イギリスの大手一般新聞『ガーディアン』より

電気自動車の所有コストはすでに日本・アメリカ・イギリスでガソリン車やディーゼル車より低い

Electric cars already cheaper to own and run than petrol or diesel – study - 2017/12/1

新たな調査により英国、米国、日本ではガソリン車やディーゼル車よりも電気自動車の方が維持費を含めた所有するコストがすでに安くなっていることが判明した。

近年、電気自動車の販売数が急激に上昇しているが所有コストの低下はそれを促進した重要な要因であると研究者たちは述べている。現時点では電気自動車の競争力は政府の補助金に頼っている面があるが、電気自動車は数年後も経たないうちに補助金なしで自動車購入の最も安価な選択肢になると予想されている。

今回研究者らは購入価格と減価償却費、燃料費、保険料、税金とメンテナンスなど、4年間でかかる自動車の総所有コストを分析した(※1997年から2015年までの英国、米国、日本の各自動車の総所有コスト(TCO)を比較した調査。)。そして調査の結果、純粋な電気自動車(※ハイブリッドやプラグインハイブリッドを含まない)が英国、日本、テキサス、カリフォルニアの各市場でガソリン車やディーゼル車よりも安価となったことに驚いたという。

純粋な電気自動車はエンジンよりも構造が簡単なモーターを使用していることや電気自動車特有のブレーキの仕組みなどで故障や消耗する箇所が少なく維持費が安くなり、ガソリンまたはディーゼルよりも電気は遥かに安い燃料コストとなっていることが大きいという。

英国では電気自動車の年間コストは2015年のガソリン車またはディーゼル車の場合よりも約10%低いと分析された。



プラグインできず補助金も引き下げられたハイブリッド車はガソリン車やディーゼル車よりも年間コストが少し高価となり、プラグイン・ハイブリッド車はかなり高価であることが判明した。ただし日本ではプラグインハイブリッドに対しより高い補助金を出しているのでアメリカやイギリスとは違った状況になっている。

「これは本当に良いニュースストーリーです。生産が拡大されるにつれて純粋な電気自動車はバッテリーのコストが下がり安くなると予想されていますがすでにここまでコストが低くなっていたことは驚きであり、また電気自動車の未来に確信が持てました。」英国リーズ大学と共に今回の研究を行いアプライド・エナジー(Applied Energy)誌で結果を発表したジェームズ・テイト氏はこう語った。

純粋な電気自動車は英国と日本で約5,000ポンド(約75.5万円)、米国では6,500ポンド(約98万円)の販売補助金を受け取る。 「現時点では補助金がかなり出されているがそれは次第に少なくなっていくことが予想されます。」とテイト氏は指摘する。

だが彼は日産リーフのような電気自動車は2025年までに補助金なしでガソリン車と同じくらいの所有コストになるとも予測している。ルノーはこれが2020年代初頭に起こると予想している。

気候の温暖化に影響する二酸化炭素などを排出しない電気自動車は環境への意識の高まりだけでなく、特にディーゼル車の大気汚染への懸念から普及がより一層進むと考えられている。 ほとんどの都市部で大気汚染レベルが基準を超えている英国ではディーゼル車の販売台数は前年比で30%減少したが電気自動車の販売台数は37%増加した。

英国のエネルギー・環境 NPO である ECIU(Energy and Climate Intelligence Unit)のマット・フィンチ氏の分析によると、現在の販売の伸びから見て電気自動車の販売数は2019年5月には早くもディーゼル車を上回る可能性があるという

「これは信じられないほどで早いです、今からわずか18ヶ月後にはそうなるというのですから。」Tate氏は次のように述べている。「むしろ自動車製造業者がこれらの車両を生産する能力を持っているかどうかが課題です。需要が供給を大幅に上回ることが予想されます。」

スポンサードリンク

EV-Volumes.comのアナリストViktor Irle氏は日産リーフのような低コストで優れた電気自動車の選択肢があり、テスラモデルSのような高コストのエンドが存在するが、その中間の価格帯の車、一般的にファミリーカーとなる選択肢が少ないと指摘する。

「現時点では良い選択肢となる電気自動車は存在しません。自動車メーカーは現在各社を支えている従来の自動車の販売を共食いしてしまうのではないかと懸念しているのでしょう。」

大気汚染の懸念は中国ではもっと深刻だ。中国は世界最大の電気自動車市場であり急速に成長している、特にBYD、Geely、Beijing Autoなどの国内メーカーがメインプレイヤーとなっている。「中国はひそかに優位に立っておりこの市場のリーダーになると思います、欧米の自動車メーカーがその経営方針に迷っている間に。」とテイトは語った。

しかしRAC財団のスティーブ・グッディング氏はその予測に慎重だ。「英国には32万台の車が存在しているがそのうち純粋な電気自動車は12万台程度だ。ガソリン車とディーゼル車が舞台から降りるのはまだ先になる。」

彼はまた電気自動車が普及すれば政府が将来的に石油燃料の消費の低下から失われた大量の税金を回収するために電気自動車に課税することもありえると警告する。「また所有コストがすべてではない。実用性や使いやすさが重要だ。大規模で信頼性が高く、車の所有者が必要とするスピードで充電を行える公衆充電ネットワークが必要だ。」と彼は現在電気自動車が抱えている問題点に言及した。

政府は今年11月22日に電気自動車インフラ整備のために2億ポンドの資金を投入し業界との協調を図った。運輸大臣のJesse Normanは次のように述べている。「英国は現在11,500以上の公的に利用可能な充電ポイントを持っており、そのうち900以上が急速充電に対応している。これはヨーロッパ最大の急速充電ネットワークの1つだ。」

テイト氏もインフラに関しては対応が必要と考えている。英国では駐車場を持たず路上に駐車する人が多くおり、また自宅に充電設備を用意するなど初期費用が多くなりがちな電気自動車は比較的裕福な人がその恩恵を得やすいため社会平等をどう考えるのかも課題だと指摘した。

純粋な電気自動車、英国での販売台数トップ

日産リーフ - 22,250台 - 政府の4,500ポンドの補助金で£21,500から
BMW i3 - 8,800台 - £28,840から
テスラモデルS - 6,283台 - 65,000ポンドから
ルノー・ゾー(Zoe) - 6,227台 - 14,250ポンドから(ただし毎月バッテリーレンタル代49ポンドを支払わなければならない)
日産e-NV200 - 2,742台 - 2万ポンドから

データソース:2017年10月までの累計売上、EV-volumes.com

スポンサードリンク

海外の反応

reddit.comのコメント欄より: ソース


CptMisery いくら所有コストが低くなったって駐車場のないアパートに暮らしている私にゃ縁がない話だよ。

tau-lepton EVはまだ市場の1%未満だ。しかも米国でも全ての人が120Vのコンセントを車を駐車する場所の近くに持っているわけじゃない。一戸建てに住んでいる人ならあるかもしれないけどアパートだとないところが多いしビルのオーナーが新たに追加するかどうかもわからない、市場の10%に達するのに10年はかかりそうだが...

Badloss インフラに関しては急速充電ばかり話題になるけど自宅で充電できるかって結構大きな問題だよな。アパートメントに住んでいるけど大家に頼んで普通のコンセントを使わせてもらってる。充電は遅いけどまぁなんとかなってる。自宅および仕事先に電源ない人はまだ買えないだろうな、それも今後一気に変わるのかもしれないけど。

hilothefat なんでフランスって電気自動車がそんなに普及してないんだろう? あいつら原発たくさん持ってるし電気自動車社会とか作りやすそうじゃね?

dugsmuggler ヨーロッパの古い都市のほとんどがそうだけど自宅で車を充電するところがないため家庭での充電に関して問題がある。

Dent13 電気自動車は初期コストが高いのがねぇ、航続可能距離が長い車は高額だし。それとうちのアパートメントじゃ充電できねぇ。

dating_derp EVはテスラが低価格モデルを出してから爆発的に普及するはず、2万ドル代とか。たぶんモデル3から5年後くらい?

Caputtohsi 電気自動車買うならホンダとかトヨタとか信頼できる自動車メーカーから買いたいわ。

hoopdhoopwhaa 良いニュース。もう毎日毎日ディーゼルの排気ガスを吸うのが嫌でしょうがない。

moosery2 電気自動車に乗っているのに毎日ディーゼルの排気ガスを吸わされるのが嫌でしょうがない。 お前らもEV買え。

exsnakecharmer 北京に行ったとき電気スクーターの多さにぶったまげた。 それと風力発電所が国中にあることも驚いた。汚染問題が酷い国だけど少なくともそれについて対処しようとしているのはいいことだ。

normasueandbettytoo 電力網への負荷はどうなんだろう? EVが急激に増えたら、特に夜間なんか供給能力を超えちゃうんじゃないか? アメリカの電力網はだいぶ老朽化してるし。

moosery2 問題はEVが都市部などに"局地的"に集まりやすい点だな。だから少なくともイギリスでは政府と電気会社が夜中に電力を充電し必要な時間帯に供給するスマートチャージャーの調査やテスト、計画してたりする。

スポンサードリンク