アメリカの時事月刊誌「The Atlantic」より

なぜアメリカ車は日本で人気がないのか?

Why Aren’t U.S. Cars Popular in Japan? - Nov 6, 2017

"アメリカの企業は日本の保護主義的な政策のせいだと言う。だが現実はそれより複雑なようだ。"


日本ー東京より
ウラタ・シュウジロウが日本で新車を買おうと思ったとき、彼の電話が鳴り響いた。それは地元のトヨタのディーラーからの電話で新車を買うことを考えていないかと尋ねるものだった。

彼がYESと答えると、1時間後には彼の家の前にトヨタ・ディーラーの人間が2台の試乗車と共に現れ、彼とその妻はさっそく近所をテスト走行に出かけ、気にいった彼はディーラーから車を購入することを決めたという。トヨタのディーラーはまた自動車保険を扱っており、保険契約を更新する必要があるときはいつでも彼らの家を訪れると彼に伝える。

またウラタは数週間おきにディーラーに車を持ち込み無料の洗車サービスを受ける。車が洗われている間は親しくなった従業員と犬や家族の誕生日など色々と語り合うという。


このディーラーと顧客の"親密さ"に驚くアメリカ人は多いだろう、ディーラーに行く事が歯医者に行く事くらい億劫なアメリカ人にとって。だがこのような親密な関係は日本では当たり前なのだ。

「そんなにサービスがいいのかと思われるかもしれませんがこれは日本では普通なことです、アメリカのカーディーラーにはない習慣でしょうが。」と東京の早稲田大学の経済学教授でもあるウラタ氏は語る。


このディーラーのおもてなしは日本の自動車メーカーが日本市場で支配的な存在になっていることに一役買っていると言えるだろう。 日本の自動車販売業者協会によると、日本のブランドは国内の自動車市場の約90%を占めているという

対照的に、米国では国内ブランドの市場シェアは日本に比べると遥かに小さい。 The Wall Street Journalの自動車販売データによるとGM/フォード/フィアット・クライスラーのBIG3のアメリカでの市場シェアは45%で日本のブランドは39%を占めるという

この数字は米国と日本の間の貿易不均衡にも一部反映されている。アメリカ商務省によると昨年のアメリカの日本に対する貿易赤字は689億ドルで、そのうち526億ドルは自動車と自動車部品によるものとのことだ。

なぜ日本人は外国車を買わないのか

これは現在アジアを歴訪しているトランプ大統領を含む多くの政治家たちを長い間悩ましてきた問題だ(※この記事は2017年11月6日の記事でちょうどトランプ大統領が日本を訪れる直前のものです)。大統領はそこでの会談で「公正で互恵的な関係の重要性」を強調するだろう。

  今年の初め、安倍晋三首相が米国を訪問したときにトランプ大統領は「日本はアメリカの自動車メーカーが日本で車を販売する事を不可能にしている」と言った。これはまた日本が自動車市場において保護主義的政策をしていると訴えるアメリカの自動車メーカーからの声でもある。


米国自動車政策審議会(FAO)は日本では外国製車両の車検に要する時間が長く、既存の自動車販売業者が外国車を販売することを禁止するような歴史的実践が外国企業の市場シェア獲得を妨げていると述べている。

しかし彼らの主張する保護主義は"なぜ日本人が外国車を買わないのか"という疑問に対する完全な説明にはならない。

例えば日本では輸入される自動車に輸入関税はない、米国とEUはそれぞれ2.5%と10%の関税を課しているにもかかわらずだ。

日本の自動車は右ハンドルであり、これはアメリカの自動車はそこで販売される前に仕様変更が必要になるということだが、それは日本に限らずまたそういった仕様の変更が必要になることは他の多くの市場でも普通の事だ。


実際の問題は、米国の自動車販売業者が先のウラタ・シュウジロウ氏のような消費者が期待しているような"日本で当たり前のサービス"を提供できるようディーラーネットワークに投資することをためらっていることがその大部分である。

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アメリカの自動車メーカーが抱える問題

  「日本の消費者の車の買い方はまったく異なっている。」とアジア貿易センターのデボラ・エルムス(Deborah Elms)氏は語った。

しかしアメリカの自動車メーカーは日本の市場に食い込むためのディーラーネットワークへの投資を怠っているのです。


実際フォードは昨年に年間で5,000台の車しか販売できず日本から撤退、ゼネラルモーターズは日本に28のディーラーしか持たず2016年には約1,000台のみの販売となっている。

我々はフォードにこの指摘に対するコメントを求めたが要請には答えなかった。ゼネラルモーターズの広報担当者は最近ニッチなセグメントをターゲットにする"戦略的決定"を行い、日本のドライバーにキャデラックATSを含む左ハンドルのアメリカ車を提供していくつもりだと答えた。


また日本の顧客は車を購入した後もディーラーからの無料メンテナンスなどのサービスを受けることを期待しているという。購入者のの車に点検が必要なときにはディーラーが彼らの家を訪問して車をピックアップし、メンテナンスを終えたら家に直接車を返すそうだ。

  アメリカのディーラーはこのようなサービスを提供していない。 「これを実現させるネットワークの開発は高価であり、その維持も高価です。それが米国の自動車メーカーが撤退することを決めた理由の1つです。」とデボラ氏は語った。


日本でトヨタを買ったばかりのオオハシ・ヒデオという日本人と話をすることができた。彼はメルセデス・ベンツの購入を考えていたが、車が故障したら修理代が高くつき新しい部品を手に入れるのに時間がかかりすぎるのではと心配したという。

オオハシ氏の友人はヨーロッパメーカーの車を所有しており彼らはメーカーから部品を手に入れるのに数週間かかったという話を聞いたそうだ。その一方でトヨタは幅広いメンテナンスネットワークを持っており問題があれば簡単に車を修理することができる。

オオハシ氏はトヨタのディーラーと10年間近く付き合っており、少なくとも四半期に一度は彼に連絡を取るという。「私たちには長い間、車に関し家族を世話してくれた人がいます」と彼は語る。

米国自動車業界が日本と同様のディーラーネットワークを構築するために投資することには価値があるようだ。日本の自動車市場は米国と中国に次ぐ世界第3位であり、現在日本経済は好転している。それはつまり消費者は自動車、特に高級車のためにいつもより余分な支出をする傾向にあるという事だ。

文句を言っているのはアメリカだけ?

もちろん米国の自動車メーカーが日本で自動車を販売すること困難にするいくつかの歴史的な理由は存在する。米国企業は20世紀前半に日本に販売店を開設し、日本の自動車メーカーは彼らから技術を学んだりもしてきた。だが第二次世界大戦が近づき米国企業は日本から追放されてしまう。

第二次世界大戦後には日本は国内の自動車産業を守るため保護主義的な政策を取る。そして国内ブランドは成長し、競争を通じて非常に効率的な製造・販売網を築き上げた。日本が1970年代に保護主義を止め市場を開放した時にはすでに日本人は国産車を買うことに、その販売方法に慣れていたのだ。


しかし日本のメーカーが国内自動車市場において支配力を維持していることの説明はこれだけでは不十分だろう。米国の企業は日本よりも制限的で保護主義的な貿易政策を持つ中国のような国々に短期間で進出してきた。たとえばゼネラルモーターズは現在、米国よりも中国で多くの自動車を販売している(もっとも中国の自動車市場は米国よりも大きいのも要因のひとつだが)。

日本企業は何十年もアメリカ市場での存在感を高めてきた、1981年にアメリカが日本に対し自主輸出規制を課し米国への輸出を制限するように日本に求めた後もだ(これらの製作により日本の自動車メーカーは米国国内での製造を本格化させる)。
また多くの外国メーカーが日本での販売台数を伸ばしており、日本の貿易政策に関してほとんど苦情を訴えていない。

日本の米国車輸入台数は2013年から2016年にかけて15%減少して19,933台になったが、欧州連合(EU)からの輸入は同期間に5%増加し251,115台に達したという。特にメルセデス・ベンツやBMWのようなブランドは2012年から2016年の間にそれぞれ60%と23%の伸びを見せた。

アメリカの自動車メーカーが怠っている事

我々は東京で新しく開設されたBMWディーラーを訪ね、ヨーロッパの自動車メーカーが米国の自動車メーカーより日本でうまくいっている理由を調べた。

新しくオープンした販売店は東京湾に面した2020年に予定されているオリンピック会場の近くにあった。ディーラーに入ると、たくさん並んだテーブルに座って特別なコーヒードリンクとデザートを注文できるネスカフェが運営するコーヒーショップに出会う、そこは車に興味のある人だけでなく誰もが心地よく過ごせる空間が広がっていた。

そして広々としたショールームには洗練された車と自転車が並び、別のショールームには車のアクセサリーやBMWの記念品の販売が行われていた。さらにここでは週末に子どもたちを招きリモコンで操作する車で遊んでもらうイベントなども開催しているという。

BMWグループジャパンのCEO、欧州ビジネス協議会の自動車委員会委員長、日本自動車輸入協会会長のPeter Kronschnabl氏はこう語る。

日本では"おもてなし"が何事においても重要だ。それを理解しなければ日本市場で成功するのは非常に難しいだろう。


Peter Kronschnabl氏によるとBMWは3年前に日本市場での販売努力を倍増させることを決めていたという。そして実際にディーラーネットワークの一新に5億8000万ユーロを費やした。

今はBMWのディーラーに入ると挨拶と共に出迎えられ、販売されている車の特徴を余すことなく伝えることができる"製品のプロフェッショナル"が接客してくれる。彼らはまたそれまでの販売員がセールストークの際にピッチが速くなり過ぎる傾向にあったことを改め、日本人が安心して聞いてくれるような日本人好みの話し方に変える努力までしているという。

  BMWは従業員が顧客とより親密な関係を持つことができるように販売プロセスを改善する努力を行っていると彼は語った。車を購入した顧客の家に車を届けることはもちろん、新車を購入する顧客の一部が望む新車記念式典の専用の送り口まで用意しているとのことだ。


そして当然のことながら日本市場向けに変更しなければならない特定の仕様もあるがその対応も抜かりないという。

日本は高度に都市化された社会であるため車は狭い場所に駐車されることが多く、車は軽量で小型であることが望まれている。そのため例えばBMW 3シリーズの車のドアハンドルなどは日本市場向けに他国よりも若干狭くなっている。

しかしこのような変更を必要としていてもこれは貿易障壁ではないと彼らは考える。それは消費者の好みであり、それに対しブランドは適応するか、無視するかの選択が可能というだけなのだ。

BMWは日本がまだ世界最大の市場の一つであると考え、これらの仕様に適応することを決めた。貿易障壁に関し苦情を訴える米国企業がどちらを選んだかは明白だ。彼らは同じような努力をしていないのだ。

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海外の反応

theatlantic.com、 reddit.comのコメント欄より: ソース 、 reddit.comのコメント欄より: ソース


GypsyHavok73 日本人は絶えず修理が必要な劣悪な製品を購入するアホではないからさ。

TurboSalsa え、じゃあ日産はなんで売れてるの?

Moynia ...

EK71'14 Fiesta OH FUCK

GeorgeP_retired なぜ売れないか? 日本に住んでいたアメリカ人なら誰もが知っている、日本のメーカーはアメリカの文化や消費者の嗜好、習慣などを研究しそれを製品に反映させてきた。だが多くのアメリカ企業はアメリカ人向けの製品をそのまま日本に持ってきて日本の消費者が受け入れることを期待していた。なんの冗談だろう?

しかも日本の消費者向けに作ったという製品は日本人のために一からデザインされたのではなく、アメリカの製品を少し修正しただけの代物だった。これはアメリカの自動車産業が輸出型ではないから理解できる面もあるが、日本人がなぜアメリカのものを買わないのかなどと不平を言うべきじゃない。

movingse30 日本の"おもてなし"のレベルは驚くばかりだからなぁ。アメリカのディーラーに日本のそれの半分でも客を思う気持ちがあればと思うわ。

daanno2 RobertSF アメリカ人はどれだけ安いかしか気にしないからな。日本の"おもてなし"がアメリカのディーラーに導入されてもどうなることか... そんなものより少しでも安い方をありがたがるはず。

Dapman02 車のサイズと燃費だろ。日本勢の車より競争力のある小型車ってアメリカ勢にはほとんどない。アメリカの車は一般に大きくて日本の都市の道に適していない。

pure_racePorsche 日本に住んでいるけどここでは本当にドイツ車以外の外車は人気がない。大きな理由の1つは何か車に問題が起きたとき外車だとパーツを手に入れることができないかもと人々が恐れているからだ。日本製はつまりパーツがすべて地元で手に入れられることを意味し、自国の車は維持費が安いという印象を人々に与えている。

もう一つの理由はアメリカ車は大きなエンジンを持っているとみなされていること。日本の年間自動車税はエンジンのサイズに基づいているからエンジンが大きくなればなるほど年間に支払う税金が増える。これは日本でいわゆる"軽自動車"がとても人気がある理由の1つだ、税金という観点から大きなメリットがある。

そしてアメリカ車は信頼性が低く、燃費が悪く、一般的に良いとは言えないと思われている。それは昔の話だし今は違うと言いたい人もいるだろうが、まぁステレオタイプだわな。

nozicumforts それとつい最近までアメ車は日本で左ハンドル車しか販売してこなかったという要素もある、今でも左ハンドルのみの販売をしている車種もあるからな。

Supercars_Official まったく人気がないわけじゃない。日本には古いダッジやインパラ、ホットロッドやアメリカ製のバイクが好きな熱狂的層がいたりもする。

budra47795 シボレー・アストロ(GM製ミニバン、1985~2005年に製造・輸入された)とかビックリするぐらい日本にあるよな、日本に輸入されたアメ車で一番売れたんじゃね?

gardenofsound5 アメ車好きはかなりの数がいる、古いのだけだが...

pure_racePorsche まぁつっても一部のマニアだけの話であって、市場の1%にも満たず"人気"とは程遠い。

MM__FOOD 日本人は日本の自動車産業に強い誇りを持っている、彼らは何の疑いも持たずに日本製の自動車を購入する。同じ製品でも日本製の選択肢があれば他の国で作られたものを選択する可能性は低い。

putin32 そやね、それに日本人はアメリカ人が持っているような自国のものを嫌悪するような感情を持つ人がいない。彼らは自国の自動車産業を誇っている。

kuroyume 自国の車を誇りに思ってるってのは絶対あるよな、80年代/90年代/00年代にクソに次ぐクソを見せられてきたアメリカとは違うのだ。

Jim QuinnX アメリカ人も昔は皆国産メーカーを誇りに思い忠実だった。だがデトロイトはこの信頼を裏切った。

彼らは燃料噴射装置やディスクブレーキ、ラジアルタイヤ、腐食からの高度な保護、燃費などの革新に投資してこなかった。彼らは車に安い素材を使用していたからアメリカの車はディーラーに届く頃にはシャシーが錆に覆われた状態ということが頻繁に発生した。

私は古い世代の人間だから何度もアメリカ車を購入してきたがどれも酷い車だった。そしてアラブ石油危機で我々の世代は外国製の車に目を向けるようになった。人生が遥かに良くなったのを覚えている。毎朝車のキーを差込みひねれば必ずエンジンが始動した。毎回だ、それだけで天国にいるような気分だったさ!

それ以来トヨタしか乗っていない。アメリカの車が改善したと読んだことがあるがもう一度試してみるという考えは起こらない。虐待を理由に離婚した配偶者と再婚することを考えるようなものだ。

日本車は常に顧客を裏切らず、人々のその忠誠心は理にかなっている。一度失われた信頼は取り戻す事は難しいものだ。

deleted アメ車が人気あるのってアメリカだけじゃ...

antxmod でも中国じゃビュイックが人気だろ。

merelyadoptedthedark GMの販売台数はアメリカより中国が多いくらいだしな。

taratarabobaraMazda 果たしてアメリカで製造されず販売もされていない、中国人のためにデザインされ中国人の手によって製造されている車をアメ車と呼んでいいものだろうか?

_Skylake_ んなこと言ったらアメリカで造られている日本車だってそうだろ。

DarkMatterM43000GT ヨ…ヨーロッパではアメリカのマッスルカーの人気があるから!

deleted ヨーロッパにおけるアメ車全体のシェアは2%にも満たないのだ... ヨーロッパの5か国以上に住んできたけどアメ車は人気とは程遠い。

pblood40 フォードはイギリスで13%、ドイツでも8%のシェアがあるから。

taratarabobara そりゃフォード・ヨーロッパだろ? ドイツで欧州向けに開発されアメリカ外で製造されている彼らはアメ車というか欧州車だ。

markyymark13 ってかそもそもなぜアメ車を買おうと思うよ?

Back2Natureality こと大衆車において日本の右に出るものはいない、唯一対抗できそうなのはドイツくらいだ。

bobagopa 長年クソみたいな車を作っておいてなにを…

a6mzeroToy 品質の一言。

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“Ford Mustang Shelby GT500” by Bruno RS is licensed under CC BY 2.0