イギリスの公共放送局『BBC』より

フランスで燃料税めぐる大規模デモ:マルセイユで80歳の女性が殺害される

France fuel protests: 80-year-old woman killed in Marseille - 2018/12/04

フランスのマルセイユ市で燃料税めぐる大規模デモ最中に80歳の女性が自宅の窓に飛んできた催涙ガス缶に当たり死亡

抗議行動が行われていた場所近くのアパートに住んでいた女性がシャッターを閉めようとしていたところ顔面に飛んできた催涙ガス缶を受け死亡した。女性は病院に運ばれたがショック状態に陥り手術中に死亡したと地元メディアは報じている。

今週日曜に警察が発表したところによると2週間ほど前に始まった一連のデモでこれまでに上記の女性以外に3人がデモの最中に死亡したという。



燃料税の増税をめぐり始まった抗議行動だが今やそれは生活費全般の高騰に対する国民の怒りへと膨れ上がっている。

フランスの内務省によれば燃料税の急増に抗議する『ジレ・ジョーヌ(gilets jaunes:フランス語で黄色のベストの意味)』と呼ばれる運動への支持を示すため今週日曜日には約13万6000人がフランス各地のデモに参加したとのことだ。

なお『ジレ・ジョーヌ』と呼ばれているのは、デモの参加者がフランスの法律によってすべての車両に携行されることが義務付けられている視認性の高い黄色のベストを一様に着用していることに所以する。
(デモ隊の鎮圧に向かう治安部隊)


マクロン大統領は月曜早朝に緊急の安全保障会議を開催、参加した閣僚によればあらゆる選択肢は除外されていないものの現段階では国家非常事態宣言についての議論はされていないとのことだ。同国首相のエドワーズ・フィリップ氏はまた月曜日に野党の党首とこの件に関し話をしたと述べている。

この緊急会議に出席した極右政党の投手マリン・ルペン氏は、マクロン大統領はこのままでは過去50年で初めて "自国民への発砲" 命令を出す大統領になる可能性があると警告、速やかに燃料税の引き上げを取り下げるべき等といった主張をした。

ブルノ・ル・メイヤー財務大臣は週末のデモが経済に与えた被害を評価するため業界団体の代表らと会談、「影響は深刻で進行中である」とAFP通信に語り、一部の小売業者らはデモ中に売上が約20-40%減少、一部のレストランでは20-50%減少していると付け加えた。
デモ活動は月曜日も引き続き行われデモ隊の一部はマルセイユ近郊のフォス=シュル=メール港の主要な燃料貯蔵施設に続く道路を封鎖、その結果全国のガソリンスタンドで燃料不足が発生しブルターニュではガソリンの購入量が制限される状況になっている。

さらに全国約100の中学校の学生が教育改革と試験制度改革に反対するデモを開催、同じく月曜に民間の救急車の運転手らが社会保障改革と医療改革に反対するデモを実施、こちらは改革により雇用が脅かされると主張しパリのコンコルド広場から議事堂までの道路を数十台の救急車で封鎖した。両グループがジレ・ジョーヌ運動と直接的に協調しているのかは明らかになっていない。

(救急車が道路を封鎖する様子)



1968年以来最悪の暴動にフランスのメディアも動揺している。

パリ市街で行われたジレ・ジョーヌ運動の抗議活動が暴動に発展し自動車への放火や商店での略奪行為が起きていることに対し、左派の日刊新聞『リベラシオン』は「パリは今、間違いなく1968年5月の大規模デモ以来最も暴力的なデモを経験している」と述べ、 デモの参加者が国粋主義者や極右の学生団体から極左の過激派、さらには無政府主義者まで多岐にわたっているその "異質ぶり" を指摘している。

中道右派の日刊紙『ル・フィガロ』は "国家の緊急事態" と題した社説で「この許しがたい暴力の爆発を前に、国民は国家の崩壊を目の当たりにしているような感覚を抱いている」と述べ、 12月1日は "国家の集合的トラウマの日" として語り継がれていくだろうと書いている。

日刊経済紙『レ・ゼコー』はその一面で「エマニュエル・マクロン仏大統領はカオスに直面している」との見出しの記事を掲載、「土曜に起きた暴力シーンを前にしてもエリゼ宮(大統領官邸)は強硬路線を維持」と書いている。

中央左翼の夕刊紙『ル・モンド』はアルゼンチンで開催されていたG20から帰国後すぐに暴力に包まれた凱旋門への対応へと向かったマクロン大統領に言及し "最大規模の政治的危機を迎えている" と書いている。

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海外の反応

reddit.comのコメント欄より: ソース


SunriseSurprise 治安部隊の催涙ガスの缶に当たって死亡?
80年間生きてきて最後がこれって...

notanotherbreach 第二次世界大戦から、ナチスによる弾圧から生き残った彼女は最後に自分の国の政府の無能っぷりに殺されたわけか。なんとまぁ気の毒な...

ECHELON7x それと同盟国による爆撃からもだ、というかこっちの方が酷い。ドイツによるフランス占領で殺された数よりも米英による爆撃によって殺された数の方が多い。フランスが同盟国を "偉大な解放者" とみているなどという認識は歴史的に不正確だ、無抵抗の民間人を大量虐殺した彼らをどうして英雄と思えるって話さ。

BehaveSlave 第二次世界大戦が僅か75年前というのが信じられんよなぁ。

vaugelybashful 国が悪いというか、週に35時間しか働かず2時間の昼食を取る、自分以外の誰かを助ける気などさらさらない怠惰な抗議者が悪い。

thatguywhosadick しかしどうもはっきりしない記事だな、警察がガス弾をグレネードランチャーから発射したら跳ね返って偶然この女性に当たったのか、それとも警察がこの女性の顔面目掛けて直接ヒャッハーしちゃったのか、当時の状況がわからん。

clarky9712 どうしたら催涙弾が家の中に向かって飛んでくるのだろう?

Lord_Dreadlow そりゃフランスの治安警察の腕がクソだからだろう。練習する機会はどの国よりもあるだろうに。

Mordy_the_Mighty 催涙ガス弾は通常群衆に向かって射撃するものではない、直接当たれば怪我して当然のものだからな。だから群衆からある程度離れた場所を狙うものだ。

Lord_Dreadlow それで住宅の窓に向かって撃ったと。

solidSC 住宅の壁に当てて跳ね返らせるつもりだったとかかね?

badsalad お婆さんに当てて跳ね返らせるつもりだったとかかもしれん。

cybrjt ジャストミートやん、フランス警察の練度は凄いな!

SoForAllYourDarkGods もしくは群衆の上を飛んでいくようにした結果とか?

yoboyjohnny 群衆のど真ん中に落ちるようにして失敗したとかじゃね。

pridEAccomplishment_ 低い弾道だと怪我をさせる可能性があるから上に向かって撃ち、弧を描くように群衆のど真ん中に落ちることを狙ったが想定以上に飛んでしまったとかが真相かね。

SlothOfDoom 風の影響を読み間違えたとかもあるかもな。

I_Automate/BalancedHippie 催涙ガスの入った缶は結構な重さだから風くらいじゃ影響を受けん。そして重いからこそ群衆の周辺部、隙間、あるいは道路わきに向けて撃ち道路や壁に着弾させることで速度を殺すのが原則だ。今回はおそらく壁にぶつけることを狙ったが失敗したのだろう。

Darksagan 彼女は誰かの母であり、誰かの祖母だったはず、それが何の理由もなく。悲しいことだ。

Oronoguy 催涙ガスが画面越しに私の目を攻めている。

Nevarien いわゆる戦時以外に民間人に対して使用される非殺傷兵器とやらの現実がこれですわな。
家族に哀悼の意を表し、彼女が安らかに眠ることを祈ります。

Mralfredmullaney ってかなんでこの人たちはデモしてるの?
抗議活動に関する報道はそこら中にあふれているけど肝心要のそもそもの原因について詳しく書いているのを見つけられないんだが。

FeuFolley フランス人参上!
できるだけ客観的かつ端的に説明すると...

マクロンは就任以来、低および中産階級の税負担を増やし富裕層の税負担は軽くするといった富裕層中心の政策をしてきた。

さらに、ただでさえここ数年でガソリン/軽油の価格は高騰し続け税金や生活費の負担が増え続け国民の購買力が低下し続け不満が溜まっていたところにだ、今度は来年1月から軽油やガソリンにかかる税金を引き上げる方針を決めやがった。

堪忍袋の緒が切れた低および中産階級だったが与党の対抗勢力がまた全くの役立たずと来ている。なので多くの人々はソーシャルメディアを通じて運動を始めた、これはSNSから広がった政府への抗議行動なんだ。特定の政党を支持するといった動きがないのでまとまりのないものになってしまっているが。

newsweekの記事 によるとフランスでは2017年~2018年の1年間ですでに軽油価格が23%、ガソリン価格が15%値上がりしており2008年~2016年にかけフランス人家庭は平均500ユーロ(約6万4500円)近い可処分所得を失ったとのこと


callado ソーシャルメディアを通じて?
なんかこの時点で疑わしい気が...

ZealousidealNose7 フランスではデモが頻繁に起こるがそのほとんどは労働組合が中心になっている、だが今回はそういった中核となる組織がない。より自発的な運動であることは間違いないよ。

ThuleanPerspective88 まぁ公共交通機関のない地方に住んでいる人間にとっては死活問題だろうからな。

meneldal2 特に今回の燃料税は軽油の値上がり幅が大きいってのも影響している、ガソリンへの税はリットル当たり2.9セント値上がりするのに対し軽油への税は6.5セント値上がりする。

フランス政府はこれまでディーゼル車にインセンティブを与えてきたがここにきて方針転換、軽油の税金を上げてガソリン並みの料金にしガソリン車や電気自動車に買い替える人には補助金を出すことにした、ディーゼル車はガソリン車よりも高くつくようになってしまったわけだ。

そりゃ怒るって。

Peebahr そして燃料税増税から始まったそれは他の政府への不満にも誘爆し包括的な反政府運動へと成長したのであった。

TigerNuts1980 右翼も左翼も共産主義者も国粋主義者もアナーキストも皆一斉に立ち上がった、だがまとまりはない。なにこれこわい。

BeingOrginal なぁに、喧嘩と革命はパリの華ってやつさ。


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