イギリスの高級紙『デイリー・テレグラフ』より

なぜ日本はあんなにも時間厳守に取りつかれているのだろうか?

Why is Japan so obsessed with punctuality? - 16 MAY 2018

今週、日本の電車でとある "事件" があった。その事件を起こした日本の鉄道会社の広報は「全くもって弁解できない」と述べ、最高レベルの謝罪を繰り返し、スタッフが再発防止のための訓練を受けていることを明らかにした。

軽犯罪でも起きたのか?

いやそうではない、電車が25秒早く駅から出発したのだ。



電車が定刻よりも早く出発する "早発"、イギリス人にとって当たり前である "常時遅延" とは対極にあるそれは、ナショナル・レールの定期券を利用している(そして日々苦痛を感じている)我々からすると間違いなく見知らぬ概念である。

“360113 Romford” by Ryan Taylor is licensed under CC BY 2.0 (※ナショナル・レール=National Rail=イギリス国鉄民営化後に旅客業務を継承した複数の民間会社が使う統一ブランド名)

そしてこの事件は日本社会が持つもっとも有名な執着の一つを浮き彫りにする事件でもある、それは時間厳守への執着だ。
日本は独自の儀式/奇行/習慣が染み着いている国として有名だ、お辞儀をしつつ両手で持ちながら行う名刺交換から、土足や入浴に関する厳格なルール、乗客が閉めてはいけないタクシーのドアに至るまで(なぜならそれはドライバーの仕事だから)。

だが中でも特に困惑させられるのは日本社会の極めて注意深く細部まで行き届いた徹底した時間厳守に対する姿勢だ、それはこの国の全交通システムによって具現化されている、それこそ時計を見て時刻を知るのではなく乗り物の到着/出発から時刻を知ることができるくらいに。

“満員電車 | Crowded Train” by Iyhon Chiu is licensed under CC BY 2.0 日本の電車は混雑することでも有名だ、だが遅れることは滅多にない

電車の遅延は日本ではあまりにも珍しいため、その稀な遅れが起きた際には人々はすぐさま地震か飛び込み自殺が発生したのだと理解する。さらに日本の鉄道関係者は到着が遅れることになる通勤者に対して謝罪の意を込めた "遅延証明書" なるものを渡す、それで彼らは上司に遅刻の理由を説明するのだ。

しかしどうやら日本では、電車が定刻よりも早く出発することも同様に罪深く謝罪しなければならない不祥事と考えているようだ。それが件の "電車が25秒早く駅から出発した" 事件だ。


“221系体質改善車(B8) 琵琶湖線 普通-姫路 @瀬田” by shinoki77 is licensed under CC BY 2.0
2018年5月11日、日本の鉄道会社JR西日本は滋賀県の琵琶湖線の能登川駅で午前7時12分発の電車が午前7時11分35秒、25秒早く発車したと発表した。

徹底的な社内調査が行われ同社は車掌が発車の定刻を同11分と勘違いしてドアを早く閉めたと結論付けた。この早発自体は電車の運行スケジュールに影響を与えなかったものの一人の乗客が電車を逃したと訴えてきたという。連絡を受けた駅員は謝罪、後に同社は「お客様に大変迷惑をかけた。基本動作を徹底し、再発防止に努める」と発表した。

だが真に驚くべきは、これが初めてではないという事実かもしれない。去年の秋にも別の鉄道会社が定刻よりも20秒早く駅を出たため公式に謝罪していたのだ。
日本社会における時間厳守の重要性は我々の想像にはるか上を行く。それは "勤勉"、"規律"、"礼儀正しさ" などこの国の特性に反映、いや互いが互いを補完する関係にあると言える。

日本の子どもたちは学校で幼いころから時間を守ることがいかに重要かを叩き込まれる、そして多くの日本の社会人は万が一の遅刻を避けるために仕事場にかなり早く到着することを日常としている。

だがそんな時間厳守の徹底こそがこの東京に、世界で最も大きく最も人口密度が高いメガロポリスの1つであるこの巨大都市に、その規模にもかかわらずどういうわけか、信じられないほどの秩序とあらゆる物事に対するスムーズさをもたらす鍵なのかもしれない。



時間を守るきちょうめんさ、それは私が10年以上前にロンドンから東京に移り住んだ時に自分にも染み付いてくれればと願った習慣だった。告白すれば、私の時間通りに到着する能力はまだまだ途上にある(だがしかし、日本の電車のようにスケジュールより数秒でも遅れようものなら即座に謝罪、あるいはメールを送る習慣は身に着いた)。

つい先日、私の誕生日に日本人の(そして時間に几帳面な)旦那が私に時計をプレゼントしてくれた、予め4分時間を早めた時計を。私の持つ欧米人らしい緩い時間感覚が東京人のそれになる日はそう遠くなさそうだ。

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海外の反応

telegraph.co.uk, dailymail.co.ukのコメント欄より: ソース , ソース


The Jury(イギリス) イギリスでは "時間通り" どころか "その日の内に出発" したら定刻通りと見なすのに。

Jc うちの国だと "出発" したら定刻通りと見なす。

Denc(イギリス) 今夜ロンドンからの電車に乗ったんだが時刻表によると目的地に到着するまで20分かかるとのことだったが1時間かかった。もちろん誰も謝罪などしない。

Dr Clever Clogs ロンドンまで毎日40分間電車に乗っているけど毎日定刻より遅れている。いっそ時刻表をずらせと思う。

Blamethebanks 日本に住んでいた。もし電車が遅れたら、それはお前の時計が間違っているということだ。

Samsung Group(フィリピン) 25秒で謝罪とか...

LOVE2016(イギリス) そして彼らは謝罪が早すぎたことを謝罪するのだ!!!

snoop1974 そしてイギリスでは線路に葉っぱが落ちていたことを理由に謝罪を遅らせるんですね!!!

Michael(イギリス) もしこれが1分だとしたらどうなっていたか、"fall on his sword" がメタファーではなく文字通りの意味で使われることになっていただろう。

(fall on one's sword=直訳は "刃に伏す"、 一般的に "失敗を認める" "悪い結果を引責する" の意で使われる)

Immanuel_Kant(ドイツ) その "全くもって弁解できない" ことをしでかした車掌が早まってHarakiri しないことを祈る。

SanDisk(インド) 日本の車掌がうちの国の鉄道事情を見たらショック死すると思う。

CA(イギリス) 英国の電車が定刻よりも早く出発するなんて、我々は夢見ることしかできない。

Titch(イギリス) 今晩乗る予定だった列車が運休になったよ、運転士が足りないからだって。なんだそりゃ?

Galahad(米国) 英国の鉄道会社は日本のように早発した際に謝罪するか? 答えはNOだ、そもそもそんなことは起こらない。常に半数が定刻から遅れて出発する、早く出るなんてことはさらにさらに稀だ。

LOVE2016(イギリス) この件に関してアメリカから上から目線で言われるのは何か納得がいかねえ...

brian50(スペイン) イギリスの鉄道じゃ起こり得ない。

電車が遅れる?
それはある。

電車が早まる?
それはない、絶対に。

Benny(イギリス) もはや別の惑星の出来事にしか思えない。サウスウェスト・トレインズ(イギリス国鉄民営化後に旅客業務を継承した民間会社の一つ)の提供するサービスはクソだ、それこそ "キングコングの1週間分のクソ" としか表現できないくらいにクソだ。

スタッフの脳にはシワが1つもないかのようだ。時間通りに列車を走らせたことは一度もない、一度も。混雑していて高額で、これに乗らなければならないのは悲惨な悪夢としか言いようがない。それが英国の列車に乗るということだ。

Linfitlad1961(イギリス) "キングコングの1週間分のクソ"
宇宙船レッド・ドワーフ号からの引用だと気づいたのは私だけでいい。

Aru Kagaya "日本は独自の儀式/奇行/習慣が染み着いている国として有名だ"
イギリスで10年近く働いてきた日本人として言わせてもらうと、これはイギリスの方がはるかに当てはまる。

Dave Evans 間違ってはいない。

Mustafa Leak(イギリス) 日本の電車はそれこそ本当に時計だ、電車で時刻合わせができる。彼らは電車を正確に、安全に運行することに誇りを持っている。イギリスとはまるで違う。ここじゃ時間通りに到着/出発したら相当な幸運、さらに労組は気分でストライキをしやがる。

Cheltonyan(イギリス) 日本に約5年間住んでいた。電車の駅員や運転手がその仕事に絶対的な誇りを持っているのが見ているだけで伝わってきた、それこそ本当にストップウォッチを手に秒単位でこだわっていた。実際には駅の職員だけでなくあらゆる労働者がある種の気配り、矜持、"自分の仕事を全うする" 感覚を持っているように思えた、それが大事なんだろうね。西側の人々だけがその姿勢を持っていたらなぁ。

Wreaker(イギリス) うちの国の鉄道も運営してもらえませんかね?

Charles(イギリス) 時間通りに運行されるだけじゃなく運賃も安くなるだろうな。

miz(オーストラリア) 1年間日本に住んでた、確かにあの国では何かに遅れることは眉をひそめられる行為であり絶対的に無礼だとみなされる。遅刻に対する感覚がまるで違う。

Easy_Rider もはや羨ましいを通り越して憎い。

kenjohnson(イギリス) 私はイギリス国鉄時代を覚えているがあの頃の方があらゆる面において優れていた。民営化されナショナル・レールになる前はもっと運賃が安かったし何か月も前から予約しないと乗れないなんてこともなかった。

駅の数も4000から2500に減り、12両編成だったものが3両編成に減り、食堂車も寝台車も消えた。一部の区間が何かしらの理由で使えなくなった場合は迂回路を行き、それが無ければ乗客のためにバスを用意した。

TellingItRight(イギリス) 一方そのころイギリスでは、 ただいま7:05だが、6:50発の電車が来る気配は未だにないのだった...

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