ワシントンDCの保守系シンクタンク『アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所』より

日本よ、韓国から手を引け:サムスンとSKハイニックスはファーウェイではない

Japan, back off on Korea: Samsung and Hynix are not Huawei - 2019/07/23 by Claude Barfield - アメリカ合衆国通商代表部(アメリカ大統領府内に設けられた通商交渉のための機関)の元コンサルタント



おそらく米国のファーウェイに対する戦略をマネしてのことだろう、日本政府は韓国企業の半導体/ディスプレイ製造に必要な不可欠な材料の調達を困難にさせる措置を開始した。

以下は日韓の歴史問題に対し片方の味方をするためのものではなく、例え怒りを招くとしても、日本が選んだ報復方法がいかに危険で破壊的であるかを論ずるためのものである

これは世界のサプライチェーンを大きく混乱させ、5G(次世代高速通信規格)ネットワークを支配せんとする中国を後押ししかねない措置だ。



現在の日韓の確執は日本が1910年から1945年にかけて朝鮮半島を植民地化した際に朝鮮人民に対し行ってきた強制労働や慰安婦などに由来する。

両国は1965年に国交正常化のための条約を締結、これらの問題に対し日本が相当額の賠償金を含む補償をすることで合意に達したが凄惨な歴史は韓国社会にわだかまりを残し続けてきた。

そして昨年、韓国の裁判所が個人の請求権はこの1965年の条約に含まれていないとの判決を下したことで問題は再燃した。
日本の最近の行動は(日本側からの見方では)、韓国政府が真剣に和解の道を模索する気がないことに対する不満から生じている。

ちょうどこのタイミングで行われた衆議院選挙と政権基盤を盤石にしたいという安倍晋三首相の思惑もその要因の一つだ。

日本は正当化のために国家安全保障というもっともらしい理由をつけて半導体やディスプレイの製造に不可欠な3つの化学製品の韓国に対する輸出に制限を設けた。

このうち2つは日本が市場の約90%を支配する化学製品であり残りの一つも日本が市場の70%を支配している。そのため韓国企業が代わりとなる供給先を見つけようにも当分は困難な状況が続くと思われる。



日本はさらに一歩踏み込み、いわゆるホワイト国と呼ばれる輸出手続きに関する優遇措置を与える国の対象から韓国を外すと脅している。

これにより韓国企業は将来これまでのスムーズさとは比較にならないような時間を要する調達プロセスを強いられることになる。

日本の措置はサムソン電子やSKハイニックス、LGディスプレイなどの韓国の主要テクノロジー系企業に直接的かつ即座に打撃を与えた。そしてこれらの企業は世界中で事業を行っているため世界規模でサプライチェーンを混乱させる可能性がある。

サムソンやハイニックス世界のメモリチップの約60%を生産しており、それは携帯電話からパーソナルコンピュータ、商用サーバーまでさまざまな電子機器にとって不可欠な部品となっている。
だが米国にとって最も重要なのは、サムソンという企業は今後来る次世代高速通信規格5Gネットワーク時代のビッグプレーヤー(担う存在)になり得るということだ。

5Gネットワーク開発では後発組であったが同社はそれらの根幹を成す基地局技術とアンテナ開発に研究開発資源を注いでいる。

緊急の安全保障要件との認識から米国は5Gネットワーク分野における中国ファーウェイの躍進を阻害する戦略を開始、欧州や日本などにも同社排除の圧力をかけている。

そして現在、その中国ファーウェイの競合相手となっているのがスウェーデンのエリクソンとフィンランドのノキアなのだがこの2社がファーウェイの驚異的なリソースに対抗できるかは不透明と言わざるを得ない。

だがサムソンは今後数年間で強力な第三勢力に発展する可能性がある。

要するにそのような可能性を台無しにしかねない行動は、それが同盟国のものであっても強く反対しなければならないということだ。



確かに米国と最も緊密な関係にある同盟国でありながら対立を続ける日本と韓国の仲裁には困難で繊細なプロセスが必要とされるだろう。

しかし両国は互いにこの危機を乗り切るために米国の支援を求めており、金曜日の会見でトランプ大統領は(これ以上手を煩わせる案件を増やすなと不満を漏らしてはいたが)米国のこの地域において果たすべき役割を認めた

安倍首相が参議院選挙で勝利した今であれば彼にも妥協の余地が生まれているかもしれない。



WTOでこの問題を取り上げるといった話が出ているが、そこでどのような結論が出されようとも、安倍首相に対し韓国企業への重要なハイテク材料の輸出制限措置を保留するよう説得(あるいは圧力をかける)ことが不可欠である。

中国ときわめて重要な競争を行っている今、同盟国間で壊滅的な打撃を与えるような行為は受け入れられない。



先に書いたようにこれはどちらかの肩を持つものではなく、日本が別の報復的な措置を選択することを妨げるものではない。

また韓国国民の感情に理解は示すがそれは結局は自滅的な結果へとつながるものであり、それを煽るだけで抑えようとしない韓国のムンジェイン大統領に免罪を与えるものでもない。

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ワシントンDCの保守系シンクタンク『アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所』より

日本と韓国の対立の勝者は北朝鮮だけである

In Japan vs. South Korea, only North Korea wins - 2019/07/24 by Olivia Schieber - アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所シニアプログラムマネージャー



7月1日に日本と韓国の間で戦争が勃発した。むろんリアルな戦争ではないが、北東アジアで深刻な問題を引き起こしている程度にはリアルだ。

これは一見ささいなことで大騒ぎしているように見えるかもしれないが、そうではない。

7月1日、安倍晋三首相は日本から韓国へのレジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドの3材料の輸出を制限すると発表した。これらは韓国の輸出の21%以上を占める半導体の製造に不可欠なものだ。

そして安倍首相の発表以来 半導体の価格は急上昇しており、今後スマートフォンのような製品の価格にも影響を及ぼすものと考えられる。



日本は新たな輸出制限の理由として国家安全保障上の懸念を挙げたが、韓国は日本が報復目的でこれを実施したと非難している。

昨年末に韓国の裁判所は日本企業に、日本が第二次世界大戦中に強制労働を強いた韓国人労働者を補償するように命じる判決を出していた。なお日本はこの新たな措置は裁判所の判決とは何ら関係がないと韓国側の主張を否定している。
どちらも米国にとって地域の安定を維持する上で貴重なパートナーであるこの2つの同盟国間の紛争は不必要なだけでなく長い目で見た場合非常に危険である。

そしてこの紛争で得られるものなど日本にも韓国にもほとんどないが、北朝鮮のような敵意ある隣人はこの状況から利益を得る可能性がある。

北朝鮮が最も弱体化するのは同国に影響力を持つすべての国が団結したときである。実際多国間制裁の影響で北朝鮮の2018年の貿易取引額48.8%減少している。

北朝鮮がこのタイミングで韓国に対する日本の輸出規制強化措置を「政治的動機に基づいた挑発行為」と激しく非難したり、「過去の行いに対し償いをしないかぎり日本との交渉を拒否する」と宣言するなど、貿易戦争へと発展した日韓の対立を北朝鮮があおりだしたのも驚くにはあたらない



このような北朝鮮の応援を韓国も日本も必要としていないだろうが、両国はまさに北朝鮮が望むような対応を繰り返している。

韓国は日本を北朝鮮に対する制裁に違反したとして非難し、日本も同様の主張を韓国に対して行っている。

さらに2016年11月に発効し毎年更新されてきた日本-韓国間の軍事上の機密情報共有を可能にする軍事情報包括保護協定の見直しも辞さないとの姿勢を韓国は示し始めた。

そしてこの紛争により米国は厄介な立場に立たされてしまっている、各同盟国が米国政府に支援を求めてきたとしてもそれは対立相手に不利益をもたらすことを意図したものになるからだ。

これらはすべてキム・ジョンウンにとって素晴らしいニュースだ。



トランプ政権がこの日本と韓国の対立に介入し鎮圧すべき時が来た。

日本と韓国が対立を深める中、北朝鮮は日米韓3国の協調体制に対する各国の本気度/戦略の実効性を測るためにこの機会を利用することだろう。

日韓のいさかいは些細なことに思えるかもしれない、だがこれは不吉なサインだ。

貿易戦争が実際の戦争に繋がることはないだろう、しかし米国が北朝鮮の重大な脅威に直面した時、その同盟国が真剣さを欠いている事は許されない。

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