アメリカの自動車ニュースサイト『jalopnik』より

カルロス・ゴーンは殺されたのか?

Was Carlos Ghosn Whacked? - 2018/11/21


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マフィアもののフィクション作品にこういった展開がよくある。

絶対的な支配力を有するマフィアのボスがいて誰も彼には逆らえない、誰も歯向かうことができない。彼はその権力の大きさゆえに自分ひとりだけの判断で勝手に物事を決めるのだがある時、その独断専行が行き過ぎ "一線" を超えてしまう。そして取締役会、もといファミリーの幹部らの集会が密か行われ誰かがこう言うのだ「ここまでだな」

そしてボスは殺されるのである。



何の話だとお思いだろう、しかしフィナンシャル・タイムズ紙が報じた最新のニュースはルノー・日産・三菱アライアンスの元会長のカルロス・ゴーンがその "一線" を超えたために日産の取締役会は彼を消す決断をしたことを強く示唆している。

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もちろんゴーン氏は生きているわけだが会社資金の私的流用や報酬を実際より少なく申告する金融商品取引法違反など数々の経済犯罪により日本の東京地検特捜部に逮捕された。

その発端となったのは内部告発であり、そしておそらくその内部告発の発端となったのはゴーン氏が "とある大きなこと" を計画していたためではないかと同紙は指摘している、それこそ日産の取締役会に “non t’allargare(イタリア語で「そこまでだ」)” と言わせてしまうほどに。



- フィナンシャル・タイムズ紙 -

カルロス・ゴーン氏は日産・ルノーの合併を行うことを逮捕前に目指しており日産の取締役会はそれに反対、阻止する方法を模索していた。日産取締役会の関係者の話によれば役員のうち複数が今後数ヶ月でそれが実現する可能性があるとみていたとのことだ。

別の情報筋からも合併は "数カ月以内" に起こる可能性が高いとの話が出ており、また別の情報筋からも両社の経営統合へ向けた話し合いが進んでいたとの話が出ている。




この記事はカルロス・ゴーン氏の逮捕は経営を巡る内部闘争の結果であり、同氏が推進した日本とフランスの自動車大手の経営統合が原因となったことを示唆しているわけだが、そもそもルノー・日産・三菱連合は本質的に奇妙な関係にあった。

日産は1990年代後半に2兆円の有利子負債を抱えて経営破綻寸前となりルノーから支援受けることで経営を立て直そうとした、その傘下に入ることを条件に。これは合併ではなかったもののルノー(そしてルノーの一部を所有するフランス政府)からの大量の人的・経済的支援と引き換えに日産は重い代償を払うことになる。

資本提携を結んだルノーは日産の議決権株式の36.8%を取得、ルノーの最高経営責任者であったカルロス・ゴーン氏は日産の最高経営責任者になり、彼の辣腕により同社は2003年には負債を完済する。立て直しに成功した日産はその後ルノー株全体の15パーセントを所有し一部持合としたがそれはすべて議決権のない無議決権株であった。
ルノーからは多くが日産の役員として送り込まれる一方でその逆はなく、株式の時価総額は子会社の日産本体のほうが多く、さらに売上は日産の方がルノーよりも約60%多い、しかし資本の上ではルノーは日産を従える関係にある。

だがこれは仕方のないことだ、当時の日産を救うためにこのような取り決めを結んだのだから。しかしだからと言って日産の取締役会がこれを歓迎したわけではない。それしか道はないとの苦渋の決断であり、彼らはただ日産の独立性が維持されることを願った。しかしその後カルロス・ゴーン氏が両社のCEOになり、さらに両社の会長に就任、経営の重要な意思決定に介入を許すことになる。

その結果日産はさらなる大企業へと成長した。それはいい。しかしついに彼は決して超えてはいけない一線を踏み越える。それが日産・ルノーの合併/経営統合だ。

ルノーの支配権のさらなる拡大、さらには日産を影響下に置きたい仏政府の介入、日産の経営の独立性が脅かされる事態だけは日産の取締役会は受け入れることができなかった。



- フィナンシャル・タイムズ紙 -

ゴーン氏は日産・ルノーの合併/経営統合を推進していたが日産の取締役会からの激しい抵抗に会ったと審議会の関係者は語っている。

日産株の43%を保有するルノーは日産に対し経営幹部の任命権など通常では考えられないレベルの支配力を持っている。日産もルノー株15%を保有しているがこちらには議決権がなくルノーの経営に口を出すことは許されない。

日産の取締役会は資本関係の見直しによりルノーによる支配権が拡大するならばそれがいかなる理由であれ激しく戦うと役員に近い関係者は語っている。
日本の朝日新聞によれば内部告発者によりゴーン氏の不正が発覚、日本の検察官により逮捕され、これを受け日産はゴーン氏を会長職から解雇したという。日本の当局者はこの件に関し明らかに日産と協力関係にあったと思われ、ゴーン氏がいつどこにいるのかをすでに把握しておりスケジュール通りに社有機で羽田空港に到着した同氏を機内で確保したという。



日産が遥かに小さなルノーと経営統合する見込みに、収益力や企業規模で遥かに上回る日産が完全にその独自性を失い支配される見込みとなったため、日産の取締役会はその合併計画を推進するゴーン氏の財務上の不正を見つけ出し日本の検察官に逮捕させることで日産からカルロス・ゴーンという存在を消す口実を作り出した、全ては彼がその "一線" を踏み越えてしまったがゆえに。

まるでフィクション作品のような展開ではないか。

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海外の反応

jalopnik.comのコメント欄より: ソース


Velvet Elvis Carlos GONE

Braniff747SP まぁ内部告発だもんな、そりゃゴーンを追い出したい誰かの仕業だろうさ。

REX2RS これだけの大企業だもの、コンプライアンス専任の部署だってあるだろうしゴーンの不正はとっくに把握していただろうよ。

GeorgeDKAdams 10年近く日米両国の日産で働いていた元従業員だがこの記事は的を射ていると思う。日本側の日産はいつもルノー・日産アライアンスに不満を感じていたしね。

そもそも今の日産はルノーを必要としておらず、提携しているメリットも全く感じていないだろうから提携関係を解消しようとするのでは?

三菱はどうするかって? あんなもんはあれだ、脚を骨折した競走馬みたいにだな...

mallthus その場合ハリウッドスターの離婚みたいにとんでもない額の慰謝料を払わなければならないわけで、というか日産に払えないくらいの費用が発生するわけだから無理でしょ。

Michael Ballaban ルノーは主要株主がフランス政府だからね、そりゃ日産だってフランス政府の影響下に置かれるとわかったら必死で抵抗するさね。

Nobody でもゴーンを消したってルノーは新しいCEOを送り込むだけじゃないの?
んでもって合併の話だって進むんじゃ?

d3v 今回の事件は日産側からのメッセージだろう、ルノーがこれ以上計画を進めるならこっちはあらゆる手段を講じるぞという決意の表れみたいなものではなかろうか。

PantherXJ この記事の指摘する通りだと思う、これはまさに企業クーデターと呼べるものだ。ルノーとフランス政府が今後どのように対応するかが気になるところだ。それと日本政府はこの事件が外国人投資家に送るメッセージについても懸念すべきだろう。

ArtistAtLarge カルロス・ゴーン逮捕は日産が仕組んだもの?
もちろんそうさ。日本の財閥は外国企業が自社の支配権を持つことを決して許さない、外国人に経営を任せることはあってもな。

FivePoint - Saabin' around 遥かに巨大な日産にそれよりも小さなルノーが経営に口を出すという奇妙なねじれ関係、それがルノーにとって一方的に有利な関係であることは確かだがルノーとフランスが当時の日産を窮地から救った、今の日産があるのはそのおかげであることは間違いない。

Hayden Lorell とはいえそんな関係が始まって何年だ? 正直日産を応援したい気持ちになってくるぞ。

Manwich 合併ではなく今の提携関係を続けた方が良さそうなもんだけどねぇ。合併したものの経営方針やら思想やら企業文化の違いやらでダメになっていった企業がどれほどあったか、ダイムラー・ベンツとクライスラーみたいにさ。

lilli harlow しかし各界に顔の利く一部上場企業の中でも有数の大企業の最高責任者を経済犯罪で逮捕かぁ... アメリカとは全然違うな。

Stop Blaming the white man アメリカやヨーロッパが発展途上国かのように思えてくるわな。

foxdesignbuild foxdesignbuild 米国だったら辞任を求められそれで終わり、1億ドルの退職金を受け取って次の週には別の会社に行ってる。

Michael Ballaban 罰として三菱自動車のCEOのポジションだけは維持してもらおう。

Lucasg こらこら、日本だって1966年に国連で採択された自由権を中心とする人権の国際的な保障に関する多数国間条約『市民的及び政治的権利に関する国際規約』に署名しているんだぞ?

そんな "残虐で非人道的で悪質な刑罰" を科すわけないだろ~

Stephen 社長専属運転手がかわいそうだな、車もi-MiEVに格下げですよ。

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