建築デザイン情報サイト『ArchDaily』より

磯崎新とは何者なのか? 2019年プリツカー賞受賞者について知っておくべき20のこと

Who is Arata Isozaki? 20 Things to Know About the 2019 Pritzker Laureate - 5 March, 2019

プリツカー賞とは?

プリツカー賞はアメリカのホテルチェーン「ハイアットホテルアンドリゾーツ」のオーナーであるプリツカー一族が運営するハイアット財団 (The Hyatt Foundation) から建築家に対して授与される賞である。

1979年にアメリカ人実業家でハイアットの事実上の創業者であるジェイ・プリツカー(英語版)と妻のシンディによって設立された。「建築を通じて人類や環境に一貫した意義深い貢献をしてきた」存命の建築家を対象とする。

国籍・人種・思想・信条を問わず、原則として1年に1人表彰している。副賞として10万ドルとブロンズのメダルが授与される。メダルの意匠はルイス・サリヴァンの作品を模したもので、ウィトルウィウスの言葉が刻まれている(1986年以前はヘンリー・ムーアによる彫像であった)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/プリツカー賞




世界の建築界で最高の栄誉とされるプリツカー賞を授与されることになった建築家の磯崎新氏(87)はこれまでにほぼすべての大陸で100を超える作品を残してきた。その豊富で多様な経歴は彼という人間、その人生、そしてその建築を理解する上で疑いなく役立つものである。 (磯崎新氏の代表作はこちらの記事で参照可能だ)

世界規模で活躍する日本の建築家は複数いるが磯崎新氏はその先駆けと見なされており、プロジェクトごとに違う事情、背景、状況、要求に応えるために細心の注意を払うことでヴァナキュラーからハイテクまで様々なスタイルの作品が生まれ、その膨大な作品リストは様式的な分類を超越した異質性を増していった。
ヴァナキュラー:土着のもの/その土地固有のもの/その風土に特有のもの


そんな彼の際立った才能を浮かび上がらせる20の魅力的な事実を紹介しよう。
1. 第2次世界大戦で廃墟と化した日本が磯崎新の建築概念の原点だった

彼が12歳の時に広島と長崎に落とされた原爆が建築物に対する考えに大きな影響を与えたという。建築物とは恒久的なものではなく一時的なものであり、永遠に向かいモノを建てるのではなく今を生きる人々が喜びを感じられるようなモノを建てることこそが重要との考えを持ったそうだ。



2. 磯崎新の建築家としてのキャリアは1987年にプリツカー賞を受賞した丹下健三に師事することから始まった

1954年に東京大学工学部建築学科を卒業後、磯崎新氏は9年間にわたり丹下健三に師事し1963年に自らの会社Arata Isozaki&Associates(磯崎新アトリエ)を設立した。



3. 磯崎新は日本国外で活躍する日本の建築家たちの先駆者だった

彼の日本国外での初期の作品としては1986年のロサンゼルス現代美術館、1991年のティーム・ディズニー・ビルディング(ウォルト・ディズニー・カンパニーが経営する世界最大のリゾート『ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート』の管理本部)などが挙げられる。


(ティーム・ディズニー・ビルディング )
team Disney Building (1991). Image © Xinai Liang



4. 磯崎新はその60年以上にわたるキャリアの中で100を超える作品を手掛けてきた

日本はもちろんのことスペインやアメリカ、中国、イタリア、カタールなど世界中で重要な公共および文化的建造物の建築プロジェクトを行ってきた。


(磯崎新の主な作品 - カタール・ナショナル・コンベンション・センター)

Embed from Getty Images



5. 磯崎新はシルクスクリーンとサーマルプリントを通じた建築設計表現の提唱者であり先駆者だった
6. 磯崎新はその作品の中に『間』という概念を取り入れている

『間』とは物と物の間の空間のことであり、磯崎新は空間/空白/余白も大事だがこの『間』がそれなりよりも重要だと語っている。


(磯崎新の主な作品 - スペイン バルセロナのカルチャー センターであるカイシャ・フォーラム)




7. 磯崎新の作品の中には都市構想もある

彼は建物だけでなく都市そのものもデザインしており、例えば1962年に手掛けた未来的なプロジェクト「シティ・イン・ザ・エア(空中都市)」では急速に進む都市化への答えとして、老朽化した都市を第一層としてその上に新たな層を築く都市構想を提案している。

(磯崎新による空中都市)




8. 磯崎新は専門分野の垣根を越えた作品を残してきた

都市デザインに加えてファッション、グラフィック、家具や舞台美術のデザインを手掛けてきた他に作家、評論家、建築コンペの審査員としても活躍し、様々なアーティストとのコラボレーションしてきた



9. 磯崎新は1970年の大阪万博で会期中さまざまなイベントが開かれた「お祭り広場」の装置設計を担当、また「DEME(デメ)」という巨大ロボットのデザインも手掛けた


(磯崎新がデザインしたロボットDEME)




10. 磯崎新の妻は彫刻家の宮脇愛子、70年代から80年代にかけてこの3人目の妻と共同で複数の作品を世に出した
11. 磯崎新は1979年に設立されたプリツカー賞の初代審査員の一員であり1979年から1984年までの間これを務めた


(磯崎新の主な作品 - なら100年会館)
Nara Centennial Hall02s3872.jpg 663highland - 投稿者自身による作品, CC 表示 2.5, Link



12. 1995年にプリツカー賞を受賞した安藤忠雄は磯崎新のことをその世界的な影響力から「日本建築の皇帝」と呼んだ



13. 磯崎新は1927年に建てられたニューヨークの映画館/劇場であるザ・パラディアムが1985年にディスコとして改装される際に内装デザインを担当、マドンナを含む多くのセレブが集うパーティー会場/人気ナイトクラブへと生まれ変わる。なお同施設は1998年に取り壊されている


(ザ・パラディアム)
Palladium, New York, 1985. Photo: © Timothy Hursley, Garvey|Simon Gallery New York



14. 磯崎新は1986年に王立英国建築家協会(RIBA)よりRIBAゴールドメダルを受賞、1996年にヴェネツィア・ビエンナーレ建築展金獅子賞を受賞するなど数多くの名誉ある賞を受賞してきた



15. 磯崎新はグラウンドスクレーパー(Groundscraper)という型を頻繁に用いている
skyscraper(超高層ビル)を横に倒したような、高さはないが横に大きく伸びる建築物


彼によれば超高層ビルが「横になる」ことでその「威圧的な力」が無くなりより「穏やかで謙虚」になるという。



16. 磯崎新は20世紀のラテンアメリカ革命、特にキューバ革命とチェ・ゲバラという存在に非常に高い関心を持っており、チェ・ゲバラが愛用していた星のついたベレー帽までかぶっていた

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17. 磯崎新はそれが属する文化と結びついている建築物を大いに評価し、差異を奪うグローバリゼーションに否定的な見方をしている


(磯崎新の主な作品 - アートタワー水戸)




18. 磯崎新は2011年に現代美術の分野において最も重要なアーティストの1人である彫刻家のアニッシュ・カプーアと共に「アーク・ノヴァ」と呼ばれる巨大な移動式コンサートホールをデザインした



19. 磯崎新が芸術的な影響を受けた人物は多岐にわたる

イタリアのバロックを代表する建築家フランチェスコ・ボッロミーニから 18世紀ドイツの新古典主義建築を代表する建築家カルル・フリードリッヒ・シンケル、ルーマニア出身の20世紀を代表する独創的な彫刻家で『無限柱』という代表作で知られるコンスタンティン・ブランクーシやアメリカ合衆国ロサンゼルス生まれの彫刻家イサム・ノグチなど極めて広い



20. 自身のアイデンティティと建築様式に関して彼は次のように述べている

「私は常に作品に対して "違い" を生み出したいと考えておりそれこそが私のアイデンティティーだと考えます。ただ一つのスタイルを求めるのではなく、常に状況に応じて、環境に応じて。建築スタイルの解は毎回違うのです」

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海外の反応

facebook.com, twitter.comのコメント欄より: ソース ソース


カリフォルニア州・ロサンゼルスの日刊紙『ロサンゼルス・タイムズ』

「イソザキ氏が46人目、日本人としては8人目となるプリツカー賞受賞者に」
ロサンゼルス現代美術館をデザインした日本の建築家・磯崎新氏がプリツカー賞を受賞
「イソザキ氏はその非凡なアプローチで知られており、力強い幾何学的ま形状のものを印象的に配置した建築物を生み出すことで知られている」


カリフォルニア州・ロサンゼルスの日刊紙『ロサンゼルス・タイムズ』

「イソザキ氏が46人目、日本人としては8人目となるプリツカー賞受賞者に」
ロサンゼルス現代美術館をデザインした日本の建築家・磯崎新氏がプリツカー賞を受賞
「イソザキ氏はその非凡なアプローチで知られており、力強い幾何学的ま形状のものを印象的に配置した建築物を生み出すことで知られている」


アメリカ合衆国の非営利・公共のラジオネットワーク『ナショナル・パブリック・ラジオ』 「第二次世界大戦の惨禍の中で育った磯崎新は廃墟となった街を人々が再建していく様に魅了されていった。そして今、何十年とたゆむことのなく改革を続けてきた日本の建築家はその分野で最高の栄誉を勝ち取った」


ウォルト・ディズニー・カンパニー最高経営責任者(1984年 - 2005年)- マイケル・アイズナー 「磯崎新さんは私が昔#Disneyで雇った最初の建築家の一人でした。彼が手掛けた『ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート』の管理本社ビルは素晴らしいです。長さ900フィート、そして巨大な日時計を中心に構成されているこの建物は時代を超越したものを持っています。磯崎さんは本当に素晴らしい建築家であり、先見の明を持った人です」


「ディズニーの建物を上からを見ると、腕時計に見えるようになってる」


プリツカー賞公式アカウント 「2019年プリツカー賞受賞者は磯崎新」




Colectivo Cultural ‏ 👏👏👏👏

WMA Willy Müller ‏ マエストロ(芸術家、専門家に対する敬称)よおめでとう!

Ankit Singh ‏ おめでとうございます!

Michael Likely 私の息子の一人は建築を仕事にしているが磯崎氏は最もインスピレーションを受け続ける建築家の一人だと言っていた。

Navy Blue Media 確かに「おっ」と言わせる建物が多いね。

Samus Aran Brilliant man with a brilliant mind

Mosaddeque Malik 待ちに待たされようやくって感じだな。真のパイオニアにして真のStarchitect(〔世界的に著名な建造物を設計した〕有名建築家)だ!

Syarifah Sadiyah その実力、功績に対して相応しい評価を受けれてこなかった人だがついに来ましたな。得て当然。

Arlinda Rushaj Sadiku Finally 🙂

Tim Laurence これほどまでに時間がかかったことに驚くわ。

Karl Togonon 日本の天才に万歳

Jerónimo Roldán やっとですよ。

Mark H. Englert もっと早くに受賞させるべきだったよねぇ...

David Gianotten ここ何年かで最も納得のいく受賞だよ。彼と共に取り組むことができたハノイでの共同プロジェクトは今までで最高の経験だった。私がこれまでに出会ったどの建築家のよりも影響を与えた真に賢い人だよ!

Ranjith Perera 一体何がこの匠から今回の栄誉を遠ざけてきたのか見当もつかん。

Bobby Pang この建築デザイン情報サイト『ArchDaily』の定期会員が誰かの受賞をここまで素直に歓迎しているのを初めてみたぞ、Haha。

em 彼のデザインはすばらしい。独創的でどこか有機的。偉大な建築家だよ。

wilger48 ‏ 現代建築の良さってのは今一ピンとこない。

Commenter 何がいいのかわからねぇっす...

Jimbo Jive 現代建築家ってのは誰がどれだけラディカルになれるかを競い合ってる連中に過ぎない。ロンドンのかつて美しい街並みを誇っていたが、今や醜いモンタージュのようだ。

gettothechoppaaaaaa 2013年の伊東豊雄、2014年の坂茂と最近プリツカー賞は日本人建築家に気前よく賞をあげ過ぎじゃね? でもまぁこれで日本の偉大な建築家の時代は終わったわけだしいいか。もう受賞するような日本人はいないし。

追記:隈研吾がおったわ...

kitayama 彼がもうちょっと年を取ったら多分授与するんじゃ?

Erin Sharp Newton プリツカー賞が発表した磯崎氏に対する選考委員会の言葉が特にいいね。

「単に現状を複製することはせず、意義深い建築を探求する姿勢は今日に至るまでその作品に反映されている。様式的な分類を超越し、継続的に進化し、そのアプローチにおいて常に新鮮であり続けている」

sameolddoctor Well deserved!!
(その賞は受けるに値するものだ!)

Gerhard Jelinek ‏ これは彼が実力でかち得たものだ、その作品の数々は確かな説得力を持っている

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