アメリカの新聞『ワシントン・ポスト』 より

なぜサウジアラビアは超大規模な新たな太陽光発電プロジェクトを開始しようとしているのか?

Why Saudi Arabia is trying to launch an utterly massive new solar project - March 28 2018

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日本のソフトバンクとサウジアラビアが大規模な太陽光発電プロジェクトを開始することに合意した。仮にそれが完成すれば世界で最も太陽光発電に適した地帯の一つであるこの国の再生可能エネルギー産業の劇的な成長を意味する。

だが一部のアナリストはこの日本でも有数の大企業と砂漠の国との間の合意は、その規模があまりにも野心的過ぎるため、そして現時点では拘束力がない覚書であるため、完全には実現しない可能性があると警告している。



ソフトバンクのCEOである孫正義氏とサウジアラビアのムハンマド皇太子は2030年までにこの常に太陽の降り注ぐ産油国に200ギガワット規模の太陽光発電プロジェクトを作ることで合意したと発表した。

この200ギガワットという数字は、米国の太陽発電能力の4倍、中国の年間の太陽光発電能力の拡大ペースの4倍と同じだ。2016年末時点で世界全体の総太陽光発電能力は303ギガワットでありその規模の大きさがうかがい知れる。

孫氏は「サウジには強い日光、広大な土地、優れたエンジニアと労働力、将来のビジョンのすべてがある」と語った。

孫氏は「世界最大の太陽光発電事業を創出するための了解覚書にたった今署名しました。」と滞在先の米ニューヨークで記者団に述べた。 「サウジには強い日光、広大な土地、優れたエンジニアと労働力、将来のビジョンのすべてがあります。」

サウジアラビア大使館がワシントンで発表した覚書に関する声明によれば、彼らはサウジアラビアに電力会社を設立し電池技術に投資、太陽光パネルの工場も同国内に設けるといい、2030年までの総事業費は計2千億ドル(約21兆円)規模にのぼるという。

まずはサウジアラビアに2つの大規模な発電事業を開始、そのうちの1つは3ギガワット、もう1つは4.2ギガワットとのことだ。

覚書によると、太陽光パネル、またはパネルによって生産された電力の一部が輸出される可能性があるという。またサウジアラビアは太陽光の研究開発においても役割を果たす可能性を探っているとのことだ。



昨年サウジアラビアは米国などの外国企業と同様の契約を結んだが実際に進展しているのは少数だ。ムハンマド皇太子は経済を変革し多様化させるための努力の一環として現在米国を巡って海外からの投資を得ようとしていた。

サウジ大使館の声明によればこのプロジェクトはサウジアラビア国内に最大10万人の直接雇用と間接雇用を創出するのに役立ち、さらにGDPを120億ドル上げ、年間400億ドルの節約になるという

だがアナリストの一部はこの覚書通りに計画が進むかについて懐疑的だと指摘する。

「サウジアラビアは長期間にわたる計画に対して大きな数値を発表するが最終的にはそれを改訂する傾向にある、ソフトバンクも同様に大きな数値を発表することを好む企業だ。」とブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスのソーシャルアナリスト、ジェニー・チェイス氏は述べている。

「だがサウジアラビアが実際問題として現在、あるいは今後より多くの電力を昼間時間帯に必要とするならば、2030年までに太陽光による200GWの発電能力を実現するこの計画が不可能であるとする明確な理由はない。ソーラー業界はそれを実現することができ、ソフトバンクは投資意欲を持っているのだから。」とチェイス氏は続けた。

「とはいえまだわからない、まず最初に開始するという2つの大規模な発電事業、計7.2GWの計画がどう進むかがキーとなるだろう。7.2GWという時点ですでにかなりの太陽光発電量だが順調にいけば2〜3年で電力を生産できるようになるはずだ、そしてそれはこの2千億ドル(約21兆円)規模の全計画を実施することがサウジアラビアにできるのか、その実際の能力を示す指標となるだろう。」



GTM Researchのアナリスト、ベンジャミン・アッティア氏もこの最も具体的で直近の小規模な計画に最も興味を持つという。

「2030年までという長期的な計画がどこまで実現するかはまだ判断できないがいくつか実現可能性を垣間見せる要素が存在する。彼らは来年中ごろまでに発電能力3ギガワットと4.2ギガワットの発電所を建造し相互接続させると言っている。その一部でも建設すれば、サウジアラビアの太陽光市場の軌道を大きく変えるだろう。」と彼は語った。

アッティア氏によると200ギガワットの太陽光発電が実現すれば現在の同国の電気需要の95%を供給することができると見ているが、太陽光発電は基本的に日中のみ利用可能であるため大量の蓄電施設も設置する必要があると指摘する。

「実際は現時点では計画の詳細はほとんどなく判断は難しい、また私たちは壮大な計画を掲げたものの合意が非拘束であったため中断された計画の数々を見てきた。」

この超大規模の太陽光プロジェクトのニュースは、世界最大の石油埋蔵量を誇るサウジアラビアが2つの原子力発電用原子炉の建設を進めているという話しの直後に出てきた。サウジは現在石油を使った発電所に依存しておりその消費量を少なくすることで王国の主要な収入源である輸出用の石油がさらに増えることを期待しているという

サウジアラビアの電力消費量は2005年から2015年の間に倍増した。夏季のピーク時には同国の気温は華氏120度(摂氏48.8度)にまで上昇し、空調のために1日あたり約70万バレルの石油が消費されている。さらに産業および輸送用に消費される石油を加えるとサウジアラビアの国内原油消費量は1日当たり300万バレルに達し、総生産量の4分の1を超える。

また人口の増加に伴いサウジアラビアは水淡水化プラントにより多くの電力を必要ている状況だ。

「"動かないもの" のために石油を燃やすのは無駄なことだと私は考えます。」 元原子力規制委員会委員でテキサス大学オースティン校の機械工学の教授を務めていたデール・クライン氏はこう語った。

  「石油は航空機、自動車、トラックなどの実際に移動する対象に適しおりそちらの方がより高い効率性を実現する。」



また環境保護主義者は長い間、サウジアラビアは太陽エネルギーを積極的に取り入れるべきだと主張/非難してきた。同国の日照時間はドイツの2倍にも達するにもかかわらずその太陽光発電量はドイツの1/1,700だ。そして発電のために石油とガスを燃やしているサウジは国民一人当たりの温室効果ガス排出量が世界で最も高い国の一つとなっている。仮にサウジが再生可能エネルギーに向かえばこれを大きく縮小する可能性がある。

大規模な太陽光発電設備の導入は、原子力発電所と同様に、国際社会からの批判を封じることにつながるだけでなく、サウジアラビア国内で消費される石油の量を減らすことでより多くの石油を輸出することを可能にする、これは今回のソフトバンクとの協定締結の動機の一部を示唆するかもしれない。

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海外の反応

twitter.comのコメント欄より: ソース


Vmax02rider 200ギガワットは米国の太陽光発電量の4倍、中国の年間太陽光発電普及率の4倍とな?

中国は毎年、米国が一年間に発電する量と同じだけその発電能力を拡大させているってこと? この将来性のある重要なテクノロジーにおいて我々はどんどん差を付けられていくってことか... トランプがアメリカを偉大な国にするとか言ってるけど現実はこんなもんだ。

Joseph Olivas トランプだって革新的なことをやっているぞ、なんせ石炭による発電を取り戻そうとしているからな。

Steve E. Wunder いやほんと素晴らしいほどに未来志向なお人だよ、ぶん殴ってやりたいくらいだ。

KoenQQ 世界最大の石油輸出国としてサウジアラビアは世界中で大きな影響力を持っている。だが同時にそれは石油の終わり=彼らの終わりを意味する。だからこそ彼らは太陽光に注力するのかもな、太陽光パネルやその他設備、それと発電した電力を輸出することである程度の影響力を保持しようとしているのかも。

thequilibrium その輸送方法において電力の輸出と原油の輸出とじゃだいぶ大きな違いがあるけどな。

ChickenTitilater 200ギガワットがどれだけスゴイかっていうと、それは世界のすべての原子力発電所の総出力と同規模であり、南米またはインドが消費する全てのエネルギーより100ギガワット少ないくらい。

ちなみにこのプロジェクトはソフトバンクの30年ビジョンの中の一部だとか。

EnviroSeattle 2016年のworld-nuclear.orgのデータによれば世界の現在稼働中の原子力発電所による総発電量は福島以来初めて350ギガワット(GWe)以上に回復した。停止中を含めると391だ。IAEAは2030年までに345ギガワットに落ちると予測している。原発を太陽光で置き換える場合はそこに蓄電などの要素も加わるから、実際は原発による1ギガワットの発電を太陽光で置き換えようとしたら3~4ギガワットは必要になるはず。

とはいえだ、2030年までに世界のエネルギー消費量が18%増加するって話だし原発は政治的に増やすのが難しい、クリーンな電力源の建設を止める余裕は世界にはないね。

Andreas Biermann サウジからしたら経済的に意味がある事業だし本当に実現するかもな。

Vinayak Chatterjee 世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアが石油への依存を減らし、世界最大の太陽光発電施設を建設することを目指している、か。時代は変わったな。

Abdullah M Alkhelaif このサウジの皇太子は本当にやり手だな。今のところ彼の改革は順調に進んでいるようだ。

just sayin' ってかサウジの皇太子でけぇ。

ksa2018 太陽光は今後も成長が見込めるし環境にも良いし原発みたいに危険じゃない、投資するのは正解だと思うわ。

elizabeth perry あんだけ無駄に太陽が照って無駄に土地が余ってる国で今までやってこなかったことの方が不思議。

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“softbank / yokohama the diamond” by [puamelia] is licensed under CC BY 2.0