イチローのシアトル・マリナーズ戦力外騒動に対する海外メディアの報道のまとめ

2018/4/24時点

ワシントン州タコマの日刊紙『The News Tribune』より

イチローがマリナーズに残留するもそれに対する怒りがTwitterのトレンドに

Ichiro is still a Mariner and the outrage is trending on Twitter - April 22

Embed from Getty Images

マリナーズの鈴木一郎が日曜日の朝にTwitter上でトレンドとなった、だがそれはこの外野手をシアトルの歴史でも最も愛されたアスリートにしたようなポジティブなエネルギーによるものではなかった。

マリナーズはエラスモ・ラミレスをメジャーに昇格させるのに伴い、控え外野手のギレルモ・エレディアを傘下3Aに降格させ、戦力外の可能性が予想されていたイチローを残留させた。このことにファンは納得がいかなかったようだ。

44歳のイチローの打率は33打席で .212、エレディアは29打席で打率 .310、2本の本塁打を決め4打点を記録していた。

マリナーズの決断に対し同球団のファンらのコミュニティ『lookoutlanding.com』は「マリナーズはファン、選手、従業員に中指を立てた」と題した記事を投稿、Twitter上でも厳しい意見が相次いだ。

マリナーズのファンはイチローを愛しているし、彼がやったことをすべてに感謝/評価しているが、フロント(選手の獲得などの野球ビジネスに関する業務をする球団の組織)は勝利よりもイチローを優先したことで全ての関係を悪化させている。イチローは換えることはできるがファンはそうではないんだぞ!

イチローを残しギレルモ降格? もうほんと見てられないわ...

イチローの試合を見たいという気持ちはない。それよりも私は試合でギレルモ・エレディアが実際にチームになにかしら貢献する姿が観たい。

イチローは大好きだがもう彼は選手として駄目だ。マリナーズが本気で勝利しようと考えていたならば、彼は降格されていただろう。

イチローは象徴ともいえる人物だ、私たちは皆それを認識している。だが彼の選手としての時間は終わりを迎えた。イチローを名簿に載せ続けることでファンを満足させることができると考えている輩がマリナーズの関係者の中にいるようだが、勝利以上にノスタルジアを重視するならそれは本当のマリナーズファンとは呼べない。

スポンサードリンク

世界有数の経済誌『フォーブス』より

イチローからベーブ・ルース、ジョー・ディマジオに至るまで:盛りを過ぎたMLBのスター選手はPR目的で契約されてきた

From Ichiro To Ruth To DiMaggio: MLB Stars Past Their Primes Who Were Signed For PR Purposes - APR 23, 2018

Embed from Getty Images

ギレルモ・エレディアよりも成績の悪いイチローが残留したが、イチローとの契約は全てPRが目的だったのだろうか? もしそうならばイチローは、一度は輝かしい栄光をつかみながらも盛りを過ぎたがゆえに成績ではなくファンを野球場に連れて来させるマスコットとしての役割を期待されて契約された数多くの元スターの一人になるということだ。

メジャーのシーズン開幕直前、マリナーズはイチローとの契約は "チームが勝つために必要だった" と明言した。実際当時マリナーズは スターティングメンバーで左翼を守る25歳の外野手ベン・ギャメルが右の腹斜筋を痛めて4~6週間の離脱を余儀なくされ短期的な解決方法を必要としていた。だが現実にはそれは、主にノスタルジアを目的とした契約であったことを歴史は示している。

今シーズン、ギレルモ・エレディアはいずれ野球の殿堂入りを確実に果たすこの外野手よりも優れたパフォーマンスを発揮してきた。だがそんな彼を降格させ、イチローをラインナップに残したマリナーズの決断に対する疑問が人々の間で過熱している。

マリナーズの決断は、セーフコフィールドの歴史の中で最大の観衆動員となったシアトル本拠地での開幕戦で、イチローの登場に耳をつんざくような喝采が起きたせいだろう。

野球の歴史上最高の投手のひとりとされるサチェル・ペイジ、史上最高の中堅手と評価されるウィリー・メイズ、12回連続でオールスターに出場し2005年に野球の殿堂入りを果たしたウェイド・ボッグス、現在も破られていない56試合連続安打のMLB記録を保持するジョー・ディマジオ、そしてMLBの伝説となっているベーブ・ルース。

一時はこの世の物とは思えないくらいとびきり素晴らしい活躍を見せた偉大な選手、それが過去の栄光であると、面影しか残していないと知りながらも客を呼び寄せることができると踏んでそんな選手らと契約したチームはこれまでにも数多くあったが、マリナーズはその仲間入りを果たしたようだ。
アメリカ合衆国北西部をカバーする日刊紙『The Spokesman-Review 』より

イチローを戦力外とするときが来た

Out of Right Field: Time to let Ichiro move on - April 21, 2018

Embed from Getty Images

2018年のシーズン開幕から19試合、シアトル・マリナーズは現在ア・リーグ3位と微妙な立場にあり、プレーオフ進出を17年間も逃し続けているその流れを断ち切ろうと必死になっている。

実際にはこれまでのところ10勝8敗と悪くないスタートを切っており、故障者リスト入りしていた外野手のベン・ガメルや5人目の先発投手となるエラスモ・ラミレスも復帰、右足首を痛めていた正一塁手のライオン・ヒーリーも間もなく戻ってくることが予想され、マリナーズはこれからのシーズンに向けて健全な状態を取り戻そうとしているように思える。

では懸念はあるか? それは攻撃力だ。マリナーズは現在1試合ごとのランナーを出せた数でアメリカンリーグ9位、ホームランの数では10位となっており攻撃面に課題を抱えている。彼らはその攻撃力を上げるためにあらゆる手段を講じなくてはならない状況にあるのだ。

復帰したベン・ギャメルは昨季正左翼手として134試合に出場して打率2割7分5厘、11本塁打、59打点をマークしておりチームの攻撃力に貢献するだろう。だが厳しい競争の中で少しでも攻撃力を向上させる必要性を感じながらもマリナーズは、未だに使われる機会が少なく、シングルヒットが多く、今のところ打率も良くない左打者をそのロースター(チームの公式戦に出場できる資格を持つ選手枠)の中に残している。そう、44歳のイチローのことだ。

ギャメルの故障の穴を埋めるという役割はあったが、シーズンの1/10ほどが経過した現在、イチローは33打席中7本しかヒットを打てず、盗塁も打点もマルチヒットも打てていない。



誰に聞いてもイチローはチームの選手たち、コーチ、マネージャーらから尊敬されているという。だがそれは本来ならば簡単な決断をむしろ困難にしてしまっている。

マリナーズはシーズン開幕からそう時間も経っていない状態でイチローを放り出すことを望んでおらず、また別のMLBチームが契約を引き継ぐこともないだろう。偉大で誇り高いイチローがマイナーリーグでの契約を検討するだろうか? おそらくそれはないだろう。

イチローの大リーグでのキャリアがこのような形で終わることを望む人は誰もいないだろうが、それはやむを得ないのかもしれない。イチローは間違いなくマリナーズの歴史の中で最も偉大な選手であり野球の殿堂も確実な選手だ。だがその時は来たのだ。
メジャーリーグ公式サイト『MLB.com』より

イチローがどれほど長い間プロ野球で活躍してきたかを振り返りつつその功績を賞賛しよう

Let's appreciate how long Ichiro has been playing professional baseball - April 19, 2018

Embed from Getty Images

鈴木一郎がシアトルに復帰したのはオフシーズン中に起きた出来事の中での最もクールな瞬間のひとつだったが、マリナーズの選手名簿に名を連ねたこと自体は正しい決断だったのか不明瞭だ。

今週末、外野手のベン・ギャメルが故障者リストから復帰したことでイチローのプレー時間は減少する可能性が高く、彼のロースター(チームの公式戦に出場できる資格を持つ選手枠)の地位は脅かされる可能性がある。

イチローが50歳になるまでプレーしようとしていることを我々は知っているが、このベテラン選手がメジャーリーグのロースターにい続けることは今後より難しくなるだろう。

そのことを念頭に置いて、イチローがこれまでに我々に見せてくれた最早馬鹿げているとしか言いようのないその素晴らしいキャリアを振り返ってみよう。イチローがこれからどれだけ長く続けられるかにかかわらず、その功績はいつだって賞賛するに値するのだから。

(※イチローの活躍の紹介が続きますが割愛します。)

そして現在のイチローがコチラだ。今も毎日メジャーリーグのユニフォームを着ている。イチローよ、永遠なれ。
地元シアトルの日刊紙『シアトルタイムズ』より

我々は皆彼を愛している、だがイチローを解雇すべき時が来た

We all love him, but it’s time for the Mariners to release Ichiro - April 20, 2018

Embed from Getty Images

- 外野手5人は多過ぎる、特に1人の打率が .212ならば尚更だ。もしマリナーズがこれ以上なんだかんだと理由を付けてイチローを名簿に残した場合、それは勝利よりもノスタルジアとチケットのセールスを重視しているように見えるだろう -

イチローの正念場、最後の審判の瞬間は想像以上に早く来た。マリナーズは不可避であることを必死に先延ばしにしているが、その先に待っているものは明白だ。

その日は3月に正左翼手のベン・ギャメルが故障者リストに入り、その補てんとしてイチローを獲得した時から来るのが分かったいた。それは確かに良いイベントでもあった。マリナーズの象徴ともいうべき選手を "最後のひと楽しみ" のためにチームに迎い入れることができたことを人々は喜んだ。本拠地でのシーズン最初の試合で人々はイチローに対し惜しみない賞賛を送った。

しかし遅かれ早かれある時点で、その楽しみに対する "報い" を受けなければならないことを誰もが知っていた。

そしてその瞬間は今ここにある。ギャメルはラインナップに戻った。マリナーズには5人の外野手がいることになり、それはチームが必要とする数よりも1つ多い。そしてあらゆる尺度において、その輝かしいキャリア以外において、イチローはその5人の中で優先順位が最も低い5番目にいる。



残念ながらその時は来た。

マリナーズにとって彼を解雇することは簡単ではないだろう、彼はマリナーズにとって、シアトルにとってとてつもなく大きな意味がある存在だからだ。だがこの日が来ることは彼と契約した時から分かっていたことだ。

そもそも44歳の外野手を獲得する予定はなかった、そして考えを改めさせるような活躍を彼はこのシーズンの間に何も残せていない。もしマリナーズが本来取るべき道を取らなかった場合、それは勝利よりもノスタルジアとチケットのセールスを重視しているように見えるだろう。

一つ注意しておきたいが、これはイチローをバッシングする為のコラムでは無い。私は彼の業績とそのキャリアの素晴らしさについて賞賛している。彼の試合を観たことは、その活躍を記者として扱った日々は、私の人生において最も大切な瞬間の一つだった。彼がこの競争厳しいメジャーリーグで戦い続けるためにどれほど努力してきたかを知っている、その彼を心から尊敬している。彼は存在自体が若手選手達にプロとは何かを示すものであり、彼は野球の殿堂確実の男であり、マリナーズの伝説だ。

だがそれでも、こんなことは言いたくはないが、彼は終わりなのだ。

これは自然な流れだ。44歳が選手であること、そんな彼に活躍することを期待することの方が不自然だ。現状では彼にリーダーシップ以外を求める事は難しく、プレーオフからあまりにも長い間遠ざかっている、ベテラン選手をすでに多く抱えるこのチームにとってそれだけでは十分とはとても言えない。 イチローの正念場、最後の審判の瞬間はもう間もなく訪れるだろう。

スポンサードリンク



“Ichiro” by Kevin Chan is licensed under CC BY 2.0