほどたくさんの人種差別にさらされているとしたら、なぜ私たち黒人はそれでもアニメを愛しているのだろう?


Kambole Campbell (イギリスの映画/テレビ批評家): 「その答えを一つに絞ることはできない」

「私にとってアニメとは、欧米の政治を見なくて済むものであり気晴らしであり何か他のことについて学ぶことができるものであり、そしてなにより単純にクールなものだ」




Neysha (米国のアニメ/マンガポッドキャスター): 「私がよく親しんでいるアニメは偏見に晒されたり、目標に向かって努力しているのにできっこないと思われたり、単に嫌われたりしているキャラクターを主人公にしたものが多い気がする」

「例えばNARUTOは彼の人生の大部分で人々から酷い扱いを受けている。彼はそれでも困難に立ち向かい、いつか火影になるためと邁進する」

「その旅を通してそういった問題に立ち向かうキャラクターたちがたくさんいる」

「それは黒人女性としてとても共感できる話だ。ただ黒人であるということが、時に挑戦になることがある。黒人を受け入れたくない世界に黒人として存在することはそれだけで挑戦だ」




Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「最近になって "ええ、私は何年もの間これのファンでした" といった感じにアニメファンであることを告白する人が大勢出てきたことは本当に興味深い」

「実際35歳以上の人たちの多くは海賊版のVHSやファンサブ(ファンによる字幕)、ファンダブ(ファンによる字幕)されたVHSを仲間間で回して見た日々の事を覚えている」

「そしてそれが黒人アニメファンの年齢層が高い理由だ」

「人々は最近になって黒人がアニメを好きになったと思っているが私たちはずっと前からアニメファンだった」



黒人文化におけるアニメの影響は数十年前にまでさかのぼることができる。それは特にヒップホップで顕著だが、黒人のアニメ制作者の増加という形でも現れ始めている。


Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「アメリカのアニメ『ブーンドックス』に日本のアニメの影響がたくさん見て取れるのはそのためだ。原作漫画を描いた作家、漫画家、アニメ製作者であるアーロン・マッグルーダーは明らかに日本のアニメファンだ」

「その『ブーンドックス』に携わった人物の一人であり、昨年Netflixで公開されたオリジナルアニメ『キャノン・バスターズ』の監督やプロデューサーなどを務めたラショーン・トーマスは実際に日本に移住し東京都目黒区に拠点を置いて自らアニメ製作に取り組んでいる」




そして増えているのはアニメ制作者だけではない。

米国の漫画雑誌『Saturday AM』は日本のアニメ/マンガ愛好家であるフレデリックL.ジョーンズ氏が立ち上げた雑誌で多様性のあるアーティストたちを抱えている。




同じく黒人が経営するマンガ/アメリカンコミックの会社『Noir Caesar』は多様性とレプリゼンテーションを経営理念として掲げている。

同社では現在、一部のマンガのアニメ化が進行中だ。




Neysha (米国のアニメ/マンガポッドキャスター): 「i will say that there are creators out there who are fixing it (今の業界には誤った黒人描写を "修正している" クリエイターたちがいる)」

「2016年には日本で初めての黒人経営のアニメスタジオ『D'ART Shtajio』が立ち上げられた」

「『キャロル&チューズデイ』のように黒人のキャラクターをうまくレプリゼントしたアニメ番組も出始めた」

「だから私はたくさんの希望を持っている」




Karama Horne (米国の文化ジャーナリスト): 「我々黒人は長年にわたって、たくさんの誤った黒人描写を受け入れてきた、なぜなら我々としては黒人を出してくれているだけでとても嬉しかったからだ」

「だが今はそれ以上のことを望んでもいいはずだ」

「そしてそれが多くのファンがやっていることだと思う」

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