ナショナル ジオグラフィック チャンネルより

Returning to Fukushima | Explorer(ドキュメンタリーシリーズ)

Returning to Fukushima | Explorer - 2019/02/27 に公開



フィル・コーハン 過去70年の間、原子力は安定して電力を供給するという点において信頼できるエネルギー源となってきました。ですが1986年にチェルノブイリで起きたのを、2011年に日本の福島で起きたのを人々が目撃したように、そこにはメルトダウンの危険性が付きまといます。

チェルノブイリの後にロシアは原発周辺の1,600平方マイルの地域を永遠に見捨て放棄すると決めました。ですが福島ではそんなロシアとは全く異なる計画が進行中だといいます。日本を訪れている特派員マリアーナ・バン・ツェラーからのレポートです。





abcニュースのキャスター 「福島第一原子力発電所の制御が失われたと伝えられています、非常に強い地震と津波によりメルトダウンを起こしたのです。放射能が第一原発から流れ出ています」





バラク・オバマ大統領 「This is a catastrophic disaster.(これは壊滅的な災害です)」





東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所の事故から7年後 (※この動画は2019/02/27 にナショナルジオグラフィックのYoutubeチャンネルで公開されたものですが取材が行われたのは2018年である模様)

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マリアーナ・バン・ツェラー 私は今、福島にいます、震災で見捨てられた町のひとつを探索しています。この地域は人が住むにはまだ放射線が高すぎるとされている場所です。

これはかつて美容院​​だったようですね。かなりのダメージを受けています。こちらはかつて花屋だったようです。

この地域では取材するにあたり触れるものや踏む場所に細心の注意を払う必要があります、なぜなら放射性物質を含んだほこりや粒子がいたるところにあるからです。





マリアーナ・バン・ツェラー (建物の中に入りながら) Oh, wow. 見てください。 Whoa.

ここは老人ホームだった場所です。

震災当時の、すぐにでも非難しなければならず慌てて出て行った名残が至る所で見受けられます。恐ろしい災害が起きたことを物語っています、まさに時が止まったままの状態、空間そのものがタイムカプセルといった感じです。


マリアーナ・バン・ツェラー 福島第一原子力発電所は福島県の最東端に位置しています。第一原発で爆発が起きた際、周囲の何十もの町にわたって放射性物質をまき散らし12マイル四方の地域が避難区域となりました。そしてその一部は現在も非難区域のままです。原発自体も極めて危険な場所であり続けています。

そんな中でも日本政府はこの地域に人々を戻そうと働きかけていると言います。震災から7年経った今、状況はどこまで改善されたのでしょう?

私は放射線の研究者で原発まで我々を連れて行く特別な許可を持つAzby Brown氏と合流しました。





Azby Brown 「ここから先に立ち入るには許可が必要になります。今回の取材のための許可は取ってあります」

マリアーナ・バン・ツェラー Azby氏は短い時間であれば身体に影響を与えることはないと言っていましたが念のため私は防護服を着たままで向かいます。





マリアーナ・バン・ツェラー 「Whoa...」

Azby Brown 「そうです、あそこに見えるのが福島第一原子力発電所です」

マリアーナ・バン・ツェラー 「本当に目と鼻の先にあります。それで、あの場所には震災以来誰も訪れていないのでしょうか?」

Azby Brown 「実際にはあの場所で5000人近くの人々が働いています。大規模な汚染除去が行われています。建物の一部には入ることができますが原子炉建屋など人が立ち入れない場所ではロボットを使っています、ロボットの映像を通して作業しているのです」

「そこでは放射線が高すぎて人間が作業することはできません、私たちが今いる場所の何千倍という放射線があるのです」

マリアーナ・バン・ツェラー 「そこでは人間が生存可能な時間はどのくらいあるのでしょう?」

Azby Brown 「数分です。大量に被ばくし細胞が損傷/死滅しすぐに臓器は機能しなくなるでしょう。これから先も除染作業が続いた場合、数十年後にはある程度完了する可能性もあります、ですが非常に困難な作業であることは間違いありません」





マリアーナ・バン・ツェラー 原発自体の復旧/除染は終わりが見えない状態ですが、日本はこれまでにかつて世界中で試みられた中で最大の除染作業を行ってきました。

日本政府は放射性物質が定着した土壌の最上層を除去することによってその土地は再び人が住むに十分な環境になるとしています。

震災から今日まで、作業員たちは放射性物質が含まれる層を掘り出し、それをビニール製の袋に入れ、一時保管所にそれを積み上げてきました。ここに映るすべてが放射性廃棄物の入った袋です。この場所だけでも何十万もの袋が積み上げられています。

福島各地の駐車場、畑、そして放棄された土地にこのような袋が900万も存在すると言います。


マリアーナ・バン・ツェラー 日本政府は除染作業はうまくいっており、避難区域の端にある町は再び人が定住しても安全だと言っています。

2015年に日本政府は原発から南に12マイルほどにある楢葉町の避難指示を非難区域の中で初めて解除することを決めました。しかし戻ってきたのは7,400人いた住民の半分以下でした。





マリアーナ・バン・ツェラー 「マリアーナです」

ヤナイ・ヒサオ 「ヤナイです」

マリアーナ・バン・ツェラー 「素晴らしい家をお持ちですね。ここにどのくらいお住みになっているのですか?」

ヤナイ・ヒサオ 「私が生まれてからずっとです」

マリアーナ・バン・ツェラー 楢葉町の避難指示が解除されてから約1年半後、日本政府は避難者が仮設住宅に住むための補助金を打ち切りました。政府は楢葉町に住んでいた人々が戻ることを期待していましたがその多くが他の土地に移住することを選びました。

日本政府は楢葉町は安全だと主張していますがヤナイ氏はそれを確信できなかったと言います。そのため彼は危険を承知で自らの手で自分の土地の除染に取り組み始めました。





マリアーナ・バン・ツェラー 「政府はこのあたり一帯の汚染された土壌を全て取り除いたと発表していますよね、ですがあなたは自分でやろうとしている、それはなぜでしょう?」

ヤナイ・ヒサオ 「政府の仕事ですから完ぺきな除染ができているとは思えません」

マリアーナ・バン・ツェラー 「今の状態にするまでにどれくらいの時間がかかりましたか?」

ヤナイ・ヒサオ 「3年くらいですね」





マリアーナ・バン・ツェラー 最上層はすべて汚染土壌です。それを除染するためには文字通り土を掘り起こさなければなりません。

ヤナイ・ヒサオ 「海が近く、山も近い、観光客も結構な数来られていました。7年が過ぎました。今も放射能で制限された生活を強いられています。ですが諦められません。自分の家を、町を守らなければならないと思っています」


マリアーナ・バン・ツェラー 住民が楢葉町に戻るのを妨げているのは放射線の恐怖だけではありません。何年もの間放置された結果、この地域の町はイノシシで溢れるようになりました。イノシシは残された家を含む街の全てを通り道にして走り回っていると言います。

フルイチ・フクオ 「農作物などを作っても全てイノシシに食べられてしまう、農家は生活を成り立たせることができない状態です」

マリアーナ・バン・ツェラー イノシシは攻撃的で人にとって危険であるだけでなく放射能で汚染されているといいます。

フルイチ・フクオ 「生活環境を改善しなければなりません」





マリアーナ・バン・ツェラー 「この方法でこれまでにどれくらいのイノシシを捕まえたのですか?」

フルイチ・フクオ 「これまでで... 2000頭くらいですかね」

マリアーナ・バン・ツェラー 「2000頭?! イノシシをですか?!」

フルイチ・フクオ 「ええ、ですがそれでもまだまだたくさんいます」





マリアーナ・バン・ツェラー 「どうやらすでに設置した罠にイノシシがかかったようで、これからすぐに向かわなければならないそうです」

「イノシシは危険ですか?」

フルイチ・フクオ 「ええ、危ないです。人を見るとすぐに向かってきます」

マリアーナ・バン・ツェラー 「そこにいますね、足に罠と思われるものが巻き付いて動けなくなっています」

フルイチ・フクオ 「あまり近づかないでください、罠が緩めば襲い掛かってきます。今イノシシはかなり怒っている状態です、なのでとても危険です。これから撃ちますので離れていてください。撮影は控えてください」

マリアーナ・バン・ツェラー 「フルイチさんが銃を手に近づいていきます、撃つ模様です」

(銃声。顔を背けるマリアーナ特派員)

「頭部を打ち抜きました、イノシシはすぐに絶命したようです。あまり見ていて気持ちのいいものではありません」





マリアーナ・バン・ツェラー 楢葉町が抱える課題はあまりにも大きいように思えます。 それでも日本政府は元住民に戻るよう働きかけています。ですがどれだけ除染をしても、どれだけ建物や住宅を再建しても、それで充分なのかという疑問が離れません。

「人々を戻すためにどれほどの予算が費やされたのですか?」

楢葉町副町長 大和田賢司 「復興から4年目で200億円です」

マリアーナ・バン・ツェラー 「人々が戻ってきても安全だと100%保証できますか?」

楢葉町副町長 大和田賢司 「安全性に関しては懸念は残っています。ですが少なくともここ楢葉町を含む周辺地域では生活できる環境はほぼ整いました。挑戦であることは確かです。ですが子供が笑顔でいられる、若者が定住したいと思えるよう行政として全力を投じる次第です。失敗は許されません」

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マリアーナ・バン・ツェラー 私たちは政府が楢葉町で行った最も重要な取り組みの1つで建てられたばかりの新しい学校を訪れました。

「この駐車場には放射線モニターがあります。親御さんたちは毎朝子供たちを学校に降ろすときに子供が学校に行っても安全であるかどうかを確認できるというわけです」





マリアーナ・バン・ツェラー 「素晴らしい学校ですね」

サトウ・マサノリ校長 「ありがとうございます。我々はこの学校を去年開校いたしました」

マリアーナ・バン・ツェラー 「以前に在った学校は放射能に汚染されたために解体しこの新しい学校を建てた、それで合っていますか?」

サトウ・マサノリ校長 「その通りです」

マリアーナ・バン・ツェラー 「こちらの教室は?」

サトウ・マサノリ校長 「小学校6年生の教室です」

マリアーナ・バン・ツェラー 「ああ、化学の授業中なようですね。皆さんいい生徒ですか?」

サトウ・マサノリ校長 「そうですね」



マリアーナ・バン・ツェラー とても美しい学校です、この学校を建てるために町は何百万ドルも費やしたといいます。ですが300人の生徒を受け入れ可能なこの学校に現在通っている生徒はわずか68人しかいません。しかし入学者の数は初年度の2倍になったといいます、これに続いて生徒の数が増えるかもしれない明るい兆しです。

サトウ・マサノリ校長 「子供たちをこの地域で教育するということを私はとても大事に思っています。私たちは生徒たちに放射線のことも、その強さや量、そしてそれを避けるためにはどうしたらいいかなども教えています。」





マリアーナ・バン・ツェラー 実のところ子供は放射線に対して最も脆弱です。そのため学校給食を担当するオオウチ氏は調理の前に毎日この地域の地元の食材のすべてに放射線量の検査をするといいます。

「検査で放射線量が基準よりも高すぎる結果が出たことはありますか?」

オオウチ・タカオ 「ええ、ありました。今は先ほど切ったキュウリを検査しているところです」

マリアーナ・バン・ツェラー 「一日に何度検査をしなければならないのですか?」

オオウチ・タカオ 「検査は食材ごとに行います。そして1回の検査には30分ほどかかります」

マリアーナ・バン・ツェラー 大変な作業です。この学校に通う生徒が食べても安全であることを確かめるためにそのような工程を経なければならないということは。





マリアーナ・バン・ツェラー この規模の災害からの復興にはそれこそ何十年という時間と努力が必要になります。ですが家族によっては、他の場所で生活することが選択肢に入らないこともあります。

ヤマウチ・サトコ 「私たちの家族が何世代も前からこの土地に生きてきたということもありますが、やはりこの場所が最も落ち着く場所です。なのでこの先子供たちがどうするかはわかりませんが、ここでの生活を続けることができればと願っています」

マリアーナ・バン・ツェラー 山内家は一年前に楢葉町に戻ってきました。彼らは震災前に住んでいた自宅とその中のすべてを取り壊さなければならず、一から家を建て直さなければならなかったといいます。

「戻ることに恐怖を感じませんでしたか?」

ヤマウチ・サトコ 「私はそんなに不安を感じませんでした」

ヤマウチ・ヒロユキ 「ですが子供は外で遊ぶので土壌に残っているかもしれない放射性物質は懸念でありました。楢葉町の線量は低く安全と言えるものでしたが震災後は線量計を持ち歩いていました」

ヤマウチ・サトコ 「私たちはそれにも慣れてしまいました。少しでも多くの家族が戻ってきてくれれば町も活気づきます、なので人々が戻ってきてくれることを心から願っています」





マリアーナ・バン・ツェラー 2020年に東京で開催される東京オリンピックでは聖火リレーが福島で始まります。東京から150マイル離れた福島の復興への取り組みに注目が集まることでしょう。

私は数日間ここ福島で過ごしました。すべての悲劇的な物語には希望の物語が続くものです、そしてこの地域をかつての姿に戻そうと懸命に努力する人々の姿がそこにありました。





ヤナイ・ヒサオ 「いつか復興されると信じています。一度始めたら振り返ることはできません、ただ前進あるのみです」

マリアーナ・バン・ツェラー 「では乾杯です、福島の未来に」

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海外の反応

Youtubeのコメント欄より: ソース


Jose A. 学校がうちの都市のほとんどの病院より清潔感があるんですけど...

M A 衛生観念が違うからな。

WithAStick AngryWhiteMan どこの都市だよ。当ててやろう...
ロサンゼルスだな!

Azliana Lyana Go Japan! 日本が打ち勝つことのできないものなんてないさ、それを何度も証明してきたもの。

TurricaN 日本の不屈さを称えずにはいられない。

TheClumsyBrit もうそんなに前の出来事になるのか... まるで昨日のことのように思い出せるのに。

kk582 sos だが2019年になっても日本政府はメルトダウンした原子炉から燃料棒を取り出すことも、それどころか状態を正確に把握することすらまともにできていないという...

Take the Cake あの片腕の男性の車庫に入ってる車にビビった。

Bloodywasher OG 原子炉から垂れ流された汚染水については触れないのね。

tonkatoytruck TEPCOがスポンサーにでもついたのか? 福島第一原発は2011年以来太平洋に300メートルトンもの放射性廃棄物を投棄し続けてきた。原子炉はすべて溶け落ち、日本はそれについて嘘をついた。それなのにこんなファンタジーを信じろと?

Scott Blasiman 海洋への影響は国際的に研究されており、ごくわずかであることがわかっている。海洋汚染について言及するメディアの報道が見られないのはそのためだ。メルトダウンした3つの原子炉に関しては放射能漏れを起こしているのは1基のみだ、各格納容器の内部がどうなっているかの確信は持てていないようだが。

Steve Martino アメリカが日本のこの努力の100分の1でも自国に注いでくれたらと思わずにいられない、ミシガン州のフリントとかそういった場所にさ...

Lex Res Mark Sacay フリントには清潔な水すらありませんからな。


市の財政破綻に伴う貧困層と失業者の増大、警察の予算や人員の不足、市街地の荒廃などが重なり、治安状態は全米で最悪のレベルまで悪化している。現在、同市では6歳から12歳の児童1万人以上が汚染された水道水を使用しており、血中の鉛濃度が上昇したり、皮膚病の症状が現れるなど市民に健康被害が広がっている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/フリント_(ミシガン州)


Real Robs まぁかといって日本のこれが投資に見合う効果を出せているかというと...

Franz Papai だが日本に学べるところはかなりあるはずだ。

FixItStupid 原発のメルトダウンからの除染なんて永遠にかかる、住民のいっさいを移住させるしかなかろう。

Pony Cupcake 原子力の致命的な危険性を学ぶのに支払われた代償はあまりにも大きすぎた。福島が人々にとって安心して暮らせる場所に戻ることを願ってならない。良いレポートをありがとう。

Acme Fixer 2011年の震災に関しては原発に関する報道しか見当たらないからその周辺の町での現在の状況を知ることができて良かった。

Yingbo SONG 戻っても大丈夫、とはとても思えないけどなぁ。

RedBull10812 それでもデトロイトよりは安全に思える。

Detroit8V92tta 仮に私がこの町の住民だったとしたら戻りたいなんて絶対に思わない。

Yalcin Arik 言うは易し、実際にその立場に立たされた人にしかわからないものだよ。

Poj Perez 人々が希望を持ち続けていることは素晴らしいことさ。日本に神の祝福あれ。

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