アメリカの政治専門紙「ザ・ヒル」より

教師を銃で武装させる? なら日本に聞け

Arming teachers? Ask Japan
この記事は2018年2月14日にアメリカのフロリダ州パークランドの高校で17人が死亡した銃乱射事件を受けてのものです。事件の容疑者は退学処分になった19歳の元生徒で負傷し拘束されたとのこと。ちなみに2018年に入って死傷者の出た学校乱射事件はこれで6件目だとか。




2018年2月14日にアメリカのフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で発生した銃乱射事件の後に浮上した改革案の中には、アメリカの学校の教師を銃で武装させるという物議を醸すアイデアがある。
アメリカの一般大衆紙『USAトゥデイ』より
フロリダ州上院委員会が教師を武装させる提案を承認し、対人殺傷用銃器の規制案を拒否する
Florida Senate committee approves proposal to arm teachers, rejects assault gun ban - 2018/2/27
https://amp.usatoday.com/amp/375593002?__twitter_impression=true




この提案は激しい論争を生み出し、銃撃事件が発生した際には教育者を即興のファースト・レスポンダー(第一対応者、災害や事件に対して最初に対応する人)に転向させるという考えを多くの人が批判した。

だが教師を武装させるという考え方はそれほど"とっぴ"なものではない。これは米国以外の、銃による事件が全く発生していない地域でも実施され実際に成果を収めているのだ。

日本の教育委員会は、2005年に小学校に包丁を持った不審者が侵入し3人の職員を刺した大阪府寝屋川市立中央小学校教職員殺傷事件など2000年代初めに相次いで発生した学校での刃物による殺傷事件を受けて、全国の学校構内のセキュリティを強化するキャンペーンを実施した。

ゲートが設置され場所によっては警備員が学校の敷地を巡回するよう配属され、そして武装した侵入者が来た場合の最終防衛線は教師自身となった。

日本の公立学校の教師は緊急時にはただ教室のドアを閉めて不審者の教室への侵入を防ぐだけでなく、生徒を害する危険な人物を積極的に追跡し、鎮圧し、無力化するように訓練されているのだ。



これらの教師は何も手にせずに対応するわけではない、彼らは Man catcher とも呼ばれる封建時代のサムライが使用していた非殺傷性の異形の武器、長柄の"さすまた(刺股)"を装備して、あるいは剣道の練習に使用される木製の訓練用の剣である"木剣"を装備して不審者に対処する。

日本の学校では毎年パットで全身を保護したスーツを身に着けた地元の警察官とフルコンタクト、寸止めではなく攻撃を相手の体に直接当てる侵入者対応訓練を実施しており、これを通じて教師は人を捕まえる技術を訓練し、必要な場合は木剣などで侵入者の手を無力化する訓練をする。

Japanese non-lethal police weapon.jpg 日本の警察で使用するジュラルミン製の盾と、アルミ製の刺又。この刺又の柄は伸縮式で、写真は柄を縮めた状態である。By Chris 73 / Wikimedia Commons, CC 表示-継承 3.0, Link

中央大学高等学校での「さすまた」を使用し地元警察と協力して行われた不審者侵入時の対応訓練の様子
不審者侵入対応訓練を行いました。|お知らせ|中央大学高等学校より引用


2011年に毎日新聞社が全国の公立小学校を対象に実施した調査によれば公立小学校の約9割が"さすまた"を常備しており、実際にこの政策により人命が救われた。 2011年だけでも教師が学校の建物内にナイフを持って侵入した不審者を取り押さえ武装解除させることに成功した事例が茨城県と愛知県で2回あった。

もちろんアメリカの教師が武装する場合と日本の教師が武装する場合では明らかに1つ大きな違いがある、アメリカとは違い日本では教師が銃ではなくナイフを持った侵入者に対処することを想定しているということだ。

しかしながらこの日本の例は、考えられないことが起こった場合に武装した教師の存在が生徒の安全に差を生むという概念にコンセプトの証明を与えている。

しかしトランプ大統領が示唆しているように、9/11以降に航空会社のパイロットがそうしたように、銃火器でアメリカの教師を武装させるのが果たして正しいのだろうか?

ワシントンポストの記者であるPaul Farhi氏は以下のように指摘する。


少し考えてみよう、米国には約10万の公立学校と320万の教師がいる。仮にその全ての教師を武装させた場合、どれだけの事故が起こるだろう? それにより起こりうる事故が生み出す死者やけが人はいったいどれほどの数になるだろう?



いったいどれだけの *意図的* な死や怪我が起こるだろう?(いざこざや自殺などで) 2012年にアメリカ東部のコネチカット州で起きたサンディフック小学校銃乱射事件以降、400の学校で銃乱射事件が発生し400人の死傷者が出た。



320万もの銃が新たに学校に導入されることで死者や怪我人が増えることを *抑止* するのか、それとも潜在的に死者や怪我人を増やす新たな因子が導入されるだけなのか、問うてみよう。



経済的な面を見てみよう、良い拳銃は約300ドルほどする。それを300万倍すれば9億ドルになる。さらに銃のトレーニング、保管、保険などを含めれば10億ドル以上必要になるだろう。学校に10億ドルを費やす方法としてこれ以上良い方法はないと思わないか?


教師を銃器で武装させるアイデアを批判する人たちはすぐにアメリカ中に何百万人もの"銃を携帯した教師"が生まれる地獄のような光景を想像しているが、教師を"武装した抑止者"として使用するという考えはメリットがないわけではない。

日本では上記のサスマタと木剣は教室ではなく学校の職員室に保管されている。

米国でも同様のアプローチで、銃器を教室に持ち込むのではなく学校の事務所などアクセスしやすく安全に保管できる場所に銃を保管し、認可された人だけがそれらにアクセスできるという形をとればよいのではなかろうか?

対応する人間を限定することで、緊急時には銃器を使用するよう任命された選抜教員は日本がそうしているように地元の警察と訓練して彼らの反応や技術を磨くことができる。

また銃乱射事件が発生した際に教師が犯人と間違われ警察や軍に誤って撃たれないよう学校側は銃器にアクセスできる学校内の教師の名前や写真などを地方の警察署に登録することことも必要だろう。



アメリカの教師の中には過去に武装することで学校内で発生した銃乱射事件の被害を最小限に抑えたことがある、1997年にミシシッピー州のパール高校で起きた銃乱射事件では教頭のJoel Myrick氏が事件発生直後に自分の車に保管していた銃を取り、犯人を取り押さえたのだ。 (パール高校で起きた銃乱射事件のwikipediaへのリンク(英語))

教師を銃で武装させると聞いて全ての教育者が銃を堂々と携帯するようになる、不慮の事故で余計に被害が増えるなどと考える人々はその短絡的な考えを脇に置くべきだ。責任をもって安全に銃器を学校に保管することは可能であり、学校での分別ある銃器ポリシーを立てることは完全に可能だ。

脅威に直面した際の警察の介入をより効率的にするなどの予防措置はもちろん好ましい解決策ではある。だが警察が対応を失敗した場合や武装警備やキャンパス警察という選択肢がない場合などを考慮し、精神的に安定した銃の経験のある教師を選び、教室外に銃器を確保し、地元の警察と協力してその選ばれた教師が訓練を行うことは合理的な"最後の手段"である。

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海外の反応

thehill.comのコメント欄より: ソース


Kinadi Ini 子供たちの近くに銃があるなんていう状況を決して許してはならない! 彼らが銃を手に入れることができないようにすることの方が重要だ、真に守るべきは未来を担う子供たちであり全米ライフル協会なんかじゃない。

Satan Messiah 教師に武器を持たせクラスを守らせるなどということを強いるなんて決して許されるべきじゃない。

Kirb 給料も低いしな。

Jai151 教師に銃火器を持たせることには同意できないけど教師に銃ではなく非殺傷性の武器を持たせトレーニングさせるってのは面白い意見だ。銃じゃなくても電気でしびれさせるテーザーガンとかゴム弾とか色んな選択肢がある。それに教師側からすれば武器を子供たちが盗む恐怖が低減されるし、逆に子供たちも自分たちを殺すことができる武器を持った教師に教育されるのは居心地が悪いだろうし不安や恐怖が低減される。

Jai151 • 2 days ago AR-15、要はM16自動小銃のことだけどコレに対しどれだけ効果があるか...

Jai151 効果はあるさ、しびれさせれば銃を撃つこともできんだろ。

deecee 非殺傷性の武器は有効射程範囲が短い、こっちが攻撃する前に銃を持った犯人にやられる。

Jai151 環境による、学校の建物内なら非殺傷性の武器でも十分なはず。特に相手がアサルトライフルを持っていたなら操作性はこっちが上だ。

A. Deplorable つまり日本は武器を持った侵入者が抱えているかもしれない武器より優れた武器で教師を武装させることの方が良いと信じているわけだ。

...同じことをアメリカで言ったら狂ってるとか言われるな。

Robert Smith 私は学校の教室に教師が銃を持ち込むというトランプのアイデアに反対しているわけではないけど、これは長期的な解決策ではないと思うし実行可能な解決策とも思えない。やはり教師は教えるのが仕事で、戦うことは専門の人に任せるべきだと思う。

金属探知機やカメラ、武装警備隊(警察官の駐在所を学校内に設けるでもいい)を学校に配備するのを優先すべきだ。

audaxminor そりゃ襲撃する側からしたら躊躇するかもしれんけど、そういうのってお高いのよ。
銃乱射事件があったサンディフック小学校は今は改装して要塞のようになったけど5000万ドルも費用がかかったんだぜ?

ElliottKitsap 銃による犯罪はより多くの銃で解決か。ガソリンが引火して起きた火事にガソリンを突っ込むようなもんだ。

Chaz Hoosier この馬鹿げたアイデアを未だに押しているという事実は、共和党員たちがどれだけ実態を把握していないかを示している。

Bob 学校なら割とアリかもね。でも映画館や教会やコンサート会場じゃどうするよ?

ColinThesnail サスマタは全ての教会に設置してもいい、先端にお金を集める用の袋を装着すれば信者からお金を集めるときにも便利だし。一粒で二度おいしい的な?

deus "しかしながらこの日本の例は、考えられないことが起こった場合に武装した教師の存在が生徒の安全に差を生むという概念にコンセプトの証明を与えている。"
日本と米国じゃ状況が違い過ぎる、飛躍しすぎだよ。

audaxminor 教師を武装させても十中八九は善良な人々が相も変わらず殺されるだろう。まぁ多少? ほんの少しは被害が減るのかな?

Tripp 子供たちを守る最後の防衛線は教師たちだ、彼らを武装させるのは正しい。

Kirb ならそれに応じた給料を与えるべきじゃね?

RoswellCoug この記事の主張に賛成。精神的に問題のない選ばれた教師のみが訓練をし銃へのアクセス権を持ちいざという時には戦うということに何の問題も感じない。

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