香港の日刊英字新聞『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』より

なぜ日本のジーンズやデニムがトレンドになっているのか、そしてあなたが着るべきデニムブランドとは?

Why Japanese jeans and denim are trending and which labels you should be wearing - 27 April, 2018

それが生デニムであっても、リジッドデニムであっても、あえてダメージを加えたディストレス加工のジーンズであってもウルトラストレッチジーンズであっても、日本のデニムは最高品質のものとして世界中で評価されている。

『GAP』や『ユニクロ』のような世界的に有名なブランドはもちろんのこと、世界80ヶ国以上で展開されるデニムブランドである『セブンフォーオールマンカインド』や世界に700店舗以上持つアメリカの人気のファッションブランド『Rag&Bone』に至るまで、皆一様にそのコレクションの中に日本製のデニムを取り入れている。

いったい日本のデニムを特別なものにしているのは何なのだろうか?

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日本でのデニム製作の歴史自体は決して長いものではない。1960年代半ばから70年代初頭にかけて、ハリウッドのおかげで日本でもジーンズがファッションアイテムとして人気を博しそのころに日本の国産デニムが生産され始めた。

日本の繊維会社は当時人気になり始めたアメリカ製の素材を自国で再現するためにデニム生地を織り始めた。

当然のことだが、その新たな生地の生産拠点は岡山県の小島や井場、広島県の福山などのすでに繊維産業が発展していた場所に設けられ成長していく。その後約10年ほどで岡山県の小島は『日本のデニムの首都』として知られるようになるが、それは主にこの地域の観光課が行ってきたマーケティング・キャンペーンに起因する、実際に国産デニム生地のパイオニアとして業界トップシェアを誇るのは広島県福山市に拠点を置く『カイハラデニム』だ。


photo via scmp.com
だが一方で日本のデニムを購入する多くの企業は『セルヴィッジデニム』という独特の風合いを持つ希少性の高い生地を目当てにしている。"セルヴィッジ" とは通称「耳」と呼ばれ、ほつれ止め処理が施されたデニム生地の端のことを指す。大量生産型の高速織機による耳のないデニム生地が主流となる中でセルヴィッジデニムは昔ながらの工法で作られている。それは生産に時間がかかり、もはや作られていないヴィンテージの織機でのみ織り成すことができるという

セルヴィッジデニムの需要は堅調だが織機の数が限られており、また壊れた場合代替するものがないため必然的に供給量は頭打ちとなりさらに減少する可能性がある。
その希少なセルヴィッジデニムに依然として重点を置いている会社の1つが『桃太郎ジーンズ』や『JAPAN BLUE JEANS』、『SOULIVE』、『SETTO』、『COLLECT』といったブランドを展開している 岡山県倉敷市児島に拠点を置くアパレル企業『ジャパンブルー』だ。

同社はまた年代物のコンピュータ化されていない織機で製造された "ヴィンテージデニム" を他の様々なブランド用に生産している。

「ヴィンテージデニムはユニークで希少なデニムです、この生地を生産できる織機は世界的にもそう残っていませんから。」とジャパンブルーの広報担当者は述べる。

「織機が完全に壊れてしまった場合は他の織機に問題が発生したときの修理用の部品として使用しますが、この織機自体はもはや製造されていないのでいつかは我々も生産できなくなります。」


photo via scmp.com
もちろんセルヴィッジデニムやヴィンテージデニムはプレミアムジーンズブランドやデニム愛好家の間で非常に人気があるが、多くの日本のメーカーはこのタイプの生地だけに依存することは存続可能なビジネスにはならない可能性を認識している。

国内市場の少なくとも50%を占める日本最大のデニムメーカー『カイハラデニム』は、より多くの顧客を引き付け売上を伸ばせるようなイノベーションに目を向けている。

「ここ数年は機能性を持った生地が非常にうまくいっています。」と同社の専務取締役であるカイハラ・タダユキ氏は言う。
日本はデニムのイノベーションにおいて世界に知られており、その1つにデニム素材を中心とした日本のファッションブランドであるEDWINが開発した『JERSEYS』と呼ばれる超快適ジーンズシリーズがある。これはEDWINとカイハラが共同開発したもので2WAYストレッチデニム生地で作られたこのジーンズはまるでジャージのようなはき心地を提供する。

カイハラによるとこのシリーズはかなり人気があり、顧客はそれを試すたびにほぼ毎回のように購入を決意し売り上げを出しているという。



カイハラはまたユニクロ向けにミラクルエアジーンズのようなさまざまなデニム生地を担っている。これは繊維の約55%を空洞にした世界最高クラスの特殊中空糸を使用しておりこの繊維でできた製品は平均的なジーンズよりも20%ほど軽くなる。このデニム生地は通気性が高く軽やかな着心地と快適さを提供する。

ユニクロのウルトラストレッチジーンズもカイハラの生地で作られている。これはシルエットを失うことなくそのストレッチ性の高さから最大の動きを可能にするように設計されている。この製品の宣伝用画像にはヨガのポーズをしたりバレエダンサーのようにその足を伸ばすモデルが登場しその伸縮性の高さをアピールしている。


photo via scmp.com
他の繊維業界と同様に、日本のデニム業界もより安価に生産される途上国製の生地の増加によって脅かされているが、先に紹介した『ジャパンブルー』や、欧米を主体とする海外への輸出が売上高の半分を占める岡山県井原市のデニム生地メーカー『クロキ』のような企業はそこまで懸念していないという。彼らは自社の製品に他の場所では再現できない特質があることを、特にユニークな染色の色合いが強味であることを知っているのだ。

これは各企業が独自の染料レシピを持っているだけでなく、生産される地域の水に含まれるミネラルなどの要素も要因となっている。

「世界中のどこの工場も、まったく同じ色合いを生み出すことはできません。」

クロキ株式会社の代表取締役社長である黒木立志 氏はそう語る。

「当社の製品はすべて、他の場所では製造できないものです。」



では彼らが自信を持って送り出す製品、注目すべき4つの日本のデニムブランドをチェックしてみよう。

RED CARD

photo via redcard.tokyo
日本のデニム界に40年以上携わりその名を知られるようになった「Dr.denim」こと本澤裕治が2009年に設立したブランド。かつてはエドウィンやリーバイスでコンサルタントとして勤めた彼は自分が望むジーンズを市場で見つけることができなかったためこのRed Cardを始めた。

本澤裕治が掲げる3F(FABRIC/FIT/FINISH)をプロダクションに携わる一人一人の職人が忠実に再現し、そのいずれもがヴィンテージ感を携えている。アジアや北アメリカにある伊勢丹やビームス、ビューティ&ユース ユナイテッドアローズなどの店舗で販売されている。


Full Count

photo via fullcount.co.jp
このメンズブランドはヴィンテージスタイル、特に1940年代から50年代を基調にしたシルエットのデニムジーンズ、ジャケット、シャツを提供している。最高級の天然素材を100%使用しているのも特徴だが、このブランドのトレードマークはその糸にある、ポケットのデザインステッチはもちろんのこと、通常はポリエステルが使われる縫製糸にもコットンを使用している。

それぞれのジーンズには12種類もの糸が使われている、特に太い糸はブランドオリジナルのものであり服の縫製では通常使用されない、それは全て耐久性を最大限に引き出すためだ。その太さに対応させるためにミシンも針も特注のものを使用しているという。


Japan Blue Jeans

photo via japanbluejeans.com
『桃太郎ジーンズ』の姉妹ブランドであるJapan Blue Jeansはデニム業界のトレンドを追わず、製織から染色、縫製、仕上げに至るまで、生産のすべての段階でこだわりぬいた純国産デニムブランドだ。

このブランドは男性用と女性用のヴィンテージとストレッチジーンズの両方を提供し、国内外の一流デニム小売業者によって販売されている。岡山県倉敷市の児島と東京の渋谷にも旗艦店がある。


KURO

photo via kurodenim.com
イタリアのフィレンツェで1月と6月に実施されるメンズ世界最大のプレタポルテ見本市ピッティ・ウォモで2010年に発表されたこのブランドの名は日本語の "黒" の言葉に由来し、日本人の黒い髪と目にインスパイアされてできたという。世界各国のショールームやそこに集まる世界中バイヤーから高い評価を受けるこのブランドの目的は、西洋の起源の衣服を再発明することだ。

銀座エリア最大の商業施設「GINZA SIX」、東京の原宿、大阪、名古屋に店舗がある。 “Edwin Sen Selvedge Skinny” by Tom Nguyen is licensed under CC BY 2.0

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