オーストラリアの公共放送局『ABC』より

イタリア/アメリカに二の舞になるはずだったのに? 新型コロナ対策に成功した日本の不可解な「謎」

Japan was feared to be the next US or Italy. Instead their coronavirus success is a puzzling 'mystery' - 2020-05-23



肩がぶつかるほど混雑した公共交通機関。世界で最も高齢化が進んでいる人口。クルーズ船での大規模な集団感染。強制力もペナルティもない緊急事態宣言。

それらはまさに新型コロナウイルスによる大災害のレシピに見える。実際、公衆衛生の専門家の間では「日本は次のイタリアかニューヨークになる」と囁かれていた。

しかしこれだけ悪材料が揃っていながらそれは起こらなかった。



もちろん日本も無傷だったわけではない。人口1億2600万の日本では16,000人以上が新型コロナウイルスに感染、約800人が死亡した。

しかし例えばアメリカでは9万人以上がCOVID-19により死亡している。

新型コロナウイルス封じ込め戦略が広く評価されている人口8,300万人のドイツでさえ約8,000人の犠牲者を出した。

世界保健機関(WHO)でシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子氏は日本を「成功事例」と呼んでいる。



「人々はこれを "日本の奇跡" と言っている」

「理解できないと、日本は中国の旧正月の間に40万人以上の中国人観光客を受けいれたのにと」

「実際日本では他のどの国よりも、それもかなり早い段階で感染者が確認されたがその高い人口密度や人の移動の多さにもかかわらず感染拡大を抑えることに成功している」

進藤奈邦子氏はABCに対してこう語った。



日本はウイルス検査の実施数が少ないとこれまでに何度も批判されてきた、一部の医療専門家は国内でのウイルス蔓延の実態を隠しているとまで言っていた。

しかしふたを開けてみれば、日本国内では死者数が爆発的に増加するといった事態は起きておらず、今では国内のほとんどの地域では緊急事態宣言が解除されている。

政府によると日本は封じ込めへの道を順調に進んでいるとのことだ。

謎の、しかし明らかな日本の成功

ノーベル医学生理学賞受賞者である本庶佑氏によると、日本が新型コロナウイルスによる死亡者数を比較的低く抑えることができた理由を正確に特定することは難問だという。

「日本の緊急事態宣言には罰則などの強い拘束力がなく他国に比べて緩い、にもかかわらず感染者数/死亡者数を著しく低く抑えることに成功している。これはほとんどの医学者にとって未だに謎となっている」

本庄教授はその理由について結論付けるにはしばらく時間がかかると語ったが様々な可能性が指摘されているという。

「この国の人々は一般的に非常に清潔だ。彼らは常日頃から頻繁に手を洗うなど清潔であることを好み、キスや抱擁による挨拶を交わさない」

「BCGワクチン接種が免疫力の基本的なレベルを高めるのに役立っているとの仮説もある」

BCGは結核ワクチンでオーストラリアや米国、英国ではほぼ使用されていないが日本では現在も子供たちを中心に広く接種されている。

オーストラリア国内でもCOVID-19に対するBCGワクチンの有効性を調べる研究が行われているが研究チームを率いるNigel Curtis教授によると結果が出るまでにはまだ「数ヶ月」はかかるとのことだ。

また厚生労働省の国際保健・協力室長である田口一穂氏は日本の成功の理由を特定することはできないが、同国の強力な医療制度と多くの日本人がマスクを着用しているという事実が助けになったかもしれないと述べている。



東京を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大したことを受け日本政府は4月7日に緊急事態を宣言することを余儀なくされた。

しかし日本の「緩いロックダウン」は他の国で見られた厳格な封鎖措置とは大きく異なっており、その内容は国民の自主性に大きく依存するものだった。

にもかかわらず現在では47都道府県のうち42の地域で緊急事態宣言が解除され、東京も感染者の減少が続いていることから早ければ5月25日にも緊急事態宣言が解除される見込みだ。

物議を醸した日本の新型コロナウイルス対策

日本と他の先進国とで大きく異なっていたのがウイルス検査に対する考え方だ。

希望するすべての人間にウイルス検査を行った他の国と比べ日本では限定的にしか行われず検査実施数の圧倒的な少なさが批判の的となった。

例えばオーストラリアのウイルス検査の実施数は1,000人あたり40回を超えているが日本のウイルス検査の実施数は1,000人あたり2回と僅かである。

しかしWHOの進藤奈邦子氏によると日本のウイルス検査体制は医療崩壊を防ぐことを目的としたはるかに「戦略的」なものだったという。



「日本がしたことは本当に素晴らしかった。なぜなら希望者全員を検査することに意味はないからだ。インフルエンザと違いこの疾患には有効な抗ウイルス薬が存在していないのだから」

進藤氏はウイルス検査率の低さに対する批判は不当であると考えており、日本の取った戦略は治療を必要としていない患者が病院に押し寄せる事態を防いでいるとしてこれを支持している。

「大規模な検査を行うのではなく、クラスターの検出と重症者の管理に集中する方が賢明だろう」



しかし日本政府は対応に失敗したと語る英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は第二波の可能性に備えるために検査能力を拡大する必要があると警鐘を鳴らしている。

「この第一波を乗り越えることができたのは偶然であり日本はそれを成功と考えるべきではない。第二波は必ず起きる、そしてそれに備えるために日本は体制を整えなければならない」

日本の対応は完璧と呼べるものではなかったが...

渋谷健司教授が指摘するように日本は幾度となくウイルス封じ込めに苦戦していた。

2月には日本に入港したクルーズ船『ダイヤモンドプリンセス号』で突然かつ前例のない大規模集団感染が発生、712人の乗客と乗組員が感染する事態になった。

オーストラリアを含む世界中の政府は日本の検疫に関する懸念から市民を船から降ろすためにチャーター便を手配。

検疫を終えた乗客が下船した際にはウイルスが日本中に広がることが懸念された。

しかしそれは起きなかった。



また日本は世界有数の医療制度を有しているがそれにもかかわらず一部で患者の急増に対応できない事態が起きた。

一部の病院が外来患者の受け入れや一部サービスの停止を余儀なくされた他、新型コロナウイルスが施設内に広がるのを恐れて感染の疑いのある患者を拒否する病院が続出、発熱と呼吸困難を伴う男性を乗せた救急車が80の医療機関で受け入れを拒否されるといったことも起きた。

日本救急医学会は新型コロナウイルス感染症への対応で救急医療体制が危機的状況にあるとの声明まで出した。

しかし現在はそのほとんどで安定の兆候が見られている。

東京都によると5月19日現在、医療機関に入院している感染者の数は679人未満で集中治療室または人工呼吸器を必要としているのはわずか42人とのことだ。



日本は危機を免れたかもしれないがパンデミックはまだ終わっていない

英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授はまだ気を抜くべきではないと警告する。

「日本が実施したのは厳格な封鎖ではなく国民の自主性に依存した在宅要請だった。しかし人々はそれをしっかりと守り、他の国で行われている厳格な封鎖と同レベルの社会的距離を保った」

渋谷健司教授はこう述べつつ、日本がウイルスを封じ込めることができたのはあくまで「幸運」であり緊急事態宣言の解除の決定は慎重に行わなければならないと続けた。

また統計によると首都東京の今年の3月までの全体的な死亡率は昨年の同時期と比べて低下しているが、新型コロナウイルスは発症から死亡までにタイムラグがあるため4月と5月の死亡率を注意深く見なければならないと教授は警告した。

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海外の反応

reddit.comのコメント欄より: ソース



日本の人々はお互いのスペースを尊重し、病気にはマスク着用という習慣をすでに持っており、専門家たちが感染力が高く致命的なウイルスが世界中で蔓延していると言った時にその声にちゃんと耳を傾けた。

謎でもなんでもないよ。


RagingNerdaholic This. It's only a mystery if you're a moron.
(これだね。これを謎と思えるのは能なしだけだよ)

Cactus_Interactus 日本政府はマスク不足に対応するために布マスクを配布するなど対応を行った。どこぞの大統領みたいに「新型コロナウイルスは民主党のデマ」だのと陰謀論を展開することもなかった。

bobliblow 患者の体にケツ穴から紫外線を照射すればいいとかわけのわからないことも言ったりしなかったしな。

fqye and Japanese are slim.
(それと日本人は痩せている)

hi0039 Bingo...
(ビンゴ...)

Shalmanese それは感染者が病院に運ばれる割合、つまりは死亡率に関係するだろうけど感染率には影響しないはず。

若くて健康な人間だらけの米空母で集団感染が発生したことからもそれは明らかだよ。




(ABCへの記事への)リンクをクリック

見てみろよ、皆マスクしてるぜ


Moldsart 一方でアメリカ人は "Wearing masks is against freeeedom!!(マスクの着用は自由への侵害だ)" などと言う。

日本、韓国、中国、香港、台湾、オーストリア、スロバキア、スロベニア、チェコ共和国などでは人々は素直にマスクを着用しているのにだ。

なぜこれらの国々はアメリカよりもずっと上手く対応できているのか? 我々には絶対に理解できない、それは確かに "謎" だろうよ!

rajasan 米国ではマスクしないで感染する自由があるのだ。




誰もがマスクをしている

家では靴を脱ぐ、外から汚いものを招き入れないために

社会的距離を無視して混雑する場所に駆け込んだり、ウイルスを政敵が仕組んだデマだなどと呼んでいない



私は日本に住んでいる。ショッピングアーケードや食料品店に行くと文字通り90-95%の人がマスクを着用している、人々にそうすることを強制する法律がないにもかかわらずだ。

人々はロックダウンも自主的に行った。

すべての店の入口には消毒液がありすべてのレストランやカフェにはウエットティッシュがある。

政府は厳密な接触追跡を行っている(台湾と韓国が取っているのと同じアプローチ)。

政府はまた深刻な症状の患者向けに抗ウイルス薬のアビガンを承認しようとしている。

これは別に謎というほどのものではない、責任ある人々が期待されることをただ素直に行ったというだけの話さ。


Fortuner1205 But what about your “freedums”?
(でもそれじゃ君の自由はどうなる?)

Only joking.
(ただの冗談だ)

日本人と違って、賢明で責任ある行動を取れない人間の多いこと多いこと...




"Mystery(謎/ミステリー)"、何を言っているんだ... マスクを着用するという単純な常識に従うことがどうして謎になるんだよ?


xoroth どの国も解決のためにはとにかくウイルス検査をしなくちゃならないと言っている中で、検査率が他の国に比べて圧倒的に低いからでは?

LesbianCommander 多くの死が当たり前となっている国からすると、成功している国は奇妙にしか見えない。欧米のことごとくが対応に失敗したんだ、日本はさぞかし奇妙に映っていることだろうよ。

trojancourse まぁ理由はマスクだろうね。

zvive 常識を働かせ、他者を尊重すれば封鎖などせずともこの危機を乗り越えることができることの証明だ。しかしここはアメリカなんだな...

HugoZHackenbush2 日本はどの国よりも清潔な国だもの。

2018年のワールドカップロシア大会では日本のファンが試合後に残ってスタジアムを掃除した。日本代表チームも自分たちの更衣室を掃除した。

彼らの衛生観念、衛生に関するエチケットがよく表れている。

Varolyn 東京とニューヨークとを見比べてみろって話だ、日本はどの国よりも清潔だ。

khlavguy •健康的な食事 •健康的なライフスタイル •清潔な老人ホーム •清潔な職場環境 •専門家の意見の尊重 •個人主義よりも集団主義 •マスク

arrd3n 日本の成功を "不可解な謎" と見なす人間が理解できない。

西側諸国と比べて伝染病を封じ込めて制御するのに役立つ文化的な違いが数多くある、それを特定するのに天才である必要はない。

guzelbahce 答えは単純、日本の人々はお互いを尊重している、日本人は個人主義者ではなく我々よりも社会を重視する傾向が強い。

私は以前観光ガイドをしていたけど日本人観光客を相手にした時が一番楽だった。

例えば少しここで待っていてくれと頼めばグループ全員がその場にいてくれる。他の国の観光客じゃそうはいかない、勝手に歩き回ったり店に入ったりバスに戻ったり...

その国の文化のルールを伝えたら彼らはそれらすべて尊重してくれる。

Thomo136 それは社会的責任と呼ばれるものだよ。ワールドカップの最中に日本人がスタジアムを片付けたことを覚えているかい?

Eltharion-the-Grim まぁ対応が良かったというより日本がそもそも文化的にパンデミックに強かったという気がしなくもない。

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