米国の保守系オンラインマガジン『アメリカン・シンカー』より

トランスジェンダリズムとオリンピック

Transgenderism and the Olympics - November 26, 2019



来年の東京オリンピックは近年高まりを見せているトランスジェンダー運動にとって試金石となるだろう、そしてその先に待つものは "トランスジェンダー運動の急な死" かもしれない。

2020年の東京五輪開幕まで1年を切る中、とある問題が国民的な議論を呼んでいる、それは "生物学的には男性だが自分は女性であるとの性的アイデンティティを持っているトランスジェンダー選手がオリンピックの女子競技を総なめにしようとしている" ことに起因する。

この問題は政治家やマスメディアにとっては避けたいテーマだが、女性の側に立ったフェミニストとトランスジェンダーの側に立った進歩派のぶつかり合いはすでに始まっており、東京五輪が始まる7月24日にこの問題は一気に論争の嵐を巻き起こすだろう。
IOC(国際オリンピック委員会)はトランスジェンダーの女性選手と生物学的女性選手とが公正に競い合えるよう、東京五輪前に現在より厳しいトランスジェンダー選手の参加条件に対する新ガイドラインを策定しようとしたがこれに失敗した。

新ガイドライン策定のために設けられた委員会でそこに集められた科学者たちは合意に達することができなかった、トランスジェンダーの扱いが極めて繊細な問題だったからだ。

IOCのガイドラインでは男性として生まれながら女性として五輪に出場するトランスジェンダーの選手について、男性ホルモンのテストステロンのレベルを大会の1年以上前から抑制しなくてはならないと定めている。



現在のIOCのガイドラインでは男性として生まれながら女性として五輪に出場しようとしているトランスジェンダーの選手は、男性ホルモンのテストステロンのレベルが1リットルあたり10ナノモル (nm/ℓ) 未満でその状態が大会前の12か月の間維持されれば参加できることになっている。

一般的に男性のテストステロンは7.7〜29.4 nm/ℓで女性のテストステロンは0.12〜1.77 nm/ℓとされている。

つまり現時点ですでにトランスジェンダー選手は許容されるテストステロンの値において、生物学的女性選手よりも5倍以上多いという優位性を持っているというわけだ。

しかもトランスジェンダーの女性選手は生物学的には男性であるため骨構造と上半身の強さにおいて女性を圧倒している。

現段階でテストステロンのレベルを抑制しても男性として成長する間に得た身体的な優位性は保たれたままであるとスウェーデン最大の研究教育機関であるカロリンスカ研究所の最新の研究は指摘している。



ニュージーランドのオタゴ大学の生理学者であるアリソン・ヘザー氏も「テストステロンを抑制したとしてもすべての男性特有の優位性が消失するわけではない」と述べている。

 「例えば骨構造、肺容量、心臓の大きさなどは生物学的女性よりも大きい」

 「またテストステロンは筋肉の成長を促すホルモンだが、発達中にテストステロンの影響を受けて形成された筋肉はテストステロンの供給が抑制されてもその効果の一部を永続的に残す」

 「そのためトランスジェンダーの女性になったとしても生物学的男性が持つ強い肉体を作る能力は減じない」
英国の女子長距離走・マラソン元選手でオリンピック金メダリストのポーラ・ラドクリフは、"トランスジェンダーの女性が女性スポーツに対する脅威になる" と考えない人間は認識が甘いと述べ、「人々はこのトランスジェンダーの女性に有利なシステムを悪用するだろう」と言い放った。

「男性として生まれ男性として育った人間が、性自認が女性であるというだけで女子スポーツに出場することはあってはならない」

「それはスポーツにおける男女の定義/枠組みを完全に台無しにしてしまう」

ポーラ・ラドクリフは自身のツイッターでこう述べている。



女子テニス界の伝説的プレーヤーで同性愛者であるをカミングアウトし同性愛者の権利向上を求めて社会運動を行ってきたことで知られるマルチナ・ナブラチロワこれに同意し、トランスジェンダーの女性と生物学的女性とが競争することの公平性に関する懸念の声を上げた。

「例えばとある男性が女性になることを決断したとしましょう。必要とあればホルモンを摂取し、その元々の身体的優位性で勝利を積み上げていくわけです」

「ある程度の大金を稼ぐことに成功するかもしれません。そして急に女性になるとの決断を撤回し普通の男性に戻って家族を作り子供を作るのです、突然気が変わったなどと言って」

「単に名前を変えホルモンを摂取するだけで女子スポーツに参加することを許す、そんなの馬鹿げています、そんなものは不正です」

英国の元競泳選手でオリンピックの銀メダリストであるシャロン・デイビスもこれに同意している。

「"生まれながらの性別" と "性的アイデンティティにおける性別" との間には根本的な違いがあります。女性スポーツを守るために、男性の性的優位性を持つ人は女性スポーツに出場できないようでなければなりません」



トランスジェンダーの女性選手に対する懸念が高まっているのは、オリンピックを前にして生物学的には男性だが自分は女性であるとの性的アイデンティティを持っているトランスジェンダー選手が複数の国際的なスポーツ競技会で金メダルを獲得しているからだ。

女性スポーツ選手の側に立つフェミニスト団体の一部はこの問題に対し怒りの声を上げているが、伝統的なフェミニストの利益よりもトランスジェンダーの利益を重視する主流メディアはその声をほぼ無視している。

だが来年の7月にオリンピックが始まれば主流メディアのその姿勢も変わらざるを得なくなるだろう、 女性として出場した男性が、不公平な競争を強いられる女性選手を犠牲にして金メダルを量産したときにだ。

実際、その予兆は見え始めている。





最近論争の的になったトランスジェンダー選手の1人が身長183cm/体重130kgで自分の性別を女性と認識しているニュージーランド人のローレル・ハバードだ。

この元男性選手は35歳の時にトランスジェンダーの女性選手になる前まで重量挙げの男性選手として活躍していた。

彼女は最近行われた重量挙げの国際試合で2つの金メダルと1つの銀メダルを獲得し、女子重量挙げの3つの階級で圧倒的な成績を残している。

これに対してスポーツの参加選手を性自認ではなく生物学的性別で分類することを提唱するニュージーランドを拠点とする団体『Speak Up For Women』は、選手がトランスジェンダーの女性であると主張したとしても男性が女性として競争することを禁止するよう要求している。

同じく女性選手を擁護するイギリスのフェミニスト団体もローレル・ハバードを女性選手として扱うことに反対する声明を出しているが、IOCはこの問題に対処できない、あるいは対処したくないと考えていることをその対応で証明してしまっている。
ローレル・ハバードは問題の一例に過ぎない。



今年5月に行われた全米大学体育協会(NCAA)が主催する大学競技会の女子400m走ではフランクリン・ピアス大学のトランスジェンダーの女性選手セス・テルが優勝したが同選手は2017年まで男子陸上選手として出場していた。





今年10月に行われた大学競技会の女子クロスカントリーではモンタナ大学のトランスジェンダーの女性選手ジューン・イーストウッドが "Female Athlete of the Week(今週の女性アスリート)" を受賞したがこの選手も最近まで男子選手として出場していた。





トランスジェンダーの女性選手は高校の陸上競技でも増加しており彼女らは出場するたびに他の少女たちを圧倒している。

例えばブルームフィールド高校のテリー・ミラーは今年のコネチカット州オープン陸上の女子200メートル走で優勝している。

テリー・ミラーと同じくトランスジェンダーの女性選手であるクリスチアナ・ホルコムの二人は今年、女子選手としてコネチカット州の15の陸上選手権でタイトルを獲得している。

そしてこれらの自身を "女性" と認識する者たちは全員、オリンピックの金メダルへの出生街道に乗っている。



NCAA Transgender Handbook(全米大学体育協会トランスジェンダー手引き書)の制作に携わったヘレン・キャロル氏は現在NCAAスポーツに属する "自身をトランスジェンダーの女性と認識する男性" の数を200人と推定している、アメリカ人に占めるトランスジェンダーの割合が0.3%と言われているにもかかわらずだ。

女性選手が掴もうとするも、競争が始まる前からその可能性がついえてしまう金メダルがオリンピックでいくつも生まれる未来をその不均衡な数字は暗示している。



これらは米国の女子スポーツにおけるトランスジェンダー選手の存在感を反映しているが同時に世界のそれも反映していると言っていいだろう。

そして主流メディアはポリティカル・コレクトネスに沿った報道姿勢を貫き、一部のフェミニストグループが表明する怒りに対して蓋をしてきたが、2020年のオリンピックはそれを変える可能性がある。

オリンピックは世界で10億人以上の人々が視聴する大イベントだ。米国では常時2500万人以上が視聴すると言われている。

そこで視聴者の多くは初めて目にするはずだ、自分は女性であるとの性的アイデンティティを持っている生物学的 "男性" が、トランスジェンダーの女性選手として競い、その身体的優位性をフル活用し、女性選手を圧倒する姿を。

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フェミニスト運動の中心には常に "女性が男性に支配されるのを防ぐ" という考えがある。

そのためこの女子スポーツにトランスジェンダーを受け入れるという変化は進歩的な人間の間に大きな亀裂を生じさせることは間違いないだろう。

ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)を信奉する進歩主義者とフェミニストとの間には一戦が引かれることになる。彼らは互いに、自分たちの理念/信念/大義は相手のそれよりも重要であるとみなすようになるのだ。



トランスジェンダーを社会的に受け入れなければならないと感じている進歩主義者と、生物学的な女性アスリートが男性と競争することなどあってはならないと感じているフェミニストは当然対立することになる。

今は前者が政治的には正しいとされているが、トランスジェンダーの女性選手が真の女性アスリートを蹂躙しメダルを獲得する姿を見た時、中立的なアメリカ人はどう反応するだろうか?

そして伝統的なフェミニストが数字を用いたロジックを持ち出した時、進歩主義連合は一気に分裂を迎える可能性がある。

つまりは、「あなたは人口の51パーセントを占める私たち(女性)を支持しますか? それとも、人口の3%未満しかいない少数派に独占的権利を与え続けることを支持しますか?」という主張だ。



いわゆる進歩的な考えを持つグループは一見するとひとまとまりに見えるが、実際は決して相いれない主張を互いに持っており、ダクトテープと梱包用ワイヤーによって無理やりまとめられているに過ぎない。

さらに悪いことにこの悲惨な内輪揉めは、ドナルド・トランプのせいで進歩主義と保守がかつてない政治的対決を繰り広げている最中に表面化することになる。

この新たな火種がアメリカの左と右の亀裂をさらに深めることは確実であり、民主党の基盤となっている進歩主義連合は無数の超特定利益集団(特定の利益を共有し、その利益を守るためにロビー活動などを行う集団)に分裂しかねない。

そして最も大きな打撃を受けるのは、そんな彼らが守ろうとしている、そして実際守られるべき存在である不当に扱われている弱者に他ならない。

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海外の反応

americanthinker.comのコメント欄より: ソース


SkyDog 急進的なフェミニストの自業自得だ、彼ら彼女らは誰かを責めるのではなく自分たち自身を責めなければならない。

長年にわたって私たちに "男女は平等" だけでなく "男女の間に違いはない" と言ってきた結果、現実に立ち向かうことを余儀なくされたというだけだ。

Jedimaster Trump 古代オリンピックは男性のみが参加する競技会だった。まさかここにきて先祖返りするとはね。リベラルに感謝だな。

Mary Elizabeth "when transgender women can compete as women, against biological women. " "IOCはトランスジェンダーの女性選手と生物学的女性選手とが公正に競い合えるよう、(東京五輪前に現在より厳しいトランスジェンダー選手の参加条件に対する新ガイドラインを策定しようとしたがこれに失敗した)"

"Currently, the IOC says self-identified women can compete, "現在、IOCのガイドラインはself-identified women(生物学的には男性だがジェンダー・アイデンティティを女性と認識する女性) について、(男性ホルモンのテストステロンのレベルを大会の1年以上前から抑制すれば)参加可能と定めている)"

"transgender women" なんていうリベラルが作り出した欺瞞だらけの言葉は禁止すべき。

Al Yancey Agree 100%。

記事の中でこの "transgender women" とやらが "He(彼)" ではなく "SHE(彼女)" と書かれるたびに物凄い違和感を感じたわ。

TinaTrent トランスジェンダーを支持する活動家らはすでにテストステロンに関する規則の厳格化に抗議している。

もう好きにやらせればいい、自ら招いた行き過ぎた権利保護によって彼ら自身が、彼らの子供たちが弱者になるまで彼らは止まらないのだから。

Susan Daniels すでに薬物検査をしているのだから、DNA検査も始めたっていいじゃない。男か女かはそれで解決じゃ!

Infidel1776 いっそのことマイケル・フェルプスに自分は女性だと宣言してもらおう、そうすりゃキャリアをあと10年は延長できる、金メダルのコレクションがさらに増えるぞ。

Astroknott 58 人間には性別を変える能力はない。人間の男性は何をしようと常に人間の男性にしかならない。外科的な手段を用いようとも人間は性別を変えることはできない!

これは単純な事実だ。だが昨今はそんな科学的事実を述べただけでヘイトスピーチ扱いされてしまう。

"transgender women(トランスジェンダーの女性)" は女性ではない。

ブルース・ジェンナーは今も男だ。外科手術を受け、名前をケイトリンに変えても関係ない。彼はまだ男であり、常に男であり続ける。 ブルース・ジェンナー:
十種競技の元世界記録保持者で1976年モントリオール五輪の金メダリスト、性同一性障害を公表し、女性名のケイトリンに改名した。(https://ja.wikipedia.org/wiki/ケイトリン・ジェンナー)

Watsyxz とりあえず学生競技団体はトランスジェンダー選手にぴちぴちの肌に密着した、スパンコールのついた服を着せることから始めてはどうか?

そうすりゃ「持ち物」が目立つようになる。

Tim1556 こんなことが議論になっていること自体がもうどうかしている。

historical1 私は元アスリートだが今も競技を続けていたとしたら生物学的男性とチームを組むこと、生物学的男性と競争することを拒否しただろう。

今日の女性アスリートは同じことをする必要がある。プレーヤーはプレーを拒否し、コーチはコーチを拒否し、ファンは出席を拒否すべきだ。

Barbara Razza 全ての生物学的女性はオリンピックをボイコットすべき。

Bertie あらゆる動物が持つ「性」を「ジェンダー」という言葉でねじ曲げることなど許されるはずがない。

MIKEY123 XXは男性、XYは女性、染色体が全てだ。

Steve Diamond さすがにこれは正されるべきだろ、見る側も "男性競技を2回" やられたら飽きちゃうぞ。

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