フランス政府所有の国際ニュース専門チャンネル『France 24』より

日本の秋田犬が外国人の心をとろけさせる

Japan's Akita dogs melt foreign hearts - 20 April 2018

"近年、日本の秋田犬を所有する外国人の数が急激に増加しており、そのふわふわで尖った耳を持つ愛らしい犬に対する需要は日本国内よりも海外の方が上回っている"


ハリウッドの俳優であるリチャード・ギア、フランスの映画スターであるアラン・ドロン、平昌五輪でフィギュアスケート女子シングル金メダルを獲得したロシアのスターであるアリーナ・ザギトワには共通点がある、そう、彼らは皆日本の秋田犬を熱愛しているのだ。

そして秋田犬に夢中になっているのは彼らだけではない。近年、日本で最も有名な日本在来犬種の一つであるこの秋田犬を所有する外国人の数は急増しており、その海外需要は国内需要を上回っているという。

今年初めにはアリーナ・ザギトワ選手の「秋田犬を飼いたい」という発言が様々な報道機関で見出しを飾った、彼女は五輪前に日本で調整している間に秋田犬を雑誌で見つけ気に入ったという。これを受け秋田犬発祥の地である秋田県大館市の秋田犬保存会はザギトワ選手に秋田犬の子犬を贈ることを約束した。

彼女のこの可愛らしい犬に対する熱愛ぶりは山口修 氏(64歳)からすれば驚くことではないという、彼は秋田犬専門のブリーダーであり過去20年にわたって外国人の犬好きに秋田犬を供給してきた。

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「以前は日本のお客様が半分、海外が半分くらいだったのがここにきて海外の比率が上がってきています。」

山口氏は東京から北に約100キロメートルに位置する群馬県高崎市のガーデンでAFP(フランス通信社)にそう語った。

天然記念物の秋田犬の保護や繁殖などを目的とする日本の公益法人『秋田犬保存会』 も海外からの需要の急増を確認している。海外の犬所有者が登録した秋田犬の数は2005年にはわずか33件だったが2013年には359件に増加し、2017年には3,967件に急増した

山口氏は常時約20匹の秋田犬を飼っており、その多くはまだ小さなフワフワのボールのような子犬だ。そこにいた白や茶色、赤みを帯びた毛の子犬たちはお互いにじゃれあったり、母犬に鼻を押しつけ食事をねだったりしていた。

もともとは狩猟種であり、その起源と名は同名の日本北部の地域『秋田』に由来する。犬の中でも大きい種類に入り、成犬になると高さが約60〜70センチメートル、体重も40〜50キログラムにまでなる。ピンと伸びた目立つ耳、くぼんだ目、どことなく熊のような顔立ちが特徴だ。





秋田犬は日本政府が "天然記念物" と認定する6種の日本犬の1つだ。だが日本国内の秋田犬所有者は減少しており、一年間に登録される数は1970年代には4万だったものが、ここ10年で3000にまで落ち込んでいる

「日本の住宅事情が秋田犬を飼うことができる人の数に影響を与えています。」

秋田犬保存会の東京支部長である川北康介 氏はこう語る。

「実際に秋田犬を所有したい人はたくさんいます。ですがマンションやアパートの中には "ペット禁止" という規則がある場合が多く、また住んでいる場所が狭いなどの理由で諦めています。秋田犬ほどの大きさの犬を飼える人は限られているのです。」
そしてその国内の需要の減少を補うのが外国人オーナーだ。ブリーダーの山口氏は年に20回ほど海外まで赴き、秋田犬を新しいオーナーに自ら引き渡すと言う。

彼の犬はそれぞれ約20万円で販売されており、顧客のほとんどはアメリカ、ロシア、中国だがフランスやエジプト、クウェート、インドネシアからも注文が多く、彼は実際にオーナーの元まで訪れ子犬たちにとって適した環境を用意できているかを確認しに行くという。

「秋田犬は飼い主に良く反応します、それがこの犬の最も魅力的な特徴です。」と山口氏は語った。

「彼らは飼い主がどのように感じているのかをちゃんと理解してくれます。そして彼らは忠実でもあります。」

秋田犬の忠実な性格は有名で、特にハチ公という犬の実話は数十年前から現在に至るまで広く知れ渡っている。その秋田犬は1920年代に東京の渋谷駅で仕事から帰ってくる主人を辛抱強く待つことを日常としていた。ある日、東京の帝国大学で教鞭を振るっていた飼い主は大学内で突然死去する、だがハチ公それから10年にわたって同じ駅でずっと主人を待ち続けていたというのだ。



photo via varesesarabande.com ハチ公は新聞報道によって知れ渡りその忠誠心を称える銅像が駅前に設置された、忠犬ハチ公像は今も渋谷駅のシンボルとなっている。またハチ公の物語は飼い主である教授役にリチャード・ギアを迎え2009年にハリウッドで映画化された。

「映画公開後、秋田犬は海外でとても人気になり始めました。」

10代の頃に秋田犬に惚れ込みこれまでに30匹以上飼ってきた秋田犬保存会の川北氏はそう語る。
海外での人気の高まりは秋田犬ファンの著名人のおかげでもある。盲目の聖女、その生涯を社会活動にささげた事で知られるヘレン・ケラーは日本を訪れた際に秋田犬を米国に連れて帰り、犬好きで知られるロシアのプーチン大統領も秋田犬を秋田県知事から贈られ話題となった。

その人気の高まりは凄まじく、中国では秋田犬が引っ張りだこになっており、一部のペットショップは血統書を捏造して "偽物の秋田犬" を高値で売りさばく事態にまでなっているという。

ちなみに川北氏によれば赤毛の秋田犬が特に外国人には人気とのことだ。



秋田犬専門のブリーダーの山口氏は海外での秋田犬に対する人気が高まり続けていることを歓迎しているが、それが一過性の流行っで終わらないでくれることを願っているという。

「秋田犬のブームが終わるようなことにはなってほしくありません。それが続いてくれればと思います。」

そしてそれを現実のものとするためにも、日本のオーナーは秋田犬という品種を存続させる "大きな責任" を持っていると彼は言った。

「起源となる国がその生産を止めてしまっては、秋田犬が繁栄することもないでしょう。」

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