ドイツ連邦共和国の国際放送事業体『DW:ドイチェ・ヴェレ』より

ヨーロッパ、アジアでの高速鉄道受注戦争で中国と日本と対峙する

Europe faces China, Japan in high-speed rail battle in Asia

"マレーシアとシンガポールを結ぶ鉄道プロジェクトに入札するためヨーロッパの鉄道大手はマレーシアの企業と提携、中国の国有鉄道車両メーカーCRRC(中国中車)と日本と対峙する。"


高速列車は過去数十年にわたり中国がいかに自国のバリューチェーンを、国営企業の事業を様々な活動に細分化しそこから事業の競合優位となる強みを把握することで事業戦略を決めてきたかを表している。

今日ではビックスリーと呼ばれるカナダのボンバルディア・フランスのアルストム・ドイツのシーメンスの鉄道部門売上の合計を遥かに凌ぐ世界最大の鉄道車両メーカーとなり、特に高速鉄道網において世界の鉄道市場を支配している。中国が国内に敷いた高速鉄道のレールの長さは2万km以上、中国の高速鉄道の営業距離は既に世界の総距離の約65%を占めている。



また中国共産党の「高速鉄道外交」の一環として中国企業はタイやハンガリー、ルーマニア、セルビアなどに高速鉄道の専門知識/技術を販売し、過去数年の間にアジアだけでなくヨーロッパ、さらには北米諸国にその鉄道を忙しなく輸出している。

さらに中国政府は国内の鉄道会社2社の合併を進め2015年にCRRC(中国中車)を創立し、年間売上高300億ユーロ(352億ドル)鉄道部門売上の合計が世界一の怪物鉄道コングロマリットを誕生させた。

CRRCの出現はこれまで欧州、日本、北米の限られた数の企業の領域であった鉄道市場における競争の激化を意味していた。この市場の変化を受けてドイツの大手シーメンス社とライバルであるフランスのアルストム社はこのCRRCと戦うために昨年、鉄道事業を統合することを決定した。



中国の鉄道会社は既に英国とチェコの鉄道プロジェクトの入札に勝利しヨーロッパに進出している。また英国の北にある都市とロンドンを結ぶ大規模な鉄道プロジェクトにも目を向けていると伝えられている。

その結果、欧州の鉄道会社は大きな競争圧力に直面しているのだ。シーメンスの最高経営責任者ジョー・ケーザーは欧州の鉄道会社間の協力を強化することを繰り返し求め、中国のCRRCの規模を考慮すると規制当局がシーメンス社とアルストム社の鉄道事業合併契約に反対する余地はほとんどないと述べている。

この「鉄道界の欧州連合」の誕生が中国の国営鉄道会社CRRCとの競争にどの程度効果があるかはまだ未知数だ、だがマレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道プロジェクトの受注競争においてはこの分野で優位性を持っていることを示すことができたようだ。

アルストムとシーメンスはこのプロジェクトに入札するために他の欧州企業数社と共同で強力な共同事業体を結成しさらにマレーシアのエンジニアリング会社ジョージ・ケントと提携した。

AFP通信はマレーシア証券取引所に提出された共同声明を引用し「このパートナーシップは欧州の技術と経験、そして現地企業の持つ地元の経験とが組み合わさった強力なチームになるだろう」と報じている。

総開発費が1兆6000億円となるシンガポールとマレーシアの首都クアラルンプールを結ぶ350キロメートルの高速鉄道事業は2026年までの完成を目指しており、応募締め切りは今年中頃で結果は年末に発表の予定となっている。

欧州連合(EU)は共同事業体を組織し現地企業と協力することで中国や日本などのアジアのライバルを打ち負かそうとしているのだ。



これまでアジアでの高速鉄道の受注競争となるとほとんどの場合中国と日本が中心となってきましたがこの新しい共同事業体は状況を変えます、今回のような非常に巨大で注目度の高い事業の受注競争に競争力のある第三者として参加できるはずです。」とEUと中国の関係と中国の世界的な直接投資とインフラ外交に焦点を当て分析してきたリサーチ会社Rhodium Groupの顧問Agatha Kratz氏は語る。

だが現時点では最終的に誰がこの契約を取ることになるのかを予測することは困難だ。Agatha Kratz氏を含め多くの専門家が、ヨーロッパの鉄道メーカーがアジア、特に日本や中国やそれらの国の企業との関係がはるかに強く長期的な関係にある東南アジアで競争力を発揮するのは難しいと指摘する。

これらの大型の高速鉄道契約では時に政治的/外交的要因が部分的に影響を及ぼす、そして欧州諸国の政府はこの地域の外交においてあまり重要なプレイヤーではない。」とAgatha Kratz氏は我々DWに語った。

だが彼女はこうも指摘する。 「しかしこの状況は逆に欧州の共同事業体にとって機会にもなるかもしれない。"中国でも日本でもない" 非政治的な選択肢として提示することで地元政府は外交摩擦を避け、この地域の2つのビッグプレイヤーの間から選ぶ事によって生まれる余計な手間を省くことができる。



だがそれでも欧州にとっての不安材料は残る。巨大な高速鉄道プロジェクトにはその規模に比例して相当な予算と受注する側の国による政府支援を必要とするが、欧州は日本や中国と比較してプロジェクトに多大な資金をもたらすことができない可能性がある。

中国政府はこの分野を戦略的に重要視しており、中国の国営鉄道会社が海外で入札する際には国家開発銀行(CDB)や中国輸出入銀行(EXIM)など中国の政策銀行による低利の融資によって支援される。

一方で日本の安倍晋三首相は自国の名高い高速鉄道である新幹線を積極的に売り込んでいる、それも数十億ドルのソフトローン、緩やかな貸付条件の借款によって潜在的な顧客に対し魅力的な提案をしている。

Agatha Kratz氏は欧州企業には事業費支援という点において課題があるとしているが、公開競争入札をベースにしたマレーシア - シンガポール間の高速鉄道計画のようなプロジェクトについては競合他社とほとんど条件は同じであると述べた。

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海外の反応

facebook.com, sg.news.yahoo.comのコメント欄より: ソース , ソース , ソース


riza 日本と中国ばかりってのもアレだしな、なんにせよ競争相手が増えるのはいいことだ。

Pungal 入札者が増えればそれだけ腐敗が増えるけどね、インドネシアでもシンガポールでも賄賂が増えるって喜んでる連中がいるんだろうなぁ。

Mickey ヨーロッパの会社は賄賂を払わないからこの入札は勝てんよ。

david まぁヨーロッパが参入してもどうせ勝てないけどな。価格が高いし技術的にも中国に劣ってる。今の中国の鉄道建設は技術においても専門知識においても、操業システムや保守管理、車両管理の実績、鉄道安全記録においても世界のどの国よりも先行している。

Charles 日本がベストな選択肢、安全だし。やっぱり事故が起こらないのが一番だ。それに高速鉄道において最も先進的なのも彼らだ。

Passo アジアの鉄道がいい。劣っているヨーロッパの鉄道システムなんかいらん。

halim ヨーロッパの鉄道に優位性なんてないし製造元が遠く離れているからパーツの取り寄せに時間も費用も掛かる。

The Real Sum Siew ヨーロッパの鉄道は過大評価されているし馬鹿みたいに割高だ。それに鉄道安全記録においてもドイツやスペインなどで多数の死者を出す事故を起こしてる。

V3 この大規模事業は中国が勝ち取るだろうね、彼らの鉄道は傲慢なヨーロッパ人のそれよりも確実に優れている。

David Chow そして実際に建設作業をするのは地元の人間ではなく中国人になるんだろ?

Rob Benter 近年この地域では中国による大規模プロジェクトが次々に出現してきているが日本は依然として大きな足場を維持している。それに中国は現在より高速の鉄道システムを持っているかもしれないが、日本の高速鉄道システムを建設し運用する長年の経験はこの競争をより有利に進めさせるだろう。

Ray Toei 日本が勝つことを願っているよ、彼らはシンガポールに工場を建設するっていうしさ。

Eugene Wong 入札には各評価要素にウェイトがあるものだ、そして私はそれが費用だと確信している。その点において中国は有利だ。そして中国はこの両国に強い影響力を持っている。だがそれは同時に客観的な評価ができるかどうかの疑問を生む。シンガポールは大丈夫かもしれないがマレーシアは自分たちの主張を通し続けることができるだろうか? それが大きな問題だ。

Robert Chen お願いだから運用実績や安全性、維持管理の面を重視してくれ、安けりゃいいってもんじゃないんだから。

Alan Chapman 実績で選ぶならどう考えても日本でしょ。

Mary Cheah 長期的な視点から見れば信頼性があり責任ある仕事をしてくれるところが望ましい。

Wie Lim 日本は中国よりも安い価格を提示できない限り無理だろう、そして政治的な理由からも中国は優位に立っている。ヨーロッパの事業体が勝利すれば余計な頭痛の種が減るかもしれんが日本や中国に勝っていることがこれといってないのがねぇ。

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“0B6X8331” by The United States Army Band is licensed under CC BY 2.0