英BBC、米ニューヨーク・タイムズ紙、米ABCニュース、英ガーディアン紙より

第49回衆院選で自民党が単独過半数を確保したことに対する海外メディアの報道




英BBCより

日本の選挙:岸田文雄首相が与党・自民党の勝利を宣言

Japan election: PM Fumio Kishida declares victory for ruling LDP - 2021/11/01



今週日曜、日本で衆議院選挙が行われ自民党は連立パートナーの公明党なしで単独過半数となる233議席以上を確保、一ヶ月前に首相に就任したばかりの岸田首相が大勝利を収めた。

自民党は何十年にもわたって日本の政治を支配してきたが最近は新型コロナのパンデミックへの対処で批判を浴び続けていた。

新型コロナの新規感染者数の急増に国民の大多数が危機感を覚えていたにもかかわらず政府は東京オリンピックの継続を決定、その不満は自民党の支持率急落という形で現れ岸田氏の前任者である菅義偉氏は首相就任後わずか1年で辞任に追い込まれた。

岸田文雄氏(64)は長年にわたって首相の座を勝ち取ることを目標としていた人物で2012年から2017年までは国の外相を務めていた。

選挙前は276議席を確保していた自民党だが出口調査が始まった直後は単独では過半数に達しないとの見通しだった。しかし予想に反し議会の過半数の233議席を上回る261議席を獲得。

連立パートナーである公明党は32議席を獲得し自公合わせて合計293議席を獲得するに至った。



岸田文雄とはどのような人物か?

・岸田氏は祖父と父も衆議院議員の政治家一家

・1993年に初当選、2012年から2017年の間に外務大臣に(歴代最長)

・広島が故郷であり2016年のバラク・オバマ米大統領の広島訪問を手配した。広島は核爆弾に見舞われた都市の1つであり現職の米国大統領が訪れたのはこの時が初だった。

・岸田氏は日本で最も評価の高い大学である東京大学への入学試験に失敗、彼の家族の多くが東大出身であったため家族からは「恥」と見なされていた

・大の酒好きでロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフにウオッカ勝負を挑まれた際もこれに挑戦したことで知られている




米ニューヨーク・タイムズ紙より

自民党は首相が次々代わる「回転ドア」状態に戻るも日本の衆院選はいつになく激しい競争に

Japan’s Election Was Closer Than Usual, Even Though Party in Power Has Hit Snooze - Oct. 30, 2021

- 自民党は「カリスマ性に欠ける」ことで知られる岸田文雄を首相に選んだにもかかわらず日曜日の衆院選で勝利 -



日本のここ数十年の首相たちは名前も顔も記憶に残らない人間たちで溢れていた、首相が次々に代わる「回転ドア」状態の彼らは辞任した途端にその存在を忘れ去られる。

その「回転ドア」からたった1年で出ていった直近の首相は、まるで治療中の不眠症患者のようなコミュニケーションスタイルのせいでやはり名前も顔も記憶に残らないまま消え去った。

そして先月、自民党が首相に選出し、今週日曜日の衆院選で党を勝利に導いたのが岸田文雄だ。



先月の総裁選で自民党は歯に衣を着せない発言で国民から人気のある一匹おおかみ(※河野太郎)と、いずれ日本初の女性指導者となる見込みだが極右のナショナリスト(※高市早苗)の両方を差し置いて、前首相の菅義偉よりは幾分かましであるものの依然として「退屈」という評判の岸田文雄を首相に選ぶという賭けをした。

その「退屈さ」ゆえに彼は国民はおろか支持者や友人との関係構築にさえ苦労していおり、 岸田首相と30年間近く既知の関係にある広島の不動産管理会社の久保田イクゾウ会長も「彼のスピーチはあまりにも真面目過ぎて何か面白いことを言おうとしても面白く聞こえない」と評するくらいだ。

とはいえそのギャンブルは日本中の選挙区を厳しい戦いにするという犠牲を伴ったが議会で単独過半数を維持することには成功した。

しかし日本の経済停滞と政府によるコロナウイルス危機への初動の失敗に対する国民の不満は根強く自民党の有力政治家らの一部が議席を失う結果となった。

(これ以降はほぼ岸田首相の経歴の話になるので省略)

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米ABCニュースより

日本の岸田文雄首相、国民から信任を得るも経済アジェンダは不透明

Japan's Kishida wins mandate, though economic agenda unclear - 1 November 2021

- 岸田文雄首相は日本は「新しい資本主義」を通じて経済を活性化すべきだと述べるが国民の多くは彼が何を考えているのか正確に理解できず戸惑っている -



岸田首相は世界第3位の経済国である日本の停滞を防ぐにはより平等な富の分配が必要だと考えていると語った。

実に力強い言葉ではあるがアナリストたちは彼が劇的な変化を起こすとは期待していないようだ。



保守親米で第二次世界大戦以来ほぼ継続的に日本を統治してきた自民党が今週日曜日の衆議院で予想を超える261議席を獲得した。

コロナウイルスのパンデミック対応、何度も繰り返される自民党国会議員の「政治とカネ」の問題とそれに対する不十分な政府対応、経済成長のために抜本的な改革を行うという約束も十分に果たせなかったことなどから野党に勢いがない状況でも苦戦するのではないかという見通しだったが議席数を減らしたものの自民党は単独過半数を確保するに至った。

岸田首相は選挙後に「国民の支持を得られたと確信している、我々は政策や議会の取り組みに専念する」と述べた。

だが日本人の多くは「キシダノミクス」が何をもたらすのか分からないままでいる。

第一生命研究所のエグゼクティブチーフエコノミストである熊野ヒデオ氏は「岸田首相自身も自分が何をすべきなのかわかっていないかもしれない」と語った。

「我々知っているのは彼が掲げたスローガンだけだ。それが信じていいものなのかも実現できるかも不透明だ」



岸田首相は「成長と分配の好循環」を経済政策の柱に掲げている。格差拡大への問題意識は世界的に高まっており実際日本でも、特にシングルマザーの間で貧困がますます問題になっており、総裁選ではキャピタルゲイン税の引き上げ(金融所得課税の見直し)はますます広がる格差を是正するのに役立つと信じていると述べるなど再分配政策を重視する発言をしていた。

しかし就任後にこの政策を危惧した株式市場や経済界からの反発にあい、早々に経済がはるかに強いペースで成長するまで待つ必要があるとして当面の間、撤回する意向を示した。

代わりに岸田首相は法人税を削減することによって企業の成長を促進したうえで企業に賃金の引き上げを奨励するという古典的な「トリクルダウン」戦略を推し進めようとしている。

しかしこれと同様のものは安倍政権でも行われており、企業は収益を増やしたものの内部留保を蓄えたため効果は横ばいになってしまっていた。

また経済学者らは日本の持続可能な成長をするためには規制緩和とより自由な労働市場が必要であると主張しているがそのような変化は既得権益を揺るがす改革を必要とし、農家や大企業などの自由民の支持基盤から反発が予想されるため政治的に困難かつ危険だ。



一方で自民党本部はコロナウイルスの研究や二酸化炭素排出量の削減、水素エネルギーや原子力発電所の再稼働への取り組みにより多くの予算を立てる方針を掲げていて社会的セーフティネットの改善や富の再分配を重視していない。

「彼が何をしようとしているのかは定かではないが、彼のアプローチは 『アベノミクス』とそれほど変わらないだろう」と明治大学公共政策大学院の田中秀明専任教授は語った。




英ガーディアン紙より

与党率いる岸田文雄首相が日本の選挙で快勝

Ruling party of Fumio Kishida wins comfortable victory in Japanese election - Mon 1 Nov

- 予想に反し保守の自民党と連立パートナーの公明党が議会の支配権を維持 -



日本の保守党で与党の自由民主党が今週日曜日の総選挙で予想に反し快勝した。新型コロナウイルスのパンデミックによる経済低迷からの脱却を目指す岸田文雄首相の勢いが増すことが考えられる。

岸田首相が率いる自民党は選挙前の276議席をわずかに下回る261議席を獲得。連立パートナーである公明党と合わせて293議席を獲得し「絶対安定多数」を確保したことで議会での法案の可決が容易になった。

野党で最大の立憲民主党は十数議席を失った一方で大阪西部を拠点とする右派ポピュリストの維新の党はその存在感を4倍の41議席に増やし第3党に躍進した。



「全体的な傾向として安定性を支持する国民が多かったということだろう。自民党は絶対に超えなければならなかったハードルをクリアした」

米シンクタンクのアメリカ進歩センターの上級研究員であるトバイアス・ハリス氏はこう述べた。

「我々は今後多くの経済刺激策を見ることになるだろう」



(中略)



共産党を含む5党は反自民党票の分散を防ぐために異様とも言える緊密な協力体勢を組んだ。

彼らは低所得に悩む家族を助けることの他、岸田氏が反対する夫婦別姓の実現や同性結婚の合法化を訴えた。

「私は候補者の政策の中でも同性結婚とLGBTの問題に関係した政策に焦点を合わせました。私にはゲイやレズビアンのカップルの友達がたくさんいます。これらの問題に対する国民の理解が深まることを願っています」

今回初めて投票した18歳の女性である長崎エコ氏はこう語った。



野党候補に投票した鈴木ヨシヒロ氏は岸田首相の勝利が前任者の政権を特徴づけていた「傲慢さと現状に満足してそれ以上の改善を試みない姿勢」に終止符を打つことを望んでいると語った。

「この選挙が彼らの目を覚ますきっかけになることを願っています」と退職した68歳の彼は述べた。

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